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とんでもないクズ男との婚約でも、立場的にもこちらから解消が出来ずに、権威に弱いお父様では実家もあてにできなかった。
そうなれば、頼れるのは自分だけ。
その思いだけで、今日まで過ごしてきたのだ。
お陰でこの数年で剣術も、魔術も、腕は飛び抜けて上達したし、体術も少しは様になってきた。
人間、生命の危機を感じる場面では、かなり成長をするのだと、身をもって知った数年だった。
「ヘレーネ様は男爵家でいらっしゃるので、上流貴族の社交には不慣れな事も多かったと聞いております。私はアルノルフ様と同じ侯爵家。その辺りはそつなくこなせます為、アルノルフ様は、ちゃんと私共アデナウアー家が、お幸せにしますわ」
アンネローゼ様は、まかせて! とでも言うように、艶やかに微笑んでいる。
という事はなんだ。
アルノルフ様のサンドバックになる気なのだろうか。
モラハラ、DV男のアルノルフ様が幸せを感じる瞬間なんて、パートナーを貶して、俺様が上だと優越に浸っている時なのだから。
まぁ、私は遮音魔法や反動型結界、それから力を受け流す体術を駆使して、徹底的にサンドバッグを回避するようにしていた。
『お前は女らしさも、男を立てる事も知らない、クソつまらない女だ!』
と、お蔭でさらに悪評を流されたけど、素晴らしいサンドバッグだ! と評価されても、微塵も嬉しくないので、放っておいた。
でも、さすがに何も知らないまま、素敵なサンドバッグ人生をスタートするのではアンネローゼ様も不憫だ。
「あの……アンネローゼ様は魔術や体術は得意ですか?」
「はぁ?」
「護身の為にでも体術や剣術は学ばれておりますか?」
アルノルフ様相手に、自分の身を守る方法を1つも持っていないのは、かなり危ない。
自業自得とも言えないけど、それでも黙っていた結果、死人が出てしまっては、寝覚めが悪くなる。
「取りあえず、今のご時世、女性も自分を守れるように力を付けておいて損はありません! いまからでもどうぞ、学ばれて下さい!」
出来ることなら、いつでも逃げ出せるように、お金を稼げる手段も探しておいた方が良い。
私も逃げ出した暁には、鍛えた魔術を活かして、冒険者にでもチャレンジしようと思っていた。
「何を仰いますの? 我が家は侯爵家ですわ。そのような事は、お抱えの護衛騎士がどうにかできますから」
せっかくの思いやりだったのに、可哀相な目で見られてしまった。
なんてこった。
でもアンネローゼ様がそう言うなら、仕方がないけど、私はちゃんとアドバイスはした!
ここからは自己責任って事でお願いしたい。
それに、考えてみれば確かにアンネローゼ様は侯爵家だ。
私と違って、アルノルフ様に匹敵する爵位を持っている。アンネローゼ様が言うように、いざとなれば、家がどうにかしてくれるのだろう。
「失礼致しました」
アデナウアー侯爵は体裁を気にする方に見えていた。
だから「離婚なんてみっともない事をさせるか!」なんて、仰りそうだと思っていたけど、案外娘には弱いのかもしれない。
正直な所、うらやましい!
まぁ私は、どうにか自分で切り抜けきれる力が付いたから、それで良しとしよう。
「では、私はこれで失礼致します」
何よりも、これからは自由に生きられるのだから!
何て素晴らしいのだろう!
思わずスキップしたくなるのを必死に耐える。
「あっ、あぁ……」
呆気なく終わったからか、クルッと背を向けた2人から、戸惑った雰囲気がする。
「えっ、なに? ちょっとアッサリしすぎじゃない?」
周りからも、どよめきが聞こえてくる。
今日の招待客は、フールカデ家と懇意にしている方々だった。
きっとアルノルフ様かアンネローゼ様から事前に話しを聞いて、ワクワクと協力していたのかもしれない。
人の不幸は蜜の味、って言うものね。
でもギャラリーを満足させる為に、長居なんてする気はなかった。
私は今までで1番優雅にお辞儀をして、晴れやかな笑顔で退出をした。
そうなれば、頼れるのは自分だけ。
その思いだけで、今日まで過ごしてきたのだ。
お陰でこの数年で剣術も、魔術も、腕は飛び抜けて上達したし、体術も少しは様になってきた。
人間、生命の危機を感じる場面では、かなり成長をするのだと、身をもって知った数年だった。
「ヘレーネ様は男爵家でいらっしゃるので、上流貴族の社交には不慣れな事も多かったと聞いております。私はアルノルフ様と同じ侯爵家。その辺りはそつなくこなせます為、アルノルフ様は、ちゃんと私共アデナウアー家が、お幸せにしますわ」
アンネローゼ様は、まかせて! とでも言うように、艶やかに微笑んでいる。
という事はなんだ。
アルノルフ様のサンドバックになる気なのだろうか。
モラハラ、DV男のアルノルフ様が幸せを感じる瞬間なんて、パートナーを貶して、俺様が上だと優越に浸っている時なのだから。
まぁ、私は遮音魔法や反動型結界、それから力を受け流す体術を駆使して、徹底的にサンドバッグを回避するようにしていた。
『お前は女らしさも、男を立てる事も知らない、クソつまらない女だ!』
と、お蔭でさらに悪評を流されたけど、素晴らしいサンドバッグだ! と評価されても、微塵も嬉しくないので、放っておいた。
でも、さすがに何も知らないまま、素敵なサンドバッグ人生をスタートするのではアンネローゼ様も不憫だ。
「あの……アンネローゼ様は魔術や体術は得意ですか?」
「はぁ?」
「護身の為にでも体術や剣術は学ばれておりますか?」
アルノルフ様相手に、自分の身を守る方法を1つも持っていないのは、かなり危ない。
自業自得とも言えないけど、それでも黙っていた結果、死人が出てしまっては、寝覚めが悪くなる。
「取りあえず、今のご時世、女性も自分を守れるように力を付けておいて損はありません! いまからでもどうぞ、学ばれて下さい!」
出来ることなら、いつでも逃げ出せるように、お金を稼げる手段も探しておいた方が良い。
私も逃げ出した暁には、鍛えた魔術を活かして、冒険者にでもチャレンジしようと思っていた。
「何を仰いますの? 我が家は侯爵家ですわ。そのような事は、お抱えの護衛騎士がどうにかできますから」
せっかくの思いやりだったのに、可哀相な目で見られてしまった。
なんてこった。
でもアンネローゼ様がそう言うなら、仕方がないけど、私はちゃんとアドバイスはした!
ここからは自己責任って事でお願いしたい。
それに、考えてみれば確かにアンネローゼ様は侯爵家だ。
私と違って、アルノルフ様に匹敵する爵位を持っている。アンネローゼ様が言うように、いざとなれば、家がどうにかしてくれるのだろう。
「失礼致しました」
アデナウアー侯爵は体裁を気にする方に見えていた。
だから「離婚なんてみっともない事をさせるか!」なんて、仰りそうだと思っていたけど、案外娘には弱いのかもしれない。
正直な所、うらやましい!
まぁ私は、どうにか自分で切り抜けきれる力が付いたから、それで良しとしよう。
「では、私はこれで失礼致します」
何よりも、これからは自由に生きられるのだから!
何て素晴らしいのだろう!
思わずスキップしたくなるのを必死に耐える。
「あっ、あぁ……」
呆気なく終わったからか、クルッと背を向けた2人から、戸惑った雰囲気がする。
「えっ、なに? ちょっとアッサリしすぎじゃない?」
周りからも、どよめきが聞こえてくる。
今日の招待客は、フールカデ家と懇意にしている方々だった。
きっとアルノルフ様かアンネローゼ様から事前に話しを聞いて、ワクワクと協力していたのかもしれない。
人の不幸は蜜の味、って言うものね。
でもギャラリーを満足させる為に、長居なんてする気はなかった。
私は今までで1番優雅にお辞儀をして、晴れやかな笑顔で退出をした。
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