虚空の神術師

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第一章:神術学園

閑話:鴉羽八咫の思慮

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(これは予想外の実力ですね……まさかここまであの二人を追い込むとは)


 天城空洞と荒覇吐嵐、雷の姉妹との決闘試合を見ていた私、鴉羽八咫はそのような感想を抱いていた。

 学園長から彼のことは聞かされていましたが……碌に神術を使えないながらもあのような立ち回りで二人を圧倒するとは思っていませんでした。

 いえ、別に彼を過小評価していた訳ではなく、同じ神威所有者でも〝神術を使えるか否か〟によって、その実力は大きく変わってくるのです。

 例えば、そう……同じナイフを持った人物が二人いたとしましょう。

 片方は初めてナイフを持った人物、もう片方は軍隊に所属しナイフの扱いに長けている人物。

 同じナイフを持った人物としても、どちらが優れているかは一目瞭然ですね?

 神威所有者もそれと同じ。

 神術とは神威の威力を増加させるブースターのようなものです。

 神術を駆使することによって神威の力の幅もまた増えるということです。

 よって、例え天城くんが荒覇吐姉妹よりも優れた神威を持っていたとしても、神術を使える彼女達の方が実力的には上なのです。

 それに、いくら〝無効化〟の能力があるとは言え、その効果が発揮されるのは天城くんが手で触れた時のみ……つまり〝触れられさえしなければ勝てる〟という訳ですね。

 でも……まぁ……〝虚空〟という神威はそれだけでかなりの脅威と言えるでしょう。

 今の天城くんは〝神威を持っているだけ〟の人間……しかし裏を返せば、そこに〝神術〟が加われば彼は想像もつかない程化けるという事です。

 まったく……彼が犯罪者にならなくて良かったと切実にそう思いますね。

 まぁ、常識で言えば神術を使えない天城くんが荒覇吐姉妹を圧倒するという事はありえないですが、現に実力的には上であるはずの彼女達が地に伏している。

 ですが私は軽率に審判を下したりしません。

 なにせ彼女達はまだ〝負けてない〟のですから。


(見たところ気を失ったフリをして天城くんを誘い出そうとしているようですが……当の天城くんには既にバレてるようですね)


 それを証明するように彼に声をかけられた二人がゆっくりと立ち上がる。

 何やら互いに言葉を交わしているようですが、こちらからはよく聞き取れませんね。

 ですが二人はまだ力を隠している事は明確で、それを表すかのように晴れていた空が一気に崩れ、そして吹き荒れる暴風と地を轟かす落雷が、それぞれ荒覇吐姉妹を包み込みました。

 そうして新たな姿を見せた彼女達に私は眉間に皺を寄せてしまいます。


(まったく……あれ程の力を隠していたなんて。後で二人はお説教ですね)


 二人が発動したのは神術のようですが、私の目から見てもあれは〝神術〟と呼ぶには些か強大過ぎるもの。

 そんな彼女達を相手に天城くんは今度はどのように立ち回るのでしょう?


(さて、天城くん……ここからは貴方にとっては未知の領域。いったいどうするのでしょうね?)


 私の隣では彼の友人達である姫神天鞠さん、綾津里操々璃さん、そして綾津里さんの従者である瀬々良木水望さんが固唾を飲んで彼を見守っています。

 それを横目に、私は少しばかりこの勝負の行方が楽しみに感じ、生徒達に気付かれる事無く僅かに口角を上げたのでした。
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