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第49 初めまして、愛される日々 6
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「失礼致しました。そのような点からブランシャール男爵令嬢をおそばへ置かれて居たのですね」
「えぇ、レナは日頃から商会を通じて学ばれていたようで、リオネルをサポートするには十分の知識を持ち合わせていましたから、本当に助かりましたわ」
「まぁ、そうでしたの。素晴らしいわ」
私に向かって、にこやかに笑うエバース伯爵夫人が何を考えているのかは分からなかった。
だいぶ社交界ではやり手な方なのかもしれない。考えを読ませないその笑顔は、まるで大きなギルドの代表の方々を前にした時のようだった。
「お褒めにあずかり光栄でございます」
だから、私も目を反らさずにニコッと微笑み返した。
視線を逸らしたり、謙遜したり、自分を小さく見せたりしたらダメなのだ。あくまでも言葉や態度は下手に出つつ、気持ちは一歩も譲らないぐらいの意気込みでいないと、こういう相手には飲まれてしまう。
「では、娘にもその辺りの知識を教育致しましょう」
「いえ、これは私どもカナトス領に限った話ですわ。ミカエラ様はご立派な淑女でいらっしゃいますもの、すでに数多引く状態だとうかがっていますわ。それにレナをそばに置きますのも、これだけの理由ではありませんから」
「……では他にどのような理由が?」
「あら、ちょうど当人がやってきましたわ。見ていらっしゃいますと、よく分かりますわよ」
「マ、マエリス様」
視線を向けた先には使用人に案内をされるリオネル様の姿があった。ようやくご用が終わったのだろう。
この後ご一緒できることは嬉しい。だけど、今は私にとってはタイミングが悪かった。
クスクスと面白そうに笑うマエリス様が何を指しているのか。それがハッキリと分かる私は恥ずかしくて仕方がなかった。
その声に私の方を向いたリオネル様が、フワッと柔らかな笑顔になった。そのまま使用人の方を断って早足で近付いてくる。
「だいぶ待たせただろうか?」
そばに立ったリオネル様は何がそんなに嬉しいのか、と戸惑ってしまうほどニコニコと微笑んでいた。
「リオネル、こちらはエバース伯爵夫人とミカエラ令嬢ですわ」
「リオネル様、本日はお会いできて光栄ですわ」
とびっきりの笑顔を浮かべたミカエラ様の顔からは、さっきまでの険しさは消えていた。やっぱり鍛え抜かれた令嬢のスキルは素晴らしいものだった。
「あぁ、私もだ」
その挨拶へリオネル様が表情を調え、口許へ柔らかな笑みを浮かべて挨拶を返す。最近ではご一緒の時には全く見ない、よそ行き用の笑顔だった。
「よろしければ、改めてあちらにお茶の席を設けますため、このままリオネル様もご一緒にお茶などいかがでしょうか?」
そう言ってエバース伯爵夫人が使用人を呼び寄せようとする動きをリオネル様が片手を上げて制止した。
「いや、今日はこの後に予定も詰まっている。遠慮をしておこう」
そう言って微かに微笑んだリオネル様の表情は、これまで市井でよく耳にしていた通り、爽やかさで満ちていた。
リオネル様が向けていた視線に「そうね」とマエリス様も頷いて立ち上がる。
「では、行こうかレナ」
だけど私に手を差し出した途端、リオネル様の顔や声がガラリと変わってしまうのだ。ひどく甘いその声音に、慣れない私は差し出された手を取る動きが止まってしまう。
勘違いなんて言葉では片付けきれないほど、あからさますぎる差だった。私はまた顔が熱くなって、もういっそうのこと逃げ出したい気持ちにさえなってくる。
「ほら、ごらん頂けましたでしょ? この状況を」
マエリス様がおかしくて仕方がない、というようにクスクス笑っていた。
これまでに市井で見られていたリオネル様の姿とあまりに違っているせいだろう。チラッと見たエバース伯爵夫人とミカエラ様はもう呆気にとられているようだった。
「えぇ、レナは日頃から商会を通じて学ばれていたようで、リオネルをサポートするには十分の知識を持ち合わせていましたから、本当に助かりましたわ」
「まぁ、そうでしたの。素晴らしいわ」
私に向かって、にこやかに笑うエバース伯爵夫人が何を考えているのかは分からなかった。
だいぶ社交界ではやり手な方なのかもしれない。考えを読ませないその笑顔は、まるで大きなギルドの代表の方々を前にした時のようだった。
「お褒めにあずかり光栄でございます」
だから、私も目を反らさずにニコッと微笑み返した。
視線を逸らしたり、謙遜したり、自分を小さく見せたりしたらダメなのだ。あくまでも言葉や態度は下手に出つつ、気持ちは一歩も譲らないぐらいの意気込みでいないと、こういう相手には飲まれてしまう。
「では、娘にもその辺りの知識を教育致しましょう」
「いえ、これは私どもカナトス領に限った話ですわ。ミカエラ様はご立派な淑女でいらっしゃいますもの、すでに数多引く状態だとうかがっていますわ。それにレナをそばに置きますのも、これだけの理由ではありませんから」
「……では他にどのような理由が?」
「あら、ちょうど当人がやってきましたわ。見ていらっしゃいますと、よく分かりますわよ」
「マ、マエリス様」
視線を向けた先には使用人に案内をされるリオネル様の姿があった。ようやくご用が終わったのだろう。
この後ご一緒できることは嬉しい。だけど、今は私にとってはタイミングが悪かった。
クスクスと面白そうに笑うマエリス様が何を指しているのか。それがハッキリと分かる私は恥ずかしくて仕方がなかった。
その声に私の方を向いたリオネル様が、フワッと柔らかな笑顔になった。そのまま使用人の方を断って早足で近付いてくる。
「だいぶ待たせただろうか?」
そばに立ったリオネル様は何がそんなに嬉しいのか、と戸惑ってしまうほどニコニコと微笑んでいた。
「リオネル、こちらはエバース伯爵夫人とミカエラ令嬢ですわ」
「リオネル様、本日はお会いできて光栄ですわ」
とびっきりの笑顔を浮かべたミカエラ様の顔からは、さっきまでの険しさは消えていた。やっぱり鍛え抜かれた令嬢のスキルは素晴らしいものだった。
「あぁ、私もだ」
その挨拶へリオネル様が表情を調え、口許へ柔らかな笑みを浮かべて挨拶を返す。最近ではご一緒の時には全く見ない、よそ行き用の笑顔だった。
「よろしければ、改めてあちらにお茶の席を設けますため、このままリオネル様もご一緒にお茶などいかがでしょうか?」
そう言ってエバース伯爵夫人が使用人を呼び寄せようとする動きをリオネル様が片手を上げて制止した。
「いや、今日はこの後に予定も詰まっている。遠慮をしておこう」
そう言って微かに微笑んだリオネル様の表情は、これまで市井でよく耳にしていた通り、爽やかさで満ちていた。
リオネル様が向けていた視線に「そうね」とマエリス様も頷いて立ち上がる。
「では、行こうかレナ」
だけど私に手を差し出した途端、リオネル様の顔や声がガラリと変わってしまうのだ。ひどく甘いその声音に、慣れない私は差し出された手を取る動きが止まってしまう。
勘違いなんて言葉では片付けきれないほど、あからさますぎる差だった。私はまた顔が熱くなって、もういっそうのこと逃げ出したい気持ちにさえなってくる。
「ほら、ごらん頂けましたでしょ? この状況を」
マエリス様がおかしくて仕方がない、というようにクスクス笑っていた。
これまでに市井で見られていたリオネル様の姿とあまりに違っているせいだろう。チラッと見たエバース伯爵夫人とミカエラ様はもう呆気にとられているようだった。
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