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31 新たな恋敵③

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もう、会わないだろうって思ってたけど現実はそうもいかないらしい。

「いらっしゃいませ…。」

「こんにちは、アリン。」

善人そうな笑みを浮かべながら今日もこの人はやってくる。
もう今週だけで3日。だいたい1日置きにやってきてご飯を食べたりコーヒーを飲みに来たりしている。まぁそれだけならよかったんだけど、最近は困ったことがあって……

「ねぇねぇ、アリン。いつになったら一緒にお出かけしてくれるの?」

「……すいませんが、プライベートは無理です。…それよりご注文をどうぞ。」

「せっかく仲良くなれたと思ったのに。君の事もっと知りたいだけなんだ。……えっと、日替わり定食1つで。」

「日替わり定食ですね。少々お待ちください。……あの、お付き合いしてる人がいるので…その人が嫌がる事したくないんです。」

すいません、とこれで諦めてもらおうと正直に自分の気持ちを伝えた。
お客さんが1人減ってしまうことになるけど自分やフェアンの気持ちを考えるとこれが1番いい選択でしかない。そう思い頭をペコっと下げ厨房に戻ろうとすると後ろから自分のカフェエプロンをクイクイッと引っ張られた。

「え…なんです…か?」

「付き合ってるってあの人間だろ?」

「なんで…言わなくちゃいけないんですか?」

「アリンを迎えに来た時すごい顔してたしな。……なぁ人間なんだぞ?あいつらはすぐに俺らを差別する。そんな奴相手でいいのか?」

マイトの差別的な発言に思わずカッとなりキツく睨んだ。

ーー確かに人間にはそういう人もいるかもしれない!でも、フェアンは!優しくて、真面目で、人間とか獣人とか分け隔てなく接してくれる素敵な人なのに!!

言い返したいけどここは大切なロバートさんのお店だから大事にしたくない…。そんな悔しい感情が伝わったのだろう。マイトが申し訳なさそうに言った。

「ごめん…そんな顔させるつもりはなかったんだ。アリンはその恋人が大事って事は伝わったよ。」

こ、恋人…!その言葉に思わず顔を赤くさせる。

「ははっ!アリンはすぐ顔に出るね。そんな大切な人がいるなら僕を意識して欲しいとはもう言えないな。でも、君を知りたいって気持ちは本当だよ。……だから友人としてならどうかな?」

「……。まぁ、友人としてなら。」

もともと悪い人ではなさそうだし。恋人がいるって事、そしてその恋人を大切に思ってる事。それをわかってくれてるなら友達くらい、いいのかな…?って思ってしまった。それにもしかしたら僕を通じてフェアンの事も知ってくれれば人間に対する思いも考え直してくれるかも…!

「でも、僕の前でフェアンの悪口言ったら許しませんよ…!」

「もちろん!気をつけるよ。じゃあ友人としてよろしく。」

そう言いながらアリンに片手を差し出した。その手を握り返すのに躊躇いはなかった。





そういえば…いつだったかレイに『アリンは人を信用しすぎる、もっと警戒しろ』なんて言われたことがあったっけ。なんでこの時にそれを思い出さなかったんだろ。


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