妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。

桗梛葉 (たなは)

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第1 恋の期間

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1年間だけの恋をしよう。

巡る四季を一緒に過ごして、その全てを記憶にしっかりと焼き付けて。なによりも大切な思い出として、そっと心にとっておこう。

辺境伯令息であるリオネル様に仕えることになった時から、私はずっとそんなことを思っていた。

だって私は代わりでしかない。最後には本物のレナがやってくる。そして私は人知れず、この舞台から退場させられてしまうのだ。
これはお父様によって組まれたそんなト書きのお話しなのだ。

「レナ、これからもずっとそばに居てくれないか?」

だから優しくそう言われた時も、私は本当は泣きたかった。でもリオネル様が求めているレナこと、姉のエレンだって、同じようにそばに居たいと望むはずだ。

「はい、ずっとおそばに置いて下さい」

だからこの言葉は嘘にはならない。リオネル様のそばにレナが居続けるのは、これからもずっと変わらない。

ただそれが私ではない、というだけだった。

どうしてリオネル様が求めるレナが私じゃないんだろう。一卵性の双子なはずなのに、どうしてこうも違うのだろう。

そんなこと、これまでもさんざん思ってきたのだから、今さら考えても仕方がない。

ちゃんと分かっているはずなのに、それでもこんな時にはフッと思ってしまうのだ。

「嬉しいよ。必ずレナを大切にする」

優しく微笑んでくれたリオネル様に、私もフワッと微笑み返した。

胸がズキズキと痛んでいた。

思い合う相手と生涯を誓い合う瞬間なのに。リオネル様にとっても大切な瞬間を、偽物の私が過ごしてしまっている。

想いを踏みにじるような行為だった。本当なら許されるようなことじゃない。

でもエレナである私が代わりにそう言ったのは、エレンにとってもリオネル様にとっても、こんな事態を引き起こしたお父様に対しても正しいはずだ。

正しくないのはいつだって、偽物でしかない私だけだった。

抱き寄せようとするリオネル様の腕をスルリとかわす。そして代わりとして、その手を握ってそっと頬へ押しあてた。

この腕に抱きしめられても良いのは私じゃない。だけど私も思い出に、温もりを少し感じてみたかった。だからこれは、偽物の私に許されるギリギリの触れ合いだった。

聡明で有名なリオネル様だから、避けたこともきっと気付かれている。だけどリオネル様はそんな私になにも言わなかった。

ただ押し当てた頬を掌でスルリと撫でて、もう一度フッと笑ってくれた。

「レナのペースでいけばいい」

そんなことを言われたら、私はなんだか泣きたくなってくる。やっぱり見抜かれていたのに、それでもこうやって合わせてくれる。

「私にはもったいないぐらいのご配慮を、ありがとうございます」

「レナに優しくしないで、誰に優しくするって言うんだ」

そう言ったリオネル様が笑っていた。私は、私が受けるべき優しさではないと知っている。だからその笑みへは、曖昧に笑い返すしかなかった。
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