42 / 69
第5章 ユミルの恋
42
しおりを挟む
「フク、どうしよう。」
『何が?』
「オズモンド様のことよ。いけないってわかってるのに~~~~!」
ユミルはレインの部屋から戻った後、フクを抱きしめながらベッドでばたばたと足を動かした。
『あ~。さっき、ユミルの目がハートだったもんね。』
「えっ!?そんなにわかりやすかった?」
『うん。プレゼント貰ってすごい嬉しそうにしていたじゃん。僕、存在感を消すために、息を殺してたんだから。』
フクはユミルが顔を近づけてくるので、前足でユミルの頬をふみふみする。
ユミルはそんなことはお構いなしに、赤くなった顔を隠すようにフクのおなかに顔をうずめた。
『まぁ、レインは気づいていないだろうけどね~。』
「だよね!気づかれてたら困るし!」
『でも、ユミル、最近ずっと女の子っぽい顔しているから、周りの使用人は気づいてるんじゃない?』
「えっ!?そんな!…そもそも、私、もとから女なんだけど。」
『ユミルはちょっとガサツでずけずけものを言うじゃん。』
(飼い主に似たのか、フクもずけずけ言うじゃん…。)
ユミルはがっくりと項垂れて、フクのおなかの下で唸る。
「絶対、分不相応だって、笑われてる。」
『そんな嫌な人たちはいないって、わかってるでしょ。』
「…うん。でも絶対実らないもん。」
『…今は偶々レインとのやり取りが多いから、憧れているだけかもよ。現状を楽しみなよ。』
「…うん。そうだね。」
ユミルはそう言いながら、フクを離して、もらったハンカチをベッドの上に並べる。
「…でも、やっぱり素敵~!フクにそっくりすぎる!使うの勿体ない!」
『それじゃあ、額縁にでも入れとけば?』
「確かに、そうよね。明日バロンさんにお勧めのお店が無いか、聞いてみよう。」
_____
ユミルは明朝、早速ハンカチを握りしめてバロンのもとを訪れていた。
「バロンさん。お忙しいところすみません。」
「何でしょう?…おや、ハンカチが届いたんですね。」
バロンはユミルの手に握られたハンカチを見つけると、目の端の皴を深くした。
「やっぱり、バロンさんが選んでくださったのですか?」
ユミルがそう言うと、バロンは不思議そうな顔をした。
「いいえ、違いますよ?私はレイン様から首都で一番、生き物の刺繍をするのが上手なお針子を探すように頼まれただけです。」
「え?」
「依頼を受けて、すぐにわかりました。ユミルさんのフクをモチーフに刺してもらいたいのだと。見せていただいても?」
ユミルはバロンに促されるまま、ハンカチを手渡した。
「やっぱり、あの方を紹介して良かったです。とても素晴らしいですね。」
バロンはそう言ってユミルにハンカチを返してくれたが、ユミルはまだ思考が追い付いていない。
「…わざわざ、フクの刺繍を依頼してくださったのですか?」
「そのようですね。きっとお針子に魔法の念写で、フクの様子を見せたのでしょう。」
レインがあたかも、オフィリアの依頼に対する報酬のように渡すので、ユミルは既製品を買ってきたのだとばかり思っていた。
(ずっと前から用意してくれていたんだ。…今回、渡すのにちょうどいい口実ができた、とでも思ったのかしら。)
ユミルは徐々に理解すると、じわじわと熱くなる。
ユミルは、バロンから赤くなった顔を隠すように、顔の前でハンカチを広げると、か細い声を絞り出した。
「…これを額縁に入れたいのですが、良いお店を知りませんか?」
「もちろん。いくつかご紹介しましょう。」
バロンが嬉しそうに声を弾ませるので、昨日フクに言われた「使用人は気づいている」という言葉を思い出して、ユミルはますます恥ずかしくなった。
『何が?』
「オズモンド様のことよ。いけないってわかってるのに~~~~!」
ユミルはレインの部屋から戻った後、フクを抱きしめながらベッドでばたばたと足を動かした。
『あ~。さっき、ユミルの目がハートだったもんね。』
「えっ!?そんなにわかりやすかった?」
『うん。プレゼント貰ってすごい嬉しそうにしていたじゃん。僕、存在感を消すために、息を殺してたんだから。』
フクはユミルが顔を近づけてくるので、前足でユミルの頬をふみふみする。
ユミルはそんなことはお構いなしに、赤くなった顔を隠すようにフクのおなかに顔をうずめた。
『まぁ、レインは気づいていないだろうけどね~。』
「だよね!気づかれてたら困るし!」
『でも、ユミル、最近ずっと女の子っぽい顔しているから、周りの使用人は気づいてるんじゃない?』
「えっ!?そんな!…そもそも、私、もとから女なんだけど。」
『ユミルはちょっとガサツでずけずけものを言うじゃん。』
(飼い主に似たのか、フクもずけずけ言うじゃん…。)
ユミルはがっくりと項垂れて、フクのおなかの下で唸る。
「絶対、分不相応だって、笑われてる。」
『そんな嫌な人たちはいないって、わかってるでしょ。』
「…うん。でも絶対実らないもん。」
『…今は偶々レインとのやり取りが多いから、憧れているだけかもよ。現状を楽しみなよ。』
「…うん。そうだね。」
ユミルはそう言いながら、フクを離して、もらったハンカチをベッドの上に並べる。
「…でも、やっぱり素敵~!フクにそっくりすぎる!使うの勿体ない!」
『それじゃあ、額縁にでも入れとけば?』
「確かに、そうよね。明日バロンさんにお勧めのお店が無いか、聞いてみよう。」
_____
ユミルは明朝、早速ハンカチを握りしめてバロンのもとを訪れていた。
「バロンさん。お忙しいところすみません。」
「何でしょう?…おや、ハンカチが届いたんですね。」
バロンはユミルの手に握られたハンカチを見つけると、目の端の皴を深くした。
「やっぱり、バロンさんが選んでくださったのですか?」
ユミルがそう言うと、バロンは不思議そうな顔をした。
「いいえ、違いますよ?私はレイン様から首都で一番、生き物の刺繍をするのが上手なお針子を探すように頼まれただけです。」
「え?」
「依頼を受けて、すぐにわかりました。ユミルさんのフクをモチーフに刺してもらいたいのだと。見せていただいても?」
ユミルはバロンに促されるまま、ハンカチを手渡した。
「やっぱり、あの方を紹介して良かったです。とても素晴らしいですね。」
バロンはそう言ってユミルにハンカチを返してくれたが、ユミルはまだ思考が追い付いていない。
「…わざわざ、フクの刺繍を依頼してくださったのですか?」
「そのようですね。きっとお針子に魔法の念写で、フクの様子を見せたのでしょう。」
レインがあたかも、オフィリアの依頼に対する報酬のように渡すので、ユミルは既製品を買ってきたのだとばかり思っていた。
(ずっと前から用意してくれていたんだ。…今回、渡すのにちょうどいい口実ができた、とでも思ったのかしら。)
ユミルは徐々に理解すると、じわじわと熱くなる。
ユミルは、バロンから赤くなった顔を隠すように、顔の前でハンカチを広げると、か細い声を絞り出した。
「…これを額縁に入れたいのですが、良いお店を知りませんか?」
「もちろん。いくつかご紹介しましょう。」
バロンが嬉しそうに声を弾ませるので、昨日フクに言われた「使用人は気づいている」という言葉を思い出して、ユミルはますます恥ずかしくなった。
35
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる