二度目の初恋と軟禁された蜜月

不来方しい

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第二章 非日常

017 夢よりの現実

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 食べ終わった後は眠気が襲ってきて、個室でうとうとしていると、
「ホテルで少し休む? 帰りはまだ大丈夫だよね?」
「ほんとに、眠い……」
「じゃあ休んでいこう。その調子じゃ帰せないよ」
 財布を取り出したかったのに、彼がスマートに出したものだから浮いた手が太股に落ちる。
 リチャードと手を繋ぎ、引っ張られながらエレベーターの中に乗った。鏡に映る僕は、瞼が落ちかけている。
 そういえば、いつホテルを予約したんだろう。リチャードは眠そうにしている僕を見ては人差し指で睫毛に触れ「長いね」と漏らした。眠かったので「うん」とだけ答えた。
 何度も手を加えて今もなお動き続けるエレベーターは、天国へ向かっているみたいだった。リチャードとふたりなら、地獄だって行ける気がする。
「俺も眠くなってきたな……お昼寝しよう」
「ふたりで仲良く?」
「そう、仲良く」
「ふふ、眠気吹っ飛んじゃいますよ」
「どこでもいい。君とふたりきりになれるところなら」
「お昼寝したら、事件のことを知りたいです。リチャードは聴取を受けてたんでしょう?」
「そうだな。俺としては君とお昼寝の方が大事だけど」
 六○七のプレートがある部屋の前で止まる。カードキーを差し込み、中に入った。
 リチャードがベッドに横になったので、僕もするすると布団に潜る。
「起きたらいなくなってたりしません?」
「しないよ。今日はここに泊まる予定だし」
「え……だから鞄が膨らんでるんですか?」
「そう。下心丸出しだからね。賭けをしてたんだ。君が部屋までついてきてくれたら、ずっとナオの側にいて守り続けるって。二度とあんな目には合わせない」
「……告白に聞こえます」
「してるからね」
「うそ」
「嘘じゃない。どうしたら信じてくれる?」
「キス、とか?」
 今の僕は眠い。そのせいで善悪の区別がつかなくなっているんだ。
 リチャードも横になり、僕の頬を何度か撫でた。
「経験は?」
「…………ないです」
「初めてをもらっていい?」
「全部、もらってほしいです。初恋もあなたに奪われました。僕を捨てない覚悟を持ってくれるなら、ずっとあなたと」
 リチャードのキスは、柔らかで優しかった。二回目はほぼ同時に。
 恥ずかしかったので、目を瞑ったまま胸に顔をうめた。
「どうしよう、しちゃった」
「反応が可愛すぎて、別のところが反応しそう」
 覆い被さると、ちょうどリチャードの股間が擦れ、大きさが伝わってくる。熱くて硬い。
「んっ……」
「可愛い反応。ちょっとだけ大人の仲間入りしてみない?」
「リチャードは、悪い大人なんですか?」
「そうだね。王子様でもなんでもないよ。ランチの間も、君とセックスすることしか考えていなかった」
 とんでもない暴露だ。性的な目で見られていたとは。
「スーパーヒーローで王子様なのは変わらないです。でもちょっとだけ付け足しで、やらしいえっちな王子様です……んっ」
 腰を揺らしてみると、お互いが擦れて気持ちいい。
 夢中になっていると、そんなことをしているのは僕だけで、リチャードは止まったまま笑っていた。
「こういう行為好きなんだね。良かった」
「僕のこと何だと思ってます? したい盛りの大学生ですよ」
「子供の頃から見てるからね。それに君からは性的な香りは感じない。大人と子供の両方をまだ持っていて、アンバランスなところが魅力的なんだ」
 リチャードは僕のズボンを下ろした後、自分も脱いだ。
 抵抗されないと分かると、下着にも手を伸ばす。
「想像していた以上だ。とても興奮する……」
 リチャードは一緒に性器を掴むと、腰を上下運動させながら手も動かした。
 僕も大人の仲間入りをしたくて、と言い訳をしながらただ気持ちいい行為に集中した。
 絶頂がもうすぐというところで、リチャードは顔中にキスをしてくる。引き金となって、欲を外に放出した。続けてリチャードも低い唸り声を上げて、熱い液をばら撒いた。
 特有の匂いが鼻に届き、ついに大人の世界へ突入したのだと実感した。
「二十歳の誕生日を迎えたときより、大人になった気がします」
「良いものになった?」
「はい…………」
「もう少し慣れたら、君の中に入れたい。ここに」
「ひゃ」
 リチャードは掠めるような優しい指で、お尻の奥に触れてきた。
 軽くてくすぐったくて、もどかしい。
「新しい扉が開けそうです……んん……」
「気持ち悪さはない?」
「ないです。むしろ……」
 混じり合った体液を指に塗り、リチャードはそこばかり攻めてくる。
「胸見せて」
「恥ずかしい……」
「見たいな? きっと可愛いんだろうな」
 可愛い可愛いと連発されて、嬉しい。好きな人に可愛がられるのは、調子に乗ってしまう。
「やっぱり可愛いじゃないか。舐めていい?」
「はい……いっぱい舐めて……」
 リチャードの喉が鳴った。
 舐めるというより、赤ん坊みたいに吸いつく。
 ぴちゃぴちゃと音が鳴っていたのに、次第にリチャードの荒い息にかき消されていく。
 僕はされるがままになり、しばらく彼の大人の遊びに付き合った。
 終わる頃には、お昼寝ってなんだっけと天井を見ながら彼といちゃいちゃしていた。

 帰りはリチャードが車で送ってくれた。親に挨拶がしたいと言い張っていたが、丁重にお断りした。
「性行為の後で親に会うって、勇気が入ります」
「まだまだ序の口だけどね」
 とか言いつつ、リチャードは僕の顔色を伺ってくる。
「あなたとこうしていられるなんて、夢みたいです。あの、いつから好いてくれてたんですか?」
「初めて会ったころは君はさすがに未成年で、恋愛感情より弟の大事な友達って印象だった。別荘で久しぶりに再会して、驚いたよ。あまりに綺麗になっていて。汚れを知らないお人形さんのようだった。まさかあんな事件が起こるなんて、思ってもいなかった。とにかく君も含めて、全員守ることに必死だったよ」
「あなたのおかげで、犠牲者は出なかったんです」
「君がいたからだ。人間行動学を学んでいただけはあって、ナオの助言が解決に導いた」
「早くリンダが見つかるといいですね」
「まったくだ」
 僕が気を失ってからの出来事は、リチャードとセシルから大方聞いた。アビゲイルは保護されたが、犯人であったリンダが行方不明のままなのだ。僕の後に縄を伝って降りてくるはずが、リンダは窓から顔を出さなかった。
「リンダが見つからない以上、まだ解決とは言えない。まあこの件は警察の仕事だ」
 リチャードは運転席から顔を出したので、僕も目を瞑った。
 ちょうど玄関掃除をしに出てきた母と鉢合わせになって、あたふたする僕を後目に、リチャードは降りて握手を交わす。僕も車から出て、言い訳じみた理由を述べた。
 結局、付き合いたてで紹介するはめになってしまった。
 
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