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第一章:魔法学園の空間魔導師
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俺とテトの拳に倒れゆくオーガスタスを前に、俺はテトに向けて手の平を見せる。
「これは?」
当然、その動作の意味を知らないテトは不思議そうに俺の手の平を見ながら首を傾げていた。
「ん?ハイタッチだよ。何かが上手くいった時に互いに手を合わせて喜びを表す動作だ」
「手を合わせる……こんな風にですか?」
よく理解出来なかったのかテトは文字通り俺の手の平に自身の手の平を合わせた。
あまりの愛くるしさに思わず頬が緩む。
するといつの間に来ていたのか都胡が俺の手を取り、そしてテトに見せるようにハイタッチをしてきた。
「ハイタッチはこんな風にやるんよ♪︎」
「なるほど……」
テトはそう呟くと、催促するように俺に手の平を見せてきた。
俺は笑みを浮かべるとそれに応え、テトとハイタッチを交わしたのであった。
「やったな御影?見ているこっちもスカッとしたぞ」
大岡のおっさんが皆を引連れて賞賛の言葉を述べる。
煉達も……まぁ揃いも揃ってボロボロだったが、それでも今回の勝利を喜んでいた。
しかしその余韻に水を差すようにオーガスタスの呻き声が聞こえてくる。
『ワシは……ワシはまだ終わらんぞぉ……必ず……必ず逃げ延びてやるぅ……いつか必ず皆殺しにしてやるぞぉぉぉ……』
「本当にとことんしぶとい野郎だな。いい加減、耳障りだから完全に意識を────」
そう言ったところで俺の耳に何かの音が聞こえてくる。
羽音のようなその音は次第に大きくなり、俺はそちらの方へと顔を向け大岡のおっさんにこう訊ねた。
「大岡のおっさん……応援なんて呼んだか?」
「いや、呼んではいない……が……」
俺の質問に訝しげな表情をしていた大岡のおっさんだったが、つられるように俺と同じ方向を見上げ、表情を強ばらせていた。
俺達の視線の先には一機のヘリが飛んでおり、その機体には大きく英語で〝ヘルマンインダストリー〟と書かれていた。
それを見たオーガスタスは途端に目を見開き、ニヤリと笑みを浮かべる。
まさか……。
『ぐはははは!ようやく来たか!!』
「テメェ……アレはまさか……」
『そうだ!ここから逃げ去る為に手配しておった我が社の所有するヘリだ!この時の為に部下を各地に潜伏させておったのだよ!!ぐはは……これで貴様らもお終いだ!!』
「クソッタレ!撃ち落としてや────」
俺が〝空弾〟を撃とうと構えるが、大岡のおっさんがそれを手で制した。
「おっさん?」
「いや、いい。あれは……」
大岡のおっさんが何やら意味深な事を言う中、オーガスタスはヘリに向けて大声でこう言った。
『さぁお前ら!今すぐコイツらを始末してワシを助け────はぇ?』
勢いよく身を起こしそう言い放つオーガスタスであったが、ヘリから降りてきた人物を見て間抜けた声を上げた。
ヘリから降りてきたのは〝紳士〟という言葉が似合いそうな、一人の初老の男性であった。
男性はこちらへと近づいてくると、オーガスタスを一瞥してから俺達に話しかけてきた。
「初めまして。私はスコットランドヤード所属の刑事、名を〝ウィリアム・エイブラムス〟と申します。階級は警部ですので、是非〝エイブラムス警部〟とでも呼んで頂ければ。今回、MI5からの指令で国際指名手配犯オーガスタス・ヘルマンの逮捕へと参りました」
流暢な日本語でそう話すウィリアム・エイブラムスという名の刑事。
大岡のおっさんはそれに応答するように敬礼をしてから名乗りを始めた。
「遠方からわざわざご苦労様です。私は警視庁魔法犯罪対策室特殊捜査班所属の大岡忠則です。しかし何故スコットランドヤードが?私が受けた報告ではFBIが彼を追っていたそうですが……」
「あぁ、実は────」
エイブラムス警部が大岡のおっさんの質問に答えようとした時、突然オーガスタスがその会話に割って入ってきた。
『待て!何故、英国の犬共がワシのヘリに乗っておるんだ?!』
エイブラムス警部はその質問に答えるよりも先に、オーガスタスを指差しながら大岡のおっさんに質問をしていた。
「ところで、先程からいるこの醜い生き物は何なのです?」
「あ~……え~と、ソレが貴方達やFBIが追っていたオーガスタス・ヘルマン本人ですよ」
「なんと……いったい何があってこのような姿に?」
「それはコイツが原因だよ」
俺は大岡のおっさんとエイブラムス警部が話している間に拾ってきた注射器を、エイブラムス警部へと放り投げた。
それを受け取ったエイブラムス警部はじっくりとソレを観察する。
「これは?」
「オーガスタスが自分でそれを打った途端、そんな化け物になりやがった。多分、そこら辺に転がってる奴らに打ったのと同じ薬だと思うぜ?」
「ふむ……昔から違法な薬物の研究をしているという情報を耳にしたが、まさか事実だったとはな。まだ少しだけ薬液が残っているようだ。おい、直ぐにこれを鑑識に回せ!もしかしたら事前に押収した薬と同じ成分が含まれてるかもしれん」
「は!」
エイブラムス警部の部下が素早く注射器をポリ袋へと入れ、慎重な手つきでそれを回収していった。
「さてと……確か、何故我々がオーガスタス・ヘルマンのヘリに乗ってきたのかについてだったな?理由は簡単だ。君の部下の潜伏先から拝借しただけだよ」
『は?え?』
「前々から君の部下の潜伏先は全て掴んでいたのだよ。しかしそのどれにも君の姿は無かったものでね……そんな中で一斉検挙なんてしてしまえば君に気づかれ、また逃げられると思っていたので泳がせていたのだよ。まぁ、それより先に君の居場所が判明したようなので結局は一斉検挙させて頂いたがね」
『ば、馬鹿な……全て分かるはずが……!』
「生憎と、こちらには優秀な名探偵がいるものでね。今頃は英国だけでなく、アメリカ、ロシア、中国、フランス、インド、そして日本に潜伏している君の部下達は全員仲良く刑務所にいるだろうな」
『名探偵だと?ま、まさか……かのクソったれホームズか!!』
「我らが偉大なる名探偵に随分な物言いだ。まぁ、君はその〝クソったれ〟な探偵に負けたのだがね」
『ぐっ……!』
エイブラムス警部の皮肉に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるオーガスタス。
このまま二人の会話を聞くところではあるが、ちょっとだけ疑問に思った事をエイブラムス警部へと質問する。
「あ~、ちょっといいですかねエイブラムス警部?」
「何かね?」
「ホームズってあのホームズ?実在するんスか?あれって確か小説上の架空の人物だったはずっスよね?」
「ふむ……確かにそうだな」
エイブラムス警部は俺の質問を肯定した上で、そのホームズとやらの説明を述べ始める。
「確かにかの名探偵シャーロック・ホームズは我が英国において有名な小説家である〝アーサー・コナン・ドイル〟の作品に出てくる人物だ。そのような疑問を抱くのも無理は無い。しかしホームズは実在するのだよ。とは言っても、〝彼女〟はその天才的な頭脳により数々の難事件を解決してきた実績により、女王陛下より賜った名なのだけれどね」
「どういう事だ?」
「要約すれば、数々の難事件を解決してきた〝彼女〟に対し、我らが女王陛下がシャーロック・ホームズの体現者であると認め、その名を授けたということだ」
話に出てくるホームズが女性であるということは置いといて……つまりそのホームズのお陰で潜伏していたオーガスタスの部下達の居場所を割り出せたという事か。
「まぁ、私が突入した潜伏先で、彼の部下達が何やら動き出してね……捕まえて聞き出してみれば君を迎えに行くところだったのだそうだ。まぁ丁度いいのでそのヘリを拝借したわけだが……ご丁寧にこの場所をオートナビで設定していたのは失敗だったな」
『あの大馬鹿者共めが!』
まぁオーガスタスの部下達も、まさか居場所がバレているとは思いもしなかったんだろうな。
オーガスタスには悪いが、今回はその間抜けな部下に感謝することにしよう。
「あぁ、ちなみに誰一人として逃がさないので、君もこの場から逃げ仰せれると思わない事だ。それと、Mr.大岡の質問に対する回答だが、奴は英国に潜伏していた際に我が軍の武器の横流しや軍事機密、また国家機密を盗み出していたらしくてね……それでFBIとは必ず身柄を引き渡すと約束した上で、先ずは我が国で取調べを行う為に来たわけなのだよ」
「なるほど……そういう事でしたか」
「我がMI5も威信をかけて取調べを行うそうだ。やれやれ、それは我々の仕事だというのにね」
まぁ仕方ないだろうな。
大事な情報を盗まれてたってなりゃあ、そっちが躍起になるのも無理は無い話である。
その一連の話を聞いていたオーガスタスは絶望の表情を浮かべたあと、そのまま力なく仰向けに倒れ込んだ。
するとそのオーガスタスの身体中から突然、大量の煙が放出され始める。
「む!逃げる気か!」
「ちょっと待て……どうやら違うようだぜ」
エイブラムス警部が拳銃を抜こうとしていたので、俺はそれを手で制する。
そして俺達が見ている前でオーガスタスの身体は煙を上げながら徐々に萎んでいく。
そして煙が晴れた時、そこには先程のオーガスタスの姿はなく、ただ骨と皮だけになったヨボヨボの爺さんが横たわっているだけであった。
「これは……」
「紛いもんの力を得た代償ってやつだな」
骨と皮だけのオーガスタスはピクリとも動かず、ただただうわ言のように何やら言っているだけであった。
『お終いだ……ワシはもう終わりだ……ワシは……ワシは……』
何かに縋るようにその手を空へと挙げるオーガスタス。
するとその手をテトが両手で包み込むように掴んだ。
『TE-TO01……』
「いいえ、今のテトの名は〝テト〟です。御影達がそう名付けてくれました」
テトがそう言うとオーガスタスの目が大きく見開かれる。しかし直ぐにその目は細められ、何処か優しげな表情のようにも思えた。
『ワシは……いったい何処で間違えたのだろうな……?』
「テトには分かりません」
『そうか……』
オーガスタスは最後にそう言ってその瞼を静かに閉じる。そしてオーガスタスはそれっきり目を開けることなく、また二度と動くことは無かった。
大岡のおっさんがオーガスタスへと歩み寄り、そっとその首筋に手を当てては、こちらに顔を向けて首を横へと振る。
それを悔やむようにテトはオーガスタスの手に自身の額を触れるのであった。
「コイツも……道を違えてなけりゃ、大往生だったかもしれねぇな」
俺のその言葉に何か言う者はいない。
ただ、その場にいた全員がオーガスタスに向けて追悼の意を示すのであった。
「これは?」
当然、その動作の意味を知らないテトは不思議そうに俺の手の平を見ながら首を傾げていた。
「ん?ハイタッチだよ。何かが上手くいった時に互いに手を合わせて喜びを表す動作だ」
「手を合わせる……こんな風にですか?」
よく理解出来なかったのかテトは文字通り俺の手の平に自身の手の平を合わせた。
あまりの愛くるしさに思わず頬が緩む。
するといつの間に来ていたのか都胡が俺の手を取り、そしてテトに見せるようにハイタッチをしてきた。
「ハイタッチはこんな風にやるんよ♪︎」
「なるほど……」
テトはそう呟くと、催促するように俺に手の平を見せてきた。
俺は笑みを浮かべるとそれに応え、テトとハイタッチを交わしたのであった。
「やったな御影?見ているこっちもスカッとしたぞ」
大岡のおっさんが皆を引連れて賞賛の言葉を述べる。
煉達も……まぁ揃いも揃ってボロボロだったが、それでも今回の勝利を喜んでいた。
しかしその余韻に水を差すようにオーガスタスの呻き声が聞こえてくる。
『ワシは……ワシはまだ終わらんぞぉ……必ず……必ず逃げ延びてやるぅ……いつか必ず皆殺しにしてやるぞぉぉぉ……』
「本当にとことんしぶとい野郎だな。いい加減、耳障りだから完全に意識を────」
そう言ったところで俺の耳に何かの音が聞こえてくる。
羽音のようなその音は次第に大きくなり、俺はそちらの方へと顔を向け大岡のおっさんにこう訊ねた。
「大岡のおっさん……応援なんて呼んだか?」
「いや、呼んではいない……が……」
俺の質問に訝しげな表情をしていた大岡のおっさんだったが、つられるように俺と同じ方向を見上げ、表情を強ばらせていた。
俺達の視線の先には一機のヘリが飛んでおり、その機体には大きく英語で〝ヘルマンインダストリー〟と書かれていた。
それを見たオーガスタスは途端に目を見開き、ニヤリと笑みを浮かべる。
まさか……。
『ぐはははは!ようやく来たか!!』
「テメェ……アレはまさか……」
『そうだ!ここから逃げ去る為に手配しておった我が社の所有するヘリだ!この時の為に部下を各地に潜伏させておったのだよ!!ぐはは……これで貴様らもお終いだ!!』
「クソッタレ!撃ち落としてや────」
俺が〝空弾〟を撃とうと構えるが、大岡のおっさんがそれを手で制した。
「おっさん?」
「いや、いい。あれは……」
大岡のおっさんが何やら意味深な事を言う中、オーガスタスはヘリに向けて大声でこう言った。
『さぁお前ら!今すぐコイツらを始末してワシを助け────はぇ?』
勢いよく身を起こしそう言い放つオーガスタスであったが、ヘリから降りてきた人物を見て間抜けた声を上げた。
ヘリから降りてきたのは〝紳士〟という言葉が似合いそうな、一人の初老の男性であった。
男性はこちらへと近づいてくると、オーガスタスを一瞥してから俺達に話しかけてきた。
「初めまして。私はスコットランドヤード所属の刑事、名を〝ウィリアム・エイブラムス〟と申します。階級は警部ですので、是非〝エイブラムス警部〟とでも呼んで頂ければ。今回、MI5からの指令で国際指名手配犯オーガスタス・ヘルマンの逮捕へと参りました」
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「遠方からわざわざご苦労様です。私は警視庁魔法犯罪対策室特殊捜査班所属の大岡忠則です。しかし何故スコットランドヤードが?私が受けた報告ではFBIが彼を追っていたそうですが……」
「あぁ、実は────」
エイブラムス警部が大岡のおっさんの質問に答えようとした時、突然オーガスタスがその会話に割って入ってきた。
『待て!何故、英国の犬共がワシのヘリに乗っておるんだ?!』
エイブラムス警部はその質問に答えるよりも先に、オーガスタスを指差しながら大岡のおっさんに質問をしていた。
「ところで、先程からいるこの醜い生き物は何なのです?」
「あ~……え~と、ソレが貴方達やFBIが追っていたオーガスタス・ヘルマン本人ですよ」
「なんと……いったい何があってこのような姿に?」
「それはコイツが原因だよ」
俺は大岡のおっさんとエイブラムス警部が話している間に拾ってきた注射器を、エイブラムス警部へと放り投げた。
それを受け取ったエイブラムス警部はじっくりとソレを観察する。
「これは?」
「オーガスタスが自分でそれを打った途端、そんな化け物になりやがった。多分、そこら辺に転がってる奴らに打ったのと同じ薬だと思うぜ?」
「ふむ……昔から違法な薬物の研究をしているという情報を耳にしたが、まさか事実だったとはな。まだ少しだけ薬液が残っているようだ。おい、直ぐにこれを鑑識に回せ!もしかしたら事前に押収した薬と同じ成分が含まれてるかもしれん」
「は!」
エイブラムス警部の部下が素早く注射器をポリ袋へと入れ、慎重な手つきでそれを回収していった。
「さてと……確か、何故我々がオーガスタス・ヘルマンのヘリに乗ってきたのかについてだったな?理由は簡単だ。君の部下の潜伏先から拝借しただけだよ」
『は?え?』
「前々から君の部下の潜伏先は全て掴んでいたのだよ。しかしそのどれにも君の姿は無かったものでね……そんな中で一斉検挙なんてしてしまえば君に気づかれ、また逃げられると思っていたので泳がせていたのだよ。まぁ、それより先に君の居場所が判明したようなので結局は一斉検挙させて頂いたがね」
『ば、馬鹿な……全て分かるはずが……!』
「生憎と、こちらには優秀な名探偵がいるものでね。今頃は英国だけでなく、アメリカ、ロシア、中国、フランス、インド、そして日本に潜伏している君の部下達は全員仲良く刑務所にいるだろうな」
『名探偵だと?ま、まさか……かのクソったれホームズか!!』
「我らが偉大なる名探偵に随分な物言いだ。まぁ、君はその〝クソったれ〟な探偵に負けたのだがね」
『ぐっ……!』
エイブラムス警部の皮肉に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるオーガスタス。
このまま二人の会話を聞くところではあるが、ちょっとだけ疑問に思った事をエイブラムス警部へと質問する。
「あ~、ちょっといいですかねエイブラムス警部?」
「何かね?」
「ホームズってあのホームズ?実在するんスか?あれって確か小説上の架空の人物だったはずっスよね?」
「ふむ……確かにそうだな」
エイブラムス警部は俺の質問を肯定した上で、そのホームズとやらの説明を述べ始める。
「確かにかの名探偵シャーロック・ホームズは我が英国において有名な小説家である〝アーサー・コナン・ドイル〟の作品に出てくる人物だ。そのような疑問を抱くのも無理は無い。しかしホームズは実在するのだよ。とは言っても、〝彼女〟はその天才的な頭脳により数々の難事件を解決してきた実績により、女王陛下より賜った名なのだけれどね」
「どういう事だ?」
「要約すれば、数々の難事件を解決してきた〝彼女〟に対し、我らが女王陛下がシャーロック・ホームズの体現者であると認め、その名を授けたということだ」
話に出てくるホームズが女性であるということは置いといて……つまりそのホームズのお陰で潜伏していたオーガスタスの部下達の居場所を割り出せたという事か。
「まぁ、私が突入した潜伏先で、彼の部下達が何やら動き出してね……捕まえて聞き出してみれば君を迎えに行くところだったのだそうだ。まぁ丁度いいのでそのヘリを拝借したわけだが……ご丁寧にこの場所をオートナビで設定していたのは失敗だったな」
『あの大馬鹿者共めが!』
まぁオーガスタスの部下達も、まさか居場所がバレているとは思いもしなかったんだろうな。
オーガスタスには悪いが、今回はその間抜けな部下に感謝することにしよう。
「あぁ、ちなみに誰一人として逃がさないので、君もこの場から逃げ仰せれると思わない事だ。それと、Mr.大岡の質問に対する回答だが、奴は英国に潜伏していた際に我が軍の武器の横流しや軍事機密、また国家機密を盗み出していたらしくてね……それでFBIとは必ず身柄を引き渡すと約束した上で、先ずは我が国で取調べを行う為に来たわけなのだよ」
「なるほど……そういう事でしたか」
「我がMI5も威信をかけて取調べを行うそうだ。やれやれ、それは我々の仕事だというのにね」
まぁ仕方ないだろうな。
大事な情報を盗まれてたってなりゃあ、そっちが躍起になるのも無理は無い話である。
その一連の話を聞いていたオーガスタスは絶望の表情を浮かべたあと、そのまま力なく仰向けに倒れ込んだ。
するとそのオーガスタスの身体中から突然、大量の煙が放出され始める。
「む!逃げる気か!」
「ちょっと待て……どうやら違うようだぜ」
エイブラムス警部が拳銃を抜こうとしていたので、俺はそれを手で制する。
そして俺達が見ている前でオーガスタスの身体は煙を上げながら徐々に萎んでいく。
そして煙が晴れた時、そこには先程のオーガスタスの姿はなく、ただ骨と皮だけになったヨボヨボの爺さんが横たわっているだけであった。
「これは……」
「紛いもんの力を得た代償ってやつだな」
骨と皮だけのオーガスタスはピクリとも動かず、ただただうわ言のように何やら言っているだけであった。
『お終いだ……ワシはもう終わりだ……ワシは……ワシは……』
何かに縋るようにその手を空へと挙げるオーガスタス。
するとその手をテトが両手で包み込むように掴んだ。
『TE-TO01……』
「いいえ、今のテトの名は〝テト〟です。御影達がそう名付けてくれました」
テトがそう言うとオーガスタスの目が大きく見開かれる。しかし直ぐにその目は細められ、何処か優しげな表情のようにも思えた。
『ワシは……いったい何処で間違えたのだろうな……?』
「テトには分かりません」
『そうか……』
オーガスタスは最後にそう言ってその瞼を静かに閉じる。そしてオーガスタスはそれっきり目を開けることなく、また二度と動くことは無かった。
大岡のおっさんがオーガスタスへと歩み寄り、そっとその首筋に手を当てては、こちらに顔を向けて首を横へと振る。
それを悔やむようにテトはオーガスタスの手に自身の額を触れるのであった。
「コイツも……道を違えてなけりゃ、大往生だったかもしれねぇな」
俺のその言葉に何か言う者はいない。
ただ、その場にいた全員がオーガスタスに向けて追悼の意を示すのであった。
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