神様に貰ったスキルで世界を救う? ~8割方プライベートで使ってごめんなさい~

三太丸太

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番外編

番外編-2 薬草店<タンブルウィード>の一日 危ないお薬②

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 遂にその時がきた。

 グウェンさんを苦しませていた物体は、するりと喉を通って胃の中に落ちていった。
 真っ赤にした目でこちらを見てほほ笑むグウェンさんをオレは強く抱きしめた。
 あんなものをオレの為に飲んでくれたなんて。
 この人はそんなにもオレのことを愛してくれていたなんて。
 薬の効果などどうでもいい、ただ、オレの為に頑張ってくれたことが嬉しくて涙が止まらなかった。

「うぅっ、苦しい、のだ」

 艶めかしく吐息を漏らし、潤んだ目でオレを見つめて訴えるグウェンさん。
 強く抱きしめすぎてしまっていたようだ。
 慌てて力を緩め、少し体を離して見つめ合う。
 泣きすぎたせいか、すぐそこにあるはずのグウェンさんの顔もはっきりと見えないが、顔が真っ赤になっているのが分かる。
 自分も今までにないくらいドキドキし、呼吸が荒くなっている。
 身体が、顔が、茹った様に熱く感じる。
 胸の奥から何かが込み上げてくるような感じがし、もう何も考えられない。

 はっきりしない視界の中、グウェンさんは体の力を抜いてゆっくりと目を瞑り、少し顎を上げた。
 オレも目を瞑ってゆっくりと顔を近づけていく。
 グウェンさんも抗う様子はなく、遮るものは何もない。
 引き付けられる様にグウェンさんの唇を追いかけていく。
 そして――

 ◆

「――――――――」

 身体が揺れ、何かが聞こえる気がする。
 また神様に呼ばれたのだろうか?
 今は勘弁してほしい。
 何も考えたくない。

「――ィト、-ヴィト!」

 うっすらと意識が戻ってきて、自分が揺すられて呼ばれている事に気が付いた。
 目から下が布に覆われた人の顔が目の前にある。

「ん……? セラーナ? おはよう?」
「ヴィト! よかった! 大丈夫!?」
「え? 大丈夫?」

 何のことか分からず辺りを見回す。
 隣の方で、正座したグウェンさんの前にススリーが立っている様子が見える。
 奥の方にプラントさんもいるようだ。

「2人とも帰ってこないから心配して見に来たら、酷い臭い中で倒れていたんですよ!」

 そういいながら“清めの光ピューリファイ”をかけてくれている。
 そのおかげか少しずつ頭が回り始め、記憶が戻ってきた。

 グウェンさんの調合する薬が臭くて文句を言いに行ったら惚れさせ薬を調合していた。
 それをグウェンさんが飲むのを見ていたら段々ドキドキしてきて……気を失ったのか。
 解毒や解呪などの効果がある“清めの光ピューリファイ”が効くということは、あのブツは毒や呪いの類だったのだろうか……。

 隣からグウェンさんが説教されている声と弁解する声が聞こえてくる。
 どうやらグウェンさんはより効果を高めるためにブツを濃縮していたらしい。
 さらに錬金術のスキルも相まって通常の何倍もの効果を発揮するブツが出来上がったようだ。
 もちろん臭いや刺激も……。

 確かに最後の方の記憶ではグウェンさんのことをとても愛おしく感じていた。
 でも、もしかしたら恋に落ちてドキドキしたという訳ではなく、あのブツの臭いや刺激の影響で涙や動悸、火照りや胸の苦しさなどが生じていたのではないだろうか。
 それを臭いで頭が回らないことと相まって恋のドキドキと勘違いし、恋に落ちたような感覚に陥れるというのが惚れさせ薬の正体なのでは。
 いずれにせよ、こんなブツを世に出してしまうと危険極まりないのでしっかりと処分させなければ。

 そんなことを考えているとタックがやってきた。
 臭いは周辺にも広まっていたらしく、ご近所さんに謝りに行ってくれていたらしい。
 近所迷惑にまでなっていたなんて……。
 後でグウェンさんを連れて再度謝りにいかなければ。

 奥でブツの片付けをしてくれていたらしいプラントさんも戻ってきたので一旦家に戻ることにした。
 説教の続きは帰ってからするらしい。

 ◆

 風呂に入り、着替えを済ませると少しスッキリした気がする。
 リビングに戻るとグウェンさんはまだ3人に囲まれて説教されていた。
 ススリーは近所迷惑になったことについて、意識を失うほど危ない薬を作ったことについて、セラーナとプラントさんは抜け駆けしていい思いをしたことについて怒っていらっしゃる。

 近くのソファに座ると怒られて涙目になっているグウェンさんと目が合う。
 先ほどのことを思い出してドキッとし、目を逸らしてしまった。
 グウェンさんも同じようで顔を赤くしている。
 まだ薬の効果が残っているのだろうか……?

「あー! 何見つめ合って頬を赤らめてるんですか!」
「ち、ちがうのだ! なんかその……ちがうのだぁ」

 真っ赤な顔を両手で覆い、モジモジしている姿がやはり愛おしく感じる。

「違わないよ! ズルいよグウェンさんばっかり!!」
「ヴィトもなに照れているんですか!」
「ちち、ちがうよ。お風呂でのぼせただけだよ」

 矛先がこっちに来るとは思わず、苦しい言い訳をする。
 今度はオレが2人に責められる。
 その間、指の隙間からチラッとこちらを覗いたグウェンさんと再び目が合う。

 やっぱりドキドキしてまた目を逸らしてしまった。
 セラーナとプラントさんがこちらに詰め寄ってくるが、もう2人の言葉は耳に入ってこない。

 だめだ、このままじゃ生活に支障が出てしまう!
 こんな時はアレしかない!!

「タックー!! オレを殴ってくれぇー!」

 頬に衝撃が加わり、身体がふわっと浮いて後ろに投げ出されていく。
 あの時と同じ痛みを感じながら、オレは本日2回目の意識を手放すことにした。
 目が覚めた時は、いつもの状態に戻っていることを願いながら……。

 ◆

 意識を取り戻した後も若干意識しまうことがあったが、バレると説教が始まるので必死で抑えて過ごしていた。
 グウェンさんは普通に振舞おうとしているのがバレバレで、話しをする度にすぐ顔を真っ赤にしていた。
 話をしていなくても時折思い出してはクネクネと恥ずかしがり、その度にセラーナとプラントさんに詰め寄られていた。

 何日か経ち、徐々に以前の日常が戻ってきたが、リビングで寛いでいるとセラーナとプラントさんが近くに寄ってきて、やたら話しかけてくるという事があった。
 2人ともうっすらとあの時の臭いを漂わせて……。
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