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「さて、これからどうしよう」
外に出れば夕暮れ時。
そろそろ店も閉まるだろう。
婚約破棄の後となれば、乗ってきた馬車は使えない。
しかも何の準備もなく、突然放り出されたのだから、さすがにちょっと困ってしまう。私は途方に暮れて、思わず空を仰ぎ見た。
だって、行きたい所もやりたい事も多すぎるのだ。
「あぁ、どこも魅力すぎて、すぐには決められない!」
しかも、頭はずっとウキウキ、ふわふわしているのだ。
まったく、考えがまとまらなかった。
「とりあえず、いったんどこかに落ち着いた方が、良いわよね……」
その為にも、まずこのドレスだけでも売り捌こう。
「お店が閉まっちゃう前に、急がなきゃ」
さっさと質屋へ行って、このドレスを元手に現金を手に入れるのだ。
鼻歌を歌いながら、私は足取り軽く歩き出した。
そして。
『アデナウアー家の侯爵令嬢が護衛騎士と駆け落ちをした』とか。
『アデナウアー家に賠償を求めるフールカデ家へ、アデナウアー家がDV、モラハラによる慰謝料と婚約無効の訴えを起こした』など。
楽しいゴシップネタが社交界を揺るがすようになるのは、それから1年後のことだった。
「まぁ、そんな遠いお貴族様の事なんか、俺達には関係ないけどな」
「そうね!」
ハハハ、と目の前では、仲間達が笑っていた。
そうそう、もう私には何の関係もない事なのだ。
だから、あのクソ元婚約者が。
『やっぱり、俺には君しかいない』
と実家へせっせと使いを出している事も。
権威に弱いあのお父様が、必死に私の捜索をしている事も。
今の私には、何の関係もない事だった。
「エナのお陰で、連合国のギルド連盟に加入出来たし、来週にはこの国を出るか?」
「そうね、色々行ってみたいものね」
これから行く場所や、やれる事を考えると、わくわくする。
自分の身を守る為に必死に身につけた技術だけど。どうやら、私には魔術と剣術に隠れた才能があったらしい。
お陰でエナとして、生き始めた私の人生はバラ色だった。
〔完〕
外に出れば夕暮れ時。
そろそろ店も閉まるだろう。
婚約破棄の後となれば、乗ってきた馬車は使えない。
しかも何の準備もなく、突然放り出されたのだから、さすがにちょっと困ってしまう。私は途方に暮れて、思わず空を仰ぎ見た。
だって、行きたい所もやりたい事も多すぎるのだ。
「あぁ、どこも魅力すぎて、すぐには決められない!」
しかも、頭はずっとウキウキ、ふわふわしているのだ。
まったく、考えがまとまらなかった。
「とりあえず、いったんどこかに落ち着いた方が、良いわよね……」
その為にも、まずこのドレスだけでも売り捌こう。
「お店が閉まっちゃう前に、急がなきゃ」
さっさと質屋へ行って、このドレスを元手に現金を手に入れるのだ。
鼻歌を歌いながら、私は足取り軽く歩き出した。
そして。
『アデナウアー家の侯爵令嬢が護衛騎士と駆け落ちをした』とか。
『アデナウアー家に賠償を求めるフールカデ家へ、アデナウアー家がDV、モラハラによる慰謝料と婚約無効の訴えを起こした』など。
楽しいゴシップネタが社交界を揺るがすようになるのは、それから1年後のことだった。
「まぁ、そんな遠いお貴族様の事なんか、俺達には関係ないけどな」
「そうね!」
ハハハ、と目の前では、仲間達が笑っていた。
そうそう、もう私には何の関係もない事なのだ。
だから、あのクソ元婚約者が。
『やっぱり、俺には君しかいない』
と実家へせっせと使いを出している事も。
権威に弱いあのお父様が、必死に私の捜索をしている事も。
今の私には、何の関係もない事だった。
「エナのお陰で、連合国のギルド連盟に加入出来たし、来週にはこの国を出るか?」
「そうね、色々行ってみたいものね」
これから行く場所や、やれる事を考えると、わくわくする。
自分の身を守る為に必死に身につけた技術だけど。どうやら、私には魔術と剣術に隠れた才能があったらしい。
お陰でエナとして、生き始めた私の人生はバラ色だった。
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