異世界でロリッ子魔導師になりました

リオック

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帝国編

流れる時間と体感時間は意識次第かもです

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 大森林を無事に抜け終えた頃には日も落ち、空は暗くなっていた。
 徒歩での移動だと翌日になっていることを考えれば、そこ数時間で大森林を通過できるのは十分な早さである。
「光月が見え始めたばかりと考えると、5時間くらいで大森林を抜けたみたいですわね」
 なるほど、今更だが月の事はこうげつと言うらしい、私は勝手に欠如の月と呼んでいたが・・・それはそれとして。
 ギルドを出てソリに乗った辺りで大体2時くらいだったらしい、腕時計でもあれば便利ではあるが・・・時間を気にしすぎても仕方がない。
 スマホやらメディア媒体等を使わなくなってからの体感時間はとても長い、画面越しの他人の人生を見ているだけで己の時間は一瞬で無くなっていくということか。
 眺めているだけの時間で自分の人生が好転することもない、芸能人を応援したところで金が増えるわけでもなければお腹が膨れることもなし・・・関係者は別だろうが。
「そういえばフィオナはどうするの?」
「レナもいきなりなのです、どうするというのは・・・・・・?」
「一応冒険者ジオは別人という話だったから、向こうに着いたらどっちで戦うのかなと・・・・・・その声でいつもの話し方されるとなんか複雑だよ」
 思考と違い、なのです口調もそれなりにパッと出てくるようになってきたが・・・逆にジオの時にもつい口にしてしまう。
「ミリーにも昔同じ事言われたのです・・・同時に歩くくらいはできるかもです」
 鎧を脱いで試しに動かしてみると・・・日常的な動きは問題なさそうだった・・・少々ぎこちないが。
「・・・フィオナの右目なんか術式みたいに光ってる・・・よく見ると私達が映ってる」
「なるほど、周りからはそう見えていたですか、映像投射器に近いものとでも思って下さいなのです」
 画面から離れるどころか至近距離で見てるようなものかもしれない、眼にあまりよろしくないが致し方ない。

 緩やかに下りが続く草原を進んでいると程なくして町が見えてくる、どうやらあれがアーシルのようだ。
 雰囲気は村落と言った感じだろうか、家屋も木製で簡素な作りになっているように見える。
「初めて来ましたけれど・・・元傭兵国家の名残もありませんわね」
「次元断裂事変の前から魔族との争いで崩壊してたみたいだし、仕方ないんじゃないかな」
 現在の簡素な作りは魔海からの魔物襲来で倒壊しても、すぐ建て直せるようにしてるからなのだろう。
 常駐するには精神衛生上よくない気もするが・・・故にギルドの高ランクな依頼に指定される理由か。
「浜辺で戦闘してるのが見えるよ!」
「・・・沖にいるのが特異個体みたい、この距離でも大きく見えるね」
 遠目だが視認できる距離にまで来ると、今まで見た魔物とはサイズがまるで違った・・・あんなものが近くにいて冷静でいるのは至難と言える。
「とりあえず村近くまでは鎧を着ておくとしよう」
「それがよろしいですわ、正直身体と別々に動かせるのは意味不明ですけれど・・・」
 同時に歩けるとは言っても速く移動できるわけでもない、町の手前まで辿り着いた辺りで鎧から降りた後ジオを突貫させようと考えた矢先、頭に不快な感覚が起きた。
「?どうしたのフィオナ、頭大丈夫?」
 頭を押さえた私をアイリが心配してくれたようだが、他意はないだろうがその言い方は私が残念な子みたいになって・・・・・・頭痛とも違う妙な感覚だ。
「大丈夫なので皆と先に向かって下さい・・・・・・なのです」
「声を変える余裕はあるみたいですわね・・・私(わたくし)達で先行しておきますわ」
「・・・分かった、先に行ってるね」
 皆が町に向かって走ると直ぐに距離が離れていく、ミリーだけは走るというより風の属性放出を利用したホバリングだが。
 この頭の不快感・・・体感的に脳の内側で発生してるものではないようだが・・・リアと念話してる時とも別の違和感・・・ふと意識を集中させると。
 排除 排除 排除 排除 排除 排除
「これは・・・・・・声としての認識ではなくそう感じるだけ・・・・・・なのか??」
 今までに感じたことのない威圧感を覚える、ここに来てそれを認識したということは・・・・・・発生源はあの特異個体のようであった。

 不快感を振り払うように全速力で皆を追いかけ、町に入ると人の気配を屋外では感じられなかった。
 念の為、魔力を視て確認する・・・町中で強靭体と思わしき気配は感じられないが、他の家屋より少し大きい年季の入った建物から強い魔力を感じたが・・・人のようだ。
 家屋にちらほら気配はあるようだが、外出を控えている感じだろうか・・・ここで一般人が暮らすには相当肝が据わっていないと厳しいだろう。
 浜辺に向かい鎧から降りると、ミリー達とは別に近接職の冒険者が十数人、その後方に更に十数人の魔導師が戦闘をしていた・・・が。
「炎よ、天から降り注げ・・・撃ち払え!フレア・レイン」
 ドドドドドドッ!!!
 連携が取れているのだろう、魚人型の攻撃を防いでいた近接職が魔導術の飛来する直前で一斉に後方に飛び退いた、その瞬間無数の炎の槍が魔物を焼き貫く。
「加勢する前に一掃されましたわね、あの女性は・・・・・・かなりの術者ですわ」
 ジオをミリーの隣へと歩ませた時・・・青髪のロングヘアーが印象的な女性が私達の方に振り返る。
「君達は・・・そうかギルドマスターが言っていた冒険者達か、随分と早かったじゃないか・・・」
「久しぶりですね、ラニール先輩。炎の魔導術もお変わりなく」
「レナ・グレイスだったな、確か学院生でミスリルになったと・・・」
 レナに軽く挨拶を交わし、私(ジオ)とミリーを見ている・・・アイリとユラは左方向の少し離れている浜辺で戦闘している人達に加勢しているようだった。
「できる、ときいている。しかし・・・・・・後ろの子供は戦場に連れてくるべきではないと思うが・・・・・・」
「あの子が王都で小さな天才魔導師と呼ばれてるフィオナ・ウィクトールですわ、私(わたくし)はミリー・シュタッドと申します」
 ミリーの元に歩きつつ、ジオの視界の方でラニールを眺める・・・つり目の赤い瞳が全身鎧を見据えている。
「私はナヤ・ラニールだ・・・・・・変わった鎧と武器、なるほど只者ではないようだ」
「冒険者のジオという、よろしく頼む。先程の魔導術は見事・・・・・・どうかされましたか?」
 つり目を更に細めて睨まれる・・・というより観察しているようだ、胸の谷間から眼鏡を取り出し、かけつつジオの頭部を見つめている。
「兜の目元の光は術式か・・・?細まったり広がったりと、噂に違わぬ変わった御仁だな」
「初めて見たときは目元全体だけでしたけれど、いつの間にか動くようになりましたわね・・・目線が少し分かりやすくなっていますわね」
 ミリーの傍に寄ってからジオで私を見下ろす姿を更に私が見上げると・・・確かに光が広がったり細まったり変化している、ナンバリングに4がついている某作品の複眼を無意識に再現していたのかもしれない。
「フィオナと言ったか・・・君の右目も少し光って見えるが・・・」
「姉御!鰐人型が複数、海上から迫ってきてます!」
 片手直剣を2本持った女性冒険者が駆け寄る、姉御とはラニールさんの事のようだが・・・姉御は止めろと口走ってる所から周りがそう呼んでいるようだ。
「乱入してくるとは、とんでもないやつだ」
「強靭体は・・・まずい、しかも複数だと・・・」
「攻守交代ですわ、皆さんは少しでも回復に努めて下さいまし。行きますわよフィ・・・・・・ジオさん!」
 一緒に並んでいたのも相まってミリーが私の呼び方に戸惑いつつ、強靭体との戦いに身を投じるのであった。
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