第一王子様が選んだのは、妹ではなく私でした!

睡蓮

文字の大きさ
5 / 6

第5話

しおりを挟む
――王宮での会話――

そしていよいよ、運命の王宮食事会の当日を迎えた。
その会場の前に到着したミリアたちは、改めてクレアに対してくぎを刺し始める。

「いいかクレア、何度も言うが余計な事を言うんじゃないぞ?お前はただ静かに顔を伏せて誰とも目を合わせなければそれでいい」
「お姉様と顔を合わせてしまうことほど不快なことはありませんからね。当然のことです」

いつも通りな雰囲気を見せる彼らに対し、クレアはどこか落ち着いていた。
かけられたそれらの言葉に反論をすることもなく、嫌そうな態度を見せることもなく、そのまま静かに会場の中にへと足を踏み入れていった。

――――

クレアたちが会場に姿を現した直後、1人の人物が数名の部下を伴ってその元を訪れてきた。
他でもない、エバー第一王子本人である。

「これはこれは、お待ちしておりました!今日という日の訪れを僕はずっと楽しみにしていて…」
「私こそ、こうしてお誘いいただいたことを本当にうれしく思っております!エバー様、今日は忘れられない一日にいたしましょうね♪」

エバーが言葉をかけると同時に、ミリアは一歩前に出てその言葉に返事を始める。
彼が言葉をかける相手は、自分に違いないと確信を持っていたためであろう。

「え、えっと…。君は確かミリアだったね、来てくれたことをうれしく思って…」
「大丈夫ですよエバー様、わざわざ言っていただかなくとも、その思いははっきりと私のもとに届いております!私もエバー様のためにこうして準備をさせていただき…」
「あらあら、私にも挨拶をさせてよミリア。あんまりずっとしゃべってるからエバー様が困ってらっしゃるでしょう?」

そんなミリアの後ろから、やや嫌味たらしい口調でそう言葉をかける彼女の母。

「ミリアの母でございます。エバー様、私からも感謝の言葉を述べさせてください。こうしてこのような素晴らしい食事会に招待をいただきましたこと、本当にうれしく思っております」
「は、はぁ…」

いきなり現れたかと思えば、次々と自分の会話に割って入ってくる二人。
エバーはその心の中で、こう言葉を漏らしていた。

「(僕ははやくクレアと話がしたいのだが…。どうしてこうも邪魔ばかりしてくるのか…)」

明らかに迷惑そうな表情を浮かべるエバーであったものの、その様子に二人は気づかないまま。
エバーはこのままではらちが明かないと考えたのか、そのまま直接クレアのもとまで向き合い、こう言葉をかけた。

「クレア、君と話ができる日をずっとずっと待っていた。今日は楽しい一日にすることを約束するよ」
「……」

しかし、クレアは事前に口を開くなと厳命されているため、エバーからの言葉に返事ができないでいる。
…するとエバーは、その光景をこう認識した。

「(クレア、完全に緊張してしまっているみたいだ…。まぁ、ついの間までの僕も全く同じ状態だったし、気持ちはすごくわかるな…)」

黙り込んでしまうクレアの姿を見てそう分析したエバーは、これをポジティブにとらえることとした。

「これから一緒に食事をするというのに、そんなに緊張してしまっていては楽しむものも楽しめないでしょう!僕がエスコートいたしますから、少し会場を一緒に回ってみませんか?なんでしたら王宮の中もご案内いたしますよ!」
「「っ!?!?!?!?!?」」

逆転の発想ともいえるエバーの言葉だったものの、その内容に反射的に嫌悪感を抱く者が二人…。

「ちょっと待ってくださいエバー様!!それなら私の方がふさわしいことと思います!どうしてお姉様にそこまでされるのですか!!」
「そうですよ!!時間の無駄でしかありません!!」

口をとがらせてそう抗議を始める二人であったものの、エバーはここでようやく二人に対して答え合わせを始める。

「…なるほど、君たち二人はクレアの事をそう認識しているわけか。どうりで話が少しかみ合わないなと思っていた」
「かみ合わない、とは…?」
「ではあえてはっきり言おうか。ミリア、僕が興味があるのはクレアだけなんだよ」
「っ!?!?!?」
「おそらく、君は僕が君の事を想っているものだと勘違いをしていたんだろう?だからさっきもあんな恥ずかしい言葉をぬけぬけと言ってのけることができたのだろう?」
「は、恥ずかしいって…!?」
「ミリア、僕が君とこれまで話をしていたのは、別に君と話がしたかったからではない。君との会話の中では、必然的にクレアの話が多く出てくるだろう?だから僕は君との会話を楽しんでいたし、興味を持っていたんだ」
「っ!?!?!?」

これまでの答え合わせが始まり、ミリアは一気にその立場を悪くしていく。

「僕はずっとずっとクレアの事が気になっていた。けれど、なかなか勇気がでずに話しかけることができないでした。だからこそ今日、君たち家族を丸ごと招待して腹を決めることと覚悟したんだ。そうでもしなければ、勇気が出ないと思ってね」
「そ、そんな…まさか…」
「君に関して良い話は何も聞かない。それは、クレアの表情がずっと暗いことと無関係ではないと思う。詳しいことはこれからクレアに聞かせてもらうことにするけれど、その話の内容次第によっては君たちとの関係は明るいものではないということだけは分かっておいてもらおうか」
「っ!?!?」

最初こそうきうきとした様子で会場に臨んだ3人。
しかし今のその雰囲気は、もう完全に最初とは全く雰囲気の違うものであった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

縁の切れ目が金の切れ目です!

あんど もあ
ファンタジー
「みすぼらしいお前とは婚約破棄だ!」 「じゃあ、貸してたお金を返してくださいね」 質素倹約がモットーのアナベルは、浪費家の婚約者に婚約破棄されてしまう。だがそれは想定内で……。

病弱令嬢…?いいえ私は…

月樹《つき》
恋愛
 アイゼンハルト公爵家の長女クララは生まれた時からずっと病弱で、一日の大半をベッドの上で過ごして来た。対するクララの婚約者で第三皇子のペーターはとても元気な少年で…寝たきりのクララの元を訪ねることもなく、学園生活を満喫していた。そんなクララも15歳となり、何とかペーターと同じ学園に通えることになったのだが…そこで明るく元気な男爵令嬢ハイジと仲睦まじくするペーター皇子の姿を見て…ショックのあまり倒れてしまった…。 (ペーターにハイジって…某アルプスの少女やんか〜い!!) 謎の言葉を頭に思い浮かべながら…。 このお話は他サイトにも投稿しております。

平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました

Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。 伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。 理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。 これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。

婚約破棄は既に済んでいます

姫乃 ひな
恋愛
婚約者に婚約破棄を言われてしまいました。 私にはどうすることもできません。何故なら既に両家の当主で婚約破棄についての話し合いは済んでおりますから… ※説明不足の部分がありますが実際の会話のテンポ感を感じながら読んでいただけると嬉しいです。 ※初心者のため手探りで始めています。よろしくお願いします。

愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから

越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。 新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。 一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?

婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。

ムラサメ
恋愛
​「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」 ​婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。 泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。 ​「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」 ​汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。 「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。 ​一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。 自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。 ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。 ​「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」 ​圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

だってあの子は欲しがりさん

Mag_Mel
恋愛
エレナとマルティナは貴族の姉妹。幼い頃から妹のマルティナは、姉が持つものを何でも欲しがり、両親の後押しもあって、それらを次々と奪ってきた。 そしてついには、エレナの婚約者までもが妹の手に渡ってしまう。 親友のトゥーリは憤るが、エレナはただ微笑み「仕方がない」とすべてを受け入れるだけ。 その姿に耐えきれなくなったトゥーリは、マルティナに苦言を呈することを決意するが……。

処理中です...