異世界でロリッ子魔導師になりました

リオック

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共和国編

後には引けなかったのでした

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 敢えて口に出さないようにしていたのですが、そろそろ言わざるを得ないですかね・・・。
「私達は、おぞましいものを見てしまっているのです・・・もしかしなくてもヤバい状況なのですこれは・・・?」
「フィオナちゃん、できればもう少し早くそう判断してほしかったんだけどね・・・シオンが万全を期して空間明度も上げたようだから、これで視覚的な不利はないよ」
 以前のもそうですがさらっと凄い事してるですね・・・それにしても、魔海でのルスカ・カリーナというイレギュラーを除けば大抵の魔物はミリー達の敵ではないと完全に盲信していたのです。
「おいおいおい・・・冗談だろ、羽が生えた子蜘蛛までどんどん増えていってねえか!?」
「なあジュノ、僕達は生きてこの大空洞から帰れるのかな・・・不安を口にしても許されるだろこれはもう・・・!」
 純粋な物量の力だけでここまで厄介な事態になるとは想像以上だったのです。
 平地であれば私達が止める間もなくミリーが早々に国級規模の魔導術で一掃していたとは思うのですが・・・広いとはいえ大空洞という閉鎖空間の制約は効果絶大だったのです悪い意味で。
「シオンから救援要請がきた、フィオナちゃん、あの巨大蜘蛛型の相手は君に一任するよ、十八番の空中戦で仕留めてもらいたい」
 私の非行もとい、飛行戦術を認知してる以上・・・アキさんの発言はもっともなのですが、タイミングは最悪と言っても過言ではないのです本当に。
「商会長、私達は人族・・・フィオナちゃんもそうだ、翼も無しで一体どうやって飛ぶと?」
「その子は王都で空飛ぶ魔導師の異名を持っているんだよね、つまり今、浮遊しているあの巨大蜘蛛型と同じ土俵で戦うのなら彼女が適任・・・この現状で力を出し惜しみするのは勘弁だよ?」
 理解し難いだろうと高次領域の話をしなかった弊害がここで出るのですね、面倒な事になったのです・・・道中イメトレはしたので頑張れば飛べなくもないのですが。
「シオン達が討伐速度を上げてこちらに蜘蛛型の余波が来ない今がチャンスだ、頼んだよ小さな天才魔導師さん」
「簡単に言ってくれるですね・・・その通り名は正直私には分不相応なのですが、尽力はするのです」
 ディオールの杖にまたがり、風の属性放出で宙に浮くこの感覚からしてまあいけるのです・・・次の問題は飛行に意識を割きながら攻撃と防御が安定するかなのですが、弁明しなかった手前、後には引けないのです。


 身長に不釣り合いな長い杖にまたがったフィオナちゃんが風を巻き起こしながら空を飛ぶ、かなり強引な飛行だね。
「本当に人が飛んだよ!?」「商会長殿、フィオナちゃんって何者なんだ?」
 ルイ君とジーク君が驚愕しているようだがまあそうだよね、僕が聞きたいくらいだけれども・・・とは言え何か違和感がある飛び方だ。
「妙だね、あの子の飛行は物理法則すら無視していたように見えてたんだけど・・・僕の思い違いだったのかねぇ・・・?」
「商会長が直々に依頼したミスリル冒険者、王都出身と聞いたけれど・・・どういった経緯で彼女達と面識を持ったのでしょう?」
 この状況で悠長に話をするのもどうかとは思ったけど、あの戦場に僕達が向かうのは逆に危険だ・・・味方の攻撃に巻き込まれかねないしね、防御手段のない僕は特に。
「共和国内でも噂が広がっていた魔海の大物の話は知っているかい?公表してから少し間が空いているけど、最終的にそれを討伐したのが彼女達なんだよね」
「僕もその噂聞いたことがある・・・ルイが嬉々として喋ってたっけ、あれって公表されてたんだ・・・・・・気がつけば誰も言わなくなってたけど」
 人の噂も七十五日というやつかな、実際にはそこまで日数は必要でもないけれども・・・大抵、次のトピックで直ぐに薄まるからね困ったことに。
「直接身に降りかかっていないものは意識から外れるものだよ、何せ影響を受けても尚、人の脳は不都合を忘却するのだから・・・人のことは言えないけれど」
 雑談はさておき、この異常事態を引き起こしたあの巨大蜘蛛型の魔物・・・俗に言うスタンピード現象を収束させるのは彼女達に任せるとして、何故起きたのかが問題だ。
「君達、あの巨大蜘蛛型は最初からあそこまでの子蜘蛛増殖力があったのかい?」
 4人は口を揃えて違うと言う、どうやら交戦開始時点では地上徘徊している個体と天井から垂れ下がった卵嚢からの孵化という常識の範疇から外れていない状態らしいけど・・・僕から言わせれば、魔物自体が常識から外れた存在ではあるのだけれども。
「遭遇した段階で相当な数はいた、アレサが強烈な青い光の剣で一掃はしたのだけど・・・」
「思い出してもすげえ攻撃だったぜあれは・・・あんなの見たことねえ、あの瞬間、大空洞内がはっきり見えたからなぁ・・・・・・今明るいのは寧ろなんなんだ・・・?」
「シオンに持たせてある暗所用魔導具の効果さ(違うけど)、君達の話である程度理解したよ・・・つまりアルビノ幼女が巨大蜘蛛型にトドメを刺す前に、当の本人が鉱山型ワームの奇襲を喰らった、そういう事だね?」
 敢えて苦言を呈するなら随分と迂闊だね、龍族の力を過信した結果がこの状況を招いたとも言えるけど・・・揚げ足取った所で現状が変わるわけでもないしね。
「致命傷ではあったが、即死でない状態が急激な変異を促した、か・・・通常の生物なら突発的な組織構造の変化には耐えられないはず、しかし魔物はお構いなしと・・・まさしく化け物と呼ぶに相応しいね」
 どの道、彼女達が倒すまではどうにもならないか・・・人任せで申し訳ないけれど、残念ながらあんな化け物は普通の人間が相手できるものではないからね。


 風の属性放出による空中制御は大変良好なのです、ジオの経験が生きたと言っても過言ではないのですが・・・それの何が問題かと聞かれれば、高次領域の力とは違って魔力の方ではまだ無意識下タスク的にできないのが・・・。
 フォン! フォン! フォン! 「わわわわ!?」
 この羽付き蜘蛛型、鎌付きなのです・・・つまり羽付きの鎌付きで攻撃範囲が広い為、2m以上離れないと直撃待った無しなのです。
「レイブン、お願いがあるのですが・・・」「しゃあないな、うちも攻撃せえっちゅうんやろ?」
 話が早くて助かるのです、私が飛行しながら可能なのは精々炎の槍1本、もしくは2本が限界なのです・・・停滞射出の簡易な術式でもまだこういう頭忙しい瞬間では安定しないのです。
 ピキーンッ! ピキキキーンッ!!
「丁度ええわ、久しくなかったこの闘争、この際や、楽しませてもらうで!」
 下を見れば暴風雷撃、空中では雨霰と実に忙しないのです・・・レイブンも活き活きしている、やっぱりカラス状態で鬱憤が溜まってるのですかね・・・。
 フォン! ボワアァ! 「すれ違いカウンターなのです!」
 羽付き鎌付きがアキさん達の方にいかないかそこそこの心配はあったのですが・・・シオンさんの援護射撃で的確に侵攻を防いでエンカウント免れているのです。
「巨大蜘蛛型に仕掛けるタイミングは・・・・・・今ですレイブン!」
「うちかいな!」「私も1発ずつなら移動しながらでもかろうじて撃てる気がするのです!」
 羽付き鎌付きの湧きが引いた一瞬、レイブンの氷の槍数本と私の炎の槍で巨大蜘蛛型から突き出た魔石を狙ったのですが・・・大きく振り上げた長大な鎌に切り払われたのです。
「やるやん」「むむ、私の炎の槍は上にそれて逆に腹部に当たっているのですが・・・」
 率直に言えば元々の狙いが外れた結果、別部位に命中しただけなのですが、直撃させても効果が薄いともなれば・・・体表面もかなり硬いのです。
「じゃあ羽なのです、4枚生えてる内のどれか突き破れば普通は墜ちるのです質量的に」
「あんさん翼破壊せんと気が済まんのかいな・・・理屈は分かるんやけどな!身を持って知っていなければ!」
 わわ、地雷踏んだのです・・・今やってることはどちらかと言えば空爆なのですが、仕方ないのです、飛んでるのが問題なら落とすに限るのです。
 ボンッ    ボンッ    ボンッ
「とは言え頻繁に羽ばたく・・・のは飛ぶためだから必然なのですが、上下していて狙いが定まらないのが厄介なのです」
「でかい的(まと)なんやから外すなや・・・子蜘蛛羽付きもきおったで」
 巨大蜘蛛型を中心に反時計回り左回りで周回しつつ、子蜘蛛側にも気を配る・・・視覚外からの攻撃に警戒しなければならない現状、全方位バリアーが恋しくなってきたのです、使えないのだから言っても仕方ないのですが。
「突出した魔石がたまに強く明滅しているのが気になって注意力が削がれるのです・・・決して私が当てきれないからと、言い訳しているわけではな・・・」
 ピキキキーンッ!! 「前も見いや!」「助かったのです・・・レイブン」
 3、4体をレイブンの氷の槍が子蜘蛛を貫き墜ちていくのです、上から振ってくるのに対して恐らく反射的に放ったであろうミリーのウインド・カッターが巨大蜘蛛型に当たったのです。
 それに耐えた頑丈さはともかく巨大蜘蛛の注意が一瞬逸れたのです、その隙を逃さず再度炎の槍で羽を狙い直撃・・・レイブンの追撃で右片翼2枚共に貫通した巨大蜘蛛型はバランスを崩したのです。
「やったのです!あ、この巨体を落としてミリー達は大丈夫ですかね」
 ユラが異変に気づいて即座に退避を促したようで安心と、私のその油断が判断を遅らせてしまったのです。
 ブワアアアァァァァァッ
「極太の糸なのです!?」「?うちらを狙ったんやないんか・・・・・・天井かいな!?」
 束ねられた極太蜘蛛の糸が天井に張り付き、ワイヤーの如く急速に上昇した巨大蜘蛛型の長大な鎌が下から迫ってくるのです!?
「逆ギロチンなのですっ!?」「ちょぉっっ!?」
 バリバリバリリリリリリリリッ!!
 ディオールの杖とレイブンを抱きしめ前方にプラズマストラクチャーを高密度に展開し、2本の長大な鎌を防ぐのですが・・・加速された超重量攻撃の反動に耐えきれず大空洞天井に叩きつけられた・・・のです・・・・・・。
 悪い癖がでたのです・・・倒したわけではなかったというのに・・・・・・意識が遠のき視界が薄れる時に見えた光景は・・・。

 キュィィィン バシュゥゥゥーーーン!!

 凄絶な青い稲妻が、巨大蜘蛛型を貫いた所で私は気を失ったのでした。
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