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第一章
天の原と戦の原に舞う紅の花 《六》
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遅ればせながら
明けましておめでとうございますm(__)m
今年の初投稿になりますが、“新年最初の話が暗い話でいいのかな(´д`|||)” と言う感じでして、花の話なんかも入れてみたのですが “新年そうそう暗い話はちょっと……” と思われる方がいらっしゃいましたら、二・三話まとめて月末か二月に入ってから読んでいただけたら、と思います。m(__)m
本年もよろしくお願いいたします! \(^o^)/
********
花薔仙女の葬儀は、皇と皇に仕える者達とで、ひっそりと執り行われた。
天界は完全なる縦社会、本来天人ではない花薔が天界で埋葬されることはない。天界に仕える仙人達の墓は、須弥山の中にあるのだ。
だが皇は、花薔の墓を天都の端にある、両親の墓の近くに作った。蒼宮からさらに奥に進んだ所にある、誰も訪れることがない大地。
かって聖宮が、斑の血を引くが故に天上界に連れてこられ、にも拘わらず天人達に顧みられることなく亡くなっていった人々の埋葬場所に困っていた者達に、この場所で墓を作ることを許した。
何もない、ただただ緑の野原だけが続く場所。そこに、天都の片隅で日に当たることもなく天人達に顧みられない彼等の家族が眠る墓がある。ここからさらに奥には、聖宮と夫の墓があった。
花薔の墓は、そんな忘れさられた者達の墓と聖宮夫婦の墓の中間地点に作られた。
緑一色しかなったこの天都の端の一角が花咲き乱れる大地に変わったのは、あの時から。
「妾季」
「花梨、今帰りか」
「ええ」
生前、花薔は皇の両親の墓前に花を欠かさなかった。花薔亡き後、この役目と共に蒼宮の中がうまくまわるように取り仕切るのは花梨の役目となった。
花薔は、いつかこの日がくることをよく分かっていればこそ、花梨にすべてを教えてきたのだ。
「今日も、綺麗に咲いているわね」
「そうだな」
皇の両親の墓標は緑の野原の奥にあり、そのまわりは緑一色だ。だが、そこはなだらかな丘の上にあり、少し下のこの場所がよく見えるはず。
此処は本来何もない場所だったが、ある日から花が咲き始めた。此処に見える満開の花畑は、皇の両親の墓前からもよく見えるだろう。
あの日、母親が亡くなり埋葬された日、まだ幼かった花梨はこの野原の片隅で泣いていたのだ。花梨には、母の墓前に供える花一つすら手に入れることができなかった。“どんなお花でもいい、せめて一つでも母さんに” そんな思いで探し回ったのに一つも手にすることができず、花梨は悲しくて悲しくて泣くことしかできなかった。
でもその時、誰かが泣いていた花梨の前に一輪の花を差し出してくれたのだ。花梨は、その美しい穢れのない真っ白な花を見つめて面をあげる。見たことない猩々緋色の衣は、きっと自分達など近寄ることも出来ないほど高貴な方だと、幼い花梨にも分かった。
花梨はその顔を見ることは許されないだろう思い、差し出された花を ”ありがとうございます。ありがとうございます” と額を地面に擦り付け、何度も何度もお礼を言った。
次に面を上げた時には誰もいなかったけれど、残された真っ白な花とあの猩々緋色は花梨に強い印象を与えていた。つい先日、花薔仙女の臥室で垣間見た猩々緋色の衣は、まさにあの時見た衣と同じ。
初めて皇の衣を見た時、花梨は “お花をくれた高貴な方” かと思った。たが皇の纏う猩々緋色の衣は単で、あの時みた衣とは違う気がする。輝く飾りもない。花梨が皇にその話をすると
「それは、私の義妹だろう。沙麼蘿はとんでもない物を、よく持っているからな」
そう言って笑った。沙麼蘿から花梨がもらい受けた花、それはとても不思議な花だった。花梨が母の墓前の前に花を植えた時、それは確かに真っ白な花だったのに、六日後に行った時は黄色になっていたのだ。そして更に五日後には赤色になっていて、その日から花梨は毎日母親のお墓に花を見に向かった。
花は数日で紫色になり、五日後には緑色に、そしてその五日後にはひらひらと散り、沢山の種が大地に落ちていた。それから花梨は、その花の種をお墓の周りに蒔いていくことになる。
白い蕾から花を咲かせるそれは、白色→黄色→赤色→紫色→緑色と、五日ごとに色を変え長い間咲き続ける。そうする間に、何時の間にかお墓の周りは花畑になっていたのだ。
「此処に眠っている皆が寂しくないのは、沙麼蘿公女のおかげよ」
「花梨は、公女にお礼申し上げることが夢だもんな」
「ええ、そうよ」
先日は思いもよらずお見かけしだけれど、お礼を申し上げることは出来なかった。いつか蒼宮に公女を御迎えするためにも、自分がしっかり働かなくてはと思う花梨だった。
妾季や花梨が皇と出会ったのは、まだ日の当たらぬ天都の外れにいた頃。そこは、斑と言うだけで “天上界の脅威になるかも知れない。ならば天界に上げて敵にならないようにしてしまえ” と言うだけで連れてこられ、誰にも顧みられることもなく放って置かれた場所。
天都の中のように立派な建物もなく、店もない。斑の血を引く、それだけのことで仕事もなく、住む家も食べ物もない。天上界に上がれば自分達も天人だと言うのに、そこはまるで下界の貧民街のようだった。
食べ物も仕事もなく、血が穢れていると言われ捨て置かれ、病にかかればその命を繋ぐことも出来ない。それは生活環境のせいであったが、それを見た天人達は “斑はその血のせいで短命だ” “斑は近くにいる者の命を奪うのだ” と言い立てた。
そんな過酷な生活の中でも細々と暮らす斑の血を引く者達が住む場所に皇がやって来たのは、一人の少年に連れられてだった。
********
天人→天上人
天都→天上界の都
須弥山→仙人の住む山
斑→さまざまな血が入り交じった者
にも拘わらず→その事柄に反する結果になることを表す。(な)のに
顧みる→過ぎ去ったことを考える
墓標→埋葬箇所に建てる目印の石や木の柱
墓前→墓所のまえ
猩々緋色→緋(あけ)のなかでも特に強い黄みがかった朱色
垣間見る→ちらっと見る
纏う→身につける
単→裏地のつかないきもの
次回投稿は20日か21日が目標です。
明けましておめでとうございますm(__)m
今年の初投稿になりますが、“新年最初の話が暗い話でいいのかな(´д`|||)” と言う感じでして、花の話なんかも入れてみたのですが “新年そうそう暗い話はちょっと……” と思われる方がいらっしゃいましたら、二・三話まとめて月末か二月に入ってから読んでいただけたら、と思います。m(__)m
本年もよろしくお願いいたします! \(^o^)/
********
花薔仙女の葬儀は、皇と皇に仕える者達とで、ひっそりと執り行われた。
天界は完全なる縦社会、本来天人ではない花薔が天界で埋葬されることはない。天界に仕える仙人達の墓は、須弥山の中にあるのだ。
だが皇は、花薔の墓を天都の端にある、両親の墓の近くに作った。蒼宮からさらに奥に進んだ所にある、誰も訪れることがない大地。
かって聖宮が、斑の血を引くが故に天上界に連れてこられ、にも拘わらず天人達に顧みられることなく亡くなっていった人々の埋葬場所に困っていた者達に、この場所で墓を作ることを許した。
何もない、ただただ緑の野原だけが続く場所。そこに、天都の片隅で日に当たることもなく天人達に顧みられない彼等の家族が眠る墓がある。ここからさらに奥には、聖宮と夫の墓があった。
花薔の墓は、そんな忘れさられた者達の墓と聖宮夫婦の墓の中間地点に作られた。
緑一色しかなったこの天都の端の一角が花咲き乱れる大地に変わったのは、あの時から。
「妾季」
「花梨、今帰りか」
「ええ」
生前、花薔は皇の両親の墓前に花を欠かさなかった。花薔亡き後、この役目と共に蒼宮の中がうまくまわるように取り仕切るのは花梨の役目となった。
花薔は、いつかこの日がくることをよく分かっていればこそ、花梨にすべてを教えてきたのだ。
「今日も、綺麗に咲いているわね」
「そうだな」
皇の両親の墓標は緑の野原の奥にあり、そのまわりは緑一色だ。だが、そこはなだらかな丘の上にあり、少し下のこの場所がよく見えるはず。
此処は本来何もない場所だったが、ある日から花が咲き始めた。此処に見える満開の花畑は、皇の両親の墓前からもよく見えるだろう。
あの日、母親が亡くなり埋葬された日、まだ幼かった花梨はこの野原の片隅で泣いていたのだ。花梨には、母の墓前に供える花一つすら手に入れることができなかった。“どんなお花でもいい、せめて一つでも母さんに” そんな思いで探し回ったのに一つも手にすることができず、花梨は悲しくて悲しくて泣くことしかできなかった。
でもその時、誰かが泣いていた花梨の前に一輪の花を差し出してくれたのだ。花梨は、その美しい穢れのない真っ白な花を見つめて面をあげる。見たことない猩々緋色の衣は、きっと自分達など近寄ることも出来ないほど高貴な方だと、幼い花梨にも分かった。
花梨はその顔を見ることは許されないだろう思い、差し出された花を ”ありがとうございます。ありがとうございます” と額を地面に擦り付け、何度も何度もお礼を言った。
次に面を上げた時には誰もいなかったけれど、残された真っ白な花とあの猩々緋色は花梨に強い印象を与えていた。つい先日、花薔仙女の臥室で垣間見た猩々緋色の衣は、まさにあの時見た衣と同じ。
初めて皇の衣を見た時、花梨は “お花をくれた高貴な方” かと思った。たが皇の纏う猩々緋色の衣は単で、あの時みた衣とは違う気がする。輝く飾りもない。花梨が皇にその話をすると
「それは、私の義妹だろう。沙麼蘿はとんでもない物を、よく持っているからな」
そう言って笑った。沙麼蘿から花梨がもらい受けた花、それはとても不思議な花だった。花梨が母の墓前の前に花を植えた時、それは確かに真っ白な花だったのに、六日後に行った時は黄色になっていたのだ。そして更に五日後には赤色になっていて、その日から花梨は毎日母親のお墓に花を見に向かった。
花は数日で紫色になり、五日後には緑色に、そしてその五日後にはひらひらと散り、沢山の種が大地に落ちていた。それから花梨は、その花の種をお墓の周りに蒔いていくことになる。
白い蕾から花を咲かせるそれは、白色→黄色→赤色→紫色→緑色と、五日ごとに色を変え長い間咲き続ける。そうする間に、何時の間にかお墓の周りは花畑になっていたのだ。
「此処に眠っている皆が寂しくないのは、沙麼蘿公女のおかげよ」
「花梨は、公女にお礼申し上げることが夢だもんな」
「ええ、そうよ」
先日は思いもよらずお見かけしだけれど、お礼を申し上げることは出来なかった。いつか蒼宮に公女を御迎えするためにも、自分がしっかり働かなくてはと思う花梨だった。
妾季や花梨が皇と出会ったのは、まだ日の当たらぬ天都の外れにいた頃。そこは、斑と言うだけで “天上界の脅威になるかも知れない。ならば天界に上げて敵にならないようにしてしまえ” と言うだけで連れてこられ、誰にも顧みられることもなく放って置かれた場所。
天都の中のように立派な建物もなく、店もない。斑の血を引く、それだけのことで仕事もなく、住む家も食べ物もない。天上界に上がれば自分達も天人だと言うのに、そこはまるで下界の貧民街のようだった。
食べ物も仕事もなく、血が穢れていると言われ捨て置かれ、病にかかればその命を繋ぐことも出来ない。それは生活環境のせいであったが、それを見た天人達は “斑はその血のせいで短命だ” “斑は近くにいる者の命を奪うのだ” と言い立てた。
そんな過酷な生活の中でも細々と暮らす斑の血を引く者達が住む場所に皇がやって来たのは、一人の少年に連れられてだった。
********
天人→天上人
天都→天上界の都
須弥山→仙人の住む山
斑→さまざまな血が入り交じった者
にも拘わらず→その事柄に反する結果になることを表す。(な)のに
顧みる→過ぎ去ったことを考える
墓標→埋葬箇所に建てる目印の石や木の柱
墓前→墓所のまえ
猩々緋色→緋(あけ)のなかでも特に強い黄みがかった朱色
垣間見る→ちらっと見る
纏う→身につける
単→裏地のつかないきもの
次回投稿は20日か21日が目標です。
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