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第4章 呪い解ければ夢も股旅
触手植物
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村に到着し、助役の男に現場まで案内された。
「仕事にならないんで、本当に困っているんですよ」
助役は、心底困っているようだった。
「わたし共も見張っているんですが、1日1人は食われてしまうので」
「そんなに?」
思わず声を上げたあたしを、助役とジャンが振り返って見る。デロリスの視線が痛い。
「そうなんです。皆さんが早く来てくださって助かります。どうか、よろしくお願いします」
真っ直ぐ行った先にいる、というぎりぎりの場所まで案内してもらい、改めて挨拶を受けていると、その先から青年が走ってきた。
「助役さん! あ、冒険者の皆さん、助けてください! 俺の婚約者が!」
ジャンが無言で走り出す。あたしたちも後を追った。
真っ直ぐ、と言っても森の中だ。灌木や草むらを避けつつ、踏みしだかれた跡をたどって前へ進む。
それは、不意に目の前に出現した。
巨大イソギンチャク。
最初の印象は、それである。ここ陸地なのはわかっているわよ。他に例えが思いつかなかったんだってば。
胴体部分は、ブナみたいな肌質の巨木である。根は完全に土に埋もれている。枝は幹の途中にはなく、冠状に幹の先端から集中して生えていた。
その枝は、途中で分かれることもなく、1本1本がそのまま長く伸びている。
葉っぱも見当たらない。本当に木なんだろうか、これ。
で、表皮から謎の粘液を出しながら、驚くべき柔軟性で自律的に運動しているのである。
ね、イソギンチャクでしょう?
枝が運動する原因は、すぐにわかった。
「あぐ、あぐっ。げぼっ。いっ、いっ、イクッ」
若い女が1人、複数の枝に絡みつかれ悶えていた。全裸である。ビリビリに裂かれた布切れが、地面に落ちている。服の残骸である。滴る液が、枝から出るにしては多すぎる。良すぎて干からびそう。これは大変。
「ユノ、まず枝を切り落とすぞ。あの人を助けたら、デロリスが木を燃やす」
「わかった」
あたしはジャンに返事をした後、はた、と立ち止まった。どうやって、あそこまで上るの?
答えはすぐにわかった。
ジャンが走り寄ると、上から枝が降りてきた。そりゃあ、新しいエサが寄ってきたら、手を伸ばすよね。
彼は枝にひょい、と飛び乗ると、器用に枝元まで駆け上がった。意外とすごいな、ジャン。あたしにできるだろうか。
「早く行きなよ」
デロリスに、ドンっと背中を押された。よろよろと前へつんのめるあたし。
「あっ」
バランスを立て直そうとする目の前へ、にょろりと枝が伸びてきた。
こんな細い物に乗れるのかしら。
まず、やってみる。踏みつけるように足を載せ、下を見ず、一気に登った。
行けた。枝は太い細い関係なく、強靭だった。枝がまだ、濡れていなかったのも、良かった。
枝の生え際まで来たあたしは、火口を覗くような気持ちで、中心部を見た。
穴なんて、なかった。
枝が、ひたすら密集するだけだった。敢えて言えば、生えかけの短めな枝が隙間を埋める程度。
民話の二口女みたいに、ひょいひょいと人間を幹の中へ投げ入れるイメージでいたのだけれど、違った。吸い取り系だ。搾り取り系と言ってもいい。
にゅるり。足首に枝が巻き付く。あたしは剣を振るった。
イカタコの足を切ったような感触を残し、枝は切れた。巻きついた先っぽが、ぽろりと落ちる。
「あっ。やめろっ」
ジャンの声がした。見るまでもない。枝に捕まったのだ。
これはまずい。増えた人質ごとに、枝を切りに行ったら、罠に飛び込むようなもの。あたしは、枝の集まる中心部に、魔法で火をつけてみた。
点火。魔法の火は、生木だろうが容赦ない。たちまち、灰色の煙を上げて燃え出した。
「えっ。何で火が?」
デロリスの慌てる声がする。あたしが魔法を使えるって、教えていないものね。
ガシャガシャ。
派手な金属音がした。見ると、ジャンの鎧が脱げて下に落ちていた。まだ服の上から探られるだけなのに、その顔は快感に赤らんでいる。
「あんっ、イクッイクッ。ひいんっ」
若い女は触手枝に両乳首をつんつんされ、同時に膣に枝を入れられたまま、快楽に溺れている。口へはまた別の触手が出たり入ったりしている。
触手以外、何も遮るものがなく、好きな方向から眺め放題。見物側が触手に襲われなければ。
一方で、火に近い枝は、熱さに身悶えして、それ自体が炎のようにグネグネと、気味悪くうごめいていた。
元気な枝が、性懲りもなくあたしを狙うのを、バッサバッサと切り伏せる。炎のおかげで、大分新手の枝は減った。
そこで、手近な位置に囚われたジャンに向かう。
あたし、ちょっと格好いいよね。
「うおっ、出るっ」
「ジャン!」
ジャンの精液が空に橋を架け、その下をくぐるように、デロリスが前へ出てきた。役目を忘れている。魔法を使え、魔法を。
あたしはジャンを縛る枝を切ってみた。こちらは太い。一発では切れない。2、3度ナタのように振るって、後は重みで落とした。
「ぐえっ」
結構ひどい音がした気がするけど、デロリスに任せることにする。
次は、女の方だ。
「ジャーン!」
「デロリス!」
マイルズの声もする。あたしはよそ見をする余裕がない。
今度は、裸でイキまくっている女の枝を、切りにかかる。合間に、あたしを狙う枝も退治しないといけない。
こっちも太い。粘液にまみれて、剣が滑る。脇からあたしを狙う枝を撃退しつつ、どうにか女を解放できた。あとは、マイルズの役目だろう。
「あへっ。あへっ」
新たな声に振り向いた。
襲いくる枝を切り捨てた向こうで、デロリスが両乳剥き出しで喘いでいた。丸い乳を囲むように、触手枝が動いている。口の両端からも、スカートの下からも枝が入り込んでいる。デロリスの目は完全にイっていた。
その背後には、もくもくと煙を上げる火が迫っていた。
新たな枝は来ない。デロリスに巻き付く枝が、最後の力を振り絞っているように見えた。
放っておこうか。人喰いって聞いたけど、食べる口も見当たらなかったし、快楽で出る液を吸収するだけなんじゃないか。せっかく気持ちよくなっているデロリスの枝を切り落としたら、恨まれるかもしれない。
「ユノ! デロリスを助けてくれ!」
あたしの考えを読み取ったみたいに、マイルズの声がした。
そうか。マイルズもデロリスのモノなんだな。あたしは、細い部分を狙って、肌ぎりぎりの位置へ剣を振り下ろした。
「ありがとうユノ」
ギルドでお礼と共に、約束の報酬を受け取った。誤魔化されるかとの予想は外れて、きっちり等分にしてくれた。そこは評価してあげよう。
あたしのおかげで復活したデロリスが、得意の魔法を放って、木を完全に炭にした。
女の人を近くで待っていた婚約者へ引き渡した後、一緒に村へ送り届け、依頼が終わった確認も取って、無事に戻ったところである。
もし、枝に絡まれた人を放っておくと、大抵はイキ終わった後に解放してくれるのだが、たまにイキ続けたまま死ぬ人もいる、と聞いた。
エロ鎧を着た状態で、近付かない方が良い相手である。デロリスを放っておいても、後ろで木が燃えていたし、若いし、死にやしないんじゃないかとも思うけど、助けて良かったんだろう。
「じゃあ、お祝いのレベル上げしようぜ」
ジャンが早速、あたしの手を取ろうとするのを、何とか避けた。避けたのに、デロリスが睨んでくる。やっぱり、このパーティではやっていけない。
「悪いけど、あたし、約束があるから。これでお別れね」
「え、何で? 後からでも」
「世話になったわ。お元気で」
急ぎ足でギルドを出た。もう夕方も良いところだ。あの古道具屋は、もう閉まっているかもしれない。
日が落ちる寸前の街を、必死に走る。街を見ても、普通の店は、営業終了って感じ。やっているのは、冒険者向けの居酒屋か、ホテルぐらいだ。
ここには、コンビニなんてものは、ない。
「仕事にならないんで、本当に困っているんですよ」
助役は、心底困っているようだった。
「わたし共も見張っているんですが、1日1人は食われてしまうので」
「そんなに?」
思わず声を上げたあたしを、助役とジャンが振り返って見る。デロリスの視線が痛い。
「そうなんです。皆さんが早く来てくださって助かります。どうか、よろしくお願いします」
真っ直ぐ行った先にいる、というぎりぎりの場所まで案内してもらい、改めて挨拶を受けていると、その先から青年が走ってきた。
「助役さん! あ、冒険者の皆さん、助けてください! 俺の婚約者が!」
ジャンが無言で走り出す。あたしたちも後を追った。
真っ直ぐ、と言っても森の中だ。灌木や草むらを避けつつ、踏みしだかれた跡をたどって前へ進む。
それは、不意に目の前に出現した。
巨大イソギンチャク。
最初の印象は、それである。ここ陸地なのはわかっているわよ。他に例えが思いつかなかったんだってば。
胴体部分は、ブナみたいな肌質の巨木である。根は完全に土に埋もれている。枝は幹の途中にはなく、冠状に幹の先端から集中して生えていた。
その枝は、途中で分かれることもなく、1本1本がそのまま長く伸びている。
葉っぱも見当たらない。本当に木なんだろうか、これ。
で、表皮から謎の粘液を出しながら、驚くべき柔軟性で自律的に運動しているのである。
ね、イソギンチャクでしょう?
枝が運動する原因は、すぐにわかった。
「あぐ、あぐっ。げぼっ。いっ、いっ、イクッ」
若い女が1人、複数の枝に絡みつかれ悶えていた。全裸である。ビリビリに裂かれた布切れが、地面に落ちている。服の残骸である。滴る液が、枝から出るにしては多すぎる。良すぎて干からびそう。これは大変。
「ユノ、まず枝を切り落とすぞ。あの人を助けたら、デロリスが木を燃やす」
「わかった」
あたしはジャンに返事をした後、はた、と立ち止まった。どうやって、あそこまで上るの?
答えはすぐにわかった。
ジャンが走り寄ると、上から枝が降りてきた。そりゃあ、新しいエサが寄ってきたら、手を伸ばすよね。
彼は枝にひょい、と飛び乗ると、器用に枝元まで駆け上がった。意外とすごいな、ジャン。あたしにできるだろうか。
「早く行きなよ」
デロリスに、ドンっと背中を押された。よろよろと前へつんのめるあたし。
「あっ」
バランスを立て直そうとする目の前へ、にょろりと枝が伸びてきた。
こんな細い物に乗れるのかしら。
まず、やってみる。踏みつけるように足を載せ、下を見ず、一気に登った。
行けた。枝は太い細い関係なく、強靭だった。枝がまだ、濡れていなかったのも、良かった。
枝の生え際まで来たあたしは、火口を覗くような気持ちで、中心部を見た。
穴なんて、なかった。
枝が、ひたすら密集するだけだった。敢えて言えば、生えかけの短めな枝が隙間を埋める程度。
民話の二口女みたいに、ひょいひょいと人間を幹の中へ投げ入れるイメージでいたのだけれど、違った。吸い取り系だ。搾り取り系と言ってもいい。
にゅるり。足首に枝が巻き付く。あたしは剣を振るった。
イカタコの足を切ったような感触を残し、枝は切れた。巻きついた先っぽが、ぽろりと落ちる。
「あっ。やめろっ」
ジャンの声がした。見るまでもない。枝に捕まったのだ。
これはまずい。増えた人質ごとに、枝を切りに行ったら、罠に飛び込むようなもの。あたしは、枝の集まる中心部に、魔法で火をつけてみた。
点火。魔法の火は、生木だろうが容赦ない。たちまち、灰色の煙を上げて燃え出した。
「えっ。何で火が?」
デロリスの慌てる声がする。あたしが魔法を使えるって、教えていないものね。
ガシャガシャ。
派手な金属音がした。見ると、ジャンの鎧が脱げて下に落ちていた。まだ服の上から探られるだけなのに、その顔は快感に赤らんでいる。
「あんっ、イクッイクッ。ひいんっ」
若い女は触手枝に両乳首をつんつんされ、同時に膣に枝を入れられたまま、快楽に溺れている。口へはまた別の触手が出たり入ったりしている。
触手以外、何も遮るものがなく、好きな方向から眺め放題。見物側が触手に襲われなければ。
一方で、火に近い枝は、熱さに身悶えして、それ自体が炎のようにグネグネと、気味悪くうごめいていた。
元気な枝が、性懲りもなくあたしを狙うのを、バッサバッサと切り伏せる。炎のおかげで、大分新手の枝は減った。
そこで、手近な位置に囚われたジャンに向かう。
あたし、ちょっと格好いいよね。
「うおっ、出るっ」
「ジャン!」
ジャンの精液が空に橋を架け、その下をくぐるように、デロリスが前へ出てきた。役目を忘れている。魔法を使え、魔法を。
あたしはジャンを縛る枝を切ってみた。こちらは太い。一発では切れない。2、3度ナタのように振るって、後は重みで落とした。
「ぐえっ」
結構ひどい音がした気がするけど、デロリスに任せることにする。
次は、女の方だ。
「ジャーン!」
「デロリス!」
マイルズの声もする。あたしはよそ見をする余裕がない。
今度は、裸でイキまくっている女の枝を、切りにかかる。合間に、あたしを狙う枝も退治しないといけない。
こっちも太い。粘液にまみれて、剣が滑る。脇からあたしを狙う枝を撃退しつつ、どうにか女を解放できた。あとは、マイルズの役目だろう。
「あへっ。あへっ」
新たな声に振り向いた。
襲いくる枝を切り捨てた向こうで、デロリスが両乳剥き出しで喘いでいた。丸い乳を囲むように、触手枝が動いている。口の両端からも、スカートの下からも枝が入り込んでいる。デロリスの目は完全にイっていた。
その背後には、もくもくと煙を上げる火が迫っていた。
新たな枝は来ない。デロリスに巻き付く枝が、最後の力を振り絞っているように見えた。
放っておこうか。人喰いって聞いたけど、食べる口も見当たらなかったし、快楽で出る液を吸収するだけなんじゃないか。せっかく気持ちよくなっているデロリスの枝を切り落としたら、恨まれるかもしれない。
「ユノ! デロリスを助けてくれ!」
あたしの考えを読み取ったみたいに、マイルズの声がした。
そうか。マイルズもデロリスのモノなんだな。あたしは、細い部分を狙って、肌ぎりぎりの位置へ剣を振り下ろした。
「ありがとうユノ」
ギルドでお礼と共に、約束の報酬を受け取った。誤魔化されるかとの予想は外れて、きっちり等分にしてくれた。そこは評価してあげよう。
あたしのおかげで復活したデロリスが、得意の魔法を放って、木を完全に炭にした。
女の人を近くで待っていた婚約者へ引き渡した後、一緒に村へ送り届け、依頼が終わった確認も取って、無事に戻ったところである。
もし、枝に絡まれた人を放っておくと、大抵はイキ終わった後に解放してくれるのだが、たまにイキ続けたまま死ぬ人もいる、と聞いた。
エロ鎧を着た状態で、近付かない方が良い相手である。デロリスを放っておいても、後ろで木が燃えていたし、若いし、死にやしないんじゃないかとも思うけど、助けて良かったんだろう。
「じゃあ、お祝いのレベル上げしようぜ」
ジャンが早速、あたしの手を取ろうとするのを、何とか避けた。避けたのに、デロリスが睨んでくる。やっぱり、このパーティではやっていけない。
「悪いけど、あたし、約束があるから。これでお別れね」
「え、何で? 後からでも」
「世話になったわ。お元気で」
急ぎ足でギルドを出た。もう夕方も良いところだ。あの古道具屋は、もう閉まっているかもしれない。
日が落ちる寸前の街を、必死に走る。街を見ても、普通の店は、営業終了って感じ。やっているのは、冒険者向けの居酒屋か、ホテルぐらいだ。
ここには、コンビニなんてものは、ない。
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