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①
舞踏会のフロアーの真ん中。
そこに婚約者であるアルノルフ・フールカデ様が、仁王立ちをしていた。
何をしてるんだ、この人は。
私は言葉には出さずに、生ぬるい目でアルノルフ様を見つめてみる。
いつの間にか皆さんは、フロアーの周りへ移動して、輪のように取り巻いている。
そして気が付けば、私はその輪の中に押し出されていた。
どこかで見た覚えのある状況だ。
ぐるりと周りを見回して、そう言えば! と思い出した所で。
「ヘレーネ! もう俺は、お前のような常識のない女にはうんざりだ! 本日を持って婚約を破棄する!」
目の前で婚約者、いや、もう元婚約者と言うべきかもしれないけど、取りあえずアルノルフ様が大声で叫んでいた。
あぁ、やっぱり!
巷の小説でも見た事のある展開だけど、これがいま流行の婚約破棄って、やつなのかもしれない。
「はぁ、分かりました。で、本当の愛に目覚めたお相手はどちらですか?」
ちょっと捻りのない展開だけど。
婚約破棄と言えば、そこも必須な所だと思う。
「……お前の反応は、本当に可愛げがないな」
「はぁ……」
アルノルフ様は面白くなさそうだ。
そんな事を言われても、泣いて縋れ、とでも言うのだろうか。
「まぁ良い。そこまで分かっているなら話しが早い」
自分で話題を出しておきながら、早々に話題を切り替えたアルノルフ様がスッと手を差し出した。私達を遠巻きに取り囲んでいた人達の中から、アンネローゼ・アデナウアー侯爵令嬢が歩いてきた。
本当に居たんだ、凄い。
お約束のテンプレ展開に、思わず感心してしまう。
そして、この展開とこれば、もう1つお約束になるのが、元婚約者がクズ男という事だと思う。
ちなみに言えば、アルノルフ様も紛うことなきクズ男だった。
なんたって、DV男だ。しかも重度のマザコンとモラハラが付いてくる。
お陰で私はこんな舞踏会だというのに、ろくに着飾る事もできずに、化粧だって出来ていない。
少しでも着飾ろうものなら「男を誑し込む気か、この売女め!」と罵ってくるような奴だった。
そのくせ外では、場を判断しての必要なオシャレの1つも出来ないと、私の事を罵るのだから、やっていられない。
「家同士が決めた婚約なのです。簡単に解消とはいかないでしょう。ですが、本当に愛し合う私共が離れる事はできないのです……ヘレーネ様、申し訳ございません。分かって頂けますか……?」
いや『頂けますか?』も何も。
分かるだろ? 分からない訳ないだろ? 空気読めよ。
って、いう副音声にしか聞こえないのは、私だけだろうか。
でも、まぁ、今の私にとってはそんな事はどうでも良い。
「……はい、もちろんでございます。真実の愛を前に、私などが出る幕はございません……」
取りあえず、あからさまに喜んでは怪しまれてしまうだろう。 少し声を低くして、出来るだけか細く聞こえるように心掛ける。
アンネローゼ様が、手に持った扇を広げて申し訳なさそうに、口許を隠した。
まぁ、隠れる一瞬前に(勝った!)といった、笑みがチラッと見えた事も、今は良い。
「まぁ、そういう訳だから、悪く思うな」
いや、こんな公衆の面前で、他の女性を好きになったから婚約破棄をする、と言われている状況だった。
悪く思うな、なんて言葉で終わらせようとしているアルノルフ様は、やっぱり本当にバカなのだろう。
「はい、分かりました」
でも、賢い私は、せっかくのこんな機会を逃したりはしない。
取りあえず、自分がこのクズ男から逃げ出す事を、まず第1に考える。
何たって、家同士の婚約とは言っても。
我が家はしがない男爵家。
片やアルノルフ様は侯爵家の次男坊。
どこをどう間違えたのか、アルノルフ様からの一方的な要求で、断れないまま、結ばされた婚約だったのだ。
そこに婚約者であるアルノルフ・フールカデ様が、仁王立ちをしていた。
何をしてるんだ、この人は。
私は言葉には出さずに、生ぬるい目でアルノルフ様を見つめてみる。
いつの間にか皆さんは、フロアーの周りへ移動して、輪のように取り巻いている。
そして気が付けば、私はその輪の中に押し出されていた。
どこかで見た覚えのある状況だ。
ぐるりと周りを見回して、そう言えば! と思い出した所で。
「ヘレーネ! もう俺は、お前のような常識のない女にはうんざりだ! 本日を持って婚約を破棄する!」
目の前で婚約者、いや、もう元婚約者と言うべきかもしれないけど、取りあえずアルノルフ様が大声で叫んでいた。
あぁ、やっぱり!
巷の小説でも見た事のある展開だけど、これがいま流行の婚約破棄って、やつなのかもしれない。
「はぁ、分かりました。で、本当の愛に目覚めたお相手はどちらですか?」
ちょっと捻りのない展開だけど。
婚約破棄と言えば、そこも必須な所だと思う。
「……お前の反応は、本当に可愛げがないな」
「はぁ……」
アルノルフ様は面白くなさそうだ。
そんな事を言われても、泣いて縋れ、とでも言うのだろうか。
「まぁ良い。そこまで分かっているなら話しが早い」
自分で話題を出しておきながら、早々に話題を切り替えたアルノルフ様がスッと手を差し出した。私達を遠巻きに取り囲んでいた人達の中から、アンネローゼ・アデナウアー侯爵令嬢が歩いてきた。
本当に居たんだ、凄い。
お約束のテンプレ展開に、思わず感心してしまう。
そして、この展開とこれば、もう1つお約束になるのが、元婚約者がクズ男という事だと思う。
ちなみに言えば、アルノルフ様も紛うことなきクズ男だった。
なんたって、DV男だ。しかも重度のマザコンとモラハラが付いてくる。
お陰で私はこんな舞踏会だというのに、ろくに着飾る事もできずに、化粧だって出来ていない。
少しでも着飾ろうものなら「男を誑し込む気か、この売女め!」と罵ってくるような奴だった。
そのくせ外では、場を判断しての必要なオシャレの1つも出来ないと、私の事を罵るのだから、やっていられない。
「家同士が決めた婚約なのです。簡単に解消とはいかないでしょう。ですが、本当に愛し合う私共が離れる事はできないのです……ヘレーネ様、申し訳ございません。分かって頂けますか……?」
いや『頂けますか?』も何も。
分かるだろ? 分からない訳ないだろ? 空気読めよ。
って、いう副音声にしか聞こえないのは、私だけだろうか。
でも、まぁ、今の私にとってはそんな事はどうでも良い。
「……はい、もちろんでございます。真実の愛を前に、私などが出る幕はございません……」
取りあえず、あからさまに喜んでは怪しまれてしまうだろう。 少し声を低くして、出来るだけか細く聞こえるように心掛ける。
アンネローゼ様が、手に持った扇を広げて申し訳なさそうに、口許を隠した。
まぁ、隠れる一瞬前に(勝った!)といった、笑みがチラッと見えた事も、今は良い。
「まぁ、そういう訳だから、悪く思うな」
いや、こんな公衆の面前で、他の女性を好きになったから婚約破棄をする、と言われている状況だった。
悪く思うな、なんて言葉で終わらせようとしているアルノルフ様は、やっぱり本当にバカなのだろう。
「はい、分かりました」
でも、賢い私は、せっかくのこんな機会を逃したりはしない。
取りあえず、自分がこのクズ男から逃げ出す事を、まず第1に考える。
何たって、家同士の婚約とは言っても。
我が家はしがない男爵家。
片やアルノルフ様は侯爵家の次男坊。
どこをどう間違えたのか、アルノルフ様からの一方的な要求で、断れないまま、結ばされた婚約だったのだ。
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