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第一章
幻想の箱庭に咲く華 《五》
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武器の説明って難しい。(>_<)
今回出てくる大刀(だいとう)は、日本の薙刀(なぎなた)に近い感じです。三国志がお好きな方は、関羽(かんう)が持っていた青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)をそのままイメージしていただければ、と。
そして、またもや “こう鎌” の “こう” の漢字がスマホでは出なかった。(ToT)
********
剣を握り締め、その場所がわかっているかのように高く飛び上がった沙麼蘿の眼前に、一筋の光が屋根を突き破り飛び込んで来た。
そこにいたのは、大柄な男。雪のように白い髪に、黒みがかった赤色牛の血の双眸。手に持つ大刀が沙麼蘿の剣と交わり、そこから氣が火花のように散った。
その大柄な男が、近くの屋根の上から李緑松と黄丁香の姿を見つけた時、すぐ近くに大神がいた。
「ほぉ」
と、面白いものを見つけたように呟いた男は、二人めがけ一気にその屋根を下り目の前の屋根に飛び込んだ。
そこで最初に見たもの、それは季緑松でも黄丁香でも大神でもなく、一人の女。見紛うことなき灰簾石色のその髪と双眸は、道神のもの。
「道神……だと」
いや違うと、男は思う。自分を見て、ニヤリと口角を上げた女が身に纏う物は仏神の物。あの髪と双眸は偽りか、そんなことがありえるのかと。だが次の瞬間、その思いも消えた。
「……!」
己の大刀と女の剣が氣の火花を散らしてぶつかり合ったと同時に、女の姿が変わった。身を包む衣はそのままであるにも拘らず、その髪は煌めく白金に、そして双眸は灰簾石色から妖艶な美しい赤色鳩の血に変わったのだ。
白金の髪に鳩の血の双眸は、かつて修羅界の王でありながら仏教に帰依し、我らを裏切り天上界に登った阿修羅一族のみが持つ色ではないか。
ぶつかり合った剣と大刀が離れ、二人はそれぞれに地面に着地する。剣と大刀が離れた瞬間、沙麼蘿の髪と双眸も元の灰簾石色に戻った。振り返った沙麼蘿を見て
「この、裏切り者の一族がぁー!!」
と、男は大刀を沙麼蘿に向け振り払う。美しい笑みを見せながら剣でそれを受け止める沙麼蘿は、まるでこの戦いを楽しんでいるかのようだった。
「鬼神…、だったのかい」
丁香は思わず呟く。確かに、おかしいとは思っていた。神仏混合、実際にはそんなものがあるはずはないのだ。
沙麼蘿は鬼神だ、嫌、元鬼神だ。仏教に帰依し、仏界に登った阿修羅一族ならば今は仏神。なのに何故、仏神でありながら沙麼蘿は道神の姿をとるのか。
今も、目の前で剣と大刀がぶつかり合い離れるたびに、その姿は鬼神から道神に戻っている。
「何故、邪神に仕える」
「仕える、だと。仕えたつもりはねぇな。考えが同じだった、ただそれだけのことだ」
そう言う男の睛眸を、沙麼蘿は見た。
「気に入らねぇな」
沙麼蘿と睛眸を合わせても、その命を奪われることのない男。それは、鬼神の中でもそれなりの力を持っていると言うことだ。そんな鬼神達が邪神と手を組み、天上の桜を狙う。
「神仏に、取って代わるつもりか」
「いいんじゃねぇか。俺らが天上界に上がり、神仏が下界に落ちる。こんなおもしれぇ話があると思うか」
男は、ハハハと声を上げて笑った。だが、笑い事ではなかったのは、観世音菩薩の仏像の瓔珞を通してこの光景を見つめていた、仏界の仏神達だ。
天上界の広間にて下界の話を聞いていた仏神達は、ざわざわとざわめき
「お聞きになられましたか! 修羅界の者達は天上の桜を奪い取り、この天界に攻め込んで来る気です」
「我々を下界に落とし、この世界を思いのまま操る気なのです!」
と、次々に声を上げた。その様子に、如来達は互いの顔を見合せ、静かに頷き合う。
「観世音菩薩、道界へ行ってきて下さい。」
「修羅界は本気のようだ」
「天上の桜は、守らねばなりません」
「沙麼蘿に言うこと聞かせることができるのは、皇だけですからね」
釈迦如来、大日如来、阿弥陀如来、薬師如来の言葉に、観世音菩薩は “はい” と呟くと踵を返し、道界へと向かって行った。
男の持つ大刀は、長柄武器の代表的なもので “大刀は百兵之師” と称され、長柄の先に大きな刃が付いている。
大刀には多くの種類があり “青龍偃月刀” “青龍刀” “春秋刀” “関刀” 等があるが、男の大刀は青龍偃月刀。三日月形の刀部と柄の付け根に龍の頭をつけ、龍が刀をくわえているように見え、刀の部分にも龍の彫り物が入れられている。
大刀の刀刃は長さ三尺六寸程と大きく、刃は湾曲し最大幅が一尺一寸程と大きな刃で、刀背の部分にこう鎌(鎌状の角)があり、刀穂が付けらている。
全長は八尺二寸程で、刃と逆の方に把尖(槍先のようなもの)が付いている。
大刀は重量があり、自在に扱うにはかなりの実力が必要だ。大刀を扱うことを表現した “大刀看定手” と言う言葉がある。定手とは “護手盤”(鍔)の下側を持つ手のことだが、この部分をうまく使うことで大刀を巧みに操ることができるのだ。
目の前の男は、とりわけその手法に優れているように沙麼蘿には見えた。大刀の腕には、相当な自信があるようだ。
「さすがに、此れだけの氣が飛びゃ分かるわな。俺らだけの手柄には、できないらしい」
男の言葉が何を意味するのか、それは沙麼蘿にも分かった。相手の氣が強ければ強いほど、その氣を目印に力のある者が集まる。
今も、恐らくは玄奘が相手にしている女とこの男の仲間だけだっただろう氣に加え、二方向から数人がこの道観に現れた。
「玄奘の首を取ろうとする者達が揃った、と言うところか」
沙麼蘿の言葉に丁香と緑松は双眸を見開き、目の前で対峙する二人を見つめた。
********
見紛う→見まちがえる
妖艶→あでやかで美しいこと
踵→かかと
刀穂→タッセル。多くの糸をたばね、その先端を散らして垂らしたもの。房
今回出てくる大刀(だいとう)は、日本の薙刀(なぎなた)に近い感じです。三国志がお好きな方は、関羽(かんう)が持っていた青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)をそのままイメージしていただければ、と。
そして、またもや “こう鎌” の “こう” の漢字がスマホでは出なかった。(ToT)
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剣を握り締め、その場所がわかっているかのように高く飛び上がった沙麼蘿の眼前に、一筋の光が屋根を突き破り飛び込んで来た。
そこにいたのは、大柄な男。雪のように白い髪に、黒みがかった赤色牛の血の双眸。手に持つ大刀が沙麼蘿の剣と交わり、そこから氣が火花のように散った。
その大柄な男が、近くの屋根の上から李緑松と黄丁香の姿を見つけた時、すぐ近くに大神がいた。
「ほぉ」
と、面白いものを見つけたように呟いた男は、二人めがけ一気にその屋根を下り目の前の屋根に飛び込んだ。
そこで最初に見たもの、それは季緑松でも黄丁香でも大神でもなく、一人の女。見紛うことなき灰簾石色のその髪と双眸は、道神のもの。
「道神……だと」
いや違うと、男は思う。自分を見て、ニヤリと口角を上げた女が身に纏う物は仏神の物。あの髪と双眸は偽りか、そんなことがありえるのかと。だが次の瞬間、その思いも消えた。
「……!」
己の大刀と女の剣が氣の火花を散らしてぶつかり合ったと同時に、女の姿が変わった。身を包む衣はそのままであるにも拘らず、その髪は煌めく白金に、そして双眸は灰簾石色から妖艶な美しい赤色鳩の血に変わったのだ。
白金の髪に鳩の血の双眸は、かつて修羅界の王でありながら仏教に帰依し、我らを裏切り天上界に登った阿修羅一族のみが持つ色ではないか。
ぶつかり合った剣と大刀が離れ、二人はそれぞれに地面に着地する。剣と大刀が離れた瞬間、沙麼蘿の髪と双眸も元の灰簾石色に戻った。振り返った沙麼蘿を見て
「この、裏切り者の一族がぁー!!」
と、男は大刀を沙麼蘿に向け振り払う。美しい笑みを見せながら剣でそれを受け止める沙麼蘿は、まるでこの戦いを楽しんでいるかのようだった。
「鬼神…、だったのかい」
丁香は思わず呟く。確かに、おかしいとは思っていた。神仏混合、実際にはそんなものがあるはずはないのだ。
沙麼蘿は鬼神だ、嫌、元鬼神だ。仏教に帰依し、仏界に登った阿修羅一族ならば今は仏神。なのに何故、仏神でありながら沙麼蘿は道神の姿をとるのか。
今も、目の前で剣と大刀がぶつかり合い離れるたびに、その姿は鬼神から道神に戻っている。
「何故、邪神に仕える」
「仕える、だと。仕えたつもりはねぇな。考えが同じだった、ただそれだけのことだ」
そう言う男の睛眸を、沙麼蘿は見た。
「気に入らねぇな」
沙麼蘿と睛眸を合わせても、その命を奪われることのない男。それは、鬼神の中でもそれなりの力を持っていると言うことだ。そんな鬼神達が邪神と手を組み、天上の桜を狙う。
「神仏に、取って代わるつもりか」
「いいんじゃねぇか。俺らが天上界に上がり、神仏が下界に落ちる。こんなおもしれぇ話があると思うか」
男は、ハハハと声を上げて笑った。だが、笑い事ではなかったのは、観世音菩薩の仏像の瓔珞を通してこの光景を見つめていた、仏界の仏神達だ。
天上界の広間にて下界の話を聞いていた仏神達は、ざわざわとざわめき
「お聞きになられましたか! 修羅界の者達は天上の桜を奪い取り、この天界に攻め込んで来る気です」
「我々を下界に落とし、この世界を思いのまま操る気なのです!」
と、次々に声を上げた。その様子に、如来達は互いの顔を見合せ、静かに頷き合う。
「観世音菩薩、道界へ行ってきて下さい。」
「修羅界は本気のようだ」
「天上の桜は、守らねばなりません」
「沙麼蘿に言うこと聞かせることができるのは、皇だけですからね」
釈迦如来、大日如来、阿弥陀如来、薬師如来の言葉に、観世音菩薩は “はい” と呟くと踵を返し、道界へと向かって行った。
男の持つ大刀は、長柄武器の代表的なもので “大刀は百兵之師” と称され、長柄の先に大きな刃が付いている。
大刀には多くの種類があり “青龍偃月刀” “青龍刀” “春秋刀” “関刀” 等があるが、男の大刀は青龍偃月刀。三日月形の刀部と柄の付け根に龍の頭をつけ、龍が刀をくわえているように見え、刀の部分にも龍の彫り物が入れられている。
大刀の刀刃は長さ三尺六寸程と大きく、刃は湾曲し最大幅が一尺一寸程と大きな刃で、刀背の部分にこう鎌(鎌状の角)があり、刀穂が付けらている。
全長は八尺二寸程で、刃と逆の方に把尖(槍先のようなもの)が付いている。
大刀は重量があり、自在に扱うにはかなりの実力が必要だ。大刀を扱うことを表現した “大刀看定手” と言う言葉がある。定手とは “護手盤”(鍔)の下側を持つ手のことだが、この部分をうまく使うことで大刀を巧みに操ることができるのだ。
目の前の男は、とりわけその手法に優れているように沙麼蘿には見えた。大刀の腕には、相当な自信があるようだ。
「さすがに、此れだけの氣が飛びゃ分かるわな。俺らだけの手柄には、できないらしい」
男の言葉が何を意味するのか、それは沙麼蘿にも分かった。相手の氣が強ければ強いほど、その氣を目印に力のある者が集まる。
今も、恐らくは玄奘が相手にしている女とこの男の仲間だけだっただろう氣に加え、二方向から数人がこの道観に現れた。
「玄奘の首を取ろうとする者達が揃った、と言うところか」
沙麼蘿の言葉に丁香と緑松は双眸を見開き、目の前で対峙する二人を見つめた。
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見紛う→見まちがえる
妖艶→あでやかで美しいこと
踵→かかと
刀穂→タッセル。多くの糸をたばね、その先端を散らして垂らしたもの。房
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