魔法学園の空間魔導師

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第一章:魔法学園の空間魔導師

開戦

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 ワン太郎を先頭にテト奪還へと向かった瑠璃達一行は現在、船でその場所へと移動していた。

 その船上にて才加が寛ぎながら瑠璃達に声をかける。


「いやぁ……それにしても船を貸してくれる人がいて良かったねぇ」

「本当にな。まさか既に海に出ていたとは思わなかった」


 瑠璃はそう言いながら後方へと目を向ける。そこにはもう一隻、船が瑠璃達の乗る船に追従するように移動していた。

 ワン太郎を追って移動していた彼女達は、ワン太郎が港にて海の先を見ながらひと吠えした事に絶望を抱いていた。

 どうすべきかと困っていたところ、この間釣りをしていた際に出会ったあの男性が声をかけてきたのである。

 男性にどうしたのかと聞かれ大岡が説明すると、なんと男性は漁師だったらしく、他の漁師仲間にも声をかけて船を出してくれたのだった。


「本当に……縁というものはどう繋がるか分からんな」


 その時の事を思い返しながら瑠璃は船を操縦するあの男性にお礼を言うように頭を下げた。

 男性はそれに気づくと〝気にするな〟と言うように手を振っている。


「しかし、この先に本当に島なんてあるんかいな?」


 いつの間にかそばに来ていた都胡がそう口にする。


「分からない……が、ワン太郎がずっと顔を動かさないのがその証拠だろう」


 ワン太郎は船頭に座りながらずっと顔を正面へと向けて動かさずにいる。


「ワン太郎を信じるしかあらへんか……まぁ、ちょっとした息抜きやな」

「一名、酔ってる人いるけどね」

「うぼぉぉえぇぇぇ!!」


 不快な声を上げている人物へと三人が目を向ける。

 そこには船の欄干に身を乗り出しながら、口から虹を吐き出している煉の姿があった。


「そういえば移動中のフェリーでもグロッキーだったよね」

「やけに静かやなと思ったら、そういう事やったんか」

「そういえば顔を青くしている煉に御影が食べ物を押し付けてたな」

「「鬼か!」」


 談笑する三人であったが、視界の隅で表情を暗くさせている咲良に気づき口を噤む。


「咲良……」

「どうしたの瑠璃さん?」


 瑠璃が話しかけると咲良はパッと表情を変えて返事をした。

 しかしその表情が無理をして作ったものだということを瑠璃はよく知っていた。


「心配だろうが、御影もテトもきっと大丈夫だ」

「そう……だよね……瑠璃さんは強いね?」

「強い?私が?」


 咲良の言葉に瑠璃は目をパチクリとさせる。


「だって、私は不安で押し潰されそうなのに瑠璃さんは気丈に振舞ってるでしょう?」

「そのように見えてたのか……」


 瑠璃は咲良の隣に腰を下ろすと、まるで緊張を解いたかのように自身の身体を腕で抱きしめ始める。


「私でさえも、もしも御影やテトに何かあったらと思うと震えが出てしまいそうになる……〝大丈夫だ〟と言い聞かせてやらないと、どうにかなってしまいそうだ」


 そう言って咲良へと向けた瑠璃の表情はかなり強ばっていた。

 それを見た咲良は目を見開いたが、直ぐに微笑むと瑠璃の身体を抱き締める。


「うんうん、大丈夫……御影くんもテトちゃんもきっと大丈夫だよね」

「あぁ……それに何となくだが、御影も来そうな気がするんだ」

「え?」

「何故だろうな。私の脳裏に、御影があのオーガスタスという男の顔を殴り飛ばす光景が思い浮かぶんだ」

「ふふっ……」

「咲良?」


 不意に笑い始めた咲良に瑠璃が訝しげな表情となる。

 すると咲良は笑いを堪えながらこう言った。


「どうしてだろうね?なんか私もちょっとその光景が思い浮かんじゃった」

「そうだろう?」


 互いに吹き出し笑ってしまう瑠璃と咲良……そんな彼女達を見て、都胡と才加も互いに笑みを浮かべるのであった。





 ◆





 暫く移動した後、瑠璃達の前には島があった。

 船を降りた瑠璃達と大岡、そしてその部下と一緒に来ていた警官達は地図を広げながらザワついていた。


「こんな島あったか?」

「いえ……地図にも地図アプリにも載っていません……」


 世界が今の状態になってから数年かけて更新された地図にも地図アプリにも、この島のことは記載されていなかった。

 完全に急に現れたとしか思えないこの島に、大岡はもちろん瑠璃達も得体の知れない感覚に襲われていた。


「本当にここで間違いないのか?」

「そのはず……ワン太郎もここだって言ってるし……」


 見ればワン太郎はまた鼻をヒクヒクさせながらどこかへと向かおうとしている。


「この島がどうしてここにあるのかは後にして、今は奴らを見つけるのが先だろうな」


 大岡は部下と警官達に注意を促しながら先へと進む。

 瑠璃達もそれに続いて先へと向かうのだった。


「わっ……瑠璃はん、どっから剣と盾を出したん?」


 いつの間にか剣と盾を出して臨戦態勢となっていた瑠璃に都胡が目を見開きながらそう問いかける。


「これか?普段は別の空間にしまっているのだが……」

「そ、そうなんか……」

「都胡達も戦う準備をしていた方がいい……ほら、来たぞ」


 瑠璃がそう言ったのと同時……どこからともなく黒服や武装した男達が瑠璃達の前に姿を現した。


「ここは〝とある方〟の私有地である!直ぐにここから立ち去らないのであれば、発砲もやむを得ないと思っている!」


 黒服の一人がそう言うと、大岡は部下達に顔を向けてからその黒服にこう言った。


「私は警視庁所属の刑事である大岡です。ここにいると思わしきオーガスタス・ヘルマンとテトという少女についてお聞きしたい」


 大岡がそう言った直後、黒服と武装した男達はいっせいに銃を構えた。


「やれやれ……大当たりだったようだな」


 大岡はそう言って自身も拳銃を抜いた。

 それを合図に部下や警官達も拳銃を構え、瑠璃達も臨戦態勢となった。

 双方睨み合う状態……しかしその中で才加は不敵な笑みを浮かべると、大岡の前へと躍り出てこう言った。


「ねぇ、ちょっとだけいいかな?」

「どうしたんだ?」

「ちょっとね~♪︎あ、レンレンちょっといい?」

「何だよ?」


 疑問符を浮かべる煉の耳元に口を寄せた才加はヒソヒソと何やら耳打ちしている。大岡や瑠璃達が訝しげな表情をしている中、才加の話を聞いていた煉もニヤリとその口角を上げる。

 そして不意に大岡の前へと出たかと思えば、片手を翳してこう言った。


「へっ……開幕一発、特大サービスってやつだぜ!」


 煉はそう言いながら翳した手に魔力を込め始める。それを見ていた黒服は慌てて武装した男達に指示を出した。


「おい!さっさとあのガキを殺せ!」


 戸惑いながらも銃口を煉へと狙い定め引き金に指をかける男達。しかし彼らの前で煉は意気揚々とこう言い放った。


「遅せぇよ!喰らいやがれ、〝煌天ヴァルカン爆炎弾プロミネンス〟!!」


 そして煉から放たれた巨大な炎弾は男達へと襲いかかり、迫ってくる炎弾の赤い光に照らされながら、男達は慌ててその場から逃げ出そうとする。

 しかし炎弾が飛ぶ速さは彼らの予想よりも遥かに速く、何人かはその爆炎に飲まれていった。

 けたたましい轟音と土煙が上がり、そしてそれらが収まった後に残されていたのは、大きくえぐれた地面と、その周囲に倒れる男達の姿だけが残されていた。

 その光景に大岡達は呆気に取られ固まっていたが、才加だけは楽しげに煉に声をかけていた。


「さっすがレンレン。やっぱり開幕砲はレンレンに任せるのがいいね~♪︎」

「当たり前だろ?今のである程度スカッとしたしな」

「でもまだ足りないんじゃないの~?」

「あとは……アイツらで発散させて貰うとするよ」


 そう話す煉の視線の先……今の騒ぎで駆けつけてきた男達が、その光景に驚きつつこちらへと銃を構え始めていた。


「今ので少し驚いてしまったが……あとは私達に任せて貰おう」

「大岡さん、ここは僕達だけで対処するので、大岡さんも彼女達と一緒に行ってください!」


 大岡の部下はそう言うと男達に向けて発砲をした。


「俺もここに残るぜ。アイツら全員ギッタギタにしてやらぁ!」

「ほんならウチもや。テトちゃんは瑠璃はん達に任せるで!」

「なら私も残ろっかな~♪︎という事でルリルリ達は咲良にお願いするね♪︎」

「任せて」

「すまない……」

「ええって、お礼は後でゆっくりして貰うさかいな♪︎」

「それでは行こうか二人共!」

「「はい!」」


 そうして瑠璃は大岡を先頭に咲良と三人で先へと向かった。

 その間に男達が行かせまいと銃を構えるが、それを煉の魔法が阻む。


「テメェらの相手は俺達だ!余所見してると火傷だけじゃ済まねぇぞ!!」


 銃弾飛び交う中、瑠璃は助けを待っているだろうテトへの想いを抱いて地面を蹴るのであった。
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