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第16章五つの玉錚々のレクイエム

錚々のレクイエム#12

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妖精は、危害を加えなければ何もして来なく、飛び回っては休み、飛び回っては休みを繰り返し行っている。

「俺はどうしたらいいんだ、優は居なくなるし、花子あんな風になって…いや待てよ、今は俺が主役なのか、フホホそうか主役か…」

フルミは嬉しそうに微笑むと、自分が主役だと主張するかのように、生い立ちを語り始めた。

「これは私が、まだ産まれて間もない頃のお話…」

フルミの故郷はとても貧しく、戦争の絶えない国で育ったんだ。

「おーよしよし、フルミよ我慢しておくれ、食べる物が無くてお乳が出ないのよ、ハァ困ったわね、このままでは皆餓死して仕舞うわ、前までここまで酷くなかったのに、あの貴族が来てからと言うもの…」

国の大半が貧困で苦しむ中、一ヶ所だけ華やかかな場所がある、そうここが貴族が住む楽園「パラディ」貧困の民を眺めるかのように高地に聳え建ち、何処から仕入れて来たか分からない食糧と、数年雨が降らないにもかかわらず湧き出る水、そして椅子代わりにされる人々、その1人がフルミの父ハルミだ。

「あの、そろそろ交代の時間なのですが…」

交代時間が来ても代わりは来ず、遂に限界を迎えてしまった。

「あ、もう…ぐはぁ…」

豪華に倒れこんだハルミは、上に乗っている貴族を吹き飛ばしてしまった。

「ほんにゃろ!なんて事しやがるズラ!この者を引っ捕らえい!」

複数の兵がハルミを抑えつけ、何処かへ連れて行こうとする、それを遠くから見ていたフルミは、大声で叫んだ。

「お父さんに何するんだ!その小汚い手を離せ!」

フルミの母は、フルミの口を押さえ家に引きずりながら、制止した。

「ぶぁ!なんで止めるんだよ!お父さんがあんな事されて僕悔しいよ!」

母は涙ながらフルミにこう話した。

「お父さんの事はもう忘れなさい、あの人は貴族を傷つけてしまったの、この国では人を殺すより罪深い事なの…」って

その日を最後に父が戻る事はなかった、フルミは信じた、きっと何処かでまだ父が生きている事を…続く
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