義兄が溺愛してきます

ゆう

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付き合う(やっと)

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赤坂さんを見送りにいく。
偽の彼氏としての最後の役目。

「また明日ね。皆には別れたって言っとくから」

勿論、赤坂さんの名誉の為にも俺が振られた体で言う。
そもそも、俺の我儘でこうなったわけだし。

「はい!また明日」

家へ帰ったら、恋に告白の返事をしよう。
恋のことを好きになってから、随分と長い回り道をしてしまった。
初めから伝える勇気がなかった俺の責任。

家へ帰ると、咲さんが夕食を作っていた。

「おかえり!運んで頂戴~」

「ただいま、運ぶよ」

ご飯の入ったお椀をリビングへ運ぶ。

「恋~!ご飯だから降りてきて」

恋が降りてきて一緒に運ぶ。
今すぐにでも告白の返事をしたいけれど、咲さんがいるから。
2人っきりの時……ご飯食べ終わってからが丁度いいかな。

「「「いただきます」」」

父は例の通り仕事でいない。
ご飯を食べながら考える。
もし恋と付き合えたとして、周りから反対されるだろうか。
咲さんは悲しむだろうか。

勿論恋と付き合いたいけど……、そのせいで恋の大切な母親を傷つけてしまうと思うと胸が痛む。

ダメだな、恋愛のこととなると途端にネガティブになってしまう。
認めて貰えなかったら、……認めて貰えるよう努力するしかない、か。

ご飯を食べ終わると、恋の部屋へ行く。
ノックをすると入っていーよ、と返事が返ってきた。

「翔義兄……告白の返事はしなくていいからねっ!」

「本当に?」

「だって、今は彼女がいるでしょ。叶わないって分かってるし。だからって諦めてるわけじゃないけど!」

諦めないところ、恋らしいな。
俺は1度諦めようとした身だから、それが眩しく感じた。

「今したい、告白の返事」

「ええ!?」

「ずっと好きだよ、恋」

「……え?どういうこと」

呆然とする恋。
振られると思い目を瞑っていたのだろう。
今度は目をぱちぱちさせている。

「本当はずっと恋のことが好きだったんだ。今も変わらず」

「彼女いたじゃん!」

「あれは恋を諦めようと思って協力して貰ったんだ」

偽の彼女をつくった訳を説明した。

「馬鹿じゃん!勉強では頭いいくせに!」

「そうだよね……」

それはつくづく思う。
恋愛のこととなるとネガティブになってしまうし、頭が上手く回らなくなる。

「でも、翔義兄に彼女が出来てやっと気持ちを自覚した俺が言えることでも無いけど」

「うん、恋は鈍いし本当に人誑し」

「翔義兄、結構言う様になった?」

「これからは思っていることはっきり伝えようと思ってね」

笑顔で返す。

「……そっちの方が分かりやすくていいよ」

変わりように驚きつつも、認めてくれた様。

「そういえば!赤坂先輩にはお礼と謝罪ちゃんと言った?」

「勿論。後処理もきちんとするつもり」

「それならいいけど……本当赤坂先輩いい人だったね。偽の彼女を引き受けたんだから。多分善意でしょ?」

「うん」

善意と言えば善意だろう。
推しカプを応援したいという個人的な事情はあったらしいけど。

「……あと、凛の事はもう俺の中で片付いたから。ちゃんと自分の気持ちも伝えたし」

そうなのか……。
いつの間にか、恋が成長しているのを感じた。

「で、翔義兄。俺たち両思いで付き合うってことでいいんだよね」

「あ、ああ」

ずいと体と近づけてくる恋。
恋って、恋愛の事となると結構積極的なのでは……。

「翔って呼んでもいい?」

「うん」

「翔」

「……うん」

好きな人から名前を呼ばれるのはいいな。
不思議と心が温かくなった。
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