そこまで幼馴染が好きというなら、どうぞ幼馴染だけ愛してください

睡蓮

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第4話

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「ソフィー様、さきほど伯爵様から知らせがもたらされました。それによると今日、伯爵様はお仕事を終えられて屋敷にお戻りになられるそうです」
「そうですか、分かりました」

ルグレスが丁寧な口調で私にそう言葉を発し、伯爵様のお帰りを知らせる。
私はそのまま伯爵様の事を出迎える準備に移るため、そのまま彼の前を去ろうとした。
ところが彼には、その後ろにもなにやら言いたいことがあった様子で…。

「…ソフィー様、今日は少しだけ覚悟をされていた方がいいかもしれません…」
「か、覚悟…?」

非常に真剣な表情で、それでいてどこか悲しそうな表情でそう言葉を発するルグレス。
彼がその心の中に抱いている思いは分からないけれど、それが冗談や軽口ではないであろうことはすぐに察することができた。

「ルグレス、なにか伯爵様の事情か何かを知っているの?」
「そ、それは…」
「何か知っているのなら、私にも…」
「…!?」

そこまで私が言葉をかけた時、ルグレスは言いかけた言葉をかみ殺すような雰囲気を見せながら私の前から姿を消していった。
私はそんな彼の姿にどこか胸騒ぎを感じながらも、そのまま伯爵様の事を迎える準備に移ることにしたのだった。

――――

「お帰りなさいませ、伯爵様」
「あぁ、出迎えありがとう」
「お仕事、かなり長引かれてしまったのですね。お疲れになられているのではありませんか?」
「いやいや、別に心配はいらないとも」

私の元に戻ってきてくれた伯爵様は、普段と何も変わらない様子で馬車から降りて私に言葉を返してくれる。
さきほどルグレスからあんな言葉をかけられていた私はかなり身構えてしまっていたものの、それが杞憂に終わったことに少しだけ心を安堵させていた。
…しかしその直後、伯爵様は私が想像もしていなかった言葉を発した。

「ちょうどよかったソフィー。君に紹介したい人物がいるんだよ」
「…?」
「僕の心を掴んで離さない、マイアだ。僕は彼女のために伯爵としての仕事を全うしていると言っても過言ではない」

伯爵様のその言葉が合図だったかのように、それまで伯爵様が乗っていた馬車からもう一人の人物が姿を現す。
…私はその人物を見たことがなかったけれど、向こうは私の事を知っている様子だった。

「あなたがソフィーなのね。伯爵様からいろいろと話は聞いているわ」
「…?」

…私は目の前で起こっていることが理解できず、その場で全身を硬直させてしまう。
しかし向こうはそんな私に構わず、そのまま言葉を続けていく。

「今伯爵様が紹介された通り、本当に愛されているのは私なわけ。あなたは自分が伯爵夫人の座に付けたからそれでもう満足しているようだけれど、果たしてそれもいつまで続くのか疑問に思った方がいいんじゃない?最初から伯爵様から愛されていなかったみたいだし…♪」
「おいおい、それは言いすぎだぞマイア。ソフィーはこれでも一応僕の婚約者なんだ。僕が選んだ相手ということで話は通っているのだから、あまりソフィーの事を悪く言われると僕のイメージの悪化にもつながってしまう」
「ごめんなさい伯爵様、つい本音を口にしてしまいましたわ」
「本音でそう思っているところは僕も全く同じだが、そこをこらえてもらわないと何にもならないなぁ。まぁ君が言った通り、そう長く続く関係ではないことは確かかもしれないが…♪」

非常に親し気な様子でそう話を行う二人。
…私は目の前で繰り広げられるその光景を全く理解することができず、なんの言葉を返すこともできないでいた。
するとその時、そんな私の雰囲気に思うところがあったのか、伯爵様はやや冷たい口調で私にこう言った。

「というわけでソフィー、もしかしたら君の役割はもう終わってしまったのかもしれない。僕にとって最も大切なのはマイアであるということ、君も理解してくれただろう?」
「……」
「君になにもいわないままマイアとの関係を続けるのは一応ルール違反になるかと思ったから、こうして告げることにしたよ。これならフェアだろう?」
「……」
「私の事を恨まれてもお門違いですからね??伯爵様の心を掴めなかったのはあなた自身のせいだし、別に私は伯爵様の事を奪ったわけでもないのだし」

思い思いの言葉を順番にかけてくる二人。
私はもうその内容をちゃんと聞くこともできていなくって、ただただ放心状態のようになっていた。
…ルグレスの言っていた事はこの事だったのかと、ようやく理解する。

「ここまで言ったのだから、もう理解してくれているよな?」

そして伯爵様は、最後の最後にこれまで心の中にとどめていた言葉を私に向けて言い放った。

「ソフィー、僕はもう君との関係を終わりにしたく思う。端的に言えば、婚約破棄というやつだな。君はもう役目を終えたのだから、これ以上無理に関係を続ける理由もないだろう?」

そう言葉を発する伯爵様の表情は朗らかで、非常に明るい雰囲気だった。
そしてその隣には、薄ら笑いを浮かべるマイアの姿が目に入った…。
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