2 / 3
②
とんでもないクズ男との婚約でも、立場的にもこちらから解消が出来ずに、権威に弱いお父様では実家もあてにできなかった。
そうなれば、頼れるのは自分だけ。
その思いだけで、今日まで過ごしてきたのだ。
お陰でこの数年で剣術も、魔術も、腕は飛び抜けて上達したし、体術も少しは様になってきた。
人間、生命の危機を感じる場面では、かなり成長をするのだと、身をもって知った数年だった。
「ヘレーネ様は男爵家でいらっしゃるので、上流貴族の社交には不慣れな事も多かったと聞いております。私はアルノルフ様と同じ侯爵家。その辺りはそつなくこなせます為、アルノルフ様は、ちゃんと私共アデナウアー家が、お幸せにしますわ」
アンネローゼ様は、まかせて! とでも言うように、艶やかに微笑んでいる。
という事はなんだ。
アルノルフ様のサンドバックになる気なのだろうか。
モラハラ、DV男のアルノルフ様が幸せを感じる瞬間なんて、パートナーを貶して、俺様が上だと優越に浸っている時なのだから。
まぁ、私は遮音魔法や反動型結界、それから力を受け流す体術を駆使して、徹底的にサンドバッグを回避するようにしていた。
『お前は女らしさも、男を立てる事も知らない、クソつまらない女だ!』
と、お蔭でさらに悪評を流されたけど、素晴らしいサンドバッグだ! と評価されても、微塵も嬉しくないので、放っておいた。
でも、さすがに何も知らないまま、素敵なサンドバッグ人生をスタートするのではアンネローゼ様も不憫だ。
「あの……アンネローゼ様は魔術や体術は得意ですか?」
「はぁ?」
「護身の為にでも体術や剣術は学ばれておりますか?」
アルノルフ様相手に、自分の身を守る方法を1つも持っていないのは、かなり危ない。
自業自得とも言えないけど、それでも黙っていた結果、死人が出てしまっては、寝覚めが悪くなる。
「取りあえず、今のご時世、女性も自分を守れるように力を付けておいて損はありません! いまからでもどうぞ、学ばれて下さい!」
出来ることなら、いつでも逃げ出せるように、お金を稼げる手段も探しておいた方が良い。
私も逃げ出した暁には、鍛えた魔術を活かして、冒険者にでもチャレンジしようと思っていた。
「何を仰いますの? 我が家は侯爵家ですわ。そのような事は、お抱えの護衛騎士がどうにかできますから」
せっかくの思いやりだったのに、可哀相な目で見られてしまった。
なんてこった。
でもアンネローゼ様がそう言うなら、仕方がないけど、私はちゃんとアドバイスはした!
ここからは自己責任って事でお願いしたい。
それに、考えてみれば確かにアンネローゼ様は侯爵家だ。
私と違って、アルノルフ様に匹敵する爵位を持っている。アンネローゼ様が言うように、いざとなれば、家がどうにかしてくれるのだろう。
「失礼致しました」
アデナウアー侯爵は体裁を気にする方に見えていた。
だから「離婚なんてみっともない事をさせるか!」なんて、仰りそうだと思っていたけど、案外娘には弱いのかもしれない。
正直な所、うらやましい!
まぁ私は、どうにか自分で切り抜けきれる力が付いたから、それで良しとしよう。
「では、私はこれで失礼致します」
何よりも、これからは自由に生きられるのだから!
何て素晴らしいのだろう!
思わずスキップしたくなるのを必死に耐える。
「あっ、あぁ……」
呆気なく終わったからか、クルッと背を向けた2人から、戸惑った雰囲気がする。
「えっ、なに? ちょっとアッサリしすぎじゃない?」
周りからも、どよめきが聞こえてくる。
今日の招待客は、フールカデ家と懇意にしている方々だった。
きっとアルノルフ様かアンネローゼ様から事前に話しを聞いて、ワクワクと協力していたのかもしれない。
人の不幸は蜜の味、って言うものね。
でもギャラリーを満足させる為に、長居なんてする気はなかった。
私は今までで1番優雅にお辞儀をして、晴れやかな笑顔で退出をした。
そうなれば、頼れるのは自分だけ。
その思いだけで、今日まで過ごしてきたのだ。
お陰でこの数年で剣術も、魔術も、腕は飛び抜けて上達したし、体術も少しは様になってきた。
人間、生命の危機を感じる場面では、かなり成長をするのだと、身をもって知った数年だった。
「ヘレーネ様は男爵家でいらっしゃるので、上流貴族の社交には不慣れな事も多かったと聞いております。私はアルノルフ様と同じ侯爵家。その辺りはそつなくこなせます為、アルノルフ様は、ちゃんと私共アデナウアー家が、お幸せにしますわ」
アンネローゼ様は、まかせて! とでも言うように、艶やかに微笑んでいる。
という事はなんだ。
アルノルフ様のサンドバックになる気なのだろうか。
モラハラ、DV男のアルノルフ様が幸せを感じる瞬間なんて、パートナーを貶して、俺様が上だと優越に浸っている時なのだから。
まぁ、私は遮音魔法や反動型結界、それから力を受け流す体術を駆使して、徹底的にサンドバッグを回避するようにしていた。
『お前は女らしさも、男を立てる事も知らない、クソつまらない女だ!』
と、お蔭でさらに悪評を流されたけど、素晴らしいサンドバッグだ! と評価されても、微塵も嬉しくないので、放っておいた。
でも、さすがに何も知らないまま、素敵なサンドバッグ人生をスタートするのではアンネローゼ様も不憫だ。
「あの……アンネローゼ様は魔術や体術は得意ですか?」
「はぁ?」
「護身の為にでも体術や剣術は学ばれておりますか?」
アルノルフ様相手に、自分の身を守る方法を1つも持っていないのは、かなり危ない。
自業自得とも言えないけど、それでも黙っていた結果、死人が出てしまっては、寝覚めが悪くなる。
「取りあえず、今のご時世、女性も自分を守れるように力を付けておいて損はありません! いまからでもどうぞ、学ばれて下さい!」
出来ることなら、いつでも逃げ出せるように、お金を稼げる手段も探しておいた方が良い。
私も逃げ出した暁には、鍛えた魔術を活かして、冒険者にでもチャレンジしようと思っていた。
「何を仰いますの? 我が家は侯爵家ですわ。そのような事は、お抱えの護衛騎士がどうにかできますから」
せっかくの思いやりだったのに、可哀相な目で見られてしまった。
なんてこった。
でもアンネローゼ様がそう言うなら、仕方がないけど、私はちゃんとアドバイスはした!
ここからは自己責任って事でお願いしたい。
それに、考えてみれば確かにアンネローゼ様は侯爵家だ。
私と違って、アルノルフ様に匹敵する爵位を持っている。アンネローゼ様が言うように、いざとなれば、家がどうにかしてくれるのだろう。
「失礼致しました」
アデナウアー侯爵は体裁を気にする方に見えていた。
だから「離婚なんてみっともない事をさせるか!」なんて、仰りそうだと思っていたけど、案外娘には弱いのかもしれない。
正直な所、うらやましい!
まぁ私は、どうにか自分で切り抜けきれる力が付いたから、それで良しとしよう。
「では、私はこれで失礼致します」
何よりも、これからは自由に生きられるのだから!
何て素晴らしいのだろう!
思わずスキップしたくなるのを必死に耐える。
「あっ、あぁ……」
呆気なく終わったからか、クルッと背を向けた2人から、戸惑った雰囲気がする。
「えっ、なに? ちょっとアッサリしすぎじゃない?」
周りからも、どよめきが聞こえてくる。
今日の招待客は、フールカデ家と懇意にしている方々だった。
きっとアルノルフ様かアンネローゼ様から事前に話しを聞いて、ワクワクと協力していたのかもしれない。
人の不幸は蜜の味、って言うものね。
でもギャラリーを満足させる為に、長居なんてする気はなかった。
私は今までで1番優雅にお辞儀をして、晴れやかな笑顔で退出をした。
あなたにおすすめの小説
【本編完結】真実の愛を見つけた? では、婚約を破棄させていただきます
ハリネズミ
恋愛
「王妃は国の母です。私情に流されず、民を導かねばなりません」
「決して感情を表に出してはいけません。常に冷静で、威厳を保つのです」
シャーロット公爵家の令嬢カトリーヌは、 王太子アイクの婚約者として、幼少期から厳しい王妃教育を受けてきた。
全ては幸せな未来と、民の為―――そう自分に言い聞かせて、縛られた生活にも耐えてきた。
しかし、ある夜、アイクの突然の要求で全てが崩壊する。彼は、平民出身のメイドマーサであるを正妃にしたいと言い放った。王太子の身勝手な要求にカトリーヌは絶句する。
アイクも、マーサも、カトリーヌですらまだ知らない。この婚約の破談が、後に国を揺るがすことも、王太子がこれからどんな悲惨な運命なを辿るのかも―――
聖女を無能と罵って婚約破棄を宣言した王太子は追放されてしまいました
もるだ
恋愛
「お前とは婚約破棄だ! 国から出ていけ!」
王命により怪我人へのお祈りを続けていた聖女カリンを罵ったのは、王太子のヒューズだった。若くて可愛い聖女と結婚するつもりらしい。
だが、ヒューズの暴挙に怒った国王は、カリンではなく息子の王太子を追放することにした。
双子の片割れと母に酷いことを言われて傷つきましたが、理解してくれる人と婚約できたはずが、利用価値があったから優しくしてくれたようです
珠宮さくら
恋愛
ベルティーユ・バランドは、よく転ぶことで双子の片割れや母にドジな子供だと思われていた。
でも、それが病気のせいだとわかってから、両親が離婚して片割れとの縁も切れたことで、理解してくれる人と婚約して幸せになるはずだったのだが、そうはならなかった。
理解していると思っていたのにそうではなかったのだ。双子の片割れや母より、わかってくれていると思っていたのも、勘違いしていただけのようだ。
これまでは悉く妹に幸せを邪魔されていました。今後は違いますよ?
satomi
恋愛
ディラーノ侯爵家の義姉妹の姉・サマンサとユアノ。二人は同じ侯爵家のアーロン=ジェンキンスとの縁談に臨む。もともとはサマンサに来た縁談話だったのだが、姉のモノを悉く奪う義妹ユアノがお父様に「見合いの席に同席したい」と懇願し、何故かディラーノ家からは二人の娘が見合いの席に。
結果、ユアノがアーロンと婚約することになるのだが…
妹のせいで婚約破棄になりました。が、今や妹は金をせびり、元婚約者が復縁を迫ります。
百谷シカ
恋愛
妹イアサントは王子と婚約している身でありながら騎士と駆け落ちした。
おかげでドルイユ伯爵家は王侯貴族から無視され、孤立無援。
「ふしだらで浅はかな血筋の女など、息子に相応しくない!」
姉の私も煽りをうけ、ルベーグ伯爵家から婚約破棄を言い渡された。
愛するジェルマンは駆け落ちしようと言ってくれた。
でも、妹の不祥事があった後で、私まで駆け落ちなんてできない。
「ずっと愛しているよ、バルバラ。君と結ばれないなら僕は……!」
祖父母と両親を相次いで亡くし、遺された私は爵位を継いだ。
若い女伯爵の統治する没落寸前のドルイユを救ってくれたのは、
私が冤罪から助けた貿易商の青年カジミール・デュモン。
「あなたは命の恩人です。俺は一生、あなたの犬ですよ」
時は経ち、大商人となったデュモンと私は美しい友情を築いていた。
海の交易権を握ったドルイユ伯爵家は、再び社交界に返り咲いた。
そして、婚期を逃したはずの私に、求婚が舞い込んだ。
「強く美しく気高いレディ・ドルイユ。私の妻になってほしい」
ラファラン伯爵オーブリー・ルノー。
彼の求婚以来、デュモンの様子が少しおかしい。
そんな折、手紙が届いた。
今ではルベーグ伯爵となった元婚約者、ジェルマン・ジリベールから。
「会いたい、ですって……?」
=======================================
(他「エブリスタ」様に投稿)
絶縁状をお受け取りくださいませ旦那様。~離縁の果てに私を待っていたのは初恋の人に溺愛される幸せな異国ライフでした
松ノ木るな
恋愛
アリンガム侯爵家夫人ルシールは離婚手続きが進むさなかの夜、これから世話になる留学先の知人に手紙をしたためていた。
もう書き終えるかという頃、扉をノックする音が聞こえる。その訪ね人は、薄暗い取引で長年侯爵家に出入りしていた、美しい男性であった。
婚約破棄されましたが、私はあなたの婚約者じゃありませんよ?
柴野
恋愛
「シャルロット・アンディース公爵令嬢!!! 今ここでお前との婚約を破棄するッ!」 ある日のこと、学園の新入生歓迎パーティーで婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロット。でも……。 「私はあなたの婚約者じゃありませんよ? どなたかとお間違いなのでは? ――そこにいる女性があなたの婚約者だと思うのですが」 「え!?」 ※ざまぁ100%です。
※小説家になろう、カクヨムに重複投稿しています。
幼なじみで私の友達だと主張してお茶会やパーティーに紛れ込む令嬢に困っていたら、他にも私を利用する気満々な方々がいたようです
珠宮さくら
恋愛
アンリエット・ノアイユは、母親同士が仲良くしていたからという理由で、初めて会った時に友達であり、幼なじみだと言い張るようになったただの顔なじみの侯爵令嬢に困り果てていた。
だが、そんな令嬢だけでなく、アンリエットの周りには厄介な人が他にもいたようで……。