魔法学園の空間魔導師

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第一章:魔法学園の空間魔導師

凶事

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 テトを取り返しへと来たオーガスタス────

 彼は自身の正体に気づいているのだろう御影を始末しようと部下達に指示を出し、それを受けた男達は一斉に銃を撃ち始めた。

 その場に響き渡る銃声……オーガスタスはそちらに背を向けて葉巻をふかしており、銃声が鳴り止むと共に再びそちらへと顔を向けた。


「殺ったか?」


 そう訊ねたオーガスタスだったが部下達は狼狽した表情をしている。

 その事に訝しげな表情で御影がいた方へと顔を向けたオーガスタスは、そこに広がる光景に自身も部下達と同様、大きく目を見開いてしまった。

 オーガスタスの目に映ったのは、あれほどの弾幕を受けたのにも関わらず何事も無かったかのように欠伸をしている御影の姿であった。


「貴様ら!ちゃんと狙ったのか?!」

「は、はい!確かに奴を狙って……」

「貸せ!」


 オーガスタスは隣に立っていた部下から奪うようにして拳銃を手に取ると、今度は自分で御影へと銃を発砲した。

 放たれた弾丸は一直線に御影の顔へと飛んで行ったかと思うと、その直前で見えない何かに阻まれた。


「なんだと?!」


 驚くオーガスタス────すると御影が不敵な笑みを浮かべながらこんな事を言い放った。


「いやぁ、最近、空間の壁を身に纏うって事を覚えてよ……チンケな弾丸如きじゃ俺の身体に風穴なんて空けられねぇのよ」


 御影はそう言うとオーガスタス達の前から姿を消し、次の瞬間にはオーガスタスの隣にいた部下の顔面に蹴りを入れていた。


「────?!」


 一瞬の出来事に理解が追いつかず固まるオーガスタスとその部下達……御影はまた〝空間転移〟でその場から移動すると、次々にオーガスタスの部下達を叩きのめしていった。


「────とまぁこんな感じでテメェの部下達はリタイアしたわけだが……どうする?まだやるか?」

「くっ……」


 呆気なく部下達が倒されたことで表情を歪ませるオーガスタス。

 しかし直ぐにニヤリと笑みを浮かべると、懐から何やらスイッチのようなものを取り出し、テトに向けてこう言い放った。


「何をしている!さっさと殺れTE-TO01!」

「あん?何を言って────」


 オーガスタスが手にしていたスイッチを押したのと同時……御影の身体にドンッという衝撃が起こった後、直ぐに激しい痛みが走った。

 振り返ってみればそこにはテトがいたのだが、彼女は御影の身体にピッタリとくっ付いており、かと思えばゆっくりと離れていった。

 その手はナンパしてきた男達を追い払った際にしていたものと同様の刃物となっており、その刃に付着した血が鈍く光っていた。

 そして御影は両膝を付いてその場に崩れ落ちた。

 テトの刃は貫通していたらしく、御影は胸元から滲み出る自身の血液を見ながら、口から血を吐いた。


「がハッ……ごホッ……」


 自身の口内に広がる鉄分の味……それを味わい顔を歪ませていた御影の耳に、テトの声が入ってくる。


「……なさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」


 壊れたように謝罪の言葉を繰り返しているテトは、御影の血で真っ赤に染った自身の手を見て悲痛な表情となっていた。

 御影と出会ってから初めて見せた表情の変化であった。

 御影はそれを見てから、直ぐにオーガスタスへと顔を向けて彼を睨み付ける。

 しかし当のオーガスタスはそれを気にする様子もなくテトへと近寄り、彼女にトドメを刺すよう伝えた。しかしテトは首を横へと振ってそれを拒否する。

 それを見たオーガスタスは途端に舌打ちをした。


「チッ……情でも湧いたか?まぁいい、どうせこのまま放って置いても死ぬだろうしな」


 その頃には御影に叩きのめされていた部下達も目を覚まし、忌々しげに御影を見下ろしていた。


「どうしまいます?殺っちまいますか?」

「放っておけ!それよりもさっさとずらかるぞ。さっきの銃声を聞いたからか騒がしくなってきた。サイレンサーくらい付けないかバカ者共め!」


 オーガスタスは近くにいた部下の尻を蹴り上げ、そしてテトを連れて御影の前から立ち去っていった。

 一人残された御影は何とか身体を起こし壁へと背を預けると、息も絶え絶えにいつの間にかそばに来ていた子猫に目を向ける。


「すまねぇ……お前のご主人様……連れてかれっちまったよ……」


 子猫は理解しているのか知らないが、それでも御影にそう言われて悲しそうに鳴いていた。

 そして不意に踵を返すと、そのままどこかへ走り去っていったのだった。


(はぁ……こいつぁヤベェかもな……でもまぁ……〝目印〟は付けといたから……あとはアイツらに……任せ……て……)


 そこで御影の意識は途切れた。

 その後、先程の銃声を聞き付け何事かと駆けつけた島民達が倒れている御影を発見し直ぐに警察に通報する事になる。

 そしてあの子猫に導かれその場に駆け付けた瑠璃が御影の姿を見て悲鳴をあげるのはその数分後の事である。





 ◆





 テトがいなくなったということで捜索を始めた私は未だにテトを見つけることが出来ずに途方に暮れていた。

 すると遠くから何かが爆ぜたような乾いた音が聞こえ、それは一回ではなく何回も聞こえていた。


(いったい何の音だ?)


 不審に思いそちらへと足を運んだのだが、そんな私の前に一匹の黒い子猫が姿を現した。


(黒猫か……不吉なものだ)


 そんな事を考えていると、子猫は踵を返してタタタッと走り出した。

 その方向は私が向かおうとしていた方向であり、子猫は数歩走った後にこちらへと顔を向ける。


(付いてこいという事か?)


 何故そう思ったのかは私自身も分からなかったが、とにかくこの子猫について行かなければならないような気がして、私は子猫の後を追うことにした。

 暫く子猫について行くと、何故か前方が騒がしくなっていった。


(何かあったのか?)


 何か胸騒ぎを覚えながらそちらへと足を運ぶ……するとそこには白い車が停められており、一度見たことがあったのでそれが救急車だというのが分かった。

 そして群衆をかき分けて現れたのは救急隊員に運ばれている一台の担架であった。その上に乗せられていたのは────


「御影────!!」


 私は悲鳴を上げると急いで御影の元へと駆け寄る。


「あっ、ちょっと君!!」

「私は彼の友人です!」


 そう伝えると私を止めようとした救急隊員は直ぐに横へと避けた。


「御影!おい、御影!」


 御影は呼吸器を付けられており、こちらから呼びかけても反応が無い。

 何故このようになっているのか分からず困惑していると、私の声を聞いたのか一人の警察官が声をかけてきた。


「君が彼の友人だと言うのが聞こえたんですが……本当にこの方のご友人ですか?」

「はい……ここに旅行に来ていました」

「そうですか……では、彼の名前など教えて下さいませんかね?」

「忍足御影です」

「忍足御影、と……」


 御影の名を聞いた警察官は手にしていた紙にそれを記入する。


「御影はいったい……」

「実はここから銃声のようなものが聞こえたとの通報がありましてね……そして島民の方が倒れている彼を見付けまして。正面からなのか背後からなのかは調べてみないと分かりませんが、ともかくかなり長い刃物で刺されたらしく……」

「そんな……」

「ちなみに彼のご両親もここに来ていますかね?」

「はい……」

「でしたら連絡を取ってもらう事は可能ですか?」

「分かりました……」


 私は携帯を取り出すと月夜さんへと連絡を入れる。

 暫くの呼出音が流れたあと、電話口から月夜さんの声が聞こえてきた。


『瑠璃ちゃんどうしたの?』

「御影が……御影が……」

『え?』

「すみません、変わって頂けますか?」


 私の方から事情を説明しようと思ったのだが、声が震えて思うように話す事が出来ない。

 そんな私に気づいてか、警察官が変わるよう私に頼んできたので、私はそっと携帯を警察官へと渡した。


「もしもし、私、小笠原警察署所属の警察官の三嶋と申しますが……」

『あ、はい、ご苦労さまです』

「ありがとうございます。それで貴方は忍足御影くんの親御さんで宜しかったでしょうか?」

『はい、母親です』

「そうでしたか……お母さん、落ち着いて聞いてください。お宅の息子さんが本日未明、何者かによって刺されたらしく、今病院へと運び込むところです」

『え────』


 近くにいた私にも月夜さんの驚く声が聞こえていた。

 私はそれを聞いて辛い表情となるが、警察官は表情を変えることなく淡々と事情を説明していた。


「一旦、小笠原診療所へと運び込みますので、お母さんもそちらへ来て頂けますか?今回の件に関して色々とお聞きしたいこともありますので……はい……はい……それでは宜しくお願いいたします」


 電話が切れ、警察官が私に携帯を返す。

 私がそれを受け取った時、不意に周囲がざわつき始めた。


「あっ、君────!」


 見れば目が覚めたのか御影が担架から降りようとしている。

 しかし力が入らないのかその身体は大きく崩れ、担架から落ちそうになっていた。


「御影!」


 私は急いで駆け寄りその身体を抱きとめると、彼をまた担架に寝させようとした。その時、御影が私の肩を掴んで、息も絶え絶えにこう言った。


「瑠璃……俺の……俺の魔力を……追え……!」

「いったいどういう事だ?!おい御影!御影!御影────!!」


 御影はまた意識を失った。

 私は彼の肩を揺すりながら、必死に声をかけていたのだった。
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