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第5話
――それから1か月後の事、貴族会の会話――
「さて、それでは本日最後の議題に移ろうかと思いますが…」
「ええ、フライン伯爵様の事ですね」
重厚な雰囲気を醸し出す大きな会議室には、この国における貴族会の重鎮たちが揃っている。
ここでは貴族の今後に関する議題が積極的に話し合われ、その影響力も非常に大きい。
時に、この貴族会の決定は王族のそれを上回ることもあるとさえ言われているほどに。
「伯爵がウキウキとした表情で我々に婚約の決定を告げてきたのは、もういつの事だったか…。その時は我々も、実にめでたいことだと盛大に祝いの言葉をかけたわけだが、それで調子に乗ってしまったのか、その後の伯爵の振る舞いは実に目に余るものがある。臣下の者たちの間でも不安の声が広まっていっており、もはや無視のできない状態にある。皆の意見を聞かせてもらおうか」
貴族会を取り仕切りながら話を進めていくのは、この場において最大級の決定権を持っているノリントン公爵だ。
貴族長である彼の言葉には、尋常ではないほどの重みがのしかかっている。
「貴族とは、臣民を束ねる立場にあるものです。それゆえ、その行いには品行方正が求められます。にもかかわらず、伯爵は自分の欲望のままにその権力を濫用し、貴族家としての役目を忘れてしまっている。これ以上看過することはできないと思いますが?」
「私も同感ですね…。今までにも貴族の不貞行為の話は上がっていましたが、今回のものはちょっとレベルが違いますから」
「レベルが違う、とは?」
「よくお聞きください。伯爵様は最初、マリーナ様との婚約を決定したと我々貴族会に通知してきたのです。我々はそれを盛大にお祝いしたのですが、その後伯爵様はあろうことか、マリーナ様の妹と関係を築き、なんと子供まで作ってしまったのです。マリーナ様との婚約破棄の通知を我々にもたらすよりも前に、です」
「なんと……」
「では伯爵は…。我が貴族会をないがしろにしたというのか…」
ここまで詳細な事実を知らなかった者たちは、その話を聞いて絶句した。
それは言ってみれば、王に仕えるものが王に嘘をついて自分勝手な振る舞いを繰り返し、王に対する人々からの信頼を失墜させてしまったも同然の行いだった。
「これはゆるされないですね…。伯爵様は我々の事をたばかったという事になるわけです。ここで伯爵様の行いを許して見逃してしまったなら、それこそ我々貴族会は弱腰で役立たずであると見られかねません。悪い行いをした貴族がいたなら、きちんと罰を与えるというのが我々のすべきことであるはずです」
「私もそう思います。これ以上伯爵様の自分勝手な振る舞いを許せば、第二第三の伯爵が現れてしまいかねません。ここは厳しくとも、容赦のない決定を下すべきです」
…伯爵家で見られていた大きな動き。
それに気づいた時、伯爵は今までの人生でもっとも強烈な衝撃を受けることとなるのだった…。
――フライン伯爵視点――
「通知書…?一体どういうことだ?」
貴族会からの通知書が僕の元に届けられたが、なにか通知される覚えがなにもない。
婚約破棄の話はきちんと報告したし、新しい婚約の話もすでに通してある。
何か文句を言われる筋合いはなにもないはずだが…。
「いったい何が書かれて…!?!?!?」
何気ない気持ちで手紙を開封した僕だったが、そこに書かれている文言を見て絶句する。
…そこには短く、今日をもって伯爵としての全権限を凍結、その上で一週間後に伯爵としての立場を剥奪すると書かれていた…。
「な、なんだこれは!?!?」
「どうされたのですか伯爵様?なにかあって……!?!?」
「!?!?!?」
いきなり後ろに現れたリオーネラに対し、僕は手紙を隠すことが出来なかった。
短いゆえにその内容をすぐにリオーネラに読み取られてしまい、彼女もまた僕と同じリアクションを見せる…。
「な、なんですかこれは!?どういうことですか伯爵様!?」
「ぼ、僕にも何がなんだか分からないんだ…」
「分からないってどういうことですか!きちんと説明してください!このままじゃ私、伯爵を剥奪された男と婚約している哀れな女という事になってしまうじゃありませんか!!」
「そ、それは……」
想像していた華やかなイメージが一瞬のうちに崩れ去っていき、リオーネラは激しく動揺したような雰囲気を見せ、それはもはやヒステリックになっているかのようだった。
…もとはと言えば自分の行いから始まっている事であるというのに、その点には全く触れるつもりもない様子…。
「はやくなんとかしてください!あなたが貴族でなくなってしまったなら、私はどうしてあなたと婚約をしたのか分かりません!しかも、直前にここを出て行ったお姉様がまるで成功者のように見られてしまうではありませんか!!そんなの絶対に受け入れられません!」
「……」
その言葉は大いに伯爵の心に傷をつけることとなったが、もはや戻ることなどできない。
もうすべては、二人の言う運命によって決まった事なのだから…。
「さて、それでは本日最後の議題に移ろうかと思いますが…」
「ええ、フライン伯爵様の事ですね」
重厚な雰囲気を醸し出す大きな会議室には、この国における貴族会の重鎮たちが揃っている。
ここでは貴族の今後に関する議題が積極的に話し合われ、その影響力も非常に大きい。
時に、この貴族会の決定は王族のそれを上回ることもあるとさえ言われているほどに。
「伯爵がウキウキとした表情で我々に婚約の決定を告げてきたのは、もういつの事だったか…。その時は我々も、実にめでたいことだと盛大に祝いの言葉をかけたわけだが、それで調子に乗ってしまったのか、その後の伯爵の振る舞いは実に目に余るものがある。臣下の者たちの間でも不安の声が広まっていっており、もはや無視のできない状態にある。皆の意見を聞かせてもらおうか」
貴族会を取り仕切りながら話を進めていくのは、この場において最大級の決定権を持っているノリントン公爵だ。
貴族長である彼の言葉には、尋常ではないほどの重みがのしかかっている。
「貴族とは、臣民を束ねる立場にあるものです。それゆえ、その行いには品行方正が求められます。にもかかわらず、伯爵は自分の欲望のままにその権力を濫用し、貴族家としての役目を忘れてしまっている。これ以上看過することはできないと思いますが?」
「私も同感ですね…。今までにも貴族の不貞行為の話は上がっていましたが、今回のものはちょっとレベルが違いますから」
「レベルが違う、とは?」
「よくお聞きください。伯爵様は最初、マリーナ様との婚約を決定したと我々貴族会に通知してきたのです。我々はそれを盛大にお祝いしたのですが、その後伯爵様はあろうことか、マリーナ様の妹と関係を築き、なんと子供まで作ってしまったのです。マリーナ様との婚約破棄の通知を我々にもたらすよりも前に、です」
「なんと……」
「では伯爵は…。我が貴族会をないがしろにしたというのか…」
ここまで詳細な事実を知らなかった者たちは、その話を聞いて絶句した。
それは言ってみれば、王に仕えるものが王に嘘をついて自分勝手な振る舞いを繰り返し、王に対する人々からの信頼を失墜させてしまったも同然の行いだった。
「これはゆるされないですね…。伯爵様は我々の事をたばかったという事になるわけです。ここで伯爵様の行いを許して見逃してしまったなら、それこそ我々貴族会は弱腰で役立たずであると見られかねません。悪い行いをした貴族がいたなら、きちんと罰を与えるというのが我々のすべきことであるはずです」
「私もそう思います。これ以上伯爵様の自分勝手な振る舞いを許せば、第二第三の伯爵が現れてしまいかねません。ここは厳しくとも、容赦のない決定を下すべきです」
…伯爵家で見られていた大きな動き。
それに気づいた時、伯爵は今までの人生でもっとも強烈な衝撃を受けることとなるのだった…。
――フライン伯爵視点――
「通知書…?一体どういうことだ?」
貴族会からの通知書が僕の元に届けられたが、なにか通知される覚えがなにもない。
婚約破棄の話はきちんと報告したし、新しい婚約の話もすでに通してある。
何か文句を言われる筋合いはなにもないはずだが…。
「いったい何が書かれて…!?!?!?」
何気ない気持ちで手紙を開封した僕だったが、そこに書かれている文言を見て絶句する。
…そこには短く、今日をもって伯爵としての全権限を凍結、その上で一週間後に伯爵としての立場を剥奪すると書かれていた…。
「な、なんだこれは!?!?」
「どうされたのですか伯爵様?なにかあって……!?!?」
「!?!?!?」
いきなり後ろに現れたリオーネラに対し、僕は手紙を隠すことが出来なかった。
短いゆえにその内容をすぐにリオーネラに読み取られてしまい、彼女もまた僕と同じリアクションを見せる…。
「な、なんですかこれは!?どういうことですか伯爵様!?」
「ぼ、僕にも何がなんだか分からないんだ…」
「分からないってどういうことですか!きちんと説明してください!このままじゃ私、伯爵を剥奪された男と婚約している哀れな女という事になってしまうじゃありませんか!!」
「そ、それは……」
想像していた華やかなイメージが一瞬のうちに崩れ去っていき、リオーネラは激しく動揺したような雰囲気を見せ、それはもはやヒステリックになっているかのようだった。
…もとはと言えば自分の行いから始まっている事であるというのに、その点には全く触れるつもりもない様子…。
「はやくなんとかしてください!あなたが貴族でなくなってしまったなら、私はどうしてあなたと婚約をしたのか分かりません!しかも、直前にここを出て行ったお姉様がまるで成功者のように見られてしまうではありませんか!!そんなの絶対に受け入れられません!」
「……」
その言葉は大いに伯爵の心に傷をつけることとなったが、もはや戻ることなどできない。
もうすべては、二人の言う運命によって決まった事なのだから…。
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