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第7章 レインの不可思議な行動
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今日は、ユミルがウィリアムと会う約束をしている日だ。
ユミルは休暇なので、当然ひとりで行くつもりだったが、レインとエイドリアンが頑なにそれを許さなかったので、エイドリアンを連れていくことになった。
それに馬車まで貸し出してくれるというのだから、高待遇過ぎる。
「ねぇ、エイディー、最近のレイン様はどうしちゃったんだと思う?」
一昨日の晩からの海鮮料理尽くしもそうだが、贈り物のことも、ユミルは優しくされるたびに困っていた。
嬉しいからこそ、困っていたのだ。
(早くこの恋心は摘み取らないといけないのに。)
優しくされるたびにドキドキしてしまうし、効率重視のレインとは思えない待遇を受ける度に、自分は特別なのではないか、という勘違いが芽生えてしまう。
ユミルは何度も頭の中で「非効率的だ。」というレインの言葉を再生して、何とか普段通りを保つように努めていた。
ユミルがため息を吐いて物憂げに言うと、エイドリアンはユミルを見て呆れたように首を横に振った。
当初はユミルがため息を吐いただけでおどおどしていたのに、随分な変わりようだ。
(まぁ、慣れてくれたのだと思えば、嬉しいけどね。)
そうこうしているうちに、馬車は待ち合わせの中央広場へと到着した。
「ユミルさん!」
先に来ていたウィリアムは女性に囲まれていたが、到着したユミルにすぐに気づくと、周りの女性たちに断りを入れて、駆け寄ってきてくれた。
そして、ユミルの後ろにいるエイドリアンを見て、困ったように眉を下げる。
「アンバー様、お待たせしてしまって申し訳ございません。」
「全然待ってないです。それに、僕たちは平民同士ですし、年も近そうですから、もっと気軽にお話しませんか?僕に対して敬語も不要です。」
「…ありがとう。それではお言葉に甘えて。私にもぜひ楽に接してね。」
「うん、ありがとう。それから、ええと、この護衛の方は?」
「エイドリアンです。今日は休暇扱いなのでひとりで行くと言ったのだけれど…。」
「レイン部隊長にとても大事にされているんだね。」
「いやいやいや、レイン様はご自分の杖が大事なのだと、仰ってたわ。」
ユミルがレインの言葉をお世辞と捉えて受け流すと、ウィリアムは不思議そうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻す。
「じゃあ、早速行こうか。」
「うん、馬車もレイン様からお借りしてるから、ぜひそれに乗っていきましょう。」
ユミルはそう言うと、ウィリアムを先導して馬車へと向かう。
「…本当にレイン部隊長は、君を大事にしているんだね。」
ウィリアムはユミルには届かないほどの小さな声でぽつり、とこぼしてからユミルの後を追った。
ユミルは休暇なので、当然ひとりで行くつもりだったが、レインとエイドリアンが頑なにそれを許さなかったので、エイドリアンを連れていくことになった。
それに馬車まで貸し出してくれるというのだから、高待遇過ぎる。
「ねぇ、エイディー、最近のレイン様はどうしちゃったんだと思う?」
一昨日の晩からの海鮮料理尽くしもそうだが、贈り物のことも、ユミルは優しくされるたびに困っていた。
嬉しいからこそ、困っていたのだ。
(早くこの恋心は摘み取らないといけないのに。)
優しくされるたびにドキドキしてしまうし、効率重視のレインとは思えない待遇を受ける度に、自分は特別なのではないか、という勘違いが芽生えてしまう。
ユミルは何度も頭の中で「非効率的だ。」というレインの言葉を再生して、何とか普段通りを保つように努めていた。
ユミルがため息を吐いて物憂げに言うと、エイドリアンはユミルを見て呆れたように首を横に振った。
当初はユミルがため息を吐いただけでおどおどしていたのに、随分な変わりようだ。
(まぁ、慣れてくれたのだと思えば、嬉しいけどね。)
そうこうしているうちに、馬車は待ち合わせの中央広場へと到着した。
「ユミルさん!」
先に来ていたウィリアムは女性に囲まれていたが、到着したユミルにすぐに気づくと、周りの女性たちに断りを入れて、駆け寄ってきてくれた。
そして、ユミルの後ろにいるエイドリアンを見て、困ったように眉を下げる。
「アンバー様、お待たせしてしまって申し訳ございません。」
「全然待ってないです。それに、僕たちは平民同士ですし、年も近そうですから、もっと気軽にお話しませんか?僕に対して敬語も不要です。」
「…ありがとう。それではお言葉に甘えて。私にもぜひ楽に接してね。」
「うん、ありがとう。それから、ええと、この護衛の方は?」
「エイドリアンです。今日は休暇扱いなのでひとりで行くと言ったのだけれど…。」
「レイン部隊長にとても大事にされているんだね。」
「いやいやいや、レイン様はご自分の杖が大事なのだと、仰ってたわ。」
ユミルがレインの言葉をお世辞と捉えて受け流すと、ウィリアムは不思議そうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻す。
「じゃあ、早速行こうか。」
「うん、馬車もレイン様からお借りしてるから、ぜひそれに乗っていきましょう。」
ユミルはそう言うと、ウィリアムを先導して馬車へと向かう。
「…本当にレイン部隊長は、君を大事にしているんだね。」
ウィリアムはユミルには届かないほどの小さな声でぽつり、とこぼしてからユミルの後を追った。
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