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親
しおりを挟む振られる覚悟だったから好きだと言われた時、呆然としてしまった。
赤坂先輩とは偽の彼女だったなんて……。
それも僕を諦めるため、とか。
告白してもいないのに勝手に諦めないで欲しい。
まあ、彼女が出来て初めて気持ちを自覚した僕が言えた事じゃないけど。
「翔」
と呼んだときには、ふわふわした気持ちになった。
これが幸せってやつかな。
名前を呼んだ時、翔は少し頬を染めていた。
俺も頬が染まっているだろう。
でも、これじゃ家族にすぐバレてしまう。
ただの仲のいい兄弟には見えないから。
「翔、義父さんと母さんに付き合っていること、伝えよう」
「それは……賛成。今から?」
「うん」
善は急げだ。
後からバレたら余計面倒な事になりそうだから、先に話して置いた方が絶対いい。
勿論反対されることも視野には入れている。
男同士だし、義理とはいえ兄弟だし。
うーん、反対される可能性の方が断然高いな。
2人で階段を下り、リビングに入る。
義父さんは仕事なのかまだ帰ってきていなかった。
まずは母さんに事情を説明しよう。
「母さん、大切な話があるんだけど今いい?」
茶碗を洗っていた手を止める母さん。
「……分かったわ。そこに座って」
「俺たち「恋、俺から言わせて」」
「……うん」
テーブルの下でぎゅと手を握る。
「貴方の息子さんと真剣にお付き合いさせて頂いています」
頭を深く下げる翔。
「「「……」」」
「母さん……?」
沈黙に耐えられず、手で顔を覆う母さんに問いかける。
「……何となくいつかこうなるんじゃないかと思っていたわ。だって、翔くんは恋のこと初めから恋愛対象として見ていたでしょう。私のことを見る理久さんの目と同じ」
母さんは気付いていたんだ、翔の気持ち。
全然気づかなかった俺って……。
「……すみません」
翔が申し訳なさそうに謝る。
「責めている訳じゃないの。……ただこの道を選ぶとはね。2人が付き合うとなったら、この先障害が沢山あるだろうっていうのは目に見えているでしょ。恋はともかく、翔くんは」
「はい、承知の上でです。生きる上で不自由のないように恋を守ります」
翔の目にはもう迷いがなかった。
真っ直ぐ母さんを見据えている。
でも、また翔は全部背負おうとしてる。
それは嫌だ。
「……僕が守られているだけじゃないってのはもう翔、知ってるでしょ。一緒に戦って乗り越える」
「……2人の決意はよく……よく分かったわ。理久さんには私から話をするから……」
「いえ、直接伝えさせてください」
翔がはっきりと言う。
そうだよな、俺たちから伝えないと意味が無い気がする。
本気を伝えたいし。
あー、でも俺の方は大切な翔を……っ!とかって頬打たれたりすんのかな。
でも、そうなったとしても最終的には認めて貰いたい。
家族には認めて貰いたいから。
「分かったわ。……私は話が終わるまで自室にいるから何かあったら呼んで」
疲れた顔に笑みをつくる。
やはり、息子の恋愛事情がショックなのだろう。
「恋、父さんが俺に何かしたとしても、口出さなくていいからね」
それって……。
聞こうとした時、ドアの開く音がした。
「義父さん…」
「父さん、大切な話がある」
「……分かった。その前に咲さんは」
「母さんは自室にいるよ。話が終わったらここに呼ぶから」
と俺が答える。
「俺、咲さんの息子の恋と付き合っている」
義父は目を開き、距離を縮めると掌を振り上げる。
翔はそれを予期していたかのように表情を変えない。
「やめ……っ」
やめてという声は途切れパァンと翔の頬が打たれる。
「お前は、また誑かしたのか!!」
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