11 / 30
2章 異世界オタクと人形達の街
11話 始まりの兆し
しおりを挟む宿場町アデノシン。
主な産業は名前の通り宿泊業の小さな町である。
昔は多くの旅人達がここを訪れ大変賑わっていた。だが、今ではその見る影も無く、若者は首都に出稼ぎに行ってしまい、数人の老人だけが名残惜しく赤錆のように住み着いていた。
そんな古びた町の古びた酒場。1人の男が静かに酒を飲んでいる。
地球で言うアフリカ系で、筋肉質な体格はがっちりとしており、黒い背広で覆ったその姿はまさに偉丈夫といった姿だった。
「ミケ隊長。見つかりました」
男は、声の方へ静かに目を向けた。
話しかけてきたのは10歳程の小さな女の子だ。だが年齢の割に澄ました顔立ちで、男と同じようにスーツを纏っている。
「どこだ?」
「封魔の草原の付近でそれらしき目撃情報がありました」
男はふむと頷く。
「森林都市の近くか……、戻ることになるな」
「ええですが、お嬢とはぐれてから数か月、初めての有力な情報です」
「分かっている」
男は立ち上がるとバーテーブルに金貨を一枚置いた。
「いま、お釣りを」
「いや、取っといてくれ。今は気分がいい」
そういうと大きな男は、その部下とともに酒場を出た。
ー竜の巣ー
「いやー、おつかれ。良い戦いだったじゃないか」
「ケント殿、僕はこの事を忘れませんからね!」
おっと、このままだと不味いな。つい楽しくて遊んじまったぜ。反省反省。
「お前なら出来ると思ってたよ。期待してたんだぜ。それを、なんか擦り付けたかのように言われるのは、勇者としてどうなんだ?」
「え、そうだったんですか? てっきり僕の姿を見ながら松明殿と楽しく宴会を開いているのかと思ってました。すみません……」
その通りだけどな。
「うんうん、まあ分かればいいのよ」
俺は勇者の頭をローブ越しに撫でた。うん、こいつは凄い奴だが、やっぱりチョロいな。末永くお付き合いしたいところだ。主に俺の護衛かつ金づるとしてな。
「さてと、松明様。これからどうするんですか? アイシャは合格でしょ。修行とかするんすか?」
松明様は動かない。いや、違うぞ。微妙だが震えていらっしゃる。考えて無かったようだな。
「アイシャ、お前はなんかこれから行くところとかあるのか?」
「いえ、無いですね。暫くは修行に打ち込みたいです。はぐれた仲間を探してもいいんですが、そっちは大丈夫でしょうし」
仲間がいるのか。まあいるか勇者なんだし。
さて、アイシャも無しか……なんでせっかくの異世界なのに、こう何時もやる事が無いのか。
そこら辺の作品でもこんなにやる事が無いやつは無いぜ。
「じゃあ、これからやる事を考える為の会議を始めよう」
そういうことになった。
ーーーーー
「まずは松明様」
松明様の方を見る。松明様はあれから考えたのか、頷くように炎を大きくすると、急に回転し始めた。しかも単方向でなく、ランダムに向きを変えており、その姿はまるで大きな火球に見える。
「な、何を?」
松明様から何かが飛び出した。それは俺と勇者の方に移動し、空中で停止する。
何かの紙のようだ。どれどれ?
[個体名]
ワダ ケント
[性別]
male
[種族]
地球人類(Lv.5) 《2up!》
[能力値]
体力 3.00 《0.40UP!》
力 0.35 《0.10UP!》
俊敏性 3.00 《1.00UP!》
器用さ 0.60 《0.16UP!》
知能 0 《stay》
魔力量 10.00 《4.00UP!》
[技能]
【レベルアップ】【大気自動調整】【自動翻訳】【ドリンクバー1】
[称号]
・異世界転移者 ・奴隷 ・竜種の天敵
「ステータス?」
どうやら松明様は人のステータスカードを印刷する事が出来るらしい。しかもオタク共のより高性能で称号まで表示出来る奴が。
これは俺のステータス無双が出来ないことを示している。まあそれはいい。スキル振りも出来ないステータス無双なんてほぼ無いからな。可能性はあんまし無いと思ってたよ。
だが、これでハッキリしたことがある。
「あのオタク共、まるで使えないな」
現地人に黒幕が初手から負けている。もう、これ何なの? いやまあ松明様は人じゃないけどさ。
「ケント殿! 僕、久し振りにレベルが上がりました」
勇者はキャッキャしてる。楽しそうだな。こちとら、死にそうになってやっとレベル2upだぜ。しかも、上がり幅が1以上の数値が二つしかないしよ。この先どうすれば良いんだ? あ、あとこの世界って敵を倒さなくてもレベル上がるんだな。システムはよく分からんけど。
俺は、アイシャの方を向いた。
「アイシャ、お前のステータス見せろよ」
「分かりました! どうぞ」
さてと、勇者様のステータス。気になってたんだよね。っていうか、一番気になるのは松明様のステなんだが……あ、駄目っぽい。なんか無言の威圧をかけられた。
勇者は、自分の前に浮かぶ紙切れを人差し指と中指で挟むと、俺の方にそれを突き出す。俺は、それを受け取った。
[個体名]
アイシャ=ファルシナム・オーキ
[性別]
female
[種族]
トキシシート人類(Lv.20)
[能力値]
体力 ∞
力 890
俊敏性 790
器用さ 255
知能 65
魔力量 472
[技能]
【無限再生27】【自動技能取得】【自動ステータス上昇】【大気自動調整7】【魔剣術】【土術3】【交渉12】【高鳴る鼓動】【剣術34】
[称号]
・ファルシナム家次期当主 ・勇者 ・偉大なる松明の弟子 ・人類の希望
「この歳にしては低い方なのでお恥ずかしい限りですね」
……。
俺はこの世界の人に喧嘩を売らない事を決めた。
ーーーーー
トキシシートっていうのはこの世界、もしくはこの星の名前だろう。俺は地球人類だしな。にしても、トキシシートか。なんか変な名前だな。まあ良いか。そして、肝心のステータスだが……勇者の話だと異常に高いって訳じゃなくて、これは普通、もしくはちょっと低い方らしい。いや勿論、戦闘しない人はここまでじゃないと思うけど。
戦闘しない人間ねぇ。ここの文明レベルにもよるな。もし、テンプレ通りの中世ヨーロッパ風なら農家だって戦うだろうしさ。
つまりあれだな。俺はこの世界じゃ、そこらの羽虫よりも耐久力が無い人なのか。
っていうか今まで生きていたのが逆に不思議だな。この位のステータス差だ。軽くぶつかられただけでも俺は死んでいただろう。危ねえ。
「ちなみに、ケント殿はどんな感じなんですか?」
「いや、参考にならんから。それよりもさ」
俺の目標が決まったな。このままだと俺は簡単に死ぬ。だから。
「防具を買おう」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる
書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。
鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。
だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。
その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。
俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。
ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。
なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる