貴方の杖、直します。ただし、有料です。

椎茸

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第5章 ユミルの恋

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エイドリアンが来てからというもの、ユミルは毎日を楽しく過ごしていた。
ユミルは当初、護衛が外出についてくるのは嫌だと思っていたが、エイドリアンは邪魔にならないように付いてきてくれるし、荷物も持ってくれる、ユミルの丁度いい話し相手(といってもユミルが一方的に話しているだけだが)にもなってくれるので、すっかりエイドリアンのことを気に入っていた。

それに、何しろ、エイドリアンは可愛いのだ。初めて見るものに目を輝かせ、美味しいものを食べれば顔を綻ばせる。
ユミルは田舎町に残してきた弟や妹を思い出し、ついつい街へお使いに出ると、寄り道をしてしまうようになった。

しかし、先日エイドリアンがただのユミルの話し相手ではないことを思い出させる事件が起きた。

「エイディー、今日はマフィンのお店に寄りたいの、良いでしょう?」

ロビンから頼まれたお使いの帰り道、ユミルはエイドリアンに食べさせてあげたいマフィンがあって、そう声をかけると、エイドリアンは微笑みながら頷いた。

(はわ~~めっちゃ可愛い。)

ユミルがご機嫌でお店までの道を歩いていた時、エイドリアンがいる方とは逆から腕を掴まれた。

「おい、姉ちゃん、今暇だr」

― ドカン!

ユミルが腕を掴んだ人が男だと認識した瞬間、かけられた言葉を最後まで聞く時間もなく、その男の体は店の外壁に向かって強く吹っ飛んだ。衝撃で外壁が少し凹んでいる。

「え?…え?」

ユミルはわけがわからずオロオロしていると、見たこともないほど眼光を鋭くしたエイドリアンが杖を男に突きつけた。

「エイディー!!ダメよ!」

エイドリアンはその男から目を離すことなく、首を横に振った。

「…何だよ、魔法使いの護衛がついてるのかよ!」

その男は怯えたようにエイドリアンを見上げると、ユミルの呼び止める声も聞かずに脱兎のごとく逃げて行った。
急なことにユミルはぽかんとしたが、我に返るとエイドリアンを叱った。

「エイディー、もしかしたら、あの人は道を聞きたかっただけかもしれないじゃない。
何も聞かずに攻撃しては、可哀そうよ。」

ユミルが言い聞かせるようにエイドリアンに言うと、エイドリアンは少し拗ねた顔をしながら首を横に振った。

「もし、質の悪い勧誘とかだったとしても、ある程度なら私だって軽くあしらえるもの。攻撃は最終手段よ。」

エイドリアンはなお、首を横に振る。
そして乱雑にポケットに手を突っ込むと、メモ帳とペンを取り出して、スラスラと何かを書き込んだ。

“この店は飲食代をふっかけるって噂です。あの人は最初から悪意がありました。”

「エイディー、貴方って街の治安に詳しいのね。」

メモの内容を読んで感心すると、エイディーは拗ねた顔を止めて、少しだけ自慢げに笑った。

「でも、やっぱり急に攻撃するのはダメよ。」

エイディーは再び拗ねたような顔をして首を横に振る。結局、このやり取りはお目当てのお店に着くまでずっと続いた。

エイドリアン曰く、レインから危険な芽は迅速に刈り取りように言われているのだという。

しかし、エイドリアンは魔法学園には通っていなかったというが、あの魔法の発動速度はかなり速い。あのレインが選んできたのだ、本来ならばユミルについていること自体、豚に真珠だ。

(とっても無垢な感じがするから、ついつい弟を連れて歩いているような気持ちになるけれど…、扱いには気を付けないとダメね。)

エイドリアンはレインの命令なら何でも排除しそうな勢いがある。
ユミルは少し心配になった。
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