4 / 6
第4話
しおりを挟む
「ソフィー様、さきほど伯爵様から知らせがもたらされました。それによると今日、伯爵様はお仕事を終えられて屋敷にお戻りになられるそうです」
「そうですか、分かりました」
ルグレスが丁寧な口調で私にそう言葉を発し、伯爵様のお帰りを知らせる。
私はそのまま伯爵様の事を出迎える準備に移るため、そのまま彼の前を去ろうとした。
ところが彼には、その後ろにもなにやら言いたいことがあった様子で…。
「…ソフィー様、今日は少しだけ覚悟をされていた方がいいかもしれません…」
「か、覚悟…?」
非常に真剣な表情で、それでいてどこか悲しそうな表情でそう言葉を発するルグレス。
彼がその心の中に抱いている思いは分からないけれど、それが冗談や軽口ではないであろうことはすぐに察することができた。
「ルグレス、なにか伯爵様の事情か何かを知っているの?」
「そ、それは…」
「何か知っているのなら、私にも…」
「…!?」
そこまで私が言葉をかけた時、ルグレスは言いかけた言葉をかみ殺すような雰囲気を見せながら私の前から姿を消していった。
私はそんな彼の姿にどこか胸騒ぎを感じながらも、そのまま伯爵様の事を迎える準備に移ることにしたのだった。
――――
「お帰りなさいませ、伯爵様」
「あぁ、出迎えありがとう」
「お仕事、かなり長引かれてしまったのですね。お疲れになられているのではありませんか?」
「いやいや、別に心配はいらないとも」
私の元に戻ってきてくれた伯爵様は、普段と何も変わらない様子で馬車から降りて私に言葉を返してくれる。
さきほどルグレスからあんな言葉をかけられていた私はかなり身構えてしまっていたものの、それが杞憂に終わったことに少しだけ心を安堵させていた。
…しかしその直後、伯爵様は私が想像もしていなかった言葉を発した。
「ちょうどよかったソフィー。君に紹介したい人物がいるんだよ」
「…?」
「僕の心を掴んで離さない、マイアだ。僕は彼女のために伯爵としての仕事を全うしていると言っても過言ではない」
伯爵様のその言葉が合図だったかのように、それまで伯爵様が乗っていた馬車からもう一人の人物が姿を現す。
…私はその人物を見たことがなかったけれど、向こうは私の事を知っている様子だった。
「あなたがソフィーなのね。伯爵様からいろいろと話は聞いているわ」
「…?」
…私は目の前で起こっていることが理解できず、その場で全身を硬直させてしまう。
しかし向こうはそんな私に構わず、そのまま言葉を続けていく。
「今伯爵様が紹介された通り、本当に愛されているのは私なわけ。あなたは自分が伯爵夫人の座に付けたからそれでもう満足しているようだけれど、果たしてそれもいつまで続くのか疑問に思った方がいいんじゃない?最初から伯爵様から愛されていなかったみたいだし…♪」
「おいおい、それは言いすぎだぞマイア。ソフィーはこれでも一応僕の婚約者なんだ。僕が選んだ相手ということで話は通っているのだから、あまりソフィーの事を悪く言われると僕のイメージの悪化にもつながってしまう」
「ごめんなさい伯爵様、つい本音を口にしてしまいましたわ」
「本音でそう思っているところは僕も全く同じだが、そこをこらえてもらわないと何にもならないなぁ。まぁ君が言った通り、そう長く続く関係ではないことは確かかもしれないが…♪」
非常に親し気な様子でそう話を行う二人。
…私は目の前で繰り広げられるその光景を全く理解することができず、なんの言葉を返すこともできないでいた。
するとその時、そんな私の雰囲気に思うところがあったのか、伯爵様はやや冷たい口調で私にこう言った。
「というわけでソフィー、もしかしたら君の役割はもう終わってしまったのかもしれない。僕にとって最も大切なのはマイアであるということ、君も理解してくれただろう?」
「……」
「君になにもいわないままマイアとの関係を続けるのは一応ルール違反になるかと思ったから、こうして告げることにしたよ。これならフェアだろう?」
「……」
「私の事を恨まれてもお門違いですからね??伯爵様の心を掴めなかったのはあなた自身のせいだし、別に私は伯爵様の事を奪ったわけでもないのだし」
思い思いの言葉を順番にかけてくる二人。
私はもうその内容をちゃんと聞くこともできていなくって、ただただ放心状態のようになっていた。
…ルグレスの言っていた事はこの事だったのかと、ようやく理解する。
「ここまで言ったのだから、もう理解してくれているよな?」
そして伯爵様は、最後の最後にこれまで心の中にとどめていた言葉を私に向けて言い放った。
「ソフィー、僕はもう君との関係を終わりにしたく思う。端的に言えば、婚約破棄というやつだな。君はもう役目を終えたのだから、これ以上無理に関係を続ける理由もないだろう?」
そう言葉を発する伯爵様の表情は朗らかで、非常に明るい雰囲気だった。
そしてその隣には、薄ら笑いを浮かべるマイアの姿が目に入った…。
「そうですか、分かりました」
ルグレスが丁寧な口調で私にそう言葉を発し、伯爵様のお帰りを知らせる。
私はそのまま伯爵様の事を出迎える準備に移るため、そのまま彼の前を去ろうとした。
ところが彼には、その後ろにもなにやら言いたいことがあった様子で…。
「…ソフィー様、今日は少しだけ覚悟をされていた方がいいかもしれません…」
「か、覚悟…?」
非常に真剣な表情で、それでいてどこか悲しそうな表情でそう言葉を発するルグレス。
彼がその心の中に抱いている思いは分からないけれど、それが冗談や軽口ではないであろうことはすぐに察することができた。
「ルグレス、なにか伯爵様の事情か何かを知っているの?」
「そ、それは…」
「何か知っているのなら、私にも…」
「…!?」
そこまで私が言葉をかけた時、ルグレスは言いかけた言葉をかみ殺すような雰囲気を見せながら私の前から姿を消していった。
私はそんな彼の姿にどこか胸騒ぎを感じながらも、そのまま伯爵様の事を迎える準備に移ることにしたのだった。
――――
「お帰りなさいませ、伯爵様」
「あぁ、出迎えありがとう」
「お仕事、かなり長引かれてしまったのですね。お疲れになられているのではありませんか?」
「いやいや、別に心配はいらないとも」
私の元に戻ってきてくれた伯爵様は、普段と何も変わらない様子で馬車から降りて私に言葉を返してくれる。
さきほどルグレスからあんな言葉をかけられていた私はかなり身構えてしまっていたものの、それが杞憂に終わったことに少しだけ心を安堵させていた。
…しかしその直後、伯爵様は私が想像もしていなかった言葉を発した。
「ちょうどよかったソフィー。君に紹介したい人物がいるんだよ」
「…?」
「僕の心を掴んで離さない、マイアだ。僕は彼女のために伯爵としての仕事を全うしていると言っても過言ではない」
伯爵様のその言葉が合図だったかのように、それまで伯爵様が乗っていた馬車からもう一人の人物が姿を現す。
…私はその人物を見たことがなかったけれど、向こうは私の事を知っている様子だった。
「あなたがソフィーなのね。伯爵様からいろいろと話は聞いているわ」
「…?」
…私は目の前で起こっていることが理解できず、その場で全身を硬直させてしまう。
しかし向こうはそんな私に構わず、そのまま言葉を続けていく。
「今伯爵様が紹介された通り、本当に愛されているのは私なわけ。あなたは自分が伯爵夫人の座に付けたからそれでもう満足しているようだけれど、果たしてそれもいつまで続くのか疑問に思った方がいいんじゃない?最初から伯爵様から愛されていなかったみたいだし…♪」
「おいおい、それは言いすぎだぞマイア。ソフィーはこれでも一応僕の婚約者なんだ。僕が選んだ相手ということで話は通っているのだから、あまりソフィーの事を悪く言われると僕のイメージの悪化にもつながってしまう」
「ごめんなさい伯爵様、つい本音を口にしてしまいましたわ」
「本音でそう思っているところは僕も全く同じだが、そこをこらえてもらわないと何にもならないなぁ。まぁ君が言った通り、そう長く続く関係ではないことは確かかもしれないが…♪」
非常に親し気な様子でそう話を行う二人。
…私は目の前で繰り広げられるその光景を全く理解することができず、なんの言葉を返すこともできないでいた。
するとその時、そんな私の雰囲気に思うところがあったのか、伯爵様はやや冷たい口調で私にこう言った。
「というわけでソフィー、もしかしたら君の役割はもう終わってしまったのかもしれない。僕にとって最も大切なのはマイアであるということ、君も理解してくれただろう?」
「……」
「君になにもいわないままマイアとの関係を続けるのは一応ルール違反になるかと思ったから、こうして告げることにしたよ。これならフェアだろう?」
「……」
「私の事を恨まれてもお門違いですからね??伯爵様の心を掴めなかったのはあなた自身のせいだし、別に私は伯爵様の事を奪ったわけでもないのだし」
思い思いの言葉を順番にかけてくる二人。
私はもうその内容をちゃんと聞くこともできていなくって、ただただ放心状態のようになっていた。
…ルグレスの言っていた事はこの事だったのかと、ようやく理解する。
「ここまで言ったのだから、もう理解してくれているよな?」
そして伯爵様は、最後の最後にこれまで心の中にとどめていた言葉を私に向けて言い放った。
「ソフィー、僕はもう君との関係を終わりにしたく思う。端的に言えば、婚約破棄というやつだな。君はもう役目を終えたのだから、これ以上無理に関係を続ける理由もないだろう?」
そう言葉を発する伯爵様の表情は朗らかで、非常に明るい雰囲気だった。
そしてその隣には、薄ら笑いを浮かべるマイアの姿が目に入った…。
79
あなたにおすすめの小説
うまくやった、つもりだった
ひがん さく
恋愛
四大貴族、バルディストン公爵家の分家に生まれたオスカーは、ここまでうまくやってきた。
本家の一人娘シルヴィアが王太子の婚約者に選ばれ、オスカーは本家の後継ぎとして養子になった。
シルヴィアを姉と慕い、養父に気に入られ、王太子の側近になり、王太子が子爵令嬢と愛を深めるのを人目につかぬよう手助けをし、シルヴィアとの婚約破棄の準備も整えた。
誠実と王家への忠義を重んじるこの国では、シルヴィアの冷徹さは瑕疵であり、不誠実だと示せば十分だった。
かつてシルヴィアはオスカーが養子になることに反対した。
その姉が後妻か商家の平民に落ちる時が来た。
王太子の権威や素晴らしさを示すという一族の教えすら忘れた姉をオスカーは断罪する。
だが、シルヴィアは絶望もせずに呟いた。
「これだから、分家の者を家に入れるのは嫌だったのよ……」
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
【完結】そんなに好きなら、そっちへ行けば?
雨雲レーダー
恋愛
侯爵令嬢クラリスは、王太子ユリウスから一方的に婚約破棄を告げられる。
理由は、平民の美少女リナリアに心を奪われたから。
クラリスはただ微笑み、こう返す。
「そんなに好きなら、そっちへ行けば?」
そうして物語は終わる……はずだった。
けれど、ここからすべてが狂い始める。
*完結まで予約投稿済みです。
*1日3回更新(7時・12時・18時)
【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。
五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」
婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。
愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー?
それって最高じゃないですか。
ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。
この作品は
「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。
どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。
幼馴染、幼馴染、そんなに彼女のことが大切ですか。――いいでしょう、ならば、婚約破棄をしましょう。~病弱な幼馴染の彼女は、実は……~
銀灰
恋愛
テリシアの婚約者セシルは、病弱だという幼馴染にばかりかまけていた。
自身で稼ぐこともせず、幼馴染を庇護するため、テシリアに金を無心する毎日を送るセシル。
そんな関係に限界を感じ、テリシアはセシルに婚約破棄を突き付けた。
テリシアに見捨てられたセシルは、てっきりその幼馴染と添い遂げると思われたが――。
その幼馴染は、道化のようなとんでもない秘密を抱えていた!?
はたして、物語の結末は――?
今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから
毛蟹
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。
ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。
彼女は別れろ。と、一方的に迫り。
最後には暴言を吐いた。
「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」
洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。
「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」
彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。
ちゃんと、別れ話をしようと。
ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる