神様に貰ったスキルで世界を救う? ~8割方プライベートで使ってごめんなさい~

三太丸太

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第四章 討伐依頼

第50話 初めての依頼

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「あの子のお姉さんが魔物に襲われて大けがをしたらしくて……。お医者さんでも治せなくて、お姉ちゃんは外に出られなくなっちゃったって。それでお姉ちゃんを治して魔物も退治してほしいと……」

 悲しそうな顔をしながらお姉さんが教えてくれた。

「魔物退治ならギルドが動いてもいいんじゃないの?」
「あの姉妹はティルディスから西に40㎞ほど離れたブロックホーンという村に住んでいたのですが、実は2週間前に要請を受けて既に巡回部隊が調査に向かっていたのです」
「あ、もう行っていたんだ」
「はい。でも魔物も<ワームホール>も見つからなかったんです。それで引き返した後に、また村から魔物が出たと報告があったので、1週間前にも巡回部隊が向かいました。しかしまたしても何も見つからず、引き返した後にご両親とお姉さんが襲われたようで……」

<ワームホール>がないのに魔物に襲われるという事は討ち漏らした魔物だろうか?

「そして3日前、クランにも要請し、巡回部隊と討伐部隊が再度向かいました。しかし、やはり魔物も<ワームホール>も見つかりませんでした。被害は出ているものの、これ以上一か所にハンターを集中して派遣するわけにもいかず、高ランクのハンターに特別依頼を出すべきかとギルドでも協議中でして……」
「なるほど。……ご両親はどうなったんです?」
「残念ながら……」
「そうか……。分かった。じゃあオレが話を聞きますよ。」
「本当ですか!? ありがとうございます!」

 泣きながらも食い下がる女の子の傍に行き、目線を合わせるように屈んで話しかける。

「こんにちは。僕は“ブルータクティクス”というクランのヴィトって言うんだ。お名前を伺ってもいいかな?」
「初めまして! ブロックホーン村から来ました、リルファです。7歳です! よろしくお願いします!」

 涙を零しながらもこちらを向いてしっかりと挨拶をしてくれた。

「初めまして。リルファちゃん、よろしくね。よかったらお兄ちゃんにお話を聞かせてもらえるかな?」
「本当ですか!? お願いします!」

 ほぼ直角になるくらいに腰を曲げ、頭を下げてお礼を言っている。
 しっかりとした良い子なんだな。

「ちょっとお話を聞ける場所を貸してもらえませんか?」
「はい! ただいまご用意致しますね! リルファちゃん良かったわね! ヴィトさんに任せておけば大丈夫よ!」

 あまり期待値を上げないでほしかったが、彼女もギルドで受けれないことを申し訳なく感じていたのだろう。
 すぐに応接室を準備してくれたので、飲み物をお願いしてリルファちゃんと向かい合って座る。

「じゃあリルファちゃん、僕は受付での話を詳しく聞いていないから教えてもらえるかな? リルファちゃんはギルドに何をお願いしに来たのかな?」
「はい。リルのお姉ちゃんの怪我を治してほしいのと、魔物を倒してほしいんです!」
「わかった。まず、お姉ちゃんの怪我の事を聞かせてもらえる? どこにどんな怪我をしたのかな」

 リルファちゃんはガクッと項垂れて泣きそうな顔をしていた。

「左側のほっぺの所から引っかかれたみたいな傷が出来てるんです……。お医者さんも治療にはお金がかかるし、もしお金があったとしても完全に元通りにすることは出来ないって言われました」
「顔の怪我は辛いね……。他には怪我はないかな?」
「手とか足にもあると思います」
「わかった。後はどんな魔物だったか分かる? どこで襲われたのかな」
「畑のところだったみたいですけど、リルは見てないのでわからないです。お父さんとお母さんとお姉ちゃんが畑に行って、リルは留守番していたら隣のおじさんが大変だって教えてくれて……」

 小さな肩を震わせてまた涙を零すリルファちゃん。

「辛いこと思い出させてしまったね。ごめんね」

 隣に移動して頭を撫でながら落ち着かせる。
 こんな小さな子が辛い中お姉ちゃんの為に行動しているのだから、何とかしてあげたい。

「よし、リルファちゃん。まずお姉ちゃんに会いに行こう。」
「えっ? でもお姉ちゃんは誰とも会いたくないって……」
「でも会って傷を見てみないと治せるかどうかもわからないからね。ただの傷だったら治ると思うんだけど」
「治りますか!?」
「見てみないとわからないから、まずは会ってからだね。お家はどこ? 今日はブロックホーンから来たの?」
「今はティルディスのおじさん、おばさんの家に泊まらせてもらっています……。でもそんなに大きくないお家でお姉ちゃんもお部屋から出てこれないから……」

 また表情が暗くなる。
 肩身の狭い思いをしているんだろうな。

「わかった。じゃあまずはそのお家に行こうか。リルファちゃん、案内してもらえるかな? あ、折角だからこのお菓子も持って帰っちゃえ!」

 手つかずのままだった、職員さんが出してくれたお菓子をリルファちゃんのカバンに詰め込むと少しだけ笑顔が戻った。
 職員さんには後で別なお菓子を差し入れしておこう。

 受付の人にお礼と経過を簡単に伝え、リルファちゃんが居候をしている家に向かう。
 手を繋ぎリルファちゃんの歩幅に合わせてゆっくり歩く。
 リルファちゃんは真剣な表情で辺りをキョロキョロと見渡しながら歩いていく。
 慣れない街で迷子にならないように気を張っているのだろう。
 時折迷いつつも、20分ほど歩いて家に着いた。
 住宅街にある一般的な家庭の家だった。

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