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第一章:神術学園
閑話:学園長室にて
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校舎へと続く階段の前で空洞と会話をしていた神術学園学園長の九重は、学園長室に戻ると学園主任である加茂忠久が、先程騒動を起こしていた嵐山風華とその取り巻き二人である女子生徒を連れて入ってきた。
「お連れしました学園長」
「うむ、ご苦労。お主は持ち場に戻って良いぞ」
「はい。また何かあればご連絡を」
「うむ、その時は頼む」
そうして忠久が出ていった後の学園長室。
九重と向かう嵐山風華とその取り巻き達は顔を真っ青にしていた。
そんな彼女達を前に九重は口元を扇子で隠しながら目を細める。
「初日にして、よくもまぁやってくれたのぅお主ら」
その言葉に三人の肩がビクリと跳ねる。
「嵐山家は経済においても、神威においても優れた家である事は確か……しかしこの学園においてそれは通じぬと教わらなかったのかえ?」
九重は千年以上も長く生きている存在である。
この世に生まれ落ちてから現在まで、その悠久の歳月を経た事により身に付いた強者としての年季が重圧となって風華達に襲いかかる。
「お、教わりました……」
風華のその声は非常にか細く、常人では一度で聞き取れぬ程であったが、聴覚が人間のそれを優に越えている九重はしっかりと聞き取れた。
それ故に更なる気迫を放ちながら厳かに問いかけた。
「ほぅ……ならば何故、お主は初等部の頃より親の権威を振り翳しておったのかえ?」
「そ、それは……」
完全に萎縮してしまい思うように言葉が紡げない風華を見て、九重は〝もう良い〟と開いていた扇子を閉じた。
「再度言うておくぞ?確かにお主の親は我が国に大きく貢献してきた。しかしそれはお主の親であってお主自身では無い。つまり親が何を成そうとも子には全く関係の無い話と言うことじゃ」
九重はそこで言葉を区切ると、椅子から降りて風華の前へと立つ。
「肝に銘じておけ。親がいくら善行を積もうとも、その子供が悪行を行えばたちまちそれまでの信用も信頼も失われるのじゃ。故に親が自慢であるならば、その顔を、名を汚さぬよう重々気を付けることじゃな」
「は、はい……心得ておきます……」
「ふぅ……やれやれ、歳をとるとどうにも説教が長くなってしまうのぅ。お主が今までしてきた事を考えればまだまだ言い足りぬくらいじゃが、残念ながらワシはこの後、新入生歓迎式に出ねばならぬのでな……ここいらで沙汰を下すことにしようかのぅ」
九重はそう言うと手にしていた扇子を鋭く風華に突き付ける。
「沙汰を下すぞ。嵐山風華、太刀風葵、木枯凪の三名は本日より一年間、この校舎内及び寮内のトイレ掃除を命じる。これを此度の件に対する処罰とする!」
「「「え?!」」」
重い罰が下されると思い込んでいた風華達三人は九重が命じた処罰に思わず声を揃える。
「なんぞ不服か?」
「い、いえ……てっきり降級処分になると思っていましたので……」
三人の反応に訝しげな表情となる九重に風華が代表してそう答える。
すると九重はため息をついてこう言った。
「ワシも最初はそう考えておった。しかし〝とある生徒〟からそれだけは勘弁して欲しいと懇願されてな……仕方なく代替案としてこのような処罰にしたまでよ」
「それってもしかして……」
「その〝とある生徒〟が誰であるかについてはお主らに話す義理は無い。分かったのであればさっさと自分達のクラスに戻るが良い。二度は言わぬぞ?」
「は、はい!し、失礼します!!」
九重に睨まれ慌てて学園長室から出てゆく風華達。
そのドアがバタンと閉まったのを見て、九重は〝やれやれ〟とため息をついた。
「しかし存外ごねたりなんぞせんかったな……お陰で天城空洞から教わった〝平民が出来るのにお嬢様は出来ないのか?〟という言葉を使わず終いだったわぃ」
そんな独り言を漏らす九重だったが、その表情はどこか嬉しそうである。
(しかし、あの我儘娘がこうも変わるか……天城空洞とやら、本当に面白き者じゃ。もしかしたら今年は面白い一年になるやもしれぬな)
九重はそう思うと、窓の外を見ながら薄い笑みを浮かべる。
そして徐ろに机に置かれた電話の受話器を手に取ると何処かへとかけ始める。
そして数分後に学園長室へと入ってきたのは一人の女性であった。
「お呼びでしょうか学園長?」
「おぅ、ちとお主に頼みたい事があっての」
「頼み事、ですか……」
入ってきたのは九重の秘書的な人物……この神術学園の学園長補佐を務める〝鴉羽八咫〟であった。
彼女は〝頼み事がある〟と話す九重に真剣な面持ちを浮かべる。
「実はのぅ……」
「はい。ふむふむ…………………………………………はい?」
そうして九重から何やら耳打ちをされる八咫は、その内容に思わず訝しげな表情となるのであった。
───────────────────
《次回予告》
九重は自身の補佐である鴉羽八咫に何かを耳打ちし、八咫はその内容に驚いた
一方で新入生歓迎式を終えた空洞は自身が配置されたSクラスにて、登校時に助けたあの女子生徒との再会を果たす
次回、〝姫神天鞠〟
「お連れしました学園長」
「うむ、ご苦労。お主は持ち場に戻って良いぞ」
「はい。また何かあればご連絡を」
「うむ、その時は頼む」
そうして忠久が出ていった後の学園長室。
九重と向かう嵐山風華とその取り巻き達は顔を真っ青にしていた。
そんな彼女達を前に九重は口元を扇子で隠しながら目を細める。
「初日にして、よくもまぁやってくれたのぅお主ら」
その言葉に三人の肩がビクリと跳ねる。
「嵐山家は経済においても、神威においても優れた家である事は確か……しかしこの学園においてそれは通じぬと教わらなかったのかえ?」
九重は千年以上も長く生きている存在である。
この世に生まれ落ちてから現在まで、その悠久の歳月を経た事により身に付いた強者としての年季が重圧となって風華達に襲いかかる。
「お、教わりました……」
風華のその声は非常にか細く、常人では一度で聞き取れぬ程であったが、聴覚が人間のそれを優に越えている九重はしっかりと聞き取れた。
それ故に更なる気迫を放ちながら厳かに問いかけた。
「ほぅ……ならば何故、お主は初等部の頃より親の権威を振り翳しておったのかえ?」
「そ、それは……」
完全に萎縮してしまい思うように言葉が紡げない風華を見て、九重は〝もう良い〟と開いていた扇子を閉じた。
「再度言うておくぞ?確かにお主の親は我が国に大きく貢献してきた。しかしそれはお主の親であってお主自身では無い。つまり親が何を成そうとも子には全く関係の無い話と言うことじゃ」
九重はそこで言葉を区切ると、椅子から降りて風華の前へと立つ。
「肝に銘じておけ。親がいくら善行を積もうとも、その子供が悪行を行えばたちまちそれまでの信用も信頼も失われるのじゃ。故に親が自慢であるならば、その顔を、名を汚さぬよう重々気を付けることじゃな」
「は、はい……心得ておきます……」
「ふぅ……やれやれ、歳をとるとどうにも説教が長くなってしまうのぅ。お主が今までしてきた事を考えればまだまだ言い足りぬくらいじゃが、残念ながらワシはこの後、新入生歓迎式に出ねばならぬのでな……ここいらで沙汰を下すことにしようかのぅ」
九重はそう言うと手にしていた扇子を鋭く風華に突き付ける。
「沙汰を下すぞ。嵐山風華、太刀風葵、木枯凪の三名は本日より一年間、この校舎内及び寮内のトイレ掃除を命じる。これを此度の件に対する処罰とする!」
「「「え?!」」」
重い罰が下されると思い込んでいた風華達三人は九重が命じた処罰に思わず声を揃える。
「なんぞ不服か?」
「い、いえ……てっきり降級処分になると思っていましたので……」
三人の反応に訝しげな表情となる九重に風華が代表してそう答える。
すると九重はため息をついてこう言った。
「ワシも最初はそう考えておった。しかし〝とある生徒〟からそれだけは勘弁して欲しいと懇願されてな……仕方なく代替案としてこのような処罰にしたまでよ」
「それってもしかして……」
「その〝とある生徒〟が誰であるかについてはお主らに話す義理は無い。分かったのであればさっさと自分達のクラスに戻るが良い。二度は言わぬぞ?」
「は、はい!し、失礼します!!」
九重に睨まれ慌てて学園長室から出てゆく風華達。
そのドアがバタンと閉まったのを見て、九重は〝やれやれ〟とため息をついた。
「しかし存外ごねたりなんぞせんかったな……お陰で天城空洞から教わった〝平民が出来るのにお嬢様は出来ないのか?〟という言葉を使わず終いだったわぃ」
そんな独り言を漏らす九重だったが、その表情はどこか嬉しそうである。
(しかし、あの我儘娘がこうも変わるか……天城空洞とやら、本当に面白き者じゃ。もしかしたら今年は面白い一年になるやもしれぬな)
九重はそう思うと、窓の外を見ながら薄い笑みを浮かべる。
そして徐ろに机に置かれた電話の受話器を手に取ると何処かへとかけ始める。
そして数分後に学園長室へと入ってきたのは一人の女性であった。
「お呼びでしょうか学園長?」
「おぅ、ちとお主に頼みたい事があっての」
「頼み事、ですか……」
入ってきたのは九重の秘書的な人物……この神術学園の学園長補佐を務める〝鴉羽八咫〟であった。
彼女は〝頼み事がある〟と話す九重に真剣な面持ちを浮かべる。
「実はのぅ……」
「はい。ふむふむ…………………………………………はい?」
そうして九重から何やら耳打ちをされる八咫は、その内容に思わず訝しげな表情となるのであった。
───────────────────
《次回予告》
九重は自身の補佐である鴉羽八咫に何かを耳打ちし、八咫はその内容に驚いた
一方で新入生歓迎式を終えた空洞は自身が配置されたSクラスにて、登校時に助けたあの女子生徒との再会を果たす
次回、〝姫神天鞠〟
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