恋ヶ淵

yukoji

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【-現在③- プロポーズを断られた後の対応を誰か教えてくれ】

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 姉貴と恵乃えのに相談した結果を考えるとイビーにはちゃんと反省したことを伝えて、謝って、俺が本当にイビーの事が大好きだって事、本気で結婚したいって思っていることをしっかり伝えるしかないという結論に至った。昨日の夜は、絶対にこれから良くなっていくっていう気持ちと、このままダメになったらどうしようかという気持ち、そして姉貴の言うように運命という感覚に囚われ過ぎていないかなどと色々考えた。考えたが、結果はやはり大好きだ。という気持ちが勝ったのでその気持ちのまま動くことにした。
 いつも通り、俺はホームルームが始まる十分前に教室に着き、クラスメイトへの挨拶もほどほどに自分の席に座った。西菜さんを見る。西菜さんは自分の机で本を読んでいた。そして、ホームルームが始まる5分前。この時間になるとイビーが津木つきエリと一緒に登校してくる。出来るなら、いつも通り「おはようイビー」と声を掛けたい。もしいつもと違って俺に挨拶をして来なくてもこちらから挨拶をしよう。そうすればきっとまた何かが変わってくるはずだ。まず一声。それが大切。
 そして……イビーがいつものように津木エリと登校してきた。俺は恐怖を勇気で振り払い、イビーに挨拶をしようとした……。が……。あからさまに、あっからさまにイビーは俺の事を無視していて見ようとしてはくれなかった。イビーの意識の中に俺がいることはほぼ間違いないだろうが、それなのにイビーは意志を持って俺の存在を無視していた。その空気感。そして、自分の視界に俺が入らないようにするあの不自然さ。最悪の雰囲気を俺は感じ取った。

 死にたい。ショックすぎて死にたい。

 だけどあぁ、まだホームルームまで時間が少しあるし何か話掛けよう。何か話掛けなきゃダメなはずだ。おはようの一言だけでいいそれだけでいいはずなのに……と、心の中で思いつつ、とうとう俺は行動に至ることが出来なかった。

  ☆★☆★

 「マジかよ! ユーママジかよそれマジかよ!」
 「マジだよ道山さん……」
 野球部の朝練が終わりホームルームギリギリに教室に入ってきた道山が、俺のあまりに覇気のない様子を感じ取ったようで何があったのかと話掛けに来てくれた。ジャイアン風に言えば『お~心の友よ~』ってやつだ。授業間の十分休憩には道山に俺の気持ちをしっかりと伝えられそうにないので、二時間目後の二十分休憩まで待った。その間というか朝からずっとイビーの事を気に掛け、それとなく見ていたのだが、『俺の事を視界に入れない』というイビーの行動は変わらず継続されていた。そんなイビーを見て後悔はしないって決めたはずの心が幾度となく揺れ動いた。女の子の事で、ここまで胸が締め付けられる事は今までになかった。あぁ、恵乃が言っていたのはこういう事なのかと、こんなにやりきれない気持ちになるのか、と。
 「だからユーマなんか死にそうだったんだな」
 「え? そんな?」
 「そりゃそーだろ。他の人はどう思ったかわからねーけど、俺はユーマの暗いオーラをビンビンに感じ取ってたぜ」
 「そうか……」
 「けどそりゃしょーがねーだろ。本当に好きだったら凹まねーほうがおかしいって、ユーマがそうなるのはしゃーねーよ。ってかさ」
 「ん?」
 「ユーママジすげーってマジすげーよ」
 「なにが?」
 意味が分からなかった。
 「俺らまだ高校生じゃん? それなのにこの人が俺の嫁になるって本気で思って、それでプロポーズまでするなんてなかなか出来る事じゃねーって」
 いきなり肯定的な事を言われてびっくりしたが「いやだから、姉貴と恵乃に言われたように付き合ってもねーのにイビーの事をちゃんと考えないで行動しちまった自分が愚かだったというか……。今日だってイビーと一回も話してないし、何なら俺多分イビーに無視されちまってるし」「あぁ~なんかイビーちゃん確かにそんな感じだよな~」
 と、道山はただ思った事を言っただけだろうが、客観的に見てもイビーの態度がそう見える事が悲しかった。
 「それでもだなユーマ……確かにそんな感じになっちまっていたとしてもだな、それでもユーマのそれはカッケーって。面と向かってプロポーズするのはカッケーよ」
 「そうかぁ?」
 「そりゃそうだろ。普通出来ねーよ」
 そうなのか?
 「俺は……」と道山は何かを思い出しているように続けた「えぇーと、俺は朱凛しゅりと付き合って……え~と、どんだけだ?」
 「一年と二ヶ月だろ? なんで俺が覚えてんだよ」
 「まぁいいから」
 「成瀬にバレたらキレられるぞ」と、あまりにサラッと言ってのけた道山に思わず笑ってしまった。
 「朱凛とはこのまま上手くいったらいつかは結婚すんだろうな~とかってのは何とな~く思うけどさ、ユーマみたいに絶対に結婚する! とかまではなってないもんな~」
 意外な答えだと感じた。道山の事だから『俺は絶対に朱凛と結婚する』みたいに考えていると思っていた。
 「だったらなんで道山は成瀬と付き合ってんの?」と浮かんだことをそのまま口に出した。
 聞くと、道山はお笑い芸人よろしくオーバーに目を見開き、口をまん丸にして顔全体を縦長にした。
 「ユーマさ~んなぁに言ってんすかっ! 朱凛の事が大好きだから、付き合ってるに決まってんで、しょ~っ!」
 そのテンションなんなんだ道山。
 「いやだから、そんな大好きなのに何で結婚する! みたいに思ってないの?」
 「あぁ~なるほどハイハイハイそれですかあぁ~そういう事ですかぁ~」と、これまたテレビで見たことがあるような芸人風のリアクションを道山はしてきた。こいつお笑い大好きだな。
 「で、どういうこと?」
 「いやそれ俺のセリフな。お前がハイハイハイって言ってんだからお前が説明しろ」
 「ん~。ユーマの質問がいまいち分かってないんだよね」
 道山ははへたくそな外人のモノマネのように両手を伸ばし両肩をすくめた。A~Ha~じゃねーぞノリが軽いな。
 「だから……」と説明しようとしたがなかなか自分でも何を質問をしているかしっくりこなかった。
 「あぁ~。え~とあれだ、分かった。何で成瀬と結婚しようって思ってないのに付き合っているのか。だ」
 キョトン。という擬音が漫画の吹き出しで出てきそうなくらいに道山は目を丸くした。
 「え? ……ユーマは付き合う=結婚なの?」
 「え? ……そうじゃねぇの?」
 お互いに当たり前だと思っていたことが違っていた時、考えの違いを相互理解に至るまでの時間は意外と掛かるようだった。そして、心なしか俺は気分が沈んでいると感じた。まさか道山がそういう気持ちで成瀬と付き合っているとは思いもしなかった。
 「ちょっ、ちょっち待ってくれユーマ。俺はお前がそんなにショックを受けるような気持ちで朱凛と付き合ってるわけじゃねーぜ」
 道山は俺の気持ちが良く分かるらしい。
 「俺はユーマみたいに付き合う=結婚だとは思ってないんだけど、朱凛とそういう風になればい~な~とは思ってる。だ・け・ど! 将来結婚するとなったらちゃんと働いて朱凛とか家族とかを養っていかないといけないだろ? 俺それが不安なんだよ」
 「なにが不安なんだ?」
 「俺、自分でもわかってんだけど野球以外全然だめじゃん? だから普通の仕事なんか出来んのかなぁ~って思う訳よ。野球の事は本当に好きだから、野球に関することが出来ればとは思ってんだけど、プロになれるとは思ってねーし。朱凛は勉強もできるからバレーと関係ない事でも出来ると思うんだけどさ。なんつーかそういうのを考えたら朱凛と絶対に結婚する! とかあんま強く思えなくてさ。なんつーんだろ、あいつを幸せにする絶対的な自信がないっつーか。もちろん幸せにするつもりはあるんだけど」
 道山は成瀬との将来をそんな風に思っていたのか。
 「道山ごめん」
 「は? なにが?」
 「一瞬でも道山の答えにショックを受けたこと」
 「はぁ~!? なんだそれww 別に良いよそんな事www」
 「いや、本当にごめん、道山めっちゃくちゃ成瀬の事考えてるじゃん。お前こそすげーよ。俺はその、仕事の事とか養うとか、そんなところまで考えてはねーもん」
 「え? そうなの? んじゃなんでプロポーズ?」
 「それは……俺は本気でイビーの事が大好きだと思ったし、イビーは俺の嫁だとも思ったし」
 「あぁ」
 「それで、そうだな……道山風に言うんだったら、俺はイビーと結婚してイビーの事を絶対に幸せに出来るとは言えない。そんなのは人の感情で俺が決めれるものじゃない。だけど俺は、イビーと結婚したら絶対に幸せになるしイビーの事を大切にする。俺は千パーセント幸せになるから、そんな幸せな俺と過ごしているイビーもきっと幸せになってくれるとは思う」
 一瞬の間をおいて道山は言った。
 「ハハッ、なんだそれユーマお前結局イビーちゃんの事を幸せにするって言ってるようなもんじゃねえかw」
 「そうか?」
 「そうだろw」
 そうなるんだろうかと思いつつ、道山の笑いにつられて俺も少し笑った。
 「おい道山、なんだこの空気は?」
 「しらねーよw」
 「俺も知らねーわ。んでまぁあれだ、俺は道山の話を聴いていて思ったんだけど」
 「ん?」
 「野球バカなのに成瀬との事をそこまで考えてんだったらそれはもう成瀬を幸せに出来るようなもんだと俺は思うけどな。お前こそ、普通そこまで考えられるもんじゃねーよ」
 「そうか?」
 「あぁ。だから俺はきっと大丈夫だと思う。マジで」
 「だとい~んだけどなぁ」と、道山はスポーツ少年らしい爽やかな笑顔を見せ、照れくさそうに鼻の下を人差し指でこすった。
 「それはそうとイビーはどうしたらいいと思う?」と、話し掛けたところで三時間目のチャイムが鳴ってしまった。「また昼休みに話そうぜ」と道山は言って、俺たちは教室に戻った。

   ☆★☆★

 三時間目、四時間目と時間が過ぎていったんだが、俺は授業そっちのけでイビーとの事、姉貴たち、道山に言われた事を色々と考え直していた。きっと姉貴たちが言った事は女の人の意見として正解だろうし、道山にすげー事だと言われて、そういう風に見える行動をしたのかなぁという考えもあった。だけど、それでも俺の望んでいた結果には繋がってないし、相変わらずイビーは俺の事を無視してるし……ってとこで今日の部活ヤバくね? という大問題を置きっぱなしにしている事に気付いた。
 「どう思う道山?」
 昼休みになり中庭の芝生の上で弁当を食べながら俺は道山に自分の考えを話し、道山は相づちを打ちながら聴いてくれていた。
 「まず一個言いたい事はだな」と、道山は最後のから揚げを食べてから言った。「あんがとな」
 「はぁ? なにが?」
 「いやぁー俺の事をカッケーとか言ってくれて。野球以外で男からそんなこと言われんの始めてだわ~。とりあえず、俺はこのまま朱凛の事を大切にしていこうと思う」
 弁当箱を片付けながら道山はニカッと笑った。歯に食べカスがくっついているのが気になったが、こいつの爽やかさは一級品だ。
 「ちゃんと成瀬の事を考えてて俺は素直にすげぇなと思った。それに比べて俺はあれだ、道山に言われた事は勿論良かった点として捉えてるけど、姉貴たちに言われた事を考えるとまだまだだと思う。ってか道山、俺今日の部活マジでどうすればいいと思う? このままイビーと話さないで放課後に突入するのはリスクが高いと思うんだよ」
 「そこなんだけどさー」
 「あぁ」
 「そこ、俺ぶっちゃけユーマだけが悪いとは思えないんだよね」
 予想外の答えに俺は少し驚いた。
 「それは同情してんのか? それとも俺を傷つけないためか?」
 「おいおいおいおいおいおいおーい! ユーマちゃぁぁぁん、俺とお前の仲でそんなこと言うはずね~じゃんよぉ~! たかしちゃんちょっとショック」
 と、道山は両手を胸の前でクロスさせて上半身をくねっと捻った。きめぇ。
 「まぁ~あれだな~、ユーマはそれぐらい自分が分かってねーんじゃねぇかな~」
 「おい道山話ずれてんだろ。俺は今日の部活どうしようかって相談してんだよ」
 「まぁまぁまずは聞いてくれよユーマ」と、道山は額に左手の指先を当て、右手を俺の方に突き出した。
 「そのお前の芸人みたいな外人みたいなリアクションやめろや」
 「あぁ! すまん癖なんだよ。まぁとにかくだな、普段のユーマだったら俺が言った事に『それって同情?』とかそんなわけわかんない事言わんないと思うんよね。俺がユーマに変に気を遣う事なんて無いし、俺らは嘘つかねーだろ」
 確かに。「まーそうだな」
 「だしょ? だからそれぐらいユーマの中の何かがぐちゃぐちゃになっちゃってんだと思うんだよね」
 「なるほど」
 「そりゃしょうがねーとは思うんだ。だってイビーちゃんに振られるとかショックに決まってんじゃん」
 昨日の今日の状態で「振られた」っていう言葉は相当心にキたが道山は真面目に話してくれたているのでそこには触れずに話を聴いた。
 「んで、#玲乃_れの__#さまとか恵乃えのちゃんに色々言われて、俺にもまた違った意見を言われたわけじゃん?」
 「そうだな」
 「それって言うのは自分で考えてなかったことっしょ?」
 「あぁ」
 「そういうの野球でもあんだよな~」と道山は立ち上がりバットを握る様な仕草を見せ、そのまま架空のバッターボックスに入った。左足で地面を踏み固め、両腕で握り直したバットを頭の後ろに持ってくる。そして、そのままエアーで素振りをしながら話し始めた。
 「野球でもさ~、ある程度練習したらとりあえず自分のフォームってのが出来るんよね。んで、自分のフォームが出来ると打率とかもある程度は安定してくるわけよ」
 道山は素振りを繰り返している。
 「だけどさ、コーチとかがバットの構える位置、腰の使い方、足の位置、足の出し方、まぁ色々あんだけど、とにかく自分ではわからない『もっと打てるようになる方法』を教えてくれるんよ。だけどそう言われて練習してもなかなかすぐにその新しいフォームってのを覚える事は出来ない。今までのフォームを身体が覚えっちゃってるからな。んで、下手したら前より打てなくなるなんて事にもなる」と、道山は一度言葉を切って俺の方を向いた。
 「ユーマなら俺の言いたい事わかるっしょ?」
 「野球の事はうまくわかんねぇけど……新しい事を覚える時は不安定になるってことか?」
 「ビンゴッ!」と、道山はテレビの司会者の『正解ッ!』って言うような勢いと身振りで言ってから続けた。
 「今までと違うものを自分のものにしようとすると結構苦労するじゃん? んで、今回のユーマの場合はさ、ちょっと言いづらいとこあるけど今は失敗って言えるじゃん? で、失敗しちゃってる時にこうすれば良くなる、あぁすれば良くなるってんで色んな考えが出て来てるから、結果ユーマがぶれてる様な気がする。スランプの時に自分の軸を持たないで色々やっても地獄にハマってスランプは抜けらんねー。多分だけど演劇でもそういうのあるっしょ?」
 「まぁ……。あるな。大いにある。俺が役者に演出をつけたら前より悩んじまって演技が悪くなる事もある」
 道山は深く頷いて「だけどそれもいつか良くなるっしょ?」と言った。
 「俺の言ってる事をちゃんと消化してくれたら絶対に良くなる」
 「野球も一緒だぜ」キラーンっていう効果音が出てそうな勢いで、道山は右手で半円を描き顎の下で止めた。もちろん親指は立ててあった。
 「あ~なんだ、その~つまり道山は心も一緒だって言いたいのか?」
 「だとは思うんだけどなぁ~。ユーマの心のフォームが崩れてんじゃね?」
 道山の話を聴いて、果たして俺は自分の事をちゃんと理解しているんだろうかと思った。多分自分でも、自分の事を分かっていない。ただ分かっている事はそれでもやっぱりイビーが好きだって事だけだった。
 「もしかしたら……俺は色々と焦ってたのかもしれないな」
 「いや、そりゃ焦るとこあるっしょ~? イビーちゃんは二学期終わったら帰っちゃうんだし、焦っちまうのは当たり前なんじゃね?」
 「そうかなぁ」と再び自分の考えを見詰め直そうとした時に、後ろから「あ~」っと何かを見つけたように話す、家で良く聞く声が聞こえた。
 「イビーさんのこと話してるんでしょ~?」
 やはり恵乃だった。学校で話しかけるな。と、返そうとしたがそれよりも何倍も早く道山が口を開いた「恵乃ちゃん久しぶり~! ってかまたかわいくなったっしょ!?」
 「も~そんなことないですよぉ~! 道山さんこそお元気ですかぁ?」と、語尾を甘ったるく伸ばした外面な妹。そして俺の実の妹にあからさまにテンションが上がっている親友。
 「ちょっと待てお前らどっちも気持ちわりぃよ。あと道山、んなリップサービスすんなってこいつ調子乗るから」
 「おいおいおいユーマちゃん、恵乃ちゃんの事を可愛くないなんて思う男はたぶんこの世の中にいね~ぞ。お前マジで他の男子からめちゃくちゃ羨ましがられってからな」
 「「知らん」「え~うれしぃ~」」
 「わかったから、恵乃わかったからそれやめろ、そのぶりっこマジやめろ。マジでキモいから」
 「え~恵乃キモくないもん」と恵乃はほっぺたをぷく~っとさせた。
 家の中では臍の曲がった減らず口、小間使いかのように接してくる姉妹が、外にいる時、殊に男友達や知り合いに見せる全身化粧。この全身化粧はいつ見ても気落ち悪い。
 「わかった、わかったてぇ~兄やん。もぉ~冗談じゃん」
 「冗談じゃん」と、道山も恵乃と同じように緩く握った両手を顎のラインに沿わせ、頬をぷく~っとさせて言った。
 「だ~! わかったから! ユーマごめんって! まだ話したい事あんだって!」
 と、我慢ならず校舎に向かって歩き出した俺の腕を道山は掴み、もといた芝生に無理矢理連れ戻された。
 「で、お兄ちゃんは道山さんにイビーさんのこと話したんでしょ?」
 「お前切り替え早いな」
 「まぁ心配してるからさ。朝ヤバそうな顔してたけど今は大丈夫なの?」
 「朝よりはな」
 「そっか。道山さんに感謝だね」と、恵乃は優しく微笑んだ。そして道山は瞼をパチパチさせながら大きく目を見開いてロボットの様に「ユーマ……俺は本当にオ前ガ羨まシい……本当に羨まシい……こんなニ可愛クテ兄貴思イノ妹ナンテ……『オレハおまえガホントにウラヤマジイ~』」と最後のところはボイスチェンジャーを使った男の人みたいな声で言った。
 「道山さんウケル~」
 「『ダロ~』」
 「いやそういう下りもういいから。ってか道山、なんだよ話したい事って」
 「『アッ、ワヅレデダ~』」
 うぜぇ。
 「わ~かったって! ゴメンって! んで……イビーちゃんの事なんだけどさ」
 「ちょっと待て道山、その話は恵乃にしなくてもよくね? おい恵乃、お前もう教室に戻れって」
 「え~なんでぇ~」
 「男友達に話した事まで妹に聴かれたくねーだろ普通っ」
 「ちょいちょいユーマ、ちょい待ち。俺が今から話そうとしてることは恵乃ちゃんにも聞いて貰った方が良いかもしんね」
 「「はぁ?」「なんですかぁ?」」
 と、俺と恵乃は道山を見詰めた。
 「そんなに見詰められたら貴史照れちゃうぞッ」と、道山は身体をくねらせて言った。

 「「「……。」」」

 「で、お前昨日恵乃ちゃんにも俺と同じような事話したんだろ?」と道山が何事もなかったかのように平然と続けた。
 「兄やんから昨日めっちゃ話し聴かされました」
 結局お前も話に乗るのか?
 「そりゃ恵乃にも昨日話したけどさ」
 「だったらい~じゃん」
 「なら恵乃ちゃんにも聞いて欲しいことではあるんよ」
 「「マジで?」「そうですよねっ」」
 「話すぞ」
 「んだよそれ……」と道山のスベリ具合をスルーして話を進めていることに違和感を覚えながらも恵乃を見た。すると、恵乃は少し怒っている感じがしたので「わかったよ。話せよ」としぶしぶ道山に言った。
 昼休みも残り五分を切り、周りの生徒たちは教室に戻っていた。三人の静寂がより際立っている。
 「ぶっちゃけだな………………………………………ぶっちゃけ…………………だな……………ぶっちゃ……………」
 突っ込まずにはいられなかった。
 「ちょっと待て道山、お前なんださっきから。溜めすぎだろなんだよ。『ぶっちゃけだな』で溜めるのと『ぶっちゃけ』で溜めて『だな』で言い切るのはまだわかる、まだわかるよ。けどな、『ぶっちゃ』で溜めるのはどうやっても訳わかんねーから。『ぶっちゃ』ってなんだよ豚かよ」
 「豚ではない」
 「そこ答えなくていいから早くしろ」
 「ぶっちゃけなんなんですか?」
 「ぶっちゃけ…………だな」
 「お前いい加減にし」
 「ユーマ怒るなよ」
 「あ?」
 「ぶっちゃけ、イビーちゃん性格良く無くね?」
 俺の気持ちとかなんだとか、そういうものではない道山の疑問が、俺たちにぶつけられた。
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