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3話 その会社は……1
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土曜日の朝10時。俺は勇也との待ち合わせ場所にやってきた。
駅前の広場にある銅像前。周囲には同じく人を待つ男女やカップルの姿が溢れていた。
……なんでこんな場所を待ち合わせ場所にすんだよ。これで「あ、待った?」とか言われて駆け寄って来たら絶対勘違いされるだろう。
……場所変えるか? 勇也が来たのを確認してから戻ってこれば――いや、俺のために来てくれるのに俺が後から来るのは……。しかし、いや、だが。
「……ユキト、なに一人で百面相してんだ?」
「……お前がこんな場所を指定するからだろう。さっさと職場に行くぞ」
職場を強調して言い、注目を集める前に歩き出す。周囲のカップルも他人のことなんて気にしていないだろうし、さっさと立ち去るに限る。
「おーい、ユキト。そっちじゃなくてこっちなー」
振り返ると反対方向を指差した勇也と、笑いを堪える若い男女の姿があった。
□
「あー、恥かいた」
「別に誰も気にしてねぇって」
広場を早足で通過して目的のビルがある場所を目指して歩く。
「いや、もろに笑われていたから。漫画みたいとか言われたから」
「気にすんなよ。もう会うこともないし、お互い顔も覚えてねぇよ」
「いや、何人か目が合ったし、勇也が名前呼んだから覚えられた可能性がある」
「別にいいだろう! ネガティブかよ! んなこと気にするくらいならブラック会社で働いていることを気にしろよ!」
「だから来たんだろう。あとスマホの充電くらいしっかりしろよ。待ち合わせ場所の変更もできなかったのが一番の問題なんだよ」
待ち合わせ場所についてから何度電話、ライン、メールをしたことか。おそらく後で電源を入れて笑い転がることだろう。
「あー、それはすまん。最近使う機会が減っててな。仕事から戻ったら充電が切れてることが多いんだよ」
「会社から連絡とかないのか?」
「基本的にないな。マジで緊急の時はあるかも知れないけど、少なくともこの一年で会社からかかってきた連絡は一、二回だ」
「マジかよ。すげぇホワイトだな」
「いや、それくらいでホワイトって」
「業務時間外や休みの日にかかってくる電話なんて普通だ。メールは気づいたら積もっているし、返信が遅いとブチ切れられるし。風呂場にも持ち込まないと安心できないぞ」
「……いや、お前、――マジで会社辞めた方がいいぞ。マジで」
◇
駅からしばらく歩くと目的のビルにたどり着いた。地方とはいえ、立地はそれなりに良さそうだ。10階建てのビルを所有しているなら会社の規模も多きそうだな。
「このビルの5階が事務所だ」
「このビル全部じゃないんだな」
「関連会社もあるみたいだけど、よくわからん。とりあえず俺達に関係するのは5階のフロアだけだ」
勇也に先導されてビルの中に入る。エレベーターを使って5階に上がり廊下を進むと、床から天井まである両開きのドアがあった。
高さは3メートルほどあるだろう。横幅は片ドアでも2メートル近くありそうだ。それに装飾が豪華だ。凹凸のある装飾に見たことのない文字か記号のようなものが彫り込んである。この扉だけビルの内装と不釣り合いだ。
「……でかくね?」
「デカイな。しかも自動ドアじゃないから押して開く必要があるぞ」
ドアの前まで来るとさらに圧迫感があった。ドアだけ見ていると王宮にでも迷い込んだ気分になる。
「話はしてあるから扉をあけて入ってくれ。中に担当の人がいるから」
「勇也は来ないのか?」
「一応面接みたいなもんだからな。俺は向こうで待っているから頑張れよ」
それだけ言って勇也は奥にある別の扉に入っていた。
……え? 今日って面接なのか? まだ業務内容なんかを聞きに来ただけなんだが?
「……まぁいいか。面接前に詳しい話を聞いてみよう」
インターホンはない。この扉を叩いていいものなのか悩んだが、ノックしないのもおかしいので、覚悟を決めてコンコンと叩いた。すると中から「どうぞ」という女性の声が聞こえてきた。
一度深呼吸して扉に力を入れて押し開く。見た目ほどは重くなくすんなりと開いていた。片ドアを押しただけなのになぜか反対側の扉も開いて行く。連結しているみたいだ。
……無駄に仰々しいな。
「いらっしゃいませ。師走雪兎さんですね。勇也さんからお話は聞いております。私はこの支部の受付担当のアカネと申します。リ・ルートへ、ようこそ」
駅前の広場にある銅像前。周囲には同じく人を待つ男女やカップルの姿が溢れていた。
……なんでこんな場所を待ち合わせ場所にすんだよ。これで「あ、待った?」とか言われて駆け寄って来たら絶対勘違いされるだろう。
……場所変えるか? 勇也が来たのを確認してから戻ってこれば――いや、俺のために来てくれるのに俺が後から来るのは……。しかし、いや、だが。
「……ユキト、なに一人で百面相してんだ?」
「……お前がこんな場所を指定するからだろう。さっさと職場に行くぞ」
職場を強調して言い、注目を集める前に歩き出す。周囲のカップルも他人のことなんて気にしていないだろうし、さっさと立ち去るに限る。
「おーい、ユキト。そっちじゃなくてこっちなー」
振り返ると反対方向を指差した勇也と、笑いを堪える若い男女の姿があった。
□
「あー、恥かいた」
「別に誰も気にしてねぇって」
広場を早足で通過して目的のビルがある場所を目指して歩く。
「いや、もろに笑われていたから。漫画みたいとか言われたから」
「気にすんなよ。もう会うこともないし、お互い顔も覚えてねぇよ」
「いや、何人か目が合ったし、勇也が名前呼んだから覚えられた可能性がある」
「別にいいだろう! ネガティブかよ! んなこと気にするくらいならブラック会社で働いていることを気にしろよ!」
「だから来たんだろう。あとスマホの充電くらいしっかりしろよ。待ち合わせ場所の変更もできなかったのが一番の問題なんだよ」
待ち合わせ場所についてから何度電話、ライン、メールをしたことか。おそらく後で電源を入れて笑い転がることだろう。
「あー、それはすまん。最近使う機会が減っててな。仕事から戻ったら充電が切れてることが多いんだよ」
「会社から連絡とかないのか?」
「基本的にないな。マジで緊急の時はあるかも知れないけど、少なくともこの一年で会社からかかってきた連絡は一、二回だ」
「マジかよ。すげぇホワイトだな」
「いや、それくらいでホワイトって」
「業務時間外や休みの日にかかってくる電話なんて普通だ。メールは気づいたら積もっているし、返信が遅いとブチ切れられるし。風呂場にも持ち込まないと安心できないぞ」
「……いや、お前、――マジで会社辞めた方がいいぞ。マジで」
◇
駅からしばらく歩くと目的のビルにたどり着いた。地方とはいえ、立地はそれなりに良さそうだ。10階建てのビルを所有しているなら会社の規模も多きそうだな。
「このビルの5階が事務所だ」
「このビル全部じゃないんだな」
「関連会社もあるみたいだけど、よくわからん。とりあえず俺達に関係するのは5階のフロアだけだ」
勇也に先導されてビルの中に入る。エレベーターを使って5階に上がり廊下を進むと、床から天井まである両開きのドアがあった。
高さは3メートルほどあるだろう。横幅は片ドアでも2メートル近くありそうだ。それに装飾が豪華だ。凹凸のある装飾に見たことのない文字か記号のようなものが彫り込んである。この扉だけビルの内装と不釣り合いだ。
「……でかくね?」
「デカイな。しかも自動ドアじゃないから押して開く必要があるぞ」
ドアの前まで来るとさらに圧迫感があった。ドアだけ見ていると王宮にでも迷い込んだ気分になる。
「話はしてあるから扉をあけて入ってくれ。中に担当の人がいるから」
「勇也は来ないのか?」
「一応面接みたいなもんだからな。俺は向こうで待っているから頑張れよ」
それだけ言って勇也は奥にある別の扉に入っていた。
……え? 今日って面接なのか? まだ業務内容なんかを聞きに来ただけなんだが?
「……まぁいいか。面接前に詳しい話を聞いてみよう」
インターホンはない。この扉を叩いていいものなのか悩んだが、ノックしないのもおかしいので、覚悟を決めてコンコンと叩いた。すると中から「どうぞ」という女性の声が聞こえてきた。
一度深呼吸して扉に力を入れて押し開く。見た目ほどは重くなくすんなりと開いていた。片ドアを押しただけなのになぜか反対側の扉も開いて行く。連結しているみたいだ。
……無駄に仰々しいな。
「いらっしゃいませ。師走雪兎さんですね。勇也さんからお話は聞いております。私はこの支部の受付担当のアカネと申します。リ・ルートへ、ようこそ」
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