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第一話 過労死

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「これでお願いします」

「・・・かしこまりました。良いのですか?こんな問題児で」
奴隷商がニヤニヤしながら答える。
俺はこの目に惹かれた。この反抗的な目、まだ生きることを諦めてない目。
別に同情で買ったわけではない。俺は奴隷ではなくが欲しかったのだ。しっかりとコイツの信用を掴み取れたら奴隷から解放しよう。




















プチップチッ

深夜の薬局に響く。

男一人で電気もつけずに手元だけ照らされた光を頼りに作業する姿は誰から見ても惨めなものだろう。

俺は一人悲しく緩衝材プチプチを潰しているわけでない。

患者様に処方された薬をシートから取り出してパックに入れる作業。薬剤師の面倒な仕事の一つ。一包化。

昔は真夜中にこんな作業、何が悲しくて、、、って思ったこともある。でも、そんな人間的な感情も失せたし、この作業の重要さも理解している。



あと30日分、、、



グラッ




目の前が暗転する。
何かを掴もうと手を伸ばすも虚しく叶わない。
白衣を着たまま床に倒れ込んだ。











「起きてください」
まさか職場の床で寝てしまったのか!?ってことは先輩?薬剤師長?

やらかした。

慌てて目を開けると、そこは見慣れた薬局ではなかった。

「あなたの国の人間はほんと多いですね。過労死?あれはこちらとしても手続きが面倒なのですよね」
ひと目見てわかる。女神だ。この逆らえない神々しさ。

立ち上がって姿勢を正す。何か敬わないといけない。そんな雰囲気を感じたからだ。

「ルールとして、特典を与えてから転生させないといけないんですよね。過労死は女神の手違い扱いなので」

は?

「僕は死んだのですか?」

「はい。立派な過労死です」

「そうですか、、、」
過労死、か。残業150時間ぐらいだったかな。家が薬局だと思えば残業なんて言葉は気にならなくなったけど。
思考が追いつかない。転生?特典?

「では特典の説明をしますね。
まず前提として、あなたはその身で異世界に転移してもらいます。本来の目的は魔王討伐や安定化などが挙げられますが、正直期待してないので無理しなくて結構です。
本題ですが、まず言語が理解できるようになるスキルを与えます。
そして先程の目的に準じた能力、スキルも与えます。主に前世でやってきたことに沿ったスキルになります。
最後に金銭ですが、もちろん日本とは違います。貨幣価値は現地で覚えてもらうとして、お金は現在あなたが持っている額面の100倍にして差し上げます。以上が特典になります」

思考が追いつかないのに更に情報がどんどん押し寄せる。
特典ね、、、実際に生活してみないと何もイメージが湧かない。ん?100倍?ちょっと待てよ?

「ひゃ、100倍ですか!?」

薬学部6年通った後新卒で働いて10年。一人暮らし35歳。ブラックではあったがしっかりと給与が払われる職場だった。もちろん残業代も。
ってことは…

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