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第二章
徒の催花雨《一》
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徒(あだ)→一時的ではかない。かりそめ
催花雨(さいかう)→春、早く咲けと花をせきたてるように降る雨
※長いお休みをいただいておりましたが、今日から再開いたします。ぼちぼち投稿ですが、本年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m
********
「平和だよなぁ」
「たまにはそんな日もないと身体が持ちませんからね」
「ほんとほんと」
嘗て千手観音がこの世界を護るために封印した魔神が蘇り、この地を再び焦土と化そうとした。それを玄奘一行と皇率いる蒼宮軍が力を合わせて食い止め、今一度千手観音の降臨を持って封印し、世界は何時も通りの静けさを取り戻しているようにも見える。
魔神によって崩れ果てた地には神や仏の降臨があり、なんとか人が住める土地にまで回復はしているらしい。この所は邪神にも動きが見られず、悟浄や八戒や悟空が宿屋でのんびりと呟いたのだが…。
「それ、いっちゃダメなやつ」
「そう、それいうとだいたいじけんがおきるってじいちゃんがいってた」
金角と銀角は悟浄達の呟きを聞いて、まるで“不吉”と言わんばかりに横目で見ながら言う。
「ぴゅ、ぴゅー」
その話を聞いた玉龍もまた、金角と銀角に同意するように “そんなこと言うと、だいたい平和な時間は終わるよねー” と言った時だった、宿屋の一室に眩いばかりの光が現れて、中から一人の男が姿を現す。
「お助けを…! 公女様、どうか皇様をお助け下さい!!」
「妾季」
光の中から現れたのは、蒼宮軍に属している皇の部下である妾季。その姿は所々汚れ、顔や腕からは血が流れ出ている。沙麼蘿は直ぐ様妾季に近づくと、“どうした” と聞いた。妾季は頭を垂れたまま
「蒼宮軍、天界軍共に邪神達と交戦中ですが、押されております。このままでは、全滅の危機に!」
「蒼宮軍と天界軍だと。まさか、哪吒もいるのか」
「はい。我ら蒼宮軍は、哪吒太子からの援軍要請を受け、この下界に参りました」
「哪吒が援軍を頼まなければならない程の相手だと」
「…はい」
と、話をする。二人の話を聞いていた悟浄は
「冗談だろ。あの闘神とも言われる哪吒太子が、敵に押されているだと」
と呟く。哪吒は斑の血を引いており、強さと言う点に置いては天上界でも上位に位置する。だが同時に哪吒は、嘗て沙麼蘿がその命を落とした魔との闘いで片腕を無くしており、相手によっては窮地に立たされることもあるかも知れない。
だからこそ援軍を要請し皇が蒼宮軍を率いて駆けつけることになったのだろうが、その相手が哪吒と天界軍、皇と蒼宮軍の二つの軍を持ってしても、それを凌ぐだけの力があるというのか。
妾季の話はこうだった。哪吒は玄奘三蔵のように、天上の桜の護り手である白黄桜の鍵を持つ幼子の守護者になっているのだが、その幼子が邪神の襲撃を受け天界軍を率いて下界に赴いた。だが程なくして “至急援軍を乞う” と連絡が入り、皇が蒼宮軍を率いて下界に降りたのだが、その場は既に天界軍が劣勢に立っており、それは蒼宮軍の力を持ってしても変わらなかったと。
「数が、多いのです。邪神や鬼神や斑の数が! しかも、指揮を取っていると見られる邪神は人の倍はあろうかと言う大きさで、傷ついた哪吒太子や天界軍を庇いながらの闘いを強いられ、皇様も怪我を。我ら蒼宮軍も陣形が崩れ、公女様のお力にお縋りするしか…! どうか、皇様をお助け下さい!!」
妾季は頭を地面に擦り付けるようにして懇願する。天上の桜の鍵は五つあり、その内の四つには場所を指し示す其々の方角にあると言う桜の名前がついており、鍵とその護り手を桜の名前で呼ぶことがある。東の方角には水色の花が咲く龍水桜、西の方角には白色と黄色の花が咲く白黄桜、南の方角には桃色に中央が朱色の花が咲く朱王桜、北の方角には白に黒い縁取りの花が咲く黒仙桜と。そして天上の桜はその中央にあり、五つ目の鍵により姿を現すと言われていた。
玄奘三蔵は東の方角、龍水桜の護り手と言われており、既に南の方角の朱王桜は邪神達の手に渡っている。この上、白黄桜の護り手が持つ鍵まで奪われる訳には行かない。まして、それが皇を傷つけた相手だと言うのなら、許せるはずがないに決まっている。
沙麼蘿は、妾季の腕を掴むと琉格泉を見た。琉格泉は直ぐに沙麼蘿の足元まで来ると、その場所が光りだす。その時には既に、妾季の身体にあった傷は沙麼蘿の力によりなくなっていた。だが
「待て」
と声をかけたのは、玄奘だった。
「確かその子供は小さな村にいたはずだ。おそらく村全体が攻撃を受けている、違うか」
玄奘の言葉に、妾季は “その通りだ” とだけ答える。その答えに玄奘は全員を見渡し、“お前達、行くぞ” と言ったのだが、これには妾季が反対した。
「この上、龍水桜の護り手まで危険にさらす訳には行かない!」
「天界軍と蒼宮軍で押されているのなら、手数は多い方がいいだろう」
「それに元々、我々はその子供の所へ向かっている途中」
「今行くのも後で行くのも、変わりはないと思うぜ」
「面白そうだし、人助けだ!」
玄奘達も、引くわけには行かない。何故なら、白黄桜の鍵を奪われた後でその幼子の元に辿り着いても、何の意味もないからだ。玄奘、八戒、悟浄、悟空の言葉を聞いていた金角と銀角も
「おれたちつよい」
「おれたちやくにたつ」
と呟き、それを見ていた玉龍は “ぴゅぴゅ、ぴゅ~” と鳴いて “ある意味においてこの戦力は、天界軍を凌ぐかもね~” と、間の抜けたような声で言った。
「行くぞ、宝具の光の中に入れ。妾季」
「大丈夫です公女様、これくらいの人数なら運べます」
「いいかお前達、戦闘中のど真ん中に出るぞ」
沙麼蘿は全員に戦闘態勢に入るように告げる。何故なら この光を抜ければそこには地獄のような光景が待っているはずだからだ。
********
焦土→焼けて黒くなった土。家屋、草木などが焼けて跡形もない土地
眩い→光が明るすぎて、まともに見られない。まぶしい
窮地→追い詰められて逃げ場のない苦しい状態や立ち場
凌ぐ→能力、程度などが他のものを追い抜いて上に出る。他よりまさる
劣勢→勢力が劣っていること。形勢が不利であること。また、そのさま
陣形→戦闘の隊形。戦陣の形
懇願→ねんごろに願うこと。ひたすらお願いすること
次回投稿は3月3日か4日が目標です。
催花雨(さいかう)→春、早く咲けと花をせきたてるように降る雨
※長いお休みをいただいておりましたが、今日から再開いたします。ぼちぼち投稿ですが、本年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m
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「平和だよなぁ」
「たまにはそんな日もないと身体が持ちませんからね」
「ほんとほんと」
嘗て千手観音がこの世界を護るために封印した魔神が蘇り、この地を再び焦土と化そうとした。それを玄奘一行と皇率いる蒼宮軍が力を合わせて食い止め、今一度千手観音の降臨を持って封印し、世界は何時も通りの静けさを取り戻しているようにも見える。
魔神によって崩れ果てた地には神や仏の降臨があり、なんとか人が住める土地にまで回復はしているらしい。この所は邪神にも動きが見られず、悟浄や八戒や悟空が宿屋でのんびりと呟いたのだが…。
「それ、いっちゃダメなやつ」
「そう、それいうとだいたいじけんがおきるってじいちゃんがいってた」
金角と銀角は悟浄達の呟きを聞いて、まるで“不吉”と言わんばかりに横目で見ながら言う。
「ぴゅ、ぴゅー」
その話を聞いた玉龍もまた、金角と銀角に同意するように “そんなこと言うと、だいたい平和な時間は終わるよねー” と言った時だった、宿屋の一室に眩いばかりの光が現れて、中から一人の男が姿を現す。
「お助けを…! 公女様、どうか皇様をお助け下さい!!」
「妾季」
光の中から現れたのは、蒼宮軍に属している皇の部下である妾季。その姿は所々汚れ、顔や腕からは血が流れ出ている。沙麼蘿は直ぐ様妾季に近づくと、“どうした” と聞いた。妾季は頭を垂れたまま
「蒼宮軍、天界軍共に邪神達と交戦中ですが、押されております。このままでは、全滅の危機に!」
「蒼宮軍と天界軍だと。まさか、哪吒もいるのか」
「はい。我ら蒼宮軍は、哪吒太子からの援軍要請を受け、この下界に参りました」
「哪吒が援軍を頼まなければならない程の相手だと」
「…はい」
と、話をする。二人の話を聞いていた悟浄は
「冗談だろ。あの闘神とも言われる哪吒太子が、敵に押されているだと」
と呟く。哪吒は斑の血を引いており、強さと言う点に置いては天上界でも上位に位置する。だが同時に哪吒は、嘗て沙麼蘿がその命を落とした魔との闘いで片腕を無くしており、相手によっては窮地に立たされることもあるかも知れない。
だからこそ援軍を要請し皇が蒼宮軍を率いて駆けつけることになったのだろうが、その相手が哪吒と天界軍、皇と蒼宮軍の二つの軍を持ってしても、それを凌ぐだけの力があるというのか。
妾季の話はこうだった。哪吒は玄奘三蔵のように、天上の桜の護り手である白黄桜の鍵を持つ幼子の守護者になっているのだが、その幼子が邪神の襲撃を受け天界軍を率いて下界に赴いた。だが程なくして “至急援軍を乞う” と連絡が入り、皇が蒼宮軍を率いて下界に降りたのだが、その場は既に天界軍が劣勢に立っており、それは蒼宮軍の力を持ってしても変わらなかったと。
「数が、多いのです。邪神や鬼神や斑の数が! しかも、指揮を取っていると見られる邪神は人の倍はあろうかと言う大きさで、傷ついた哪吒太子や天界軍を庇いながらの闘いを強いられ、皇様も怪我を。我ら蒼宮軍も陣形が崩れ、公女様のお力にお縋りするしか…! どうか、皇様をお助け下さい!!」
妾季は頭を地面に擦り付けるようにして懇願する。天上の桜の鍵は五つあり、その内の四つには場所を指し示す其々の方角にあると言う桜の名前がついており、鍵とその護り手を桜の名前で呼ぶことがある。東の方角には水色の花が咲く龍水桜、西の方角には白色と黄色の花が咲く白黄桜、南の方角には桃色に中央が朱色の花が咲く朱王桜、北の方角には白に黒い縁取りの花が咲く黒仙桜と。そして天上の桜はその中央にあり、五つ目の鍵により姿を現すと言われていた。
玄奘三蔵は東の方角、龍水桜の護り手と言われており、既に南の方角の朱王桜は邪神達の手に渡っている。この上、白黄桜の護り手が持つ鍵まで奪われる訳には行かない。まして、それが皇を傷つけた相手だと言うのなら、許せるはずがないに決まっている。
沙麼蘿は、妾季の腕を掴むと琉格泉を見た。琉格泉は直ぐに沙麼蘿の足元まで来ると、その場所が光りだす。その時には既に、妾季の身体にあった傷は沙麼蘿の力によりなくなっていた。だが
「待て」
と声をかけたのは、玄奘だった。
「確かその子供は小さな村にいたはずだ。おそらく村全体が攻撃を受けている、違うか」
玄奘の言葉に、妾季は “その通りだ” とだけ答える。その答えに玄奘は全員を見渡し、“お前達、行くぞ” と言ったのだが、これには妾季が反対した。
「この上、龍水桜の護り手まで危険にさらす訳には行かない!」
「天界軍と蒼宮軍で押されているのなら、手数は多い方がいいだろう」
「それに元々、我々はその子供の所へ向かっている途中」
「今行くのも後で行くのも、変わりはないと思うぜ」
「面白そうだし、人助けだ!」
玄奘達も、引くわけには行かない。何故なら、白黄桜の鍵を奪われた後でその幼子の元に辿り着いても、何の意味もないからだ。玄奘、八戒、悟浄、悟空の言葉を聞いていた金角と銀角も
「おれたちつよい」
「おれたちやくにたつ」
と呟き、それを見ていた玉龍は “ぴゅぴゅ、ぴゅ~” と鳴いて “ある意味においてこの戦力は、天界軍を凌ぐかもね~” と、間の抜けたような声で言った。
「行くぞ、宝具の光の中に入れ。妾季」
「大丈夫です公女様、これくらいの人数なら運べます」
「いいかお前達、戦闘中のど真ん中に出るぞ」
沙麼蘿は全員に戦闘態勢に入るように告げる。何故なら この光を抜ければそこには地獄のような光景が待っているはずだからだ。
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焦土→焼けて黒くなった土。家屋、草木などが焼けて跡形もない土地
眩い→光が明るすぎて、まともに見られない。まぶしい
窮地→追い詰められて逃げ場のない苦しい状態や立ち場
凌ぐ→能力、程度などが他のものを追い抜いて上に出る。他よりまさる
劣勢→勢力が劣っていること。形勢が不利であること。また、そのさま
陣形→戦闘の隊形。戦陣の形
懇願→ねんごろに願うこと。ひたすらお願いすること
次回投稿は3月3日か4日が目標です。
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