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15 魔族の出現
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俺は、ベイジルの屋敷に十日ばかり滞在した。
その間に王城へ宴会に呼ばれたり、鉱山を案内されたりもしたが、大体は屋敷にいた。
そして、パメラと三人でヤッたり、パメラと俺がするところをベイジルが酒の肴にしたり、逆に二人がヤるところを眺めたりして過ごした。
「久々に会えて、楽しかった。世話になった」
別に予定はないのだが、ベイジルと過ごすうちに、他の仲間にも会いに行くことを思いついたのだ。
今戻ったところで、俺の家の環境は大して変わらない。
「ヒサエルディスの元へは、こちらから連絡しておくからな。会ったら改めてよろしく伝えてくれ」
「わかった」
ヒサエルディスはエルフの賢者で、勇者のアキを召喚することに貢献した。その後、魔王を倒す旅にも同行した。俺の姉弟子に当たる。
「パメラさんも、お元気で」
「はい」
パメラも見送りに出ていた。今日は、誰に見られても文句のつけようがない、上品なドレスを着ていた。
隠し切れない豊満な肢体も、ドワーフ的には何の魅力も与えないらしい。
寝取られる心配がなくて、ベイジルには都合が良さそうだ。
山を降りて街道へ出る。ドワーフが国を作っているように、エルフにも国がある。
そして、どちらも簡単には入れない。
ドワーフと違って、エルフ国は場所も定かでない。その時々で、位置を変えているのではないかとすら囁かれている。
だから、事前の通告というか、意思表示は必須だ。入国したくとも、あちらで拒否すれば、何の音沙汰もなく交渉が終了する事もしばしばある。
ベイジルがエルフに連絡を取ったと言うなら、俺は、迎えが来るまで、あるいは、場所を指定されるまでの間、好きなように出歩くまでである。
「‥‥っ!」
オーガは破裂した。
飛び散る肉片が、防御壁に当たってボタボタ落ちる。
人気のない場所を選んで彷徨いていた。
魔族が、こんなに出現するとは思わなかった。
ゴブリンやコボルトは害獣みたいなもので、魔王と関係なくどこにでも出現するイメージだが、オークやエキドナ、アラクネなんかも、普通の蛇や蜘蛛並みに出てきて辟易した。
暗い場所では、ゾンビやスケルトンのような、一回死んだ奴も湧いている。
最初は暇潰しを兼ねて剣で戦っていたのだが、それも面倒臭くなり、魔法で倒すことにした。
魔王と魔物は、ほぼ何の関係もないのだ。そうとしか思えない。
エルフ王国からの音沙汰もない。そろそろ街の宿へ泊まろう。
俺は、街へ足を向けた。
しばらく歩くうち、付けられていることに気付いた。微かに魔物の気配がする。
振り向くと同時に魔法で網を投げた。
「にゃーっ。にゃーっ」
黒猫が一匹かかった。他には誰もいない。
俺は、近付いて見下ろした。
「お前、人の姿になれるよな?」
黒猫が見えない網の下で起き上がり、にゃ? と可愛く鳴いて見せた。
「俺は無詠唱無動作で魔法が使える。最期の願いとして、どうやって死にたいか、選ばせてやろう」
「わ、わかった。わかったから、殺すな」
黒猫は、たちまち少女に変じた。まだ十代半ばぐらいに見えるが、もちろんそんな訳はない。胸の膨らみも成長途中の中途半端な感じだ。毛も生えていない。
「魔族が俺に何の用だ?」
「まず、この網を外せ」
「選ぶ余地はなさそうだな」
「うわー待て待て」
不毛なやり取りが、何度か続いた後、聞き出したところによれば、少女は記憶を失っているという。
「気が付いたら、山の中におったのだ。大きなものが爆発した跡があった」
野鼠やバッタを捕まえて食べながら、これまであちこち放浪した後、俺を見かけて付いてきたと言う。
「俺に会う前に、近くの村へ行けば、誰か助けてくれただろうに。俺の他にも人はたくさんいただろう? 魔族の仲間は助けないのか?」
少女は、恥入るように顔を背けた。
「人は、怖い。それに、魔族は弱い者に冷たい。というか、オレは猫人だと思っていたのだが、魔族なのか?」
俺は、改めて少女を観察した。ごく僅かながら、魔族の気配を持っている。獣人ではあり得ない。
「魔族だ。人が怖い、と言う割には、俺の後を付けて、こうやって偉そうに話しているじゃないか。何を企んでいるんだ?」
少女は上目遣いに俺を見た。
「その~、お前に見覚えがあって、後を付けたら記憶を取り戻せるんじゃないか、と思って」
「俺はお前を知らん。じゃあな」
俺は、魔法の網ごと少女を持ち上げた。
「え、そんな。殺生な。どうか、ご慈悲を」
年齢の割には時代がかった言葉遣いで命乞いする少女を、魔法で遠くへ吹き飛ばした。魔族なら、実年齢が外見を大幅に上回っているなど、よくあることだ。
時間を無駄にした。
俺は、今夜の宿を求め、街へ歩き出した。
「あら~。可愛い猫ちゃんですね。うちなら、ご一緒にお泊まりになれますよ」
宿屋の女主人が、俺の足元を見て言った。先ほど別の男に、満室と断られた気がするのだが。
猫もどきに足止めされたせいで、悉く宿を断られた後のことだった。選ばなければ宿はあるのだが、下手な宿へ泊まるよりは、野宿の方がましである。
黒猫は、可愛らしい角度で小首を傾げ、にゃあと絶妙に甘い声で鳴いた。女主人の目がハートになった。
「では、部屋をお願いします。一部屋にベッドも一つ、ですよね?」
「? そうですよ。屋根裏なんで、ちょっと狭いかもですが」
通された部屋は、確かに狭かった。しばらく使っていなかったような、閉め切った部屋の匂いがする。
先に満室と断られたのも、嘘とまでは言えないようだ。
「どうやって来た?」
二人きりになると、問い詰めた。
「匂いを辿って、一生懸命駆けてきたのだ。喉が渇いた」
先ほど遠くへ飛ばした魔族である。猫姿でも、人語を喋れるのだ。
コンコン。ノックの音がした。
「よかったら、これ、猫ちゃんに」
女主人が、ミルクを入れた皿を差し出す。
「ありがとうございます。撫でて行きますか?」
俺は、笑顔で受け取った。魔族に対する嫌がらせである。女主人の顔が、ぱあっと明るくなった。
「大丈夫ですか? 嫌がりませんか?」
「一日歩いて、喉が渇いたと思います。飲んでいる間は大人しいでしょう」
俺は、黒猫に笑顔で圧力をかけると、床へ皿を置いた。
黒猫は、嫌々皿の前まで足を運ぶと、猫らしくぴちゃぴちゃミルクを飲み始めた。女主人が、早速背中を撫でる。
「柔らか~い。可愛いですね。猫ちゃん、シャワー浴びたら、もっとふわふわになりますよ。一階のシャワー室は人間しか使えないけど、良かったら、裏の水道を使ってください」
「ご親切に、ありがとうございます」
「最近、夜になると魔物が増えて、宿にお泊まりになるお客さんが増えたんですよ。野宿は危ないですものね。うちとしては、ありがたいです。土地があれば、部屋をもっと増やしたいくらいです」
「そうなんですね。ところで、食事に出かけたいのですが、猫を置いて行ってもいいでしょうか?」
うっとりと猫を撫で回していた女主人の目が、きらりと光った。
「こちらで、お預かりしましょう」
猫がみゃあ、と鳴いた。抗議している。俺は無視した。
「お腹が空いて、食べ物にイタズラするかもしれません」
「それなら、ダシを取った後の干し魚なんかどうですか? 良かったら、うちの方で余り物を食べさせます」
「助かります。よろしくお願いします」
女主人は、猫を抱き上げた。みゃ、と鳴きかけた猫は、俺の目を見ておとなしくなった。
「可愛い! お名前は、何と言いますか?」
「名前? ゾーイで」
猫がぴくりとした。
適当である。俺がザックだから、似た名前にしてしまった。猫に聞いておけば良かった。名付けるにしても、全然別の名前の方が良かった気がする。もう遅い。
「ゾーイちゃんね。よろしく」
女主人は、魔族とも知らず、黒猫にキスをした。命を吸い取られるのではないか、と内心ヒヤヒヤした。
そんなことは、起こらなかった。
宿を出て、居酒屋を探す。魔族が出現して夜歩きは危ないと言っても、街の中までは現れていないようだ。飲み騒ぐ類の店が幾つか存在し、それぞれに盛況であることは、店から漏れる灯りで見当がついた。
「今日は街にお泊まりなのですね」
肩にフクロウが降り立った。
「魔族が多くて、野宿が面倒になったんだ。ちっとも連絡が来ないし」
俺は、道を歩きながら答える。対話の相手はフクロウである。魔族ではない。
喋っているように見えるが、頭の中で会話する形だ。
「こちらも魔族の中へ分け入るのは、ごめんこうむりたいですね。それに、あなたの引き連れているあれは、何ですか?」
「記憶を失っているそうだ。何故か俺について来た」
「随分弱っていますが、魔族ですよね? 魔族をエルフ王国には入れられませんよ」
「だよな。やっぱ、殺しておくか。あれのお陰で宿が取れたから、明日になるが」
フクロウは、身震いして首をグルグル回した。
「あなた、相変わらず涼しい顔して、恐ろしいことを平気で言いますね」
「お前が、魔族を入れないって言うからだろうが。殺さなきゃ、どこまでも付いてくる」
「まあ、ご主人様たちは王国内のお住まいじゃありませんからね。一旦戻って聞いてみます」
「え、帰るのか?」
俺がフクロウを見た時には、奴は夜空へ飛び立っていた。
次に連絡が来るまで、ここにいた方がいい。
となると、しばらくあいつを殺せないじゃないか。
その間に王城へ宴会に呼ばれたり、鉱山を案内されたりもしたが、大体は屋敷にいた。
そして、パメラと三人でヤッたり、パメラと俺がするところをベイジルが酒の肴にしたり、逆に二人がヤるところを眺めたりして過ごした。
「久々に会えて、楽しかった。世話になった」
別に予定はないのだが、ベイジルと過ごすうちに、他の仲間にも会いに行くことを思いついたのだ。
今戻ったところで、俺の家の環境は大して変わらない。
「ヒサエルディスの元へは、こちらから連絡しておくからな。会ったら改めてよろしく伝えてくれ」
「わかった」
ヒサエルディスはエルフの賢者で、勇者のアキを召喚することに貢献した。その後、魔王を倒す旅にも同行した。俺の姉弟子に当たる。
「パメラさんも、お元気で」
「はい」
パメラも見送りに出ていた。今日は、誰に見られても文句のつけようがない、上品なドレスを着ていた。
隠し切れない豊満な肢体も、ドワーフ的には何の魅力も与えないらしい。
寝取られる心配がなくて、ベイジルには都合が良さそうだ。
山を降りて街道へ出る。ドワーフが国を作っているように、エルフにも国がある。
そして、どちらも簡単には入れない。
ドワーフと違って、エルフ国は場所も定かでない。その時々で、位置を変えているのではないかとすら囁かれている。
だから、事前の通告というか、意思表示は必須だ。入国したくとも、あちらで拒否すれば、何の音沙汰もなく交渉が終了する事もしばしばある。
ベイジルがエルフに連絡を取ったと言うなら、俺は、迎えが来るまで、あるいは、場所を指定されるまでの間、好きなように出歩くまでである。
「‥‥っ!」
オーガは破裂した。
飛び散る肉片が、防御壁に当たってボタボタ落ちる。
人気のない場所を選んで彷徨いていた。
魔族が、こんなに出現するとは思わなかった。
ゴブリンやコボルトは害獣みたいなもので、魔王と関係なくどこにでも出現するイメージだが、オークやエキドナ、アラクネなんかも、普通の蛇や蜘蛛並みに出てきて辟易した。
暗い場所では、ゾンビやスケルトンのような、一回死んだ奴も湧いている。
最初は暇潰しを兼ねて剣で戦っていたのだが、それも面倒臭くなり、魔法で倒すことにした。
魔王と魔物は、ほぼ何の関係もないのだ。そうとしか思えない。
エルフ王国からの音沙汰もない。そろそろ街の宿へ泊まろう。
俺は、街へ足を向けた。
しばらく歩くうち、付けられていることに気付いた。微かに魔物の気配がする。
振り向くと同時に魔法で網を投げた。
「にゃーっ。にゃーっ」
黒猫が一匹かかった。他には誰もいない。
俺は、近付いて見下ろした。
「お前、人の姿になれるよな?」
黒猫が見えない網の下で起き上がり、にゃ? と可愛く鳴いて見せた。
「俺は無詠唱無動作で魔法が使える。最期の願いとして、どうやって死にたいか、選ばせてやろう」
「わ、わかった。わかったから、殺すな」
黒猫は、たちまち少女に変じた。まだ十代半ばぐらいに見えるが、もちろんそんな訳はない。胸の膨らみも成長途中の中途半端な感じだ。毛も生えていない。
「魔族が俺に何の用だ?」
「まず、この網を外せ」
「選ぶ余地はなさそうだな」
「うわー待て待て」
不毛なやり取りが、何度か続いた後、聞き出したところによれば、少女は記憶を失っているという。
「気が付いたら、山の中におったのだ。大きなものが爆発した跡があった」
野鼠やバッタを捕まえて食べながら、これまであちこち放浪した後、俺を見かけて付いてきたと言う。
「俺に会う前に、近くの村へ行けば、誰か助けてくれただろうに。俺の他にも人はたくさんいただろう? 魔族の仲間は助けないのか?」
少女は、恥入るように顔を背けた。
「人は、怖い。それに、魔族は弱い者に冷たい。というか、オレは猫人だと思っていたのだが、魔族なのか?」
俺は、改めて少女を観察した。ごく僅かながら、魔族の気配を持っている。獣人ではあり得ない。
「魔族だ。人が怖い、と言う割には、俺の後を付けて、こうやって偉そうに話しているじゃないか。何を企んでいるんだ?」
少女は上目遣いに俺を見た。
「その~、お前に見覚えがあって、後を付けたら記憶を取り戻せるんじゃないか、と思って」
「俺はお前を知らん。じゃあな」
俺は、魔法の網ごと少女を持ち上げた。
「え、そんな。殺生な。どうか、ご慈悲を」
年齢の割には時代がかった言葉遣いで命乞いする少女を、魔法で遠くへ吹き飛ばした。魔族なら、実年齢が外見を大幅に上回っているなど、よくあることだ。
時間を無駄にした。
俺は、今夜の宿を求め、街へ歩き出した。
「あら~。可愛い猫ちゃんですね。うちなら、ご一緒にお泊まりになれますよ」
宿屋の女主人が、俺の足元を見て言った。先ほど別の男に、満室と断られた気がするのだが。
猫もどきに足止めされたせいで、悉く宿を断られた後のことだった。選ばなければ宿はあるのだが、下手な宿へ泊まるよりは、野宿の方がましである。
黒猫は、可愛らしい角度で小首を傾げ、にゃあと絶妙に甘い声で鳴いた。女主人の目がハートになった。
「では、部屋をお願いします。一部屋にベッドも一つ、ですよね?」
「? そうですよ。屋根裏なんで、ちょっと狭いかもですが」
通された部屋は、確かに狭かった。しばらく使っていなかったような、閉め切った部屋の匂いがする。
先に満室と断られたのも、嘘とまでは言えないようだ。
「どうやって来た?」
二人きりになると、問い詰めた。
「匂いを辿って、一生懸命駆けてきたのだ。喉が渇いた」
先ほど遠くへ飛ばした魔族である。猫姿でも、人語を喋れるのだ。
コンコン。ノックの音がした。
「よかったら、これ、猫ちゃんに」
女主人が、ミルクを入れた皿を差し出す。
「ありがとうございます。撫でて行きますか?」
俺は、笑顔で受け取った。魔族に対する嫌がらせである。女主人の顔が、ぱあっと明るくなった。
「大丈夫ですか? 嫌がりませんか?」
「一日歩いて、喉が渇いたと思います。飲んでいる間は大人しいでしょう」
俺は、黒猫に笑顔で圧力をかけると、床へ皿を置いた。
黒猫は、嫌々皿の前まで足を運ぶと、猫らしくぴちゃぴちゃミルクを飲み始めた。女主人が、早速背中を撫でる。
「柔らか~い。可愛いですね。猫ちゃん、シャワー浴びたら、もっとふわふわになりますよ。一階のシャワー室は人間しか使えないけど、良かったら、裏の水道を使ってください」
「ご親切に、ありがとうございます」
「最近、夜になると魔物が増えて、宿にお泊まりになるお客さんが増えたんですよ。野宿は危ないですものね。うちとしては、ありがたいです。土地があれば、部屋をもっと増やしたいくらいです」
「そうなんですね。ところで、食事に出かけたいのですが、猫を置いて行ってもいいでしょうか?」
うっとりと猫を撫で回していた女主人の目が、きらりと光った。
「こちらで、お預かりしましょう」
猫がみゃあ、と鳴いた。抗議している。俺は無視した。
「お腹が空いて、食べ物にイタズラするかもしれません」
「それなら、ダシを取った後の干し魚なんかどうですか? 良かったら、うちの方で余り物を食べさせます」
「助かります。よろしくお願いします」
女主人は、猫を抱き上げた。みゃ、と鳴きかけた猫は、俺の目を見ておとなしくなった。
「可愛い! お名前は、何と言いますか?」
「名前? ゾーイで」
猫がぴくりとした。
適当である。俺がザックだから、似た名前にしてしまった。猫に聞いておけば良かった。名付けるにしても、全然別の名前の方が良かった気がする。もう遅い。
「ゾーイちゃんね。よろしく」
女主人は、魔族とも知らず、黒猫にキスをした。命を吸い取られるのではないか、と内心ヒヤヒヤした。
そんなことは、起こらなかった。
宿を出て、居酒屋を探す。魔族が出現して夜歩きは危ないと言っても、街の中までは現れていないようだ。飲み騒ぐ類の店が幾つか存在し、それぞれに盛況であることは、店から漏れる灯りで見当がついた。
「今日は街にお泊まりなのですね」
肩にフクロウが降り立った。
「魔族が多くて、野宿が面倒になったんだ。ちっとも連絡が来ないし」
俺は、道を歩きながら答える。対話の相手はフクロウである。魔族ではない。
喋っているように見えるが、頭の中で会話する形だ。
「こちらも魔族の中へ分け入るのは、ごめんこうむりたいですね。それに、あなたの引き連れているあれは、何ですか?」
「記憶を失っているそうだ。何故か俺について来た」
「随分弱っていますが、魔族ですよね? 魔族をエルフ王国には入れられませんよ」
「だよな。やっぱ、殺しておくか。あれのお陰で宿が取れたから、明日になるが」
フクロウは、身震いして首をグルグル回した。
「あなた、相変わらず涼しい顔して、恐ろしいことを平気で言いますね」
「お前が、魔族を入れないって言うからだろうが。殺さなきゃ、どこまでも付いてくる」
「まあ、ご主人様たちは王国内のお住まいじゃありませんからね。一旦戻って聞いてみます」
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