異世界オタクは幾何学の魔女と伴に

痛痴

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2章 異世界オタクと人形達の街

17話 倫理の敗北

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―竜の森 サンリンサン近郊―


 俺達が目にしたものは……。

「女の子?」

 それは数人の少女達だった。薄い白のワンピース姿の彼女達はまだあどけない。
 だが、ひと目で分かるぜ。

 これは、奴隷だ。それも、ロリ奴隷? なんか耳尖っている子いるけどエルフ奴隷? ああ、猫耳奴隷もいる! 
何故かみんな寝ているけど、奴隷だよね! だって貨物車で人がいるんだよ! 奴隷でいいよね。

 やっぱ奴隷はさ。現代日本人として許せないわけよ。じゃあ、何するかって言ったら。やっぱ保護、しなきゃですよね。

 いやいやいや、真面目にね。ホント、もうめっちゃ真剣にそう思う。

 でね、やっぱり恩義を感じちゃったりしてね。あの子達が求めて来たら、そりゃ答えなきゃいけないわけで。
 小さい女の子の頼みですよ。
 断る方が外道というもの!!

「あのー、旦那?」

 え! え! え? 
 つまり、これは俺の勝ちって言うことでいいのかな? どっかのゲーマーが人生は良い女をゲットできたかとか言ってたし、これで俺の勝ちじゃない?

「聞こえてますかー?」

 そっかー、なるほどね。なんか今までの異世界生活おっかしいと思ってたんだよねー。このときのためだったか。
 うん、チャラだわ。今までの不運チャラ。
 オタク共に感謝!

「ありがとう、世界」

「あの、旦那? なんで急に膝をついて泣きながら祈り始めたんですか?」

「ばかっ、お前わからないのか!? 奴隷だぞ、奴隷!!」

「え、そうなんすか?」

 おいおい、これを見て奴隷以外の何があるっていうんだよ。

「違うのか?」

「いやまあ、奴隷ってこんな運ばれ方しないんで」

「へえ、どういう運ばれ方?」

「空輸です」

 空輸……。

「ふーん。一応、この世界における奴隷の立ち位置を教えてくれるか?」

「分かりやした」

 奴隷というのはどこかの家ごと転移した引きニートさんの世界みたいな優しい制度の奴隷でもなく、かと言ってノクターン連載陣みたいな絶対的なものでもないらしい。
 
 まあかと言って綺麗事ではなく、基本的に敵国から拐ってきた子供なのだとか。

「敵国ってどこだ?」

 確かこの世界は弱体化した魔王しかいない平和な世界だったはずだ。敵国とはなんだろうか。

「異相断界から侵略してくる国々っす」

 また謎単語だ。何だよ、『いそうだんかい』って。
 ちょっとかっこいいじゃねえか。

「あー、分かりませんよね。簡単に言うと……異次元からの侵略者っす!」

 なるほど、ネイバーか。

「トリガーオン!」

「どうしたんすか? 木の枝持って急に」
 
「いや、なんでもない」

 そうか。この世界ネイバーもいるのか。って言うことは彼女達は人型ネイバー!?

「で、結局どうするよ」

「仕方ないので街まで運びますよ。確か大型魔物用のワイヤーがあったはずなんで、貨物車ごと引きずります」

「分かった。ロリど……女の子達はどうするよ?」

「えーと、ひぃ、ふぅ、みぃ……5人ですか。ちょっとあっしらの車に乗せるのは厳しいっすよね。まあ貨物車の中で良いでしょう」

 というわけで、俺達の旅に仲間が加わった。


ー数十分後ー


 俺は貨物車にロリ達と一緒にいた。
 ただ車の後ろに括りつけるだけだと心配だからな。
 もちろん嘘だ。
 
「刷り込みって大切だからな」

 鳥の子は最初に見たものを親として認識するらしい。
 人間も同じとまでは言わないが、初印象というのは大切なものだ。
 たしか、初頭効果ってやつだっけかな。
 まあ、何が言いたいかといえばロリにモテたい。それに尽きる。

「クールな憧れのお兄さんって感じを目指すぜ」

 俺ならば絶対にやり切れるはずだ。

「んあ……、ん?」

 お、一番大きな子が目覚めたようだな。
 紫髪という地球じゃあまり見ない髪色をしている。年齢はだいたい中学生くらいだ。
少女は体をゆっくりと起こして、目をこすりながらあたりを見回した。

 そして俺の姿を発見すると、急に顔をしかめる。
 そして、口を開くのも嫌だが仕方なしと自分を律して、不審者とでも接するかのように俺に話しかけてきた。

「誰? ここはどこ?」

 アメジストのような澄んだ瞳に、病的なまでに白い肌。
 いわゆるクールロリって感じのお顔だ。結構、可愛い。
 警戒心マックスなのは謎だがな。

 うーむ、でも服がちょっと残念だなぁ。彼女が着ている白い貫頭衣はあまりロリには似合わない。
 いや、ロリ巨乳とかだと別なのだが、この子たちはガチでロリなのだ。ぺったんこのまな板なのである。
正直言ってあまり似合っていない。
 まあこういうのが好きっていう人もいるんだろうが、俺はご存知の通り優しい人間だからな。少し寒そうだなとか思っちゃうわけ。
 もっと暖かな服とかをあげたくなる。

 具体的に言えばスク水とか着せてあげたい。

「俺の名前は和田健人、松明様の一番弟子だ。ここは貨物車の中だよ」

 俺は少しクールさを演出しつつ、かつ実は根は優しいんだよっていう感じを出して言った。完璧な演技である。いや、素だ。素ってことにしておこう。

 JCは性犯罪者でも見下げるような顔でこちらを見た。

「うぇ……。でも仕方ないし……。たしかに、動いてるけど、なんで?」

 コイツ、無口系だと思ったらコミュ障系か。略しすぎて何言ってるのか分かりづらい。
 まあ、俺くらいの訓練された奴なら解読可能だ。
おそらく『なんで私は貨物車で運ばれてるの?』ってことだと思う。
 あと、さっきから嫌そうな顔しているのは何かの気のせいだろう。だって俺嫌われるようなこと何もしてないし。

「いや、知らん。拾ったんだよ、貨物車ごとな。……そういえば周りの子は君のお友達?」

 JCはかぶりを振った。
 よく見てみると彼女のおでこには何かの魔法陣らしき紋様がつけられている。イメージとしてはマスターがサーヴァントを従わせる奴だ。要は魔法の刻印って感じ。
 オシャレだろうか?

「違う」

 少女は飢える獣から自分を守るように体を腕で抱えた。

 ねえ、なんで俺さっきからそんなに警戒されてるの?

「聞こえてるから?」

 何が? あれ、ていうかこの感じ覚えがあるんだけど。
 具体的に言うと第1話くらいに。

「へぇ、うち以外にも会ったことあるんだ」

 うん、異世界のオタク共なんだ。気のいい奴らだぜ。

「おじさん異世界人なんだ」

 ああ、地球ってところでな、いいところだぞ。オワコン気味だが。
 あと、おじさんじゃない。お兄さんだ。

「精神的におっさん」

 んだと、ゴラァ。ガキが……舐めてると潰すぞ。

「ふっ」

 少女は俺の金的を勢いよく殴りつけてきた。無駄のない動きだった。

「ぐにゃあああああああああああ???!?!!」

 俺はあまりの痛みに舌をかみ切りそうになった。

「てめぇ、人の急所をいきなり殴りつけるとか頭沸いてるのかっ?」

 少女は澄ました表情で言った。

「人を出会ってすぐに視姦してくる奴のほうがあり得ない」

 軽くやったのに随分痛がるのね、と呟く少女を見て俺は確信する。

 薄々は気づいていた。だが、気づきたくは無かった。

 彼女は、

「人の心が読めるんだな?」

 それもかなり詳細に。
 俺の名前が分からなかったことから、記憶までは覗かれないみたいだが十分警戒に値するな。

「そういえば、お前。名前は?」

「怪しい人に名前を教える危険性くらい知ってる」

 怪しくてすみませんね!!

「じゃあさ、とりあえずネモって呼んで良いか?」

「いや」

 JCは心底嫌そうな顔でこちらを見つめた。

「なんでかな?」

「ダサいから」

「てめぇ、張り倒されたいのか!? あん?」

 俺は我慢ならず大声を出した。ネモ船長にあやかったありがたい名前をお前。
 JCは腕を胸の前で組んで蔑んだ目でこちらを見てくる。

「そうやって大声を出すことしかできないって、憐れ」

「じゃあ、もうちょっと励ましてくれてもいいんじゃないでしょうかねー!?」

「だったらその脳内セクハラやめて」

 ごめん、それは無理。

「あきらめないでよ」

 ったく、なんで俺はいつももうちょっとのところで理想にたどり着けないのか。
 クールロリヒロインだと思ったら、毒舌系読心少女だったしよ。俺はマゾじゃねぇんだ。

 どれもこれもオタクが悪いな。
 あいつらはきっとドMに違いない。

「自分にも責任があると思うんだけど」

「うるせー、だまってろ。っていうかお前、名前はどうするんだよ。さすがに名前くらい分からないと不便だろ」

 毒舌読心少女はむぅと顎に手を添えて考え始めた。

「じゃあ……ヒメル」

 なんだって? 小さくてよく聞こえなかったんだけど。

「ヒ、メ、ル!! とりあえず、ヒメルって呼んで」

 ……。

「そっちのほうがダサくない?」

「うるさい!!」

 ヒメルは俺を思いきり殴った、グーで。
 所詮子供の力だと侮っていたが、俺の体は大きく後ろに飛ばされ壁に当たった。
「かはっ」という声が口から漏れ出る。金属製の壁は大きく凹み、大きな音で回りの子供たちが目覚め始めた。
 ふむ、どうやらあばらを数本やられたみたいだな。

 俺は、なんとか一命をとりとめた自分を内心ほめながら、にこっと笑った。

「ははは、強烈だね!」

 ぐごばっ。俺の口から大量の血が噴き出した。
 
「どうしたんすか!? 旦那? 旦那ぁあああああ!!」

 俺の異世界生活はまだ始まったばかりだ。
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