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「わかった。君がそう望むならそうしよう」
良かったと心の中で思う。
車の中で明細を見せて貰い、お金を払った。
「これからのことですが、社長には一切近付きませんので、ご安心ください」
社長の運命の相手が僕だとして、迷惑をかける訳にはいかない。
「...それは困る。私はもっと君のことが知りたい」
「...え?」
僕に対して興味を持つのは、運命の相手だからだろうか?
「迷惑だろうか?正直に言って欲しい」
社長と関われるのは嬉しいが、それはプライベートではなく仕事の場合だ。
仕事が認められて一緒に仕事をしたり。
それに僕には春がいる。
社長との時間で春を蔑ろにする訳にはいかない。
「すみません」
「わかった。君を困らせたくはないからな」
「ありがとうございます」
僕の意見を尊重してくれる...。
やっぱり社長はいい人だと思う。
「お世話になりました、失礼します」
車を降りようとすると引き止められる。
「名刺だけ受け取ってくれないか。何かあればいつでも力になる」
「そんな...」
「いや、私の為に貰ってくれ。...心配なんだ」
この名刺を貰うことで、社長の心配が和らぐのであれば良いかなと思った。
社長の車を降りる。
家の中に入ると、心が落ち着いた。
名刺には会社名と役職、名前、それから裏に電話番号が書いてある。
貰った名刺は保管しておこう。
名刺のことといい、社長はいい人すぎるのではないか。
ここまで優しいと何か下心でもあるのかと疑ってしまう。
首を振る。
考えに没頭するのは後にしよう。
せっかく時間があるのだし、ハンバーグでも作ろうか。
スマホの着信音が鳴る。
保育園からだ。
まだ迎えの時間には早いはずだけれど。
春に何かあったのかもしれない。
「もしもし、桜田です」
「青空保育園の佐藤です。突然申し訳ありません。甲斐田亮と名乗る方が春くんを迎えに来たのですが、迎えを頼まれましたか?」
甲斐田亮...。
「...いえ、全然頼んでいません。絶対に渡さないで下さい。お願いします。今から迎えに行きます」
なんであの男が今更出てくるんだ。
保育園からの電話が切れると急いで身支度をして向かった。
保育園の前に着くと赤髪の男が立っていた。
染められた赤い髪に耳のピアス。
記憶の中の風貌とあまり変わっていなかった。
「よぉ。そんなに急いで息が切れてるぞ」
「あんたのっせいで」
僕の頬を片手で掴まれる。
「いつからそんなに偉くなったんだ?」
横暴さも相変わらずのようだ。
「...っ!」
「まぁいい。要件はこれだ」
婚姻届をひらひらと見せる。
まさか再婚しろと?
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