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エピローグ エロゲに愛を出さないで欲しい

エロゲの主人公

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 空が白み始めたか、分厚いカーテンの上部から、うっすら光が漏れてきた。

 あたしは、ぐったりとうつ伏せに伸びて、ヴィンスが膣壁を擦るままにさせていた。徹夜である。もう何発目だろう? 5、6回までは数えたけど、あとは諦めた。

 「柚乃ゆの

 何度目かの放出の後、背中から被さったヴィンスが、耳元で囁いた。ん?

 「俺が誰か、わかるか」

 あたしは、勢いをつけて体の向きを変えた。やや小さくなってもまだ挿さっていた、ヴィンスの陰茎がにゅるん、と抜けた。一緒に穴から粘液がこぼれる。

 消えかかった灯火の下、改めて王と向き合う。イケメンである。前世でも今世でも、過去に知り合った覚えはない。

 「申し訳ございません、陛下。記憶にございません」

 ベッドの上に座り直す。ヴィンスもあたしから離れて座った。今更に、照れている。

 「プレイヤーの特殊能力なのかな。改めると、言いにくいな。俺は、柚乃のお兄ちゃんなんだけど」

 あたしは反射的に平手打ちした。


 多少ゴタゴタした後、気を落ち着けたあたしは、ヴィンスから転生後の話を聞いた。
 死んだ時の話は、あんまり詳しく聞けなかった。

 兄いわく、病気のせいで気の迷いだった。正気に戻った時には、間に合わなかった。
 そして、前後のことはぼんやりとして、覚えていないそうなのだ。

 あたしは拳をぷるぷるさせて耐えた。

 時は戻らない。そして、あたしも死んでいる。

 この世界は、あたしが思った通り、兄がプレイしていたゲーム世界だった。
 あたしと違って、兄は主人公として転生した。それも、前世でクリア済みだったから、プレイヤー知識を駆使して王までのし上がったそうな。時系列としては、クリア後の状態らしい。

 「お兄ちゃんが、R18ゲームのコレクターだとは、思わなかったよ」

 「ちょっと見ただけだと、エロい話と思わないだろ? 名前のせいで購入諦めたゲームも、いっぱいあったんだ。『挿入パラダイス・宇宙の果てまで』とか。『制服征服集成』は、ギリギリ行けそうな気もしたんだけど、慎重を期して買うのを止めた」

 ギリギリの意味がよくわからないけど、宇宙ものに転生しなくて良かった。SFの方が生き残りは大変そうだ。制服物は、永遠に学園生活も気持ち悪いし、卒業後の社会が気になる。
 それ以前に、R18ゲームが残っていたのが問題な訳だ。

 「片付けないで死んだら、意味ないよね。そのせいで、あたし死んだようなもんだし」

 「それも、悪かった」

 死んだこと自体より反省している。もしかしたら、本当に死ぬつもりがなかったのかもしれない。それはそれで悲しい話だ。
 沈んだあたしを見て、兄が話を切り替える。

 「もう、シナリオ外だから、現実世界と一緒で大変なんだよ。アバファチ男爵みたいな奴もいるし。危険な目に遭わせて悪かったな。でも、奴のお陰でお前を見つけられた」

 兄はあたしの頭に手を伸ばしかけて、止めた。あたしの拳に気付いたのかも。

 「妹ってわかっていたんなら、何で抱いたのよ。キモいじゃん」
 「うん。そう言われると思って、終わるまで黙っていた。レベル大分上がっただろ?」

 言われて、ステータスオープンする。話の感じだと、兄も自分のステータスは見られるみたいだ。

 戦士レベル6
 魔法レベル5

 激上がりだ。王スキルなのか主人公スキルなのか、ともかく凄い。でも。

 「ヤリ続けないと下がるのよね?」
 「よく知っているな。維持するだけなら、俺とじゃなくても大丈夫だから。ここに残って、誰か見繕みつくろってもいいし、外で探してもいい。俺としては、柚乃が仕事を手伝ってくれると嬉しいんだが」

 「王妃として?」
 「いやいや。そこまで縛らないよ。一応前世は妹だし」
 「考えさせて」
 「ゆっくり考えてくれ」

 ヴィンスは、部屋を出る前に振り向いた。

 「お前とまた会えて、よかった」
 「あたしも」

 もう二度と会えないと思っていた兄と話ができたのは、本当に良かった。


 朝食は、部屋へ運ばれてきて、ベッドで食べた。

 和食である。白米にワカメと豆腐の味噌汁、塩鮭、漬物。前世で兄と食卓を囲んだ時の定番。
 このファンタジー世界で、和食の材料を調達するのは大変だろう。首都もまずまず栄えていたし、兄は王として、それなりに上手くやっているみたいだ。

 食事には、シェイラが給仕についた。運んできたのは侍女だが、下がってしまって今は2人きりである。なんぞ話でもあるのかしら。

 「あたし、王妃にはならないですよ。血は繋がっていないけど、妹なんで」
 「え」

 薄幸はっこうそうな魔女は、美しい瞳を精一杯見開いた。驚いているのだろうけど、喜んでいるのかまでは、読み取れない。

 「兄、ええと。陛下のこと、好きですよね?」
 「それは、もちろんです」

 青白い頬が、ほんのり桜色に染まる。男共が情欲を掻き立てられる、色気がある。

 「でも、独り占めにしようとは、思っていませんわ。恐れ多い。ユノさんも、遠慮なさらなくていいのですよ」
 「妹なんで」
 「血は繋がっていないのでしょう? いえ、繋がっていたとしても、互いの合意があれば、問題ありませんのよ」

 何が悪いのだ、という顔だ。それに、不穏な発言があったわ。実の兄妹でも問題ない?
 さすがエロゲ世界。あたしはごめんだ。
 兄も妹のレベル上げ目的で、別にあたしに劣情れつじょうを抱いていた感じではなかった。そこは、良かったし、安心した。


 レベル上げしてもらった後、何日か、王城に居候させてもらった。ヴィンスは男とヤっていいと言ったけど、王の手がついた女に色目を使う男は、王城に存在しなかった。

 ちなみに、あの古道具屋にまで出かけて行ったけど、店主もやらせてくれなかった。
 王城から、馬車で送り迎えさせたせいも、あるわね。あたしが要求したんじゃなくて、ヴィンスの命令だって、周囲が仕立てたのよ。

 数日で、あたしは音を上げた。
 ここに居たら、あたしはダメになる。
 ヤれないし。

 普段は冒険者として1人暮らしをして、疲れた時に、たまに立ち寄って、広い浴場や和食を堪能するくらいが、ちょうどいい。

 勝手かもしれないけど、正直な気持ちだった。

 あたしは、ヴィンスの執務室へ向かった。

 両開きの扉の前には、護衛が立っている。でも、あたしの顔を見知っていて、止めもしない。分厚くて重い扉を、思い切り開けた。

 「あああっ。ヴィンス様っ」
 「ふうっ、ふうっ」
 「んんっ」
 「ヴィンス、こっちもいじってえ」

 ヴィンスは、いた。執務机に向かって、書類にサインをしているようだった。
 で、その膝上辺りに、処女開発促進鎧をまとったシェイラが乗って、意外と豊満な乳を机上に広げて喘いでいた。その陰に猫耳が見える。尻尾もピクピク動いている。

 反対側には、エルフの高官が乳首に吸い付いていた。ヴィンスの服をはだけている。背後から、女騎士が腕を巻きつけて、首を舐めていた。あと、ここから見えないけれど、机の下に誰か潜っているのが明らかだった。下からスカートの裾がはみ出ている。

 「おお、ユノ。またどこかへ出かけたいのか」

 あたしの姿を見ても、全く動じない。ヴィンスは普通に話しかけた。護衛が立ち入る気配もない。通常運転なのだ。
 一瞬だけ、殴ろうかと思ったけど、よく考えたら、殴る理由はなかった。

 「陛下。あたしは、冒険に出かけたいと思います。武器防具一式、譲っていただけますか」

 サインをする手が、止まった。ヴィンス王は、あたしを見つめ、穏やかな笑みを浮かべた。

 「よかろう。すぐに用意させる」
 「ありがとうございます。では、自室にて待機します」

 あたしは部屋を出た。

 程なくして、武器と防具のほか、旅に必要な一式が届けられた。食べ物や、当座の金まで入っている。遠慮なく頂いた。エロ男爵の館で奪われて以来、あたしは無一文だったのだ。

 歩いて王城を出る。道々、通りすがりの人たちには、別れの挨拶をした。

 ヴィンス王には、改めて会わなかった。

 兄は、この世界でまあまあ幸せにヤっている。会いたくなったら、きっと会えるだろう。その希望は、あたしに力をくれる。

 あたしもこれから、楽しくヤるのだ。

 終わり‥
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