結局、私の言っていたことが正しかったようですね、元旦那様?

睡蓮

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第2話

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――リリアーナ視点――

「お兄様、本当にお姉様の事を追放されてしまわれたのですね?」
「あぁ、ついさっきな。そしたらエリナのやつ、泣きそうな顔を見せながら悲壮感満載の目をしていたよ。やっぱり、婚約破棄されるまでは想像していなかったようだな♪」

ご機嫌そうなお兄様の話を聞いて、うれしい反面わたしはやや寂しさを感じていた。
だって、どう扱っても誰からも文句を言われないたったひとつのおもちゃを、失ってしまったのだから。

「お姉様、私とよく遊んでくださったので私も悲しいですわねぇ。でもお兄様が決められたことなのですから仕方がありませんわ」

私はなにかと理由をつけては、お姉様の事を虐げて遊んでいた。
例えば、お姉様の部屋の中に紅茶を撒いて汚したり、お洋服に穴をあけて嫌がる顔を見たり、お姉様の靴の中に針を入れてみたり、それはそれはいろんなことをやってきた。
お姉様はその度に犯人を私だと決めつけて、私の事を説教するような雰囲気で毎回乗り込んできた。
私は何度も私じゃないと言っているのに、お姉様は私の事を全く信じてくださらなかった。
私はそれに腹が立って、お姉様からいじめを受けているとお兄様に泣きつく。
お兄様は私の事を心の底から溺愛してくださっているから、決まって私の味方をしてくれて、お姉様の事を叱責してくださった。
私はそれを遠目から見るのが本当に楽しみで、そういった意味でお姉様がここに来てからの毎日は楽しいことの連続だった。
そんなお姉さまが、婚約破棄されて追放されてしまったのだという。

「いくらお姉様といえども、少し調子に乗りすぎてしまったようですね…。せっかくお兄様との婚約関係を結ぶチャンスであったというのに…」

伯爵様との婚約関係なんて、この世界に住まうすべての女性の憧れだろう。
ましてやお姉様はもともと普通の生活を送っていた一般人。
そんな人がいきなり伯爵様のもとに行けるだなんて、まるでどこかのシンデレラのようだもの。
…そんな大きな大きなチャンスをみすみす捨ててしまうだなんて、本当にもったいない…。

「それでお兄様、次は誰を婚約者として迎え入れられるのですか?このままエリナがいなくなっただけでは、結局話が元に戻っただけではありませんか。私の遊び相手をここに連れてきてくれるという約束でしょう?」
「あぁ、その事なんだが…。リリアーナ、当面僕たち二人だけでここでやっていかないか?」
「…?」

お兄様が私に発した言葉は、私にとって予想外のものだった。

「リリアーナ、僕は心から君の事を愛しているとも。しかしだからこそ、君が他の人間と楽しそうな時間を過ごしているところを見ると、どうやら僕は妬いてしまうらしいんだ…。今回の事で僕はよくわかった。君が僕の中でどれだけ大きな存在なのかという事に…」
「……」

おっと、これは少々想定外だったかもしれない…。
お兄様が私の事を過剰なほどに愛しているというのは、もちろん私だって知っている。
だからこそ私は、普通なら無理であろうお願い事をお兄様にお願いし続け、その度にお兄様は私の願いを叶えてくれた。
…この感情は一生利用でいるものだと思っていたのに、どうやらそうでもなくなってしまっているらしい…。

「お兄様、私の事を思ってくださっているのは本当にうれしいのですけれど、私にだってお話しする相手くらいは必要でしょう?それをずっとお兄様にお願いするのは、お兄様の負担を大きくしてしまうだけになってしまいます…。私はお兄様の事を思っているからこそ、このお願いをお兄様に…」
「大丈夫だともリリアーナ!君とならいつまでだって僕は話ができる!疲れなんて吹き飛んでしまうくらいにね!だから僕の事は何も心配しなくてもいい!!」
「……」

…こうなってくると、逆に面倒になりそうだ…。
私は暗に、お兄様以外の人にここに来てほしいと伝えているのだけれど、どうやらお兄様は私の言葉をそのまま受け取っている様子…。
…男の人って、どうしてこちらの意図をくみ取ってくれることが出来ない生き物なのだろうか…。

「そ、そうですか…。分かりました。私としても心苦しいのですけれど、お兄様がそこまで行ってくださるというのでしたら…」
「当然じゃないかリリアーナ。僕はこの世界で一番君の事を愛して、君の事を理解している男なんだ。他の誰にもこの席を譲ってなるものか。それが男であろうと女であろうと関係ない。僕は本当に、他の誰よりも君との時間を過ごしたいだけなんだ」
「あ、ありがとうございます…。そう言っていただけると、私もうれしいです…」

…ちょっと、オーバーすぎるゾーンに入ってしまったかもしれない…。
お兄様はこうなるととどまるところを知らないところがあるから、制御するのがかえって面倒になる…。
…ま、まぁ私の事を一番に思ってくれているのは事実なんだし、大丈夫だとは思うけれど…。
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