異世界オタクは幾何学の魔女と伴に

痛痴

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2章 異世界オタクと人形達の街

28話 栄光の終焉

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 ―魔女の喫茶店―

「この街で投獄されたアイシャという人物に関しておしえてくださいっす」

 ヘベノにとって聞くべきことと言えばそれくらいしか思いつかなかった。旦那の目的でもあるし、なによりあの旦那がタイプだったからなんて理由でそこまで拘るとは思えない。
 きっと何かあるはずだ。

「いいだろう。そうだなぁ、20万トウレでどうだい?」

 結構な大金だ。ここは少し交渉するべきだろう。
 へベノは知りたい情報を制限することにした。

「彼女の身元と、今どうなっているかだけ知りたいんすけど」
「ふむ」

 ヴェルギリウスは顎に手を当てて少し考え込む。ただ黙っているだけなのにへベノは息が詰まるような雰囲気を感じた。

「じゃ、5000トウレだ」
「安っ」

 フフフと笑うと、にたにたと笑いながら言った。

「初回利用だからねぇ。割引さぁ。――コーヒーを飲んでくっていうならもっと安くするけどぉ?」
「い、いえ。結構っす」

 彼はつれないなぁと呟きながら、白紙の書類の中から一枚引き抜くとヘベノの前に差し出した。

「これは?」
「まあ、見てなよぉ」

 ヴェルギリウスは神妙な顔をすると瞼を閉じた。

≪権限の行使を要求す≫
【情報を開示せよ】

 その瞬間、白紙に文字が記されていく。

 それは不思議な術だった。
 魔術に使い方が似ているが、それにしては行使の内容があやふやだし、そもそも魔力に対して命令していない。だが霊魂術というわけでもないようだ。

 ヘベノは昔、魔術師に霊魂術をみせてもらったことがある。だが、そのどれも自分や他人の魂に働きかけるものであった。主従のつながりや壊れた魂の浄化などを行うなど、強力な術である霊魂術だが、それも万能ではない。

 まるで自分がその行為を為すのが当然と言うような詠唱。

「さて、終わったよ」

 まあ今はいい。それよりもアイシャという人物についてだ。ヘベノは金を払って資料に見入った。

 名前:アイシャ・ファルシナム・ネム
 東の国、ギルムディア皇国出身。ネム侯爵家の令嬢。
 勇者に選定されし者。連合国総大将。剣の勇者。

【現在の状況】
 武者修行の旅に出たが、本家との連絡がつかないで行方不明扱いになっている。現在は政府重要所侵入の罪で特別監獄に投獄中

 ヘベノはメモを読み終わると、あまりの衝撃に全身からぶわっと汗が噴き出すのを感じた。平衡感覚が無い。頭がチカチカする。

 ――旦那が、勇者と……、しかも投獄!?

「思ったよりも大物じゃないのさぁ、ねぇ。でも、街にはバレてないみたいだよ」

 ということは連合国の戦力の要ともされる勇者の命はまだあるということか。
 ヘベノは少し安堵したが、なにも解決していない。

「あの、ヴェルギリウスさん」
「ヴェルでいいよぉ」
「では、ヴェルさん」

 まず防がなくてはいけないのは情報の拡散だ。それが一番まずい。
 ヘベノはケントがアイシャの正体についてかたくなに話そうとしなかった理由を理解した。なるほど、話せないわけである。ついこないだ会ったぐらいの関係性だ。信用なんてあったもんじゃない。

「この情報は秘密に……」
「もちろんさぁ。守秘義務は情報屋の仕事の一部だよ」

 ヴェルはよく分からない黒い豆をミルに入れながら、それを挽いていく。結構うるさいが何故か落ち着く音だ。香りも、まあいい。

 ヘベノは考えた。自分が何をすべきかということを。
 正直キュリからの命令は急すぎて、しかも要領の得ないことが多すぎた。

 【ケント殿を手伝え。それが何かの鍵になるはずだ】

 たったそれだけの命令。
 しかしそれが今のヘベノの行動のルールだった。

 どうすれば旦那の助けになるのか。それは分からない。
 そもそも旦那の目的すら知らないのだ。

 勇者の捜索。
 謎の松明。
 異世界人。

 謎だ。彼の存在には謎が多すぎる。

「――フフフ、何か迷っているようだねぇ」

「はい、実は頭からある人の助けになれと言われているんです。その人は勇者を探していているんすが、何故そうしているのか謎なんすよ」

 ヴェルは豆を挽いた物を漏斗に入れて、ゆっくりとお湯を注いだ。茶色の細かい泡が湧き出てくる。
 何を作っているのだろうか。

 あれ。いま、自分は何を喋った? 何故、自分の事情をこんな信用できなそうな人にあけっぴろに喋ったんだ?

「そのある人っていうのはどういう人?」

「異世界人らしいっす。しかも異相断界から来たわけじゃなく、もっと遠くの人らしいっすね」

「へぇ、異世界人ねぇ」

 ヴェルが漏斗を外すと、もくもくと湯気を出すカップが現れる。中には濃く淹れすぎたお茶のような真っ黒の液体が入っており、香ばしい香りを漂わせていた。

 まただ。また、自分の情報を無意識に言ってしまった。なんだこれは。ヘベノは普段は口が堅い方だった。しかし今はこの人にすべての情報を漏らしてしまう気がする。

「それで、謎を解き明かしにここに来たわけだ。でも金は無いと」

「はいっす。今あるのは20万トウレ。これも食べるのに必要な分ですし」

 なんでだ。なぜ口が止まらない。
 これはヴェルギルウスの能力なのか? いや、能力ってなんだ。とても小手先のモノとは思えない。魔術、いやそれ以上の何かが働いている。
 ヘベノがヴェルギルウスについて疑念を深めていると、彼は、もしくは彼女は意外なことを言った。

「ねえ、きみはウチで働かないかい?」

 ヘベノは最初その言葉の意味が分からなかった。

「え、あの今なんて?」

 ヴェルは相も変わらず不吉な微笑を浮かべながら復唱する。

「だぁ、かぁ、らぁ、ウチで働かないかい?」

 そう言いながらカップを傾けて、黒い液体を飲むヴェル。満足げだが、好みなのだろうか。

 というか、ここで働く? 何故、そんな話になったのだろう。よく分からない。

「あの、なぜ?」
「その方が君の【命令】に添うかなぁって思っただけさぁ」

「ま、まったく意味が分からないっす」

 ヴェルが顔を急に近づけて囁いた。

「物分かりが悪いなぁ。つまりさぁ、【旦那の目的】とか【あの松明】とやらも私にかかればお見通しってことなのさ」

「!?」

 ヘベノは椅子から転がり落ちた。
 痛い背中を気にする余裕もない。
 ある人を自分が旦那と呼んでいることは言っていないし、そもそも松明に関しては何の情報も与えていない。
 なんだ、この人は。

「ど、どういうことっすか。なんでそんなこと……」

 ヴェルがカウンターから出てきて、倒れた丸椅子を元に戻すと絡みつくような気味の悪い笑顔で答える。

「言ったじゃないかぁ。私は教えるってさぁ?」

 ヒヤリと額に冷汗が流れる。
 誰がそれを信じるものか。普通情報屋の誇大広告としか思わないだろう。

 わざとながら卑屈な笑いをするヴェル。

「クククッ。面白いねぇ。一気に蒼褪めちゃってさぁ。面白いったらありゃしないよ」

 ヘベノは言葉を慎重に選びながら問いを続ける。

「その、ヴェルさん。まだ話が繋がってこないんすけど。確かにあっしは旦那の目的や、あの松明について知りたいっす。でも、あっしが何故ここで働く必要があるんすか」

「3億トウレ」

「へ?」

「3億トウレさ。君に払えるかい?」

 3億トウレ。家が軽々と建てられる値段である。
 それが一体どういうことなのだろうか。

「は、払えないっすけど……」
「フフフ、じゃあ働かなきゃ無理だねぇ。これは君が望む情報の値段さ」

 ヴェルは嫌味ったらしく笑うと、カウンターの元の位置に戻る。少し落ち着いてきたので、服に付いた埃を払って、立ち上がってから、席に着いた。

「でも、働いて稼げる額じゃないっすよ」
「他ならねぇ」

 ウチだったらすぐ稼げるという言い草だ。

 金は……あるのだろう。ここまでの情報屋は初めてだ。
 知っている人が少ないのかもしれないが、質が明らかに違う。常連はいるのだろう。

「あっし、そんなに時間はないっすよ」
「1週間でどうだい?」
「はぁあ!?」

 3億を、1週間で?
 明らかにヤバイ仕事だ。引き受けるべきではない。

 しかし、ヘベノは同時にわくわくもしていた。これはヘベノにとって初めての冒険だった。
 だからだろう。少し無理もしたくなる。

「仕事内容は?」
「いいねぇ。やる気になってきたかい?」

 ヴェルは白紙の資料を一枚取り出すと、それに文字を出現させた。先ほどと同じだ。

「これに書いてある」

 ヘベノは渡された紙を見る。

【貨物車に乗っていた少女たちの行方を追え】

 この魔女ヴェルギリウスは本当に何でも知っている。

「これが君のミッションだ。せいぜい励むといいさぁ」

 ヘベノはこれを受けることにした。


 ―カンダラ市営鉱山―


「あ、今。容疑者のワダ・ケント氏が休憩所から出てきましたっ!」

 パシャパシャと鳴り響くカメラの音。詰めかける報道関係者達。
 俺はかぶらされたフードからぼんやりとその光景を眺めた。

「ワダ氏、今回の不正疑惑に関して、何かおっしゃりたいことはありますかっ!」

 俺は横にいるアンドレー君を見る。
 彼は首を横に振って俺の前に出た。

「その件については、近日中に幹部を集めて記者会見を行いますので、そのときに」
「あなたは?」
「弁護人のアンドレーです」

 俺はもうなんかどうでもよかった。金も無いし。逮捕されたうえで、牢獄内でも逮捕されるというよく分からない状態に俺は絶望していた。そして金も無いし。
 というか集まっている記者。さっきから「罪を償おうとはおもわないんですか」とか、「被害者の方たちに謝罪をする予定は」とか言ってるけどさ。

「うっせぇんだよ。ぐちゃぐちゃ言ってるけど、結局お前らも前科持ちじゃねえか!!」
「ただいま、問題発言が飛び出ました。ワダ氏―! ワダ氏―!」

 俺の声で一気に苛烈した記者たちの勢い。アンドレー君が俺をお姫様抱っこをすると、その場を勢いよく立ち去る。ジャンプだ。ジャンプをして屋根の上を走っていく。

「逃げるおつもりですかー!」

 だが一部の記者は普通にアンドレー君の速度についてきた。この世界の住人はいささか運動神経がよく、誰でも立体機動装置並みの動きが可能だ。
 もちろん装備なしの生身で。

「アンドレー、このままじゃヤバイ」
「わかってる。どこか、身を隠せる場所があるといいんだけど」

 アンドレー君がジャンプをするたびに体がひどく揺れる。結構きついが、同時に隠れ場所も探さなければ……。
 だが、そんなに都合よい隠れ場所なんて見つからない。どうすればいいか迷っていると。

「ケント、僕に案がある。ちょっと危険だけど、今よりはマシかも」
「よしきた。どこまでもついてくぜ、相棒っ」

 だが、体の限界は仕方ない。俺の体はこの世界の仕様に対応してないのだ。物凄く重いソフトを低スペックノーパソに無理やり入れた状態と言えば少しは分かりやすいかもしれない。
 もっと簡単にいうと揺れだけで死にそうだ。う、なんかが逆流して。

「おえええ」
「もうちょっとだから我慢して」

 アンドレー君は本当にアテがあるようだ。どこかを目指して一直線、ん、ていうか、こっちの方向って……。

「ねえ、アンドレー君。こっちって、もしかして」
「うん。僕の実家に案内しようかなって」

 やったぁ。アンドレー君の自宅訪問だぁ。
 アンドレー君の自宅。それはこの牢獄で一番有名な場所である。
 多くの人が笑い、泣き、絶望し、死んでいった場所。

 そうーー

「迷宮だったら見つかる心配はない」

 俺は不安な気持ちを抱きながら、迷宮の門をくぐった。
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