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第7章 レインの不可思議な行動
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「…最近、どうしたのですか?」
(レイン様の中で海鮮料理ブームが来ているの…?)
もはやくどいといって良いほど続く海鮮料理に、ユミルは怪訝な顔をした。
ユミルの思惑どおり、そわそわが若干収まってしまうほどの衝撃だ。
「好きなんだろう?」
「好きですけれど…、ここ最近、ずっと出してくださるので…。」
「今日も美味しそうに食べていたと聞いた。」
「まぁ、美味しかったので…?」
「だから、今日は首都で一番の海鮮料理を食べに行こうと思う。」
「…ん?」
(だから…?接続詞の意味がわからない…。)
ユミルは混乱して目を白黒させていると、馬車がどこかのお店の前に到着したようだ。
ユミルが窓から外を覗いたが、レストランのような外装の建物は見当たらない。
何かレインの私用だろうか、とユミルが思っていると、レインがさっさと降りてユミルに手を差し出した。
ユミルは頭の中にハテナを浮かべながら馬車から下りると、そのお店をしげしげと見た。
馬車からは視界が狭くてよくわからなかったが、どうやら服飾品を売っているお店のようだ。それも、明らかに紳士用ではない。
ユミルがぽかんと口を開けていると、レインはお構いなしにユミルの手を引いた。
「いらっしゃいませ、オズモンド様。」
店員は、ユミルよりもずっと上等そうな人で、ユミルは気おくれがしてしまう。
しかし、店員はユミルの装いを全く気にすることなく、にこやかに話を続けた。
「オフィリア様からお話をいただいたときは驚きました。オズモンド家の皆様ならば、お店までお越しいただかなくても、いつでもご自宅まで伺いますので、お申し付けください。」
「ああ。今日は頼んでいたものを。」
レインは短く返すと、ユミルから手を離して、そっとユミルの背中を押した。
呆然と突っ立っていたユミルは軽い力で押されて、思わず足を踏み出し、導かれるまま店員の後をついていくと、あれよあれよという間に着替えさせられ、髪の毛のセットにお化粧まで終わってしまった。
(…なんで?)
「とってもお似合いです。」と言う店員の言葉がどこか遠くの方で聞きながら、ユミルは自分が着ているドレスを見下ろした。
パーティードレスほど華美ではなく、ふくらみも少ないすっきりとしたデザインだ。色味もフクを思わせる灰青色で落ち着いている。
(まるで、どこか良いところにお食事に行くみたい。)
ユミルはそう思ったところで、はっと我に返った。
(行くみたい、じゃなくて行くのか!…え?食事に行くためだけにドレスを用意してくれたの…?え?お金持ち凄い…。)
それに、このドレスも先ほどのレインの口ぶりだと、事前に頼んでくれていたもののようだ。
「良く似合っている。」
店員に連れられてユミルがレインの下へ戻ると、レインは満足そうに頷いた。
「あの…、ありがとうございます。でも、よろしかったのですか?」
「何がだ。」
「素敵なドレスが着られて嬉しいですが…使用人の身には余ると言いますか…。」
「私がしたいから、しているだけだ。仕事だと思って受け取っておけ。」
レインはそう言ってまたユミルの手を取る。
随分と夕飯には早い時間に外に出たと思ったが、既に外は暗くなり始めている。
着替えに思ったよりも時間がかかっていたようだ。
ユミルは文句の一つも言わずに待っていたレインを意外に思った。
(こんなんじゃ、私、勘違いしちゃいますよ、って言っちゃいたい。)
(レイン様の中で海鮮料理ブームが来ているの…?)
もはやくどいといって良いほど続く海鮮料理に、ユミルは怪訝な顔をした。
ユミルの思惑どおり、そわそわが若干収まってしまうほどの衝撃だ。
「好きなんだろう?」
「好きですけれど…、ここ最近、ずっと出してくださるので…。」
「今日も美味しそうに食べていたと聞いた。」
「まぁ、美味しかったので…?」
「だから、今日は首都で一番の海鮮料理を食べに行こうと思う。」
「…ん?」
(だから…?接続詞の意味がわからない…。)
ユミルは混乱して目を白黒させていると、馬車がどこかのお店の前に到着したようだ。
ユミルが窓から外を覗いたが、レストランのような外装の建物は見当たらない。
何かレインの私用だろうか、とユミルが思っていると、レインがさっさと降りてユミルに手を差し出した。
ユミルは頭の中にハテナを浮かべながら馬車から下りると、そのお店をしげしげと見た。
馬車からは視界が狭くてよくわからなかったが、どうやら服飾品を売っているお店のようだ。それも、明らかに紳士用ではない。
ユミルがぽかんと口を開けていると、レインはお構いなしにユミルの手を引いた。
「いらっしゃいませ、オズモンド様。」
店員は、ユミルよりもずっと上等そうな人で、ユミルは気おくれがしてしまう。
しかし、店員はユミルの装いを全く気にすることなく、にこやかに話を続けた。
「オフィリア様からお話をいただいたときは驚きました。オズモンド家の皆様ならば、お店までお越しいただかなくても、いつでもご自宅まで伺いますので、お申し付けください。」
「ああ。今日は頼んでいたものを。」
レインは短く返すと、ユミルから手を離して、そっとユミルの背中を押した。
呆然と突っ立っていたユミルは軽い力で押されて、思わず足を踏み出し、導かれるまま店員の後をついていくと、あれよあれよという間に着替えさせられ、髪の毛のセットにお化粧まで終わってしまった。
(…なんで?)
「とってもお似合いです。」と言う店員の言葉がどこか遠くの方で聞きながら、ユミルは自分が着ているドレスを見下ろした。
パーティードレスほど華美ではなく、ふくらみも少ないすっきりとしたデザインだ。色味もフクを思わせる灰青色で落ち着いている。
(まるで、どこか良いところにお食事に行くみたい。)
ユミルはそう思ったところで、はっと我に返った。
(行くみたい、じゃなくて行くのか!…え?食事に行くためだけにドレスを用意してくれたの…?え?お金持ち凄い…。)
それに、このドレスも先ほどのレインの口ぶりだと、事前に頼んでくれていたもののようだ。
「良く似合っている。」
店員に連れられてユミルがレインの下へ戻ると、レインは満足そうに頷いた。
「あの…、ありがとうございます。でも、よろしかったのですか?」
「何がだ。」
「素敵なドレスが着られて嬉しいですが…使用人の身には余ると言いますか…。」
「私がしたいから、しているだけだ。仕事だと思って受け取っておけ。」
レインはそう言ってまたユミルの手を取る。
随分と夕飯には早い時間に外に出たと思ったが、既に外は暗くなり始めている。
着替えに思ったよりも時間がかかっていたようだ。
ユミルは文句の一つも言わずに待っていたレインを意外に思った。
(こんなんじゃ、私、勘違いしちゃいますよ、って言っちゃいたい。)
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