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パトリシア 3
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俺は、放心状態のパティを連れて、宿に向かおうとしたが、パティは、火事場泥棒に金目のものを取られるからとその場を動こうとしない。
涙を流しているが、心は折れていないようだ。
俺もパティに付き合って、火が消えても、一晩中見張り続けた。
途中で、クレラインとオーリアがパンと水を届けてくれたり、毛布を持ってきてくれたりした。パティは水だけを飲み、俺は、少しパンを食べた。夜は冷えるので、パティの肩に毛布を掛け、腰に腕を回してその体を温めながら、立ち尽くして夜明けを待った。
やがて、空が明るくなってきて見えたのは、焦げた石壁と、敷地の中央近くに、陶器を焼く窯と、窯の煙突があるだけの無残に焦げた空き地だった。全てが燃え尽きていた。
その焼け跡にパティは足を踏み込んで、燃え落ちた木材の残骸や倒れた土壁などをひっくり返して、財産だったものを探している。最初に探したのは、金庫だったようで、直ぐに見つかった。しかし、鍵の部分が熱で変形して、鍵で開けることが出来なかったので、俺が、怪力、剛力、身体強化、皮膚硬化を発動させて、無理やりこじ開けた。中には、金貨50数枚、銀貨数百枚があり、高熱で変形しかけたものが数枚あった。その他に貴重品を入れていた金属の箱もあったが、中から出てきたのは、高熱で原型が分からなくなった金属製のアクセサリーや、ひびが入ったリ、濁ってしまったりした宝石だった。
それ以外の財産や商品や生活用具は、センネンブナの火力のせいで灰になり、陶器でさえもことごとく砕けたり割れたりしていた。
最後に、名残惜しそうに陶器を焼く窯を撫でていたパティを見て、
「その中に、陶器は入っていないのか?」と俺が聞くと、
パティはハッとしたように
「あっ、そういえば、焼こうとして入れたものがあった」
「無事かもしれないから開けてみたら」
パティは窯を開けようとしたが、金属の一部が膨張して変形したのか、
「開かない」
「俺がやってみよう」と、怪力を使って窯を開けた。
パティが、開いた窯に両腕と頭を突っ込んでごそごそしていたが、やがて、焼き物の欠片を幾つか取り出した。
「何?これ?」
パティが興奮した声を上げた。俺がパティを見ると、青い地肌に、緑と群青色の斑点が無数に浮き出た、不思議な光沢のある陶器の欠片を手に持っていた。
「こんな色合い、見たことがない」
パティが興奮しながら叫ぶ。
「いったいどうしてこんな色合いが出来上がったんだろう?」
俺は陶芸の知識はないが、その色合いは、曜変天目のようだと思った。
「パティが彩色したんじゃないのか?」
「私には、こんな色は出せないよ」
「窯の中の、他の焼き物はどうなんだ?」
「こんな色合いは、これだけだった」
「それで、その欠片はどうする?」
「この窯でこんなものが焼けるなら、いろいろ試してみたいけど、店が焼けてしまったし、どうしようかな」
「店を作り直すか?」
「そんなお金はないよ」と、パティは俺を見て、弱気に首を振る。
「金なら俺がいくらか持っているぞ」
「暫く考えさせて」
そのまま考えていたパティだが、やがて気持ちが決まったのか
「この色合いを再現するよ」と力強く言い切った。
「この店でか?」
「この店でなくてもいいんだ。ほかの場所に、この窯を持って行ってもいいし。だけど、この窯は絶対必要だ。この窯で出来たんだから、この窯で試さないと」
「火事に原因があるのかも知れないぞ」
「火事に?」
「遠火の強火というやつかも知れないと思ってな」
「何それ?」
「魚を焼くときに、遠い所から、強い火で焼くんだ。そうすると、近くの火で焼いたより美味しく焼き上がる。その欠片も、窯の外から強い火で焼いたから、いつもと違う出来上がりになったんじゃないのか?」
遠火の強火というのは遠赤外線のことを遠回しに言ったつもりだ。遠赤外線なんて言ったら、何でそんなことを知っているという話になるからだ。もっとも、窯変天目のような色合いと遠赤外線に何の関係があるのか、何の関係もないのか俺には分からない。ただ、状況から考えて、火事の炎に包まれた窯が、高温の遠赤外線を出すまでに熱くなって、窯の中の釉薬に何らかの作用をしたのではないかと想像しただけのことだ。
「料理と一緒にしないでよ。でも。遠火の強火って初めて聞く。妙なことを知っているんだね。だけど、昨日の火事を考えると、あながち間違っていないような気もする」
空がすっかり明るくなり、街の人々が活動を始めて、通り過ぎる度に、俺達をじろじろ見ていく。
「店に火をつけたのは、あの理事の手下に違いない」とパティ。
「俺があいつの鼻を斬ったのが悪かったのか?」と言うと、
「あんたのせいじゃないよ。あいつらは性根が曲がっていて、センネンブナを私に渡すぐらいなら、火をつけてもおかしくない奴等だよ」
「だけど、証拠がない」と俺。
「悔しいけどね」とパティ。
そのとき、
「いつまで、そこに居るつもり?」
俺達の様子を見に来たクレラインが、声を掛けてくる。
「ああ、これから宿に行くところだ。パティも、一緒の宿でいいよな」とパティに聞くと
「一緒に行くよ。金庫から出したものも持って行かないと」
「それは俺が持つよ」と言って、焼け跡から救い出した財産を毛布で包んで、宿屋に持って行くことにした。
「そういえば、まだ、ちゃんと紹介していなかったな」
宿に着いて、パティに、クレライン、オーリア、アルミを紹介した。
「この人達が前に言っていた人達だね。昨日は、水と毛布をありがとう。私はパティ。ダブとの関係は・・・」
と言って、困ったように俺を見る。
「俺の恋人というのかな、結婚したいと思っているパティだ」と、改めてクレライン達に紹介する。
「じゃあ、この人があんたの本命なんだね。妬けるよ」とオーリア。
「オーリア、いい加減にしなさい。パティさん、私はクレラインです。よろしくね。私達の関係は、この人に詳しく聞いてくださいな」
「私は、将来のお嫁さんのアルミよ」とアルミはない胸を反らして、1人の女としてアピールしてくる。
「この3人は、俺が助け出して、そのまま一緒に行動している。クレラインとオーリアは、持ち主のいなくなった奴隷だったので、彼女達に頼まれて、俺が持ち主になった。まあ、俺は寝ている間に関係を持たれて、そのまま関係は続いている。アルミとは、清い関係だ」
「他に女がいると聞いていたし、気にしていないわ。それにしても、綺麗な子ばっかりね。若いし、私が老けて見えないか心配になるわ」
「これからはパティさんが正妻で、私達は妾の感じでいいのかな」とオーリア。
「ああ、それで頼む」
心配していた、女同士のバトルは起きなかったのでホッとした。パティは、クレライン達より年上なので、自然な感じでパティを立ててくれるようだ。
「焼け跡の窯を見張らないといけない。夜は俺が見張るから、それまで、クレライン、オーリアと交替で見張ってくれないか。関係がない奴が敷地に入ろうとしたら、追い出して欲しいんだ」
「なら、私が先に見張りに行くよ」
そう言って、クレラインが宿を出て行った。
涙を流しているが、心は折れていないようだ。
俺もパティに付き合って、火が消えても、一晩中見張り続けた。
途中で、クレラインとオーリアがパンと水を届けてくれたり、毛布を持ってきてくれたりした。パティは水だけを飲み、俺は、少しパンを食べた。夜は冷えるので、パティの肩に毛布を掛け、腰に腕を回してその体を温めながら、立ち尽くして夜明けを待った。
やがて、空が明るくなってきて見えたのは、焦げた石壁と、敷地の中央近くに、陶器を焼く窯と、窯の煙突があるだけの無残に焦げた空き地だった。全てが燃え尽きていた。
その焼け跡にパティは足を踏み込んで、燃え落ちた木材の残骸や倒れた土壁などをひっくり返して、財産だったものを探している。最初に探したのは、金庫だったようで、直ぐに見つかった。しかし、鍵の部分が熱で変形して、鍵で開けることが出来なかったので、俺が、怪力、剛力、身体強化、皮膚硬化を発動させて、無理やりこじ開けた。中には、金貨50数枚、銀貨数百枚があり、高熱で変形しかけたものが数枚あった。その他に貴重品を入れていた金属の箱もあったが、中から出てきたのは、高熱で原型が分からなくなった金属製のアクセサリーや、ひびが入ったリ、濁ってしまったりした宝石だった。
それ以外の財産や商品や生活用具は、センネンブナの火力のせいで灰になり、陶器でさえもことごとく砕けたり割れたりしていた。
最後に、名残惜しそうに陶器を焼く窯を撫でていたパティを見て、
「その中に、陶器は入っていないのか?」と俺が聞くと、
パティはハッとしたように
「あっ、そういえば、焼こうとして入れたものがあった」
「無事かもしれないから開けてみたら」
パティは窯を開けようとしたが、金属の一部が膨張して変形したのか、
「開かない」
「俺がやってみよう」と、怪力を使って窯を開けた。
パティが、開いた窯に両腕と頭を突っ込んでごそごそしていたが、やがて、焼き物の欠片を幾つか取り出した。
「何?これ?」
パティが興奮した声を上げた。俺がパティを見ると、青い地肌に、緑と群青色の斑点が無数に浮き出た、不思議な光沢のある陶器の欠片を手に持っていた。
「こんな色合い、見たことがない」
パティが興奮しながら叫ぶ。
「いったいどうしてこんな色合いが出来上がったんだろう?」
俺は陶芸の知識はないが、その色合いは、曜変天目のようだと思った。
「パティが彩色したんじゃないのか?」
「私には、こんな色は出せないよ」
「窯の中の、他の焼き物はどうなんだ?」
「こんな色合いは、これだけだった」
「それで、その欠片はどうする?」
「この窯でこんなものが焼けるなら、いろいろ試してみたいけど、店が焼けてしまったし、どうしようかな」
「店を作り直すか?」
「そんなお金はないよ」と、パティは俺を見て、弱気に首を振る。
「金なら俺がいくらか持っているぞ」
「暫く考えさせて」
そのまま考えていたパティだが、やがて気持ちが決まったのか
「この色合いを再現するよ」と力強く言い切った。
「この店でか?」
「この店でなくてもいいんだ。ほかの場所に、この窯を持って行ってもいいし。だけど、この窯は絶対必要だ。この窯で出来たんだから、この窯で試さないと」
「火事に原因があるのかも知れないぞ」
「火事に?」
「遠火の強火というやつかも知れないと思ってな」
「何それ?」
「魚を焼くときに、遠い所から、強い火で焼くんだ。そうすると、近くの火で焼いたより美味しく焼き上がる。その欠片も、窯の外から強い火で焼いたから、いつもと違う出来上がりになったんじゃないのか?」
遠火の強火というのは遠赤外線のことを遠回しに言ったつもりだ。遠赤外線なんて言ったら、何でそんなことを知っているという話になるからだ。もっとも、窯変天目のような色合いと遠赤外線に何の関係があるのか、何の関係もないのか俺には分からない。ただ、状況から考えて、火事の炎に包まれた窯が、高温の遠赤外線を出すまでに熱くなって、窯の中の釉薬に何らかの作用をしたのではないかと想像しただけのことだ。
「料理と一緒にしないでよ。でも。遠火の強火って初めて聞く。妙なことを知っているんだね。だけど、昨日の火事を考えると、あながち間違っていないような気もする」
空がすっかり明るくなり、街の人々が活動を始めて、通り過ぎる度に、俺達をじろじろ見ていく。
「店に火をつけたのは、あの理事の手下に違いない」とパティ。
「俺があいつの鼻を斬ったのが悪かったのか?」と言うと、
「あんたのせいじゃないよ。あいつらは性根が曲がっていて、センネンブナを私に渡すぐらいなら、火をつけてもおかしくない奴等だよ」
「だけど、証拠がない」と俺。
「悔しいけどね」とパティ。
そのとき、
「いつまで、そこに居るつもり?」
俺達の様子を見に来たクレラインが、声を掛けてくる。
「ああ、これから宿に行くところだ。パティも、一緒の宿でいいよな」とパティに聞くと
「一緒に行くよ。金庫から出したものも持って行かないと」
「それは俺が持つよ」と言って、焼け跡から救い出した財産を毛布で包んで、宿屋に持って行くことにした。
「そういえば、まだ、ちゃんと紹介していなかったな」
宿に着いて、パティに、クレライン、オーリア、アルミを紹介した。
「この人達が前に言っていた人達だね。昨日は、水と毛布をありがとう。私はパティ。ダブとの関係は・・・」
と言って、困ったように俺を見る。
「俺の恋人というのかな、結婚したいと思っているパティだ」と、改めてクレライン達に紹介する。
「じゃあ、この人があんたの本命なんだね。妬けるよ」とオーリア。
「オーリア、いい加減にしなさい。パティさん、私はクレラインです。よろしくね。私達の関係は、この人に詳しく聞いてくださいな」
「私は、将来のお嫁さんのアルミよ」とアルミはない胸を反らして、1人の女としてアピールしてくる。
「この3人は、俺が助け出して、そのまま一緒に行動している。クレラインとオーリアは、持ち主のいなくなった奴隷だったので、彼女達に頼まれて、俺が持ち主になった。まあ、俺は寝ている間に関係を持たれて、そのまま関係は続いている。アルミとは、清い関係だ」
「他に女がいると聞いていたし、気にしていないわ。それにしても、綺麗な子ばっかりね。若いし、私が老けて見えないか心配になるわ」
「これからはパティさんが正妻で、私達は妾の感じでいいのかな」とオーリア。
「ああ、それで頼む」
心配していた、女同士のバトルは起きなかったのでホッとした。パティは、クレライン達より年上なので、自然な感じでパティを立ててくれるようだ。
「焼け跡の窯を見張らないといけない。夜は俺が見張るから、それまで、クレライン、オーリアと交替で見張ってくれないか。関係がない奴が敷地に入ろうとしたら、追い出して欲しいんだ」
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