第一王子様が選んだのは、妹ではなく私でした!

睡蓮

文字の大きさ
4 / 6

第4話

しおりを挟む
「クレア、エバー様からのお誘いだから一応お前も連れていくが、一切何も話すんじゃないぞ?」
「お姉様が口を開いても、周りの迷惑になるだけですからね。お父様はお姉様のためを思ってお命じになられているのですよ?その優しさを素直に受け止めるべきだと思いますけど?」

エバー様の元を訪れるのがいよいよ明日に迫った日の事、二人は非常に険しい口調で私にそう言葉を発する。
どうあっても、エバー様の私への印象を悪いものにしたくて仕方がない様子…。

「エバー様に挨拶も返すんじゃないぞ?そんなものエバー様は心の中では望まれていないんだからな」
「お姉様はおまけで呼ばれただけなのですから、その点をきちんと理解しないといけませんよ?どうか私とエバー様の恋路を邪魔しないでくださいませ」

ミリアはもう完全に自分が主役であることを信じて疑っていない様子。
恋は盲目とはよく聞くけれど、ここまで盲目になる人に私は心当たりがない。

「分かりました。私は言われたとおりにいたします」
「それでいい。連れて行ってやるだけありがたいと思ってもらわないといけないのだからな」
「お父様の言う通りですね。そもそも私たちにお姉様を連れていくような義理はなにも…」
「あら、みんな早いのね。もう準備を終えたの?」

するとその時、それまで姿を消していたお母様が私たちの前に姿を現した。
…これまでなにをしていたのか、と質問しようとしそうになった二人だったけれど、そのお母様の格好を見てすぐにその内容を察した様子。

「お母様、その派手な衣装は一体なんですか…?」
「俺も見たことがない服だな…。いつの間に準備していたんだ?」

やや驚きの表情を浮かべる二人に対し、お母様は非常に得意げな表情を見せながらこう言葉を返した。

「だって、明日はエバー様と一緒にダンスができるかもしれないのでしょう?私の体に手をかけてくださるかもしれないのだから、少しくらいこのような衣装を着てエバー様に喜んでいただかないとね…♪」

それはつまり、自分もまたミリアに負けず劣らずエバー様との関係を深めたいという下心があることを明確に物語っていた。
…それがどれだけ痛々しい事かも、本人は全く理解していない様子…。

「ミリアばかり気合が入っているようだけれど、招待状には私の名前もきちんとあったのだからね?ならこうしてその気持ちにこたえるのが女性としての当たり前の心がけでしょう?」
「……」
「あら、なにか言いたげなことがありそうねクレア」

私は何も言っていないのに、勝手につっかかってくるお母様。

「わ、私は何も言って…」
「あなたの事はかわいそうだと思っているけれど、まぁ自業自得でしょう?だって今までさんざんミリアの事をいじめてきて、私たち家族に迷惑をかけ続けてきたんだもの。これでエバー様と仲良くなりたいと考える方が失礼な話でしょう?」

いじめ続けてきたのはそっちの方でしょうに、一体どういう神経をしているのか…。

「可愛さだって性格だって完全にミリアの方が上だから嫉妬したくなるのは分かるけれど、それもほどほどにしておかないとダメよ?これ以上余計な思いを抱き始めたりしたらそれこそ本当に終わりなんだからね?」

口調こそ優しいけれど、その内容は完全に私に対する嫌味のみ。
元からこういう性格だから、仕方はないのだろうけれど…。

「だめですよお母様、お姉様が私に嫉妬しないようにするなんて無理な話です。今までも私の方が散々周囲からかわいいかわいいと言われてきたのに、今度は私がエバー様と結ばれることになるのですよ?そんな現実を突きつけられて、何とも思う名という方が無理な話ではありませんか?♪」
「まぁ」
「なにより、私はお姉様から嫉妬していただいた方が気持ちがいいので、このままでも構いませんもの♪」
「さすがミリア、余裕だな。クレアにもこのくらいの度胸とオーラがあれば愛せたのになぁ…」

3人は完全に浮かれてしまっているのか、どこから来るのか全く分からない自信に支配されてしまっている様子。
…私は心の中に妙な思いを抱きつつ、なぜだか3人の様子を俯瞰で見ることができていた。

「(明日の食事会、なにか予想とは違うことが起こりそう…。それがなにかは全く分からないけれど、エバー様が心の中に思っていることは私たちの想像と全く違っていそうな気がする…)」

エバー様は自分の事を気に入っているに違いないと確信しているミリアと、同じような思いを抱いているお母様。
その一方で私の事はただのおまけだと言われているけれど、それなら果たして例の手紙にあんなことをわざわざ書くだろうか…?

「(…エバー様、明日はいったいどのような食事会になるのでしょう…)」

その思いを心の中に抱きながら、いよいよ私たちはその当日を迎えることになるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

縁の切れ目が金の切れ目です!

あんど もあ
ファンタジー
「みすぼらしいお前とは婚約破棄だ!」 「じゃあ、貸してたお金を返してくださいね」 質素倹約がモットーのアナベルは、浪費家の婚約者に婚約破棄されてしまう。だがそれは想定内で……。

病弱令嬢…?いいえ私は…

月樹《つき》
恋愛
 アイゼンハルト公爵家の長女クララは生まれた時からずっと病弱で、一日の大半をベッドの上で過ごして来た。対するクララの婚約者で第三皇子のペーターはとても元気な少年で…寝たきりのクララの元を訪ねることもなく、学園生活を満喫していた。そんなクララも15歳となり、何とかペーターと同じ学園に通えることになったのだが…そこで明るく元気な男爵令嬢ハイジと仲睦まじくするペーター皇子の姿を見て…ショックのあまり倒れてしまった…。 (ペーターにハイジって…某アルプスの少女やんか〜い!!) 謎の言葉を頭に思い浮かべながら…。 このお話は他サイトにも投稿しております。

平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました

Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。 伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。 理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。 これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。

婚約破棄は既に済んでいます

姫乃 ひな
恋愛
婚約者に婚約破棄を言われてしまいました。 私にはどうすることもできません。何故なら既に両家の当主で婚約破棄についての話し合いは済んでおりますから… ※説明不足の部分がありますが実際の会話のテンポ感を感じながら読んでいただけると嬉しいです。 ※初心者のため手探りで始めています。よろしくお願いします。

愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから

越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。 新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。 一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?

婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。

ムラサメ
恋愛
​「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」 ​婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。 泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。 ​「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」 ​汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。 「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。 ​一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。 自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。 ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。 ​「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」 ​圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

だってあの子は欲しがりさん

Mag_Mel
恋愛
エレナとマルティナは貴族の姉妹。幼い頃から妹のマルティナは、姉が持つものを何でも欲しがり、両親の後押しもあって、それらを次々と奪ってきた。 そしてついには、エレナの婚約者までもが妹の手に渡ってしまう。 親友のトゥーリは憤るが、エレナはただ微笑み「仕方がない」とすべてを受け入れるだけ。 その姿に耐えきれなくなったトゥーリは、マルティナに苦言を呈することを決意するが……。

処理中です...