そこまで幼馴染が好きというなら、どうぞ幼馴染だけ愛してください

睡蓮

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第2話

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――リューグ視点――

「まったくちょろいものだなぁ。あんなに単純な性格の女が大人気だったなんて、貴族の男どもも女を見る目がないと言うか…」
「あら、それじゃあ私はどういったランクになるのでしょう?」
「決まっているだろう?他の見る目のない男たちとは違って、僕には確かな女を見る目を持っている。そんな僕の目に燦然《さんぜん》と輝いて見えるマイアこそ、この世界で最も素敵な女性だとも!」
「まぁ、お上手ですね♪」

伯爵は一人の女性と長椅子に座りながら、その体温を互いに感じ取れるほどの距離で体を寄せていた。
リューグがマイアと呼ぶその女性は、彼にとっては幼馴染の関係に当たり、以前から彼が溺愛を続けている人物であった。

「やっぱり僕の心を満たしてくれるのは君だけだとも。こうして君に会いに来る時間だけが僕は楽しみで、ソフィーとの時間など苦痛で仕方がないんだ」
「クスクス…。それじゃあどうしてソフィーの事を婚約者にすることにしたの?」

聞かずともその理由は分かっている様子のマイア。
しかしあえてそれを質問したのは、自分の方がソフィーよりも伯爵から愛されているのだという事を誇示したかったからなのだろう。

「ソフィーはなぜだか貴族連中から人気だったんだよ。まぁもともと侯爵令嬢だから名は知られていたんだが、それにしたって彼女と結ばれたいと考えている男が多くてな…。だから、この僕がかっさらってやることにしたのさ」
「悪いお方ですねぇ…。貴族の方々は悔しくてたまらなかったのではないですか?」
「それはもうそれはもう、なかなか見ごたえのあるリアクションを見せてくれたよ♪」

伯爵は机の上に用意されたグラスを手に取りながら上機嫌な様子で言葉を続ける。

「ソフィーと婚約する旨を、ソフィーの事を狙っていた奴らに一人ずつ報告して回ってやったんだ。そしたら奴ら、悔しくてたまらないという表情を見せつつも、言葉ではおめでとうございます、自分のことのようにうれしくおもいますなどと言って…♪」
「それを見たいがためにソフィーの事を婚約者にしたのですか?ほんと悪いお方…♪」
「僕は伯爵なんだぞ?こうして立場の違いというものを思い知らせてやるのは大事だろう?」

ルグレスの睨んでいた通り、伯爵はソフィーに対する思いなど一切抱いてはいなかった。
むしろそれどころか、自分の本命となる人物を他に侍らせているのだ。

「それじゃあ伯爵様、私の事はいつ正式な婚約者として迎え入れてくださるのですか?私はその時が待ち遠しくて仕方がないのですが」
「まぁまぁ焦らなくても大丈夫だとも。現に僕の心はもう君の事しか見えていないんだ。それに僕だって何の考えもなくただ嫌がらせでソフィーの事を婚約者にしたわけじゃない。ソフィーは僕がどれだけ好き勝手をしても文句の一つも言ってこないんだよ。だからいくらでも関係を引き延ばすことが出来る。そうやって周囲の貴族連中に傷を与え続けてやって、ここぞというタイミングで婚約破棄をしてやろうと思っているわけだ。このストーリーにおいて、ソフィー以上に適任な女など他にいないのだから」
「なるほど、それはそれは魅力的なストーリーですわね…♪」

これもまたルグレスが心配していた通りの事が現実に起こっていた。
リューグ伯爵はソフィーに対しての思いを全く抱いていないばかりか、自身の幼馴染であるマイアの事を何よりも優先しつつ、ソフィーの事はただの政治的な道具としか見ていないのだった。

「どのタイミングでソフィーの事を捨ててやるかが大事になってくるだろうが、まぁ大した問題ではない。きっと僕がどれだけ怪しい行動をとろうともソフィーは疑ってこないだろうし、伯爵である僕のやることに対してどの貴族たちも文句など言えないだろうからな」
「そういう意味では私は、この世界でもっとも愉快な男性から愛されているのですね!この幸せをソフィーに少しくらい分けてあげたいくらいだわぁ♪」

マイアは楽しくてたまらないという表情を浮かべながら、伯爵の言葉を心待ちにする。
自分が彼の中で一番くらいの高い位置にいるという事が、相当にうれしいらしい。

「ソフィーなんていう馬鹿な人がいてくれたおかげで、こんなにも楽しい思いができるだなんて。彼女には今度直接感謝の言葉を伝えようかしら?」
「それはいいな!なら僕らの正式な婚約式典を行う時、ソフィーの事を招待することにしよう!一体どんな反応を見せてくれるのか、なかなか楽しいことになるとは思わないか?」
「ほんと、伯爵様ったら素敵なお考えばかり言われるんですから♪」

今後のことをイメージするのが楽しくて仕方がないのか、二人はうきうきとした様子でソフィーの事を蔑む発言を繰り返す。
…しかし、二人はこの時全く気づいてはいなかった。
すでにソフィーの事を取り巻く環境は大きく変わりつつあり、その切っ先は他でもない自分たちの喉元に向けられつつあるのだという事に…。
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