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告白
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大学時代の友だちから久しぶりにメールがあったと思ったら、「無料のスゲーAV見つけた」という一文とURLだけだった。
社会人になっても学生時代と変わらねーな。
内容は秘書の陵辱もので、過去に紹介されたAVとの一貫性に半ば呆れながらありがたく視聴する。
昔からOLとか受付嬢とか秘書とか、そんなのばっか探しているヤツだった。
ストーリー皆無で、わざとらしい声にうんざりしつつも、あっさりと勃つのだから我ながらちょろいもんだと思う。
五十川さんも見たりするのかな。
あのクールな顔で指を濡らしてしごいたり、しているのだろうか。
『だ、だめ…やだ、こんなところでッ』
どんなエッチをするんだろう。
『あっあっハァ、ん』
快楽のためだけの映像を見ながら、五十川さんの姿を重ねてみたらヤバかった。
まずい。これは、まずい! 興奮したことに自己嫌悪。なにやってんだ俺。
せっかく、プライベートなことを話しかけても応えてくれるようになったのに。
昼飯も都合がつけば一緒に食べに行っているし、今週末だって、夜釣りに連れて行ってもらうことになっているんだけど。
五十川さんが気を許してくれることで俺の中で俺も知らなかった変なスイッチが入ったらしい。
とはいっても男同士だから、どんなにエロい妄想したって所詮は疑似恋愛…のはずだ。
抜けたとしてもエッチって、男同士で? (ちょっと妄想)…ないない! 五十川さんが実はゲイだったら話は別だけど。…別、って! 五十川さんさえその気ならどうにかなると思ってんのか俺!
煮えた頭をゴンっと窓にぶつける。
「酔った?」
凛々しくハンドルを握る男が横目で聞いてくる。
「へ、平気です」
「もう着くから」
営業車の隣に座ったことはあるけど、休日仕様で前髪のおりた五十川さんの隣というのはいつもと雰囲気が違って、そわそわする。
そわそわして、五十川さんがゲイだったらなんて考えている自分に罪悪感。
俺は頭を振って邪念をはらった。
「っ港の辺りってはじめて行きます!」
「まあ、用事がなけりゃ行くようなとこじゃねえよな」
「なにが釣れるんですか?」
「今日はさ、アナゴ狙ってんだ」
「アナゴ釣れんですか! すご!」
夜釣りに行くという五十川さんに、「いいな~楽しそう!」と言っていると、「来るか」と言ってくれたのが数日前。
こうして土曜日の夕方、「実家の」と言って車で迎えて来てくれて、デートみたいで、だから邪念が去ってくれない。
港に着くと、五十川さんは慣れた手つきでトランクから荷物を出すから、俺は出されたクーラーボックスを肩にかけ、竿を手に持った。
海風は気持ちよく、遠くにコンビナートが見えた。暗くなったら夜景がきれいだろう。
「ワクワクしますね!」
五十川さんは何も言わずに先に立って歩き出す。俺は物珍しくて辺りを見回しながら後を追った。
防波堤の真ん中辺りで足を止め、「ここにするか」と言って折りたたみのイスを広げる。
「海! いいな~海!」
海を見ていると冒険心のようなものが湧き出てくる。無意味に駆け出したいような…俺は内なる少年をどうどうとなだめた。
「竿、寄越せ! 竿!」
「どうぞー」
五十川さんは竿を受け取り、クーラーボックスから何かを取り出す。
「エサですか?」
「そう、ゴカイ…なんだよ?」
ミミズのようなものがいる。気持ち悪くて凝視できない。
「それっ、つけるんですか! ひぃぃ」
「情けねえこと言うなよ」
五十川さんはぶつぶつ文句を言いながらもエサをつけて「ほら」と竿を渡してくれた。
「…こうやって女の子を落としてるんですね」
「なんだそれ」
「誘ったりしないんですか?」
「あー、まあ。来たことはあるよ」
自分で話題を振っておきながら、おもしろくない。おもしろくないが気になる。
「五十川さんって彼女いるんですか?」
「いねえよ」
「モテそうなのに」
「どこが? クマのぬいぐるみ持ってんだぞ」
「ベティかわいいじゃないですか、むしろ好印象そうだけど」
「…俺さ、寝るときもベティと一緒だから、気色悪いだろそんな男。…半笑いやめろよ」
「かわいいと思います」
俺としては本気だったのに、冗談にとられたらしい。
「フォローになってねえし」
自虐的に笑う五十川さんの横顔に劣情をそそられる。
アスファルトに残った昼間の熱気。波の音。潮の匂い。もっと近づきたい。その身体に触れてみたい。
***
やがて陽は落ち、空も海も濃淡の差こそあれ暗闇となった。俺と五十川さんの間にも夜の隔たりがある。
打ち明け話をするにはもってこいだ。
「いつも一人で来てるんですか?」
「たまにな」
「一人で、こんなところで、怖くないですか」
「…怖い? 考えたことなかったな」
声だけがはっきりと耳に届く。
「それに昼だと暑いしな」
「ははっ五十川さん白いから日焼けとか似合わないですね」
「うるせえ、気にしてることを」
「えー? いいじゃないですか」
触りたくなるし。
「よくねえよ…あー、ビール持ってくりゃよかったな」
その時の俺は伝えてしまったらどうなるかよりも、自分の中でもやもやとしている気持ちをはっきりさせたかった。
「俺…好きみたいです」
「なんだよ改まって。波止釣り気に入ったのか?」
「ああ、はい…えっと」
だよな。好きって言って、まさか告白されるとは思わないよな。
姿がはっきり見えないことで冷静さを失っていた。
「なんだよ?」
「…釣りもですけど。五十川さんのことが、好きみたいです」
心臓がどくどくとうるさい。
「意味わかんねえ」
しばらくした後で、ぽつりと五十川さんが言った。
「俺だって、よく分かりません! …男を好きになったのは五十川さんがはじめてですから。つか、怒らないんですか?」
「びっくりしすぎた」
「ははっ」
「笑いごとじゃねえよ」
「スミマセン」
なんだ、告白って簡単だな。これなら付き合えたりするのかな。
「五十川さん?」
無視。
「あ、あの…」
俺の存在ごと無視しているようだった。一歩進んで二歩下がる。
ああ、なんで付き合えるとか思ったんだ。そもそも告白してうまくいくはずないじゃないか。なにを勘違いしてたんだか。
***
夜釣りの一件から、五十川さんは俺を避け続けた。四月の失態のときは露骨に嫌な顔はしても避けることはなかったのに。
静かに、怒っているんだと思う。
必要最低限のことは話すが視線を合わせてもらえず、それは社長にまで気づかれるほどで。
「そういや、五十川と喧嘩してんの?」
商工会の宮本さんと社長そして俺で、駅に隣接したホテルの屋上にあるビアガーデンへ来ていた。
「…すみません。俺がちょっと余計なことをしてしまって…雰囲気悪いですよね」
「勝手に五十川が怒ってんだろ? もともと笑いの絶えない職場ってわけじゃねえし、別にいいけどさ」
「…社長は五十川さんと仲良いですよね?」
「仲良くはねえよ、幼馴染だからなぁ腐れ縁?」
「幼馴染…」
「ご近所さん。五十川は俺の二つ下だな」
「弥田くんでも人を怒らせるとかあるんだなぁ」
宮本さんが信じられないという風に言う。
「なにした?」
にやりと社長が笑う。
「え…っと」
告白を…なんて言えるわけがない。
我ながらバカなことをしたと思う。つい…なんていうか、夜の雰囲気にのまれたのだ。
せっかく仲良くなれていたのに。
自分のことしか考えていなかったから、五十川さんに気まずい思いをさせ、周りにも迷惑をかけている。
もしかして、このままずっとまともに話してもらえないのだろうか。
俺は大バカ野郎だ。居心地の良い場所を自分でぶち壊してどうするんだ! ああ、やばい。喉元が熱い。
「しゃ、社長…すみません。俺、もう…仕事辞めたほうがいいんじゃないかって思います」
「はあ? なに言ってんだよ」
「そんなに深刻?」
「だって…」
「あーもう、まだビール半分も呑んでねえのに泣くな! 面倒だな!」
だって、俺のせいで職場の雰囲気が悪いんだから。辞めて償うくらいしか思いつかない。
「弥田くん?! なんで泣いてんの!」
「泣き上戸なんだよこいつ」
「ビール半分で?」
「いやあ、悪化してる気ぃする」
泣き上戸なのも情けない。場を白けさせて申し訳ない。なにもかもが悔しい。
ダメだってわかっている。泣くと酔いが回って寝落ちするし。でも、泣きはじめると止まらないのだ。
「弥田くーん?」
「いいって、放っとけ」
社長すみません! こんな新入社員で!
***
耳に届くのは…いつかの潮騒か。
覚醒していくほどに、ざわめきのひとつひとつが意味をもちはじめる。笑い声や会話、ジョッキの触れる音。
自分が突っ伏していると理解して、どうしてそうなったかを考えた。
やべ、また泣いたな。
「スミマセン」ともそもそと言い頭を上げてみたが、まだ夢の中にいるらしい。
目の前の席にいるのは宮本さんではなく五十川さんだった。相変わらずの不機嫌そうな顔に深い溜息が出る。
「せめて夢なら笑ってて欲しかった」
「おい、勝手に夢にすんな」
「ははっリアルだなぁ」
眉間のしわを深くした五十川さんは俺の顔へ手を伸ばしてくる。頬をつまみ、指先に力が入る。
「痛い!」
「起きたか?」
「え…」
「お前は学習能力がないのか」
「五十川さん?」
「酒の呑み方くらい覚えろよ」
どうしてここに?
宮本さんも社長もいなくなっていた。
事情はわからないが、また迷惑をかけていることは明白で。久しぶりにちゃんと向き合ってくれていることが嬉しくて。やっぱり好きだとか思ってる自分がいて。
いろんな感情が込み上げてきて、また目頭が熱くなった。
「優しくしないでくださいよー」
「おい! 泣くな! 優しくなんかしてねえだろ!」
「…迎えに来てくれたんじゃないんですか?」
五十川さんは舌打ちをしてビールジョッキをあおる。
「馬場から呼び出されただけだ…お前、軽々しく辞めるとか言うなよ」
「だって…このままずっとぎくしゃくしてなんて働きづらいでしょう」
「だからってなぁ、辞めることないだろ。つーか、人のせいにすんな」
避け続けていたのは五十川さんじゃないか。
「だいたい意味わかんねえんだよ」
「そんな…っ俺だって! 五十川さんなんて無愛想だし怒ってばっかだし、どこに惚れたのかさっぱりわかりません!」
「声がでけえよ! わかんねえなら気のせいだろ! 安心しろ、忘れてやるから。起きたなら出るぞ」
気のせいとか、忘れてやるとか。俺の気持ちは勘違いなんかじゃない。
五十川さんは乱暴に席を立つ。屋上からのエレベーターには他にも乗客がいて、肩の触れる距離にいる男の存在をどうしても意識してしまう。だからやっぱりこの気持ちは嘘じゃない。
振られるにしても、気のせいで済まされたくなんかない。
ホテルを出ると熱気に包まれる。
さっさと一人で帰ろうとタクシーに乗り込む五十川さんの腕を掴んで引き止めた。
「待ってください」
「離せよ」
「…気のせいじゃないですから! 俺、五十川さんで抜けますからね!」
「はあ?」
「エロい目で見てますから!」
「バカだろ」
「気持ち悪いでしょ! だから辞めるって言ってるんです! 軽く考えてるのは五十川さんです!」
待て待て。これって恋と仕事を同時に失うってことか?
五十川さんの言うとおり俺はバカだ。自分のバカさ加減に酔いが醒めた。
「っとに、うるせえな。とりあえず乗れ」
「へ? うわっ」
今度は俺が腕を引かれる番だった。
タクシーに揺られて、着いた先は五十川さんのマンションで。
「やれるもんならやってみろ」とベッドの前で仁王立ちをしている相手が理解できず俺は動くことができない。
「ほらな、怖気づいてんじゃねえか。酔いが醒めたんだろ? さっきのは勢いで言ってただけだって認めろよ」
ビールジョッキ半分のアルコールは醒めているし、仕事を辞めると言ったことは勢いだったと認める。
ただ、五十川さんへの気持ちについては冗談じゃない。
「五十川さんこそ酔ってるんでしょう! 勢いでそんなこと言い出さないでください!」
「ビールなんかで酔うか! 寝ぼけてたんだろ? 謝れば許してやるよ」
「…酔ってないし目も覚めてます! 仕事辞めるって言ったのは…勢いです! すみません! でもっ五十川さんのことは好きですから!」
「チッ、まだ言うか…」
「わあ! ちょっと!」
シャツのボタンを外しはじめるから、俺は慌ててその手を止めた。
「わかってます? 誘惑して困るのは五十川さんですからね!」
「現実を見ろ、弥田は勘違いしてるだけだ。なにをどう勘違いすればそんな結論になるのかさっぱりわからんが、つまんねー男の身体でどうやってエロい想像ができんだよ」
どうしたら信じてもらえるのか。
俺は五十川さんの手を取り握りしめ自分の胸元に引き寄せた。
「わかりますか! すっげぇドキドキしてますから! 勘違いなんかじゃないでしょう!」
五十川さんは気まずそうに視線を逸らす。
「仲良くなりてぇんなら、わざわざこんなことしなくてもいいんだぞ」
「知ってますよ。仲良くなるだけじゃ足りないから、なんかもういろいろテンパってるんじゃないすか」
「全っ然、理解できねえ」
はだけたシャツから見える鎖骨が色づいている。
匂い嗅ぎたい。
そう考えはじめたら、もう我慢ができない。
五十川さんの肩に頭を預けると、「なにすんだよ!」と身体を引かれるから押し倒す格好になった。
意図せず組み敷いた男に、ぐらりと理性が揺らぐ。
やばい。
「証明、しましょうか?」
「は?」
「やれるって」
「……待て」
耳たぶに唇を寄せ、甘噛みする。
「んなっ、ちょ! わかった! わかったから!」
不安そうな表情がたまらない。
無理やりキスをしようとしたらみぞおちを蹴り上げられた。
「っ痛ぁ!」
「なんなんだよ急に!」
「…怖気づいたんですか? 誘ったのは五十川さんじゃないですか」
悔しそうな表情でこちらを睨んでくる。
「まじで目ぇ覚ませよ」
五十川さんはぼそりと言うと、俺の襟元を乱暴に掴んだ。そのまま仏頂面が近づく。
頬に押し付けられた薄い唇の微かな熱に胸が痛い。
「な、なにしてるんですかぁ!」
「気色悪いだろ!」
「えええ! めっちゃ嬉しいですっ! からかわないでくださいよ!」
「チッ、だめか…わっ」
俺も俺だが、五十川さんだって悪い。
襲われてビビっているくせに、どうして煽るようなことしてくるんだ!
「まだ信じてくれてないんですね」
「っし、信じた! 信じたからっ落ち着け弥田!」
見下ろした相手は顔を強張らせていた。
「怖えからなんかしゃべれ!」
怖がらせることは本意ではないが、ちょっともう我慢の限界だった。
五十川さんの眼鏡を外して放り投げる。
「あっ! おいっ乱暴に扱うな!」
「視力ってどれくらいですか?」
「はあ?」
「俺の顔見えてます?」
「…ぼやけてる」
「この距離なら?」
俺が顔を近づけると、五十川さんはぎゅっと目をつぶった。
ああもう、かわいい。なんなんだよ、ちくしょう! かわいすぎて正気が戻ったじゃないか!
「仕事を辞めるな、なんて言ったこと後悔してるでしょう?」
押さえつけていた力を抜く。俺が身体を離すと、五十川さんは恐る恐る目蓋を開けた。
「…してない。辞めるなよ、弥田が辞めたら俺のせいだって馬場に言われ続けるだろ」
辞めるなと言ってくれるのは嬉しいが、理由が腑に落ちない。襲われるかもしれない危険性より社長に責められるほうが嫌だってことか?
納得はできないが、拗ねたような口ぶりで言われるとどうでもよくなった。
五十川さんは俺が投げた眼鏡を探しながら、「…お前がキレるとヤバい奴だってことがよく分かった」と言う。
探し当てた眼鏡をかけると、呆れたように溜息をついた。
「まじで勃つんだ」
隠しようもなく俺の股間は膨らんでいた。
当たり前じゃないか。つか、全然信じてくれないな!
「俺、辞めませんからね」
「…ちょっと検討さして」
「やめませんからね! 仕事も! 五十川さんを好きなことも!」
「俺のことは今すぐ諦めろ!」
「無理です」
「断言すんな! だいたいなんで俺なんだ! 男となんてやれるか!」
「やってみなきゃわからないじゃないですか」
「さっさと帰れ、近寄んな」
五十川さんはそう言って枕を投げつけてくる。
なんの戯れだ! かわいいな!
俺は受け取った枕を抱きしめ匂いを嗅いだ。
「俺…この匂いで抜けます」
「ヤメロ」
「さっきの怯えた表情もすごくよかったです」
「ふざけんな!」
「真剣です…自覚してくださいね、困ってる五十川さんはエロいですから」
「っお前が出て行かないなら俺が出て行く」
話をはぐらかして五十川さんは部屋を出て行った。
どうすればよかったのか。伝え方を変えたところで…どうしたって無理なのか。
「だああ!」
ベッドに倒れ込む。
辞めるなって! なんでそんなこと言えんだよ! 普通な顔して働けんのか? …うわああ、五十川さんの匂い。
ずくんと欲望が疼く。
だめだって。ほんとに、もう。
手を伸ばしてさっさと楽になりたいのをシーツを掴んで堪えた。
「う゛ーー五十川さんのばか…」
諦めてしまえないのは、五十川さんがちょっとは俺に好意を持ってくれているんじゃないかって、思うから。
そりゃ、その好意が…その…性的な意味も含めてってわけじゃないだろうけど。俺だって自覚するのに抵抗はあったし。だから…時間をかければ、五十川さんだって俺を受け入れてくれるんじゃないかなぁ…とか。
無駄な、期待だろうか。やっぱり早まったかなぁ。
部屋の中は静かだった。
出て行った五十川さんはどうしているんだろう。困らせてるよなぁ。
起き上がらなければと思うのに、精神的ダメージが大きすぎて動くことができないでいた。
社会人になっても学生時代と変わらねーな。
内容は秘書の陵辱もので、過去に紹介されたAVとの一貫性に半ば呆れながらありがたく視聴する。
昔からOLとか受付嬢とか秘書とか、そんなのばっか探しているヤツだった。
ストーリー皆無で、わざとらしい声にうんざりしつつも、あっさりと勃つのだから我ながらちょろいもんだと思う。
五十川さんも見たりするのかな。
あのクールな顔で指を濡らしてしごいたり、しているのだろうか。
『だ、だめ…やだ、こんなところでッ』
どんなエッチをするんだろう。
『あっあっハァ、ん』
快楽のためだけの映像を見ながら、五十川さんの姿を重ねてみたらヤバかった。
まずい。これは、まずい! 興奮したことに自己嫌悪。なにやってんだ俺。
せっかく、プライベートなことを話しかけても応えてくれるようになったのに。
昼飯も都合がつけば一緒に食べに行っているし、今週末だって、夜釣りに連れて行ってもらうことになっているんだけど。
五十川さんが気を許してくれることで俺の中で俺も知らなかった変なスイッチが入ったらしい。
とはいっても男同士だから、どんなにエロい妄想したって所詮は疑似恋愛…のはずだ。
抜けたとしてもエッチって、男同士で? (ちょっと妄想)…ないない! 五十川さんが実はゲイだったら話は別だけど。…別、って! 五十川さんさえその気ならどうにかなると思ってんのか俺!
煮えた頭をゴンっと窓にぶつける。
「酔った?」
凛々しくハンドルを握る男が横目で聞いてくる。
「へ、平気です」
「もう着くから」
営業車の隣に座ったことはあるけど、休日仕様で前髪のおりた五十川さんの隣というのはいつもと雰囲気が違って、そわそわする。
そわそわして、五十川さんがゲイだったらなんて考えている自分に罪悪感。
俺は頭を振って邪念をはらった。
「っ港の辺りってはじめて行きます!」
「まあ、用事がなけりゃ行くようなとこじゃねえよな」
「なにが釣れるんですか?」
「今日はさ、アナゴ狙ってんだ」
「アナゴ釣れんですか! すご!」
夜釣りに行くという五十川さんに、「いいな~楽しそう!」と言っていると、「来るか」と言ってくれたのが数日前。
こうして土曜日の夕方、「実家の」と言って車で迎えて来てくれて、デートみたいで、だから邪念が去ってくれない。
港に着くと、五十川さんは慣れた手つきでトランクから荷物を出すから、俺は出されたクーラーボックスを肩にかけ、竿を手に持った。
海風は気持ちよく、遠くにコンビナートが見えた。暗くなったら夜景がきれいだろう。
「ワクワクしますね!」
五十川さんは何も言わずに先に立って歩き出す。俺は物珍しくて辺りを見回しながら後を追った。
防波堤の真ん中辺りで足を止め、「ここにするか」と言って折りたたみのイスを広げる。
「海! いいな~海!」
海を見ていると冒険心のようなものが湧き出てくる。無意味に駆け出したいような…俺は内なる少年をどうどうとなだめた。
「竿、寄越せ! 竿!」
「どうぞー」
五十川さんは竿を受け取り、クーラーボックスから何かを取り出す。
「エサですか?」
「そう、ゴカイ…なんだよ?」
ミミズのようなものがいる。気持ち悪くて凝視できない。
「それっ、つけるんですか! ひぃぃ」
「情けねえこと言うなよ」
五十川さんはぶつぶつ文句を言いながらもエサをつけて「ほら」と竿を渡してくれた。
「…こうやって女の子を落としてるんですね」
「なんだそれ」
「誘ったりしないんですか?」
「あー、まあ。来たことはあるよ」
自分で話題を振っておきながら、おもしろくない。おもしろくないが気になる。
「五十川さんって彼女いるんですか?」
「いねえよ」
「モテそうなのに」
「どこが? クマのぬいぐるみ持ってんだぞ」
「ベティかわいいじゃないですか、むしろ好印象そうだけど」
「…俺さ、寝るときもベティと一緒だから、気色悪いだろそんな男。…半笑いやめろよ」
「かわいいと思います」
俺としては本気だったのに、冗談にとられたらしい。
「フォローになってねえし」
自虐的に笑う五十川さんの横顔に劣情をそそられる。
アスファルトに残った昼間の熱気。波の音。潮の匂い。もっと近づきたい。その身体に触れてみたい。
***
やがて陽は落ち、空も海も濃淡の差こそあれ暗闇となった。俺と五十川さんの間にも夜の隔たりがある。
打ち明け話をするにはもってこいだ。
「いつも一人で来てるんですか?」
「たまにな」
「一人で、こんなところで、怖くないですか」
「…怖い? 考えたことなかったな」
声だけがはっきりと耳に届く。
「それに昼だと暑いしな」
「ははっ五十川さん白いから日焼けとか似合わないですね」
「うるせえ、気にしてることを」
「えー? いいじゃないですか」
触りたくなるし。
「よくねえよ…あー、ビール持ってくりゃよかったな」
その時の俺は伝えてしまったらどうなるかよりも、自分の中でもやもやとしている気持ちをはっきりさせたかった。
「俺…好きみたいです」
「なんだよ改まって。波止釣り気に入ったのか?」
「ああ、はい…えっと」
だよな。好きって言って、まさか告白されるとは思わないよな。
姿がはっきり見えないことで冷静さを失っていた。
「なんだよ?」
「…釣りもですけど。五十川さんのことが、好きみたいです」
心臓がどくどくとうるさい。
「意味わかんねえ」
しばらくした後で、ぽつりと五十川さんが言った。
「俺だって、よく分かりません! …男を好きになったのは五十川さんがはじめてですから。つか、怒らないんですか?」
「びっくりしすぎた」
「ははっ」
「笑いごとじゃねえよ」
「スミマセン」
なんだ、告白って簡単だな。これなら付き合えたりするのかな。
「五十川さん?」
無視。
「あ、あの…」
俺の存在ごと無視しているようだった。一歩進んで二歩下がる。
ああ、なんで付き合えるとか思ったんだ。そもそも告白してうまくいくはずないじゃないか。なにを勘違いしてたんだか。
***
夜釣りの一件から、五十川さんは俺を避け続けた。四月の失態のときは露骨に嫌な顔はしても避けることはなかったのに。
静かに、怒っているんだと思う。
必要最低限のことは話すが視線を合わせてもらえず、それは社長にまで気づかれるほどで。
「そういや、五十川と喧嘩してんの?」
商工会の宮本さんと社長そして俺で、駅に隣接したホテルの屋上にあるビアガーデンへ来ていた。
「…すみません。俺がちょっと余計なことをしてしまって…雰囲気悪いですよね」
「勝手に五十川が怒ってんだろ? もともと笑いの絶えない職場ってわけじゃねえし、別にいいけどさ」
「…社長は五十川さんと仲良いですよね?」
「仲良くはねえよ、幼馴染だからなぁ腐れ縁?」
「幼馴染…」
「ご近所さん。五十川は俺の二つ下だな」
「弥田くんでも人を怒らせるとかあるんだなぁ」
宮本さんが信じられないという風に言う。
「なにした?」
にやりと社長が笑う。
「え…っと」
告白を…なんて言えるわけがない。
我ながらバカなことをしたと思う。つい…なんていうか、夜の雰囲気にのまれたのだ。
せっかく仲良くなれていたのに。
自分のことしか考えていなかったから、五十川さんに気まずい思いをさせ、周りにも迷惑をかけている。
もしかして、このままずっとまともに話してもらえないのだろうか。
俺は大バカ野郎だ。居心地の良い場所を自分でぶち壊してどうするんだ! ああ、やばい。喉元が熱い。
「しゃ、社長…すみません。俺、もう…仕事辞めたほうがいいんじゃないかって思います」
「はあ? なに言ってんだよ」
「そんなに深刻?」
「だって…」
「あーもう、まだビール半分も呑んでねえのに泣くな! 面倒だな!」
だって、俺のせいで職場の雰囲気が悪いんだから。辞めて償うくらいしか思いつかない。
「弥田くん?! なんで泣いてんの!」
「泣き上戸なんだよこいつ」
「ビール半分で?」
「いやあ、悪化してる気ぃする」
泣き上戸なのも情けない。場を白けさせて申し訳ない。なにもかもが悔しい。
ダメだってわかっている。泣くと酔いが回って寝落ちするし。でも、泣きはじめると止まらないのだ。
「弥田くーん?」
「いいって、放っとけ」
社長すみません! こんな新入社員で!
***
耳に届くのは…いつかの潮騒か。
覚醒していくほどに、ざわめきのひとつひとつが意味をもちはじめる。笑い声や会話、ジョッキの触れる音。
自分が突っ伏していると理解して、どうしてそうなったかを考えた。
やべ、また泣いたな。
「スミマセン」ともそもそと言い頭を上げてみたが、まだ夢の中にいるらしい。
目の前の席にいるのは宮本さんではなく五十川さんだった。相変わらずの不機嫌そうな顔に深い溜息が出る。
「せめて夢なら笑ってて欲しかった」
「おい、勝手に夢にすんな」
「ははっリアルだなぁ」
眉間のしわを深くした五十川さんは俺の顔へ手を伸ばしてくる。頬をつまみ、指先に力が入る。
「痛い!」
「起きたか?」
「え…」
「お前は学習能力がないのか」
「五十川さん?」
「酒の呑み方くらい覚えろよ」
どうしてここに?
宮本さんも社長もいなくなっていた。
事情はわからないが、また迷惑をかけていることは明白で。久しぶりにちゃんと向き合ってくれていることが嬉しくて。やっぱり好きだとか思ってる自分がいて。
いろんな感情が込み上げてきて、また目頭が熱くなった。
「優しくしないでくださいよー」
「おい! 泣くな! 優しくなんかしてねえだろ!」
「…迎えに来てくれたんじゃないんですか?」
五十川さんは舌打ちをしてビールジョッキをあおる。
「馬場から呼び出されただけだ…お前、軽々しく辞めるとか言うなよ」
「だって…このままずっとぎくしゃくしてなんて働きづらいでしょう」
「だからってなぁ、辞めることないだろ。つーか、人のせいにすんな」
避け続けていたのは五十川さんじゃないか。
「だいたい意味わかんねえんだよ」
「そんな…っ俺だって! 五十川さんなんて無愛想だし怒ってばっかだし、どこに惚れたのかさっぱりわかりません!」
「声がでけえよ! わかんねえなら気のせいだろ! 安心しろ、忘れてやるから。起きたなら出るぞ」
気のせいとか、忘れてやるとか。俺の気持ちは勘違いなんかじゃない。
五十川さんは乱暴に席を立つ。屋上からのエレベーターには他にも乗客がいて、肩の触れる距離にいる男の存在をどうしても意識してしまう。だからやっぱりこの気持ちは嘘じゃない。
振られるにしても、気のせいで済まされたくなんかない。
ホテルを出ると熱気に包まれる。
さっさと一人で帰ろうとタクシーに乗り込む五十川さんの腕を掴んで引き止めた。
「待ってください」
「離せよ」
「…気のせいじゃないですから! 俺、五十川さんで抜けますからね!」
「はあ?」
「エロい目で見てますから!」
「バカだろ」
「気持ち悪いでしょ! だから辞めるって言ってるんです! 軽く考えてるのは五十川さんです!」
待て待て。これって恋と仕事を同時に失うってことか?
五十川さんの言うとおり俺はバカだ。自分のバカさ加減に酔いが醒めた。
「っとに、うるせえな。とりあえず乗れ」
「へ? うわっ」
今度は俺が腕を引かれる番だった。
タクシーに揺られて、着いた先は五十川さんのマンションで。
「やれるもんならやってみろ」とベッドの前で仁王立ちをしている相手が理解できず俺は動くことができない。
「ほらな、怖気づいてんじゃねえか。酔いが醒めたんだろ? さっきのは勢いで言ってただけだって認めろよ」
ビールジョッキ半分のアルコールは醒めているし、仕事を辞めると言ったことは勢いだったと認める。
ただ、五十川さんへの気持ちについては冗談じゃない。
「五十川さんこそ酔ってるんでしょう! 勢いでそんなこと言い出さないでください!」
「ビールなんかで酔うか! 寝ぼけてたんだろ? 謝れば許してやるよ」
「…酔ってないし目も覚めてます! 仕事辞めるって言ったのは…勢いです! すみません! でもっ五十川さんのことは好きですから!」
「チッ、まだ言うか…」
「わあ! ちょっと!」
シャツのボタンを外しはじめるから、俺は慌ててその手を止めた。
「わかってます? 誘惑して困るのは五十川さんですからね!」
「現実を見ろ、弥田は勘違いしてるだけだ。なにをどう勘違いすればそんな結論になるのかさっぱりわからんが、つまんねー男の身体でどうやってエロい想像ができんだよ」
どうしたら信じてもらえるのか。
俺は五十川さんの手を取り握りしめ自分の胸元に引き寄せた。
「わかりますか! すっげぇドキドキしてますから! 勘違いなんかじゃないでしょう!」
五十川さんは気まずそうに視線を逸らす。
「仲良くなりてぇんなら、わざわざこんなことしなくてもいいんだぞ」
「知ってますよ。仲良くなるだけじゃ足りないから、なんかもういろいろテンパってるんじゃないすか」
「全っ然、理解できねえ」
はだけたシャツから見える鎖骨が色づいている。
匂い嗅ぎたい。
そう考えはじめたら、もう我慢ができない。
五十川さんの肩に頭を預けると、「なにすんだよ!」と身体を引かれるから押し倒す格好になった。
意図せず組み敷いた男に、ぐらりと理性が揺らぐ。
やばい。
「証明、しましょうか?」
「は?」
「やれるって」
「……待て」
耳たぶに唇を寄せ、甘噛みする。
「んなっ、ちょ! わかった! わかったから!」
不安そうな表情がたまらない。
無理やりキスをしようとしたらみぞおちを蹴り上げられた。
「っ痛ぁ!」
「なんなんだよ急に!」
「…怖気づいたんですか? 誘ったのは五十川さんじゃないですか」
悔しそうな表情でこちらを睨んでくる。
「まじで目ぇ覚ませよ」
五十川さんはぼそりと言うと、俺の襟元を乱暴に掴んだ。そのまま仏頂面が近づく。
頬に押し付けられた薄い唇の微かな熱に胸が痛い。
「な、なにしてるんですかぁ!」
「気色悪いだろ!」
「えええ! めっちゃ嬉しいですっ! からかわないでくださいよ!」
「チッ、だめか…わっ」
俺も俺だが、五十川さんだって悪い。
襲われてビビっているくせに、どうして煽るようなことしてくるんだ!
「まだ信じてくれてないんですね」
「っし、信じた! 信じたからっ落ち着け弥田!」
見下ろした相手は顔を強張らせていた。
「怖えからなんかしゃべれ!」
怖がらせることは本意ではないが、ちょっともう我慢の限界だった。
五十川さんの眼鏡を外して放り投げる。
「あっ! おいっ乱暴に扱うな!」
「視力ってどれくらいですか?」
「はあ?」
「俺の顔見えてます?」
「…ぼやけてる」
「この距離なら?」
俺が顔を近づけると、五十川さんはぎゅっと目をつぶった。
ああもう、かわいい。なんなんだよ、ちくしょう! かわいすぎて正気が戻ったじゃないか!
「仕事を辞めるな、なんて言ったこと後悔してるでしょう?」
押さえつけていた力を抜く。俺が身体を離すと、五十川さんは恐る恐る目蓋を開けた。
「…してない。辞めるなよ、弥田が辞めたら俺のせいだって馬場に言われ続けるだろ」
辞めるなと言ってくれるのは嬉しいが、理由が腑に落ちない。襲われるかもしれない危険性より社長に責められるほうが嫌だってことか?
納得はできないが、拗ねたような口ぶりで言われるとどうでもよくなった。
五十川さんは俺が投げた眼鏡を探しながら、「…お前がキレるとヤバい奴だってことがよく分かった」と言う。
探し当てた眼鏡をかけると、呆れたように溜息をついた。
「まじで勃つんだ」
隠しようもなく俺の股間は膨らんでいた。
当たり前じゃないか。つか、全然信じてくれないな!
「俺、辞めませんからね」
「…ちょっと検討さして」
「やめませんからね! 仕事も! 五十川さんを好きなことも!」
「俺のことは今すぐ諦めろ!」
「無理です」
「断言すんな! だいたいなんで俺なんだ! 男となんてやれるか!」
「やってみなきゃわからないじゃないですか」
「さっさと帰れ、近寄んな」
五十川さんはそう言って枕を投げつけてくる。
なんの戯れだ! かわいいな!
俺は受け取った枕を抱きしめ匂いを嗅いだ。
「俺…この匂いで抜けます」
「ヤメロ」
「さっきの怯えた表情もすごくよかったです」
「ふざけんな!」
「真剣です…自覚してくださいね、困ってる五十川さんはエロいですから」
「っお前が出て行かないなら俺が出て行く」
話をはぐらかして五十川さんは部屋を出て行った。
どうすればよかったのか。伝え方を変えたところで…どうしたって無理なのか。
「だああ!」
ベッドに倒れ込む。
辞めるなって! なんでそんなこと言えんだよ! 普通な顔して働けんのか? …うわああ、五十川さんの匂い。
ずくんと欲望が疼く。
だめだって。ほんとに、もう。
手を伸ばしてさっさと楽になりたいのをシーツを掴んで堪えた。
「う゛ーー五十川さんのばか…」
諦めてしまえないのは、五十川さんがちょっとは俺に好意を持ってくれているんじゃないかって、思うから。
そりゃ、その好意が…その…性的な意味も含めてってわけじゃないだろうけど。俺だって自覚するのに抵抗はあったし。だから…時間をかければ、五十川さんだって俺を受け入れてくれるんじゃないかなぁ…とか。
無駄な、期待だろうか。やっぱり早まったかなぁ。
部屋の中は静かだった。
出て行った五十川さんはどうしているんだろう。困らせてるよなぁ。
起き上がらなければと思うのに、精神的ダメージが大きすぎて動くことができないでいた。
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