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第3話
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――貴族会での会話――
「こ、これは本当ですか!?サテック侯爵様!?」
「あぁ、間違いない…。つい先ほど伯爵家の人間から、告発文が送られてきたのだ…」
臨時で開催された貴族会議の場において、複数の人物がその表情を驚愕の色で染めていた。
そのうちの一人はサテック侯爵であり、彼は正真正銘ソフィーの父親である。
「今日はその事でみんなに集まってもらったんだ。忙しい所緊急で招集をかけてすまないが、深刻な話なのだ。協力してほしい」
険しい表情でそう言葉を口にするサテック侯爵。
その手に握られている告発文には、伯爵家におけるソフィーのすべてが記されていた。
「伯爵様は私の娘であるソフィーとの婚約関係を結ばれた。その事はみんなもよく知ってくれていることと思う。だが、その婚約関係は伯爵様の一方的な都合で成り立っているというのだ。ソフィーは、その被害者なのだと…」
「「なっ!?!?!?」」
ここに集まっている貴族たちは、かつてソフィーの事を好いていた者たちばかりだった。
それゆえ、ソフィーに関する話は非常に関心を集めることとなり、事実この場にいる全員がその話を前のめりになって聞いている。
「伯爵様はただただ、自分の権力の強さを誇示するためだけにソフィーの事を婚約者としたというのだ。その結果、ソフィーは婚約者としての愛情をかけられることのないまま、冷たい扱いを繰り返されているのだという。その一方で伯爵様は、ソフィーの穏やかな性格を利用して、裏で好き勝手なことをしているらしい。…本命と言える愛人を持っているという話まであるくらいにな…」
「「……」」
皆、サテック侯爵の話をただ黙って聞いている。
しかしその目には明らかに怒りの感情が沸き上がっており、伯爵に対する不信感は時間とともに大きくなっていることを物語る。
その時、一人の人物が侯爵の言葉を聞いてこう言葉をつぶやいた。
「…その話、噂レベルですが聞いたことがあります。結局伯爵様はソフィー様の事をただの道具だとしか思っておらず、僕らに立場の強さを見せつけるためだけのからっぽな婚約関係なのだと…」
「……」
その者も、そんな話は信じたくなかったのだろう。
しかしこうして情報が少しづつそろえられていっている中、それを認めないというわけにもいかなくなっていっている様子…。
「その話、僕も聞いたことがあります…。なんでも伯爵様、よく屋敷を空けられているらしいのですが、その行き先と言うのが決まって一人の女性の所だと言うのです。…今まではただの根も葉もない噂に違いないと思う事にしていたのですが、それがまさか…」
伯爵とマイアが一緒にいる姿を目撃している者もおり、その関係が露呈することは最初から時間の問題ではあった。
しかし伯爵は、自らの権力を誇示することでそういった声を封じることができるものだと確信していたのだ。
穏やかな性格であるソフィーの性質も相まって、誰も自分に意見してくることなどないであろう、と思っていた様子…。
「侯爵様、こうなってはもう放っておくわけにはいきません。いくら相手が伯爵様と言えど、我々から抗議の声を上げることにしましょう。それでもな伯爵様が自らの非を認めないというのなら…」
「……」
そこから先は、口にするのも恐ろしい結果をもたらす可能性のある戦い方だった。
しかし、ここに居る者のほとんどはソフィーの事を心配する彼女の味方。
傷を伴いかもしれない戦い方に、躊躇などなかった。
「このまま伯爵様の横暴を認めるわけにはいきません。確かに伯爵様は貴族の位の上では僕らよりも上ですが、だからといって戦えないわけではありません。僕らが力を合わせたなら、きっと伯爵様であろうと…」
「力を合わせる、だって?」
「「っ!?!?!?」」
その時、一人の男性が不意にその場に現れ、他の者たちの表情を大きく驚愕させる。
…それもそのはず、普段はこういった貴族会にはめったに顔を出さない、ルキアーラ公爵が直接的にその身をこの場にもたらしたからだ。
「話は聞かせてもらった。伯爵のやつが好き勝手な事をしているみたいだな」
「こ、公爵様…!?」
「やれやれ…。俺がこういう面倒な事を嫌っているだろうから、口を出してくることはないとあいつは踏んでるんだろうな。まぁ確かに俺は面倒な事は嫌いなんだが、あいつの思惑通りに動いてしまうのはなかなか不愉快だ。それなら、あいつが思っていることと逆の事をやってやりたいね」
「ぎゃ、逆と言うのは…??」
突然その姿を現しておきながら、場の空気を一気に自分の物にしてしまう公爵。
やはり彼には公爵として必要なオーラと威厳を兼ね備えられているのだろう。
「もしもこの噂話が本当なら、伯爵はそのうちソフィーの事を婚約破棄するのだろう?もしそれが現実の事になったなら、俺が直々にあいつの事を糾弾してやろうじゃないか。あいつだって本命の愛人がいるのなら、内心ではその関係を確実なものにしたくてたまらないだろうからな。しかし、もしもあいつがソフィーのことを婚約破棄しなかったなら、今回の話はなしだ。俺はこれからも伯爵の事を見守ってやろうと思う。侯爵、それでどうだ?」
大いなる味方が現れたのか、それとも厄介な敵が現れたのか。
侯爵がその心の中に抱く思いは様々であったが、それでもソフィーを守るうえで彼の返事は決まっていた。
「もちろんです。ぜひ伯爵様の行動を、その目で見極めていただきたい」
「こ、これは本当ですか!?サテック侯爵様!?」
「あぁ、間違いない…。つい先ほど伯爵家の人間から、告発文が送られてきたのだ…」
臨時で開催された貴族会議の場において、複数の人物がその表情を驚愕の色で染めていた。
そのうちの一人はサテック侯爵であり、彼は正真正銘ソフィーの父親である。
「今日はその事でみんなに集まってもらったんだ。忙しい所緊急で招集をかけてすまないが、深刻な話なのだ。協力してほしい」
険しい表情でそう言葉を口にするサテック侯爵。
その手に握られている告発文には、伯爵家におけるソフィーのすべてが記されていた。
「伯爵様は私の娘であるソフィーとの婚約関係を結ばれた。その事はみんなもよく知ってくれていることと思う。だが、その婚約関係は伯爵様の一方的な都合で成り立っているというのだ。ソフィーは、その被害者なのだと…」
「「なっ!?!?!?」」
ここに集まっている貴族たちは、かつてソフィーの事を好いていた者たちばかりだった。
それゆえ、ソフィーに関する話は非常に関心を集めることとなり、事実この場にいる全員がその話を前のめりになって聞いている。
「伯爵様はただただ、自分の権力の強さを誇示するためだけにソフィーの事を婚約者としたというのだ。その結果、ソフィーは婚約者としての愛情をかけられることのないまま、冷たい扱いを繰り返されているのだという。その一方で伯爵様は、ソフィーの穏やかな性格を利用して、裏で好き勝手なことをしているらしい。…本命と言える愛人を持っているという話まであるくらいにな…」
「「……」」
皆、サテック侯爵の話をただ黙って聞いている。
しかしその目には明らかに怒りの感情が沸き上がっており、伯爵に対する不信感は時間とともに大きくなっていることを物語る。
その時、一人の人物が侯爵の言葉を聞いてこう言葉をつぶやいた。
「…その話、噂レベルですが聞いたことがあります。結局伯爵様はソフィー様の事をただの道具だとしか思っておらず、僕らに立場の強さを見せつけるためだけのからっぽな婚約関係なのだと…」
「……」
その者も、そんな話は信じたくなかったのだろう。
しかしこうして情報が少しづつそろえられていっている中、それを認めないというわけにもいかなくなっていっている様子…。
「その話、僕も聞いたことがあります…。なんでも伯爵様、よく屋敷を空けられているらしいのですが、その行き先と言うのが決まって一人の女性の所だと言うのです。…今まではただの根も葉もない噂に違いないと思う事にしていたのですが、それがまさか…」
伯爵とマイアが一緒にいる姿を目撃している者もおり、その関係が露呈することは最初から時間の問題ではあった。
しかし伯爵は、自らの権力を誇示することでそういった声を封じることができるものだと確信していたのだ。
穏やかな性格であるソフィーの性質も相まって、誰も自分に意見してくることなどないであろう、と思っていた様子…。
「侯爵様、こうなってはもう放っておくわけにはいきません。いくら相手が伯爵様と言えど、我々から抗議の声を上げることにしましょう。それでもな伯爵様が自らの非を認めないというのなら…」
「……」
そこから先は、口にするのも恐ろしい結果をもたらす可能性のある戦い方だった。
しかし、ここに居る者のほとんどはソフィーの事を心配する彼女の味方。
傷を伴いかもしれない戦い方に、躊躇などなかった。
「このまま伯爵様の横暴を認めるわけにはいきません。確かに伯爵様は貴族の位の上では僕らよりも上ですが、だからといって戦えないわけではありません。僕らが力を合わせたなら、きっと伯爵様であろうと…」
「力を合わせる、だって?」
「「っ!?!?!?」」
その時、一人の男性が不意にその場に現れ、他の者たちの表情を大きく驚愕させる。
…それもそのはず、普段はこういった貴族会にはめったに顔を出さない、ルキアーラ公爵が直接的にその身をこの場にもたらしたからだ。
「話は聞かせてもらった。伯爵のやつが好き勝手な事をしているみたいだな」
「こ、公爵様…!?」
「やれやれ…。俺がこういう面倒な事を嫌っているだろうから、口を出してくることはないとあいつは踏んでるんだろうな。まぁ確かに俺は面倒な事は嫌いなんだが、あいつの思惑通りに動いてしまうのはなかなか不愉快だ。それなら、あいつが思っていることと逆の事をやってやりたいね」
「ぎゃ、逆と言うのは…??」
突然その姿を現しておきながら、場の空気を一気に自分の物にしてしまう公爵。
やはり彼には公爵として必要なオーラと威厳を兼ね備えられているのだろう。
「もしもこの噂話が本当なら、伯爵はそのうちソフィーの事を婚約破棄するのだろう?もしそれが現実の事になったなら、俺が直々にあいつの事を糾弾してやろうじゃないか。あいつだって本命の愛人がいるのなら、内心ではその関係を確実なものにしたくてたまらないだろうからな。しかし、もしもあいつがソフィーのことを婚約破棄しなかったなら、今回の話はなしだ。俺はこれからも伯爵の事を見守ってやろうと思う。侯爵、それでどうだ?」
大いなる味方が現れたのか、それとも厄介な敵が現れたのか。
侯爵がその心の中に抱く思いは様々であったが、それでもソフィーを守るうえで彼の返事は決まっていた。
「もちろんです。ぜひ伯爵様の行動を、その目で見極めていただきたい」
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