異世界オタクは幾何学の魔女と伴に

痛痴

文字の大きさ
29 / 30
2章 異世界オタクと人形達の街

29話 中層の魔物

しおりを挟む
ここ、カンダラ市営鉱山において難易度を示す指標として【深度】がある。
 その名の通り地表からの深さを示した数値だが、この迷宮においてそれは魔物の強さと結びつく。
 この世界の長さの単位であるフィル(注:1フィル=約1m)によって測定されるそれは、いくつかの区分がある。

 まず深度600フィルまでを浅層と呼ぶ。

 比較的魔物の種類も限られており、観光客も出入りできる範囲である。子供でも安全に迷宮を体験できるレベルだ。カンダラ市営鉱山に設けられたカンダラ牢獄において最も多くの人が魔精石を稼ぐ場所でもある。

 かの牢獄が何故あそこまで“ゆるい”のかは、この街のネイティブが関係しているのだが、今は省くすることにする。

 結論を言えば、浅層は迷宮といえど命の危険は無いに等しい場所なのである。

 そして、そこから深度1000フィルまでを中層と呼ぶ。

 ここまでくれば、やっと迷宮は真の恐ろしさを現してくる。
 一気に魔物の種類が増え、レベルも高くなっていく。

 どんな実力者であっても油断は禁物であり、死と隣り合わせの場所ではあるが、同時に自然魔力バルトや魂によって変質した探索者の遺物が魔道具となって産出するようになるのもこのくらいだ。

 俗にいう探索者はこの領域を仕事場にしている。

 そして最後に、深層である。
 この定義に中層よりも下ということ以外は含まれていない。
 なぜなら、この迷宮の最下層は未だ未踏であるためだ。

 最前線の深度は、深度3400フィル。それ以上先に人間は行きついたことが無い。


 ―カンダラ市営鉱山 中層―


「ねえ、アンドレー君。まだつかないのかい?」
「うん、ケント。もうちょっと潜らないと、たぶん追ってくる」

 ここは中層。深度は知らないが、かなり潜ったはずだ。
 なぜなら、まず空気が違う。この迷宮は空気が謎技術によって一定気圧に保たれているらしいが、にもかかわらず空気が重い。
 あと、たまに死体を魔物がついばんでいるのを見ることもある。浅層じゃ見なかった光景だ。

「そういえば、ケント。君は死体とか大丈夫なのかい?」

 死体、ね。
 俺はそれを見て泣き叫んだりしないし、腰が砕けたりしない。
 ゼロライダー曰く、どうかしている奴だ。まったくもって同感である。

 別に俺が死体に慣れているとかそういうわけじゃない。惨い光景だとも理解している。
 だが何故か何とも思わない。もしかしたらオタクに脳をいじられているのかもしれない。
 この異世界で生き残ることができるように。

 まあだったらもっとチートとかつけろよって話だが。

「ああ、問題ない。――そういやここら辺ってどんなのが出てくるんだ?」

 アンドレー君は明朗な声で教えてくれた。

「基本的に浅層と同じでアンデッドは多いかな。スケルトンの上位種とか、あとは幽体の魔物とかもいる。やつらは魔術を使ってくるから厄介だよ」

 このパーティには遠距離へ攻撃できるタイプがいない。アンドレー君は近接専門だし、俺は松明様を眺めるっていう重要な役目があるし、松明様は遠距離攻撃できるけど、手伝ってくれない。
 俺たちは魔法使いタイプに滅法弱いのだ。

 え? 忠兵衛?

 あいつは上に置いてきた。俺の指示だ。
 俺の莫大な財産は一度没収されかけたが、大部分はアンドレー君の四次元ポケットないし圧縮空間収納に入っている。よって未だ多くの資産は手持ちにある。
 だが、それだと色々とまずい。逃亡生活をずっとやるのもいやだし、運営側看守と敵対するのは避けたいところだ。というわけで忠兵衛には資産の一部を持たして賠償金を稼いでもらっている。今は牢獄内のマスコミ関係者を懐柔している真っ最中だろう。風説が悪いと何もできないからな。

 勿論、奴に財産を任せるのは怖い、というか確実に持ち逃げされるという確証があるのだが、それは問題ない。

 ー回想ー

「ということだ。忠兵衛、やれるか?」

 忠兵衛は端末を弄りながら応えた。

「うっしゃぁああ!! SSRキタコレ! あ、でも要らねえやつかよ、ちっ」

「お前は上司と話すときくらいゲームから離れろ。まあいい。おい、宜しく頼む」

「分かってますよ。要は金を増やして旦那の賠償金を稼げばいいんでしょ。ちょろいっす」

「よし、言質はとった。アンドレー、あれを見してやれ」

 アンドレー君が一枚の紙をでんと突き出した。契約書のように見えるそれは、より厳密で、より恐ろしいものだ。

「ん、なんすかそれ。ソシャゲの一覧……」

「そうだ、正確にはお前がやっているソシャゲの全てだ」

 忠兵衛が首を捻る。

「それがどうしたんすか」

 俺はニヤリと口角を上げた。忠兵衛がキョトンとこちらを見る。

「お前のゲームデータは、今、俺の管理下にある」

 忠兵衛はそれを聞くと恐るべき速さで端末を開きソシャゲを起動していく。

「な、何だこれ。データの移送が、できない?」

「そういうことだ。励めよ」

「ちょ、ちょっと。もしかしてサボったらデータ消去とかないですよね。もう何万費やしたか分からないんすよ!」

 俺は忠兵衛を無視して部屋を去った。


ーーーーーーーーーー


 という訳だ。問題ないだろう。

 さて俺たちは迷宮を二人?で歩いていく。
 相も変わらず石を無理やりこじ開けたような迷宮だ。ここら辺になってくると豆電球(似)もなくなるので、事前に買っておいたランプで道を照らす。持つのは俺の仕事だ。

「これさ、自動追尾型にすれば良かったってさっきからずっと後悔してるわ。いい加減腕が疲れてきたんだけど」

 アンドレー君はしょうがないと言いたげに、こちらに振り向く。

「でも、金の無駄だって言ったのはケントじゃないか。僕はそれ買うのに反対してたはずだよ」

「それなんだけどさ、俺正直松明様の明かりで十分かなって思ったのよ。だから、買うときはあくまでインテリア的な感じで買ったんだよね。アンドレー君の頭蓋の中に入れたら楽しそうだし」

 このランプは色や光量などを調整できるなどいろいろ多機能で、しかも魔精石電池いらずの優れものである。だが色々機能を足した結果、他のランプにはよくついている、空中に浮遊アンド使用者に追尾という機能が付いていない。
 特に空中浮遊の技術はわりかし高度らしく、魔道具として作るのにも結構大変なのだとか。だからほとんどはその機能しかついていないのだ。

 だが俺は思ったのだ。そんな多数派を使っていいのか、と。
 俺が使うべきなのは、むしろ使い勝手が悪くともいろいろできる少数派なのでは、と。

 まあ、結論としては多数派の方が良かったけどさ。

「頭蓋の中に入れるのはやめてね。なんかそういう魔物いるから。間違えられそう」
「いや、間違えられるもなにも、アンドレー君、魔物でしょ」

 松明様は今日もブンブンと体を揺らしながら、楽しそうにしている。

 だが、お楽しみは俺の異世界の常々としてあまり長く続かない。
 どうやら敵のようだ。

「うわ、噂をすれば、だね。ゴーストのようだよ」

 俺たちの前に現れたのは松明様と俺の持つランプに照らされてもなお晴れない黒い靄である。ぶつぶつと何かを呟いているが、何を言っているのかは分からない。
 だが十中八九、恨み言であることは確かであろう。

「ぐお、ぐあ、ふぐらはぎぃい、ふくらはぎぃぃぃ!」

 いや、ただの脚フェチだったようだ。恨みというより、悲しさを感じる。

「いや、二の腕だろ」

 俺のその言葉を口火に、戦闘が開始された。
 この黒い靄、正式名称は【黒欲雲ディザイヤクラウド】と云うらしい。なんでも欲望のままに動き、そしてそれが解消されると自然に成仏するというよく分からない魔物なのだとか。

 だが、欲望が解消できないとなるとこの魔物は凶暴になる。残念ながらこのパーティで最上のふくらはぎを持つのは、白くて細いアンドレー君だが、アンドレー君は男だし、そもそも肉が無いから多分範囲外だろう。
 ちっ、戦うしかないのか。

 俺はせっかくなので魔術を使ってみることにした。【ドリンクバー】以外のものである。
 そう、金が有り余っていたのでついに魔術を習得したのだ。今こそその真価を見せるときである。

≪この和田健人が≫
≪自らの魔力に命じる≫
≪いでよ、我が異能≫

【ドリンクバー】

 まずは下準備だ。ドリンクバーをセットし、紙コップに水を入れる。
 そして、ここからが真骨頂。

≪我、水の異能使いが≫
≪我が魔力をもって≫
≪聖なる水の弾丸をここに顕在す≫

【セムリ・プロモ・シノメンタ(聖水弾)】

 その瞬間俺の手に握られた紙コップの中から水が浮かびだす。
 イメージだ。俺は顔を顰めながら必死に情景を思い描く。

 小学5年生のあの夏。強い日差し。流れる清流。
 言い出せなかったあの子への気持ち。
 それを今、あの頃の清純さを水の弾に込めて撃ち放つ!

「おりゃあああああああ!!」

 ピュッ。
 お風呂場でよくやる水鉄砲くらいの水圧が黒い靄を濡らした。

「?」

「ケントッ、無駄にヘイトを増やすのはやめてくれっ」

 アンドレー君が勢いよく黒い靄にとびかかっていく。

 やはりだめだな。この魔術は水術と促術の複合で悪霊とかそういうアンデッド系に特攻があるんだが、行使には自らの清らかな思い出が必要らしい。
 そこで俺は子供時代の思い出を頭に浮かべたわけだが、まず、俺は好きだったあの子の顛末を知ってしまっている。チャラ男と付き合って、数年ぶりに再会した時に、「あれ、誰だっけ? ごっめーん。忘れちゃったぁ。カズ君は知ってる?」「いやぁ、覚えてないな。っていうかこんなザ・モブみたいなやつなんていたっけ」「だよねー。キャハハハッ」って言われたことの印象が強すぎて、清純なイメージなんて思い出せないわ。
 ちなみに金髪になってた。

 ぐ、奴らめ。同窓会で、連絡してないのに何故か来ちゃった人みたいな対応をしやがって。呼びたくねえなら、連絡網で呼びかけとかするなよ。純情な俺のピュアハートがちょっと期待しちゃっただろうがっ。

 まあ、それはいい。それはいいんだ。
 つまるところ、俺に聖属性は向いていないらしい。なぜだろう、こんなにも俺の胸の中は慈愛の心に満ち満ちているのに……主に俺に対して。

 さて、とにかく魔物への対処である。

「アンドレー、対象を以後【黒靄くろもや】と呼称。現状を報告せよっ」

 俺は前々からちょっとやってみたかった軍隊ごっこをすることにした。実利にかなっているので、誰も咎めないしな。

「了解。攻撃手段は、遠距離では光術によるレーザー攻撃。近接では、促術によるデバフと、触腕の鞭攻撃。超近接であれば、攻撃可能。しかし、近寄れない」

 どうやら結構厄介のようだ。防御力はあまり無さそうだが、攻撃力が半端無さそうだ。うかつには近寄れない。
 しかも近寄れば、デバフと音速にも達しているであろう鞭が待ち構えている。

 アンドレー君は何度も接近しているが、急に動きが速くなったり、遅くなったりしている。促術というのは、物事の推移の速度を制御する属性だ。ヘベノは料理工程の短縮に使っていたが、戦闘に使えば厄介な補助魔術になる。

「アンドレー、魔道具を使って補助用の促術を編む。120秒くらいだ。それまでの時間を稼げるか?」

「了解」

 あの弾幕を突破するためには圧倒的な速度が必要である。それを為すためにはこちらも促術をかけるしかない。
 使い捨ての魔道具によるステータスの底上げ。それに賭ける。

 俺は懐からカードとりだした。もちろん例の魔道具である。
 この魔道具はたった数秒の間だけだが飛躍的な能力向上ができる。だが起動には時間がかかる。120秒、つまり2分というのはその時間だ。

 アンドレー君が槍で鞭を弾くと、すかさず光線が飛んでくる。
 それを転がりながら躱す。
 だが、それも黒靄の手中。すぐに次の鞭が飛んでくる。

 予備動作で隙が生まれやすい鞭という武器だが、それを何本も並列で動かせ、かつそれを補佐する魔術があれば話は別だ。
 絶え間ない攻撃がアンドレーを襲う。

 しかし黙って攻撃を受けるだけの骸骨ではない。
 自らの本体である槍からどす黒いタール状の液体が吹き出す。それは徐々にアンドレーの体を覆っていき、ついにはアンドレーは黒い甲冑を着込んだような姿になった。

「あんまり得意ではないんだけどね」

 そう言って体を構えるアンドレー。
 腰を低くし、全身の隙間を少なく、地に張り付いたようにがっしりとした構え。
 それは、今までの戦い方とは違う、タンクの戦い方である。

 鞭が飛んでくるがそれを槍の払いで断ち切る。
 痛みにうろたえた黒靄は光線を発射するが、アンドレーには効かない。
 漆黒の甲冑は光をすべて吸収してしまう。

 質でだめなら量だと言わんばかりに繰り出されていく触手の鞭。
 目にもとまらぬ速度で何重もの触手がアンドレーの体を叩いていく。

 視界上部からの攻撃を突きではねのける。
 腕を狙ってきた攻撃を上段からの振り下ろしで軌道をずらす。

 俺には速すぎて何も見えないが、なんとなく雰囲気で解説してみた。実際はもっと複雑だろう。
 だが、さすがに全部防げるわけではない。

 触手の一撃がアンドレー君の肩パッドを吹き飛ばす。カランと金属音を出すと、急に融け出して、地面に溶け込んだ。

 大丈夫かな、あれ。環境汚染とかにならないよね。
 まあ十中八九なりそうだけど。

 アンドレー君の装甲が次々と剥がれていく。
 これが女騎士とかだったら、触手を応援できるんだが、剥がれた装甲の隙間から見えるのは、剥き出しの肌(カルシウム製)なので、やはり応援できない。

 そんな馬鹿なことを考えていると、アンドレー君の身体がゴムボールのように跳ね飛ばされた。

「グガァッ」
「アンドレー君っ!」

 俺は、アンドレー君のところまで駆けようとする。
 だがモクモクと土煙(どうやら石が粉に粉砕されるほどの勢いだったようだ)が昇る中から、静止の意を示す手が出された。
 そして、槍を杖にしながら立ち上がり、口早に言葉を紡ぐ。

「だいじょうぶ、いいから作業を!」

「分かったっ」

 俺は起動の為の呪文を取扱説明書を見ながら唱えていく。
 えぇっと、ぁあ? 素早さに関するステータス上昇は続きの詠唱が36ページにあるだと。
 使い捨ての癖に、なんでこんなに複雑なんだよ。

「アンドレー、やり方は分かった。あと、もうちょっとだから待っててくれ」

「え、ちょっと待って」

 アンドレーが魔物を放っておいて、俺の方に向き変える。
 もちろん黒靄はその隙を放って置かない。すぐに攻撃を仕掛けてくる。

「あの、すみません。今、話してるんで、邪魔しないでもらえますか?」

 アンドレー君は今までしたことがないような冷ややかな声で言い放った。
 あまりの威圧感に黒靄は攻撃をやめて静かになる。

「ケント、今、聞き捨てならないことを聞いたんだけど。――やり方が分かった? ねえ、聞いていいかな、やり方が分かったってどういうこと?」

 俺は今、中層の魔物よりも、アンドレー君に対して生命の危機を感じていた。
 いや、アンドレー君は魔物なのでそれで合っているのだが、ついでに言うと見た目骸骨なので、全くもって自然なことなのだが、そういう意味ではない。

 なんというか、こう。関係性の危機を感じる。

「ま、待ってくれ、アンドレー君。違うんだ、そういうことじゃなくて」

「違うって何が? どう違うの? 分かるように説明して」

 どうしよ。アンドレー君がヤンデレ系みたいになってる。
 中層の連戦で精神がおかしくなったの?
 呪いの槍が?
 むしろ精神をおかしくする方じゃないの?

「えーと、さっきのは言葉の綾というか、やり方をチェックしてなくて時間がかかったとかじゃなくて……あー、えーと、そ、そう! この魔導具は一定時間でやり方が変わるんだよ! だから手間取ったんだ」

 俺は自分でもどうかと思う言い訳を口にした。
 言ってから後悔する。
 いや、一定時間で変わるってなんだよ。ワンタイムパスワードかよ。
 っていうか変わっても前もって調べてれば、それだって時間そんなに掛かんないだろ。

「ふーん」

 黒靄は一向に襲ってこない。
 っていうかむしろ『もう帰っていいかな』っていう感じだ。

 なんでだろう、アンドレー君から冷たい空気が流れてくる感じがする。
 いや、いかにも死の権化ってプロポーションだから似つかわしくはあるんだけど、そうじゃなくて!

「え、いや、やっぱそうじゃなくて、えーと、ああーっと」

 アンドレー君が冷たく俺を見蔑む。

「ケント、言い訳なんかどうでもいいんだ」

 じゃあ、どうすりゃいいんだよっーー!?
 俺は珍しく考えたことを口に出さず、心の中で爆発させた。

 どうしよう。完璧に俺が悪いのは明らかなんだが、俺は諦めたくない。
 だが理性が囁いてくる。さっさと謝るべきだと。
 だが、俺はあきらめない。あきらめたくないーー。

「ねえ、ケント、これなんだと思う?」

 アンドレー君が槍を俺にチラつかせる。

「すっいませんでしたぁーーーーーー!!!」

 俺は勢い良く額を冷たい石床に叩きつけた。
 頭をぐりぐりと床に擦り付ける。
 ジャパニーズDO★GE★ZAが伝わるかどうかは知らないが、必要なのは誠意だ。

「ケント?」

 アンドレー君に何か言わせる前に謝罪の言葉を口から出していく。

「アンドレー君いたら大丈夫かな、って思ってろくに説明書を読んでなかった俺が悪いんだ。本当にすまなかった。余計な時間稼ぎをしてもらって、すまない」

 俺は再び頭を下げる。

「ケント……」

 俺は黒靄の方にも向いた。

「お前にも悪いことをした。せっかく勝負してくれてたのに、俺が不甲斐ないばかりに余計な手間を取らせちまってーー本当にすまない」

「ゲンド……」

 黒靄は濁った声で俺の名前を呼んでくれた。

「みんな本当に、本当に申し訳なかった。これからは善処する」

 アンドレー君と黒靄が涙ぐんでくれている気がした。

「殴ってくれ、2人とも」

 俺は歯を食いしばって2人の前に立った。

 目を瞑って衝撃に備えた。
 だが、そのあとに訪れたのはゴツゴツとした骨と粘着質の雲のような感触だった。

「え」

「ケント、ごめん。その言い過ぎた」
「ゲンド……」

 もしかして、お前たち。

「俺を許してくれるのか?」

 アンドレーは優しい声で言った。

「もちろんさーー僕たち、友達だろ?」
「ゲンド……」

 俺は歯を剥き出しにして笑った。

 ――落ちたな。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...