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Take0【正面衝突】
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「うわぁ、ちこふッ。ちこふ!」
カリッと香ばしいトーストを口だけで支え、10代後半と思しき制服姿の女の子は走る。発している言葉はやや空気が抜けてしまっているが、直すと遅刻寸前だということが伺えた。
肩にかかるかどうかというセミロングを揺らし、小柄な体に風圧を受けて走る。一塊の跳ね上がったくせ毛が、体と一緒に後方へと反り返る。
彼女の名前は笹香 まこ。鋭意、新学期早々から遅刻しかけていた。
そのため大急ぎで、注意を怠ったまま曲がり角へと差し掛かる。
「もう、忘れ物だなんて……」
対して、まこの進行方向に逆らって駆けてくるロングヘアーの女性。制服姿から、まこと同様に女子高生だとわかった。
前傾姿勢になって走る姿はどこか様になっていた。
問題としては、数秒としないうちに両者の正面衝突が避けられないということ。
「!」「!」
当然、どちらも接近に気づいて避けようと舵取りをする。しかし、まるで示し合わせたかのように互いに同じ方向へと動いてしまった。
見事に衝突。
「キャッ!」「ギャッ!」
ロングヘアーの娘とセミロングの娘で、悲鳴がいささか差があった気もしなくはない。結果としては二人して後方へと転がることとなった。
大きな怪我はなさそうである。
「かぁっと!」
そこで、住宅の塀の影から学ラン姿の男が現れた声を発した。手にはメガホンのように丸めた紙の束。
まるで、映画監督か何かのような振る舞いである。
「オッケー。次のシーンいこう」
本当に映画監督のようで、ぶつかる役とスタッフ達にそう指示を出した。
まこと、もう1人の女優である汐都 めぐりを助け起こしたりなどする。
「えーと、めぐりちゃんがセリ鍋を食べるシーンでしたっけ?」
「そうそう、もう商店街の方でも準備できてるから急がないとね」
継いで現れたマイクを抱えた青年と、まこが話し合いながら住宅街を撤収していく。なかなかにハードなスケジュールなのは、監督の采配が悪いからだ。
まこも含めて皆が素人の映画研究部なのだから仕方がない。
そんな急ぎの中、どうも動きが鈍いことにまこが気づく。
「皆、どうかした? 急がないと」
重要なことなので2度も伝えつつ、振り向いた。そして、何かあったのかうずくまるめぐりに視線が釘付けになった。
「めぐッ? どうしたの?」
まこは何事かと、めぐりへと近づいて状況を確認する。顔を抑えているせいかめぐりは直ぐに答えられなかった。
代わりに、寄り添っていたカメラ担当の青年がメガネを正して言う。
「顔をぶつけたようです」
「!?」
その言葉に、まこは顔を青くして固まった。
メガネのカメラ担当は、まことめぐりのとある一点を交互に見つめた後にセリフを追加する。
「多分、胸骨に」
「あ?」
その瞬間、まこの中で何かが切れる音がした。
カリッと香ばしいトーストを口だけで支え、10代後半と思しき制服姿の女の子は走る。発している言葉はやや空気が抜けてしまっているが、直すと遅刻寸前だということが伺えた。
肩にかかるかどうかというセミロングを揺らし、小柄な体に風圧を受けて走る。一塊の跳ね上がったくせ毛が、体と一緒に後方へと反り返る。
彼女の名前は笹香 まこ。鋭意、新学期早々から遅刻しかけていた。
そのため大急ぎで、注意を怠ったまま曲がり角へと差し掛かる。
「もう、忘れ物だなんて……」
対して、まこの進行方向に逆らって駆けてくるロングヘアーの女性。制服姿から、まこと同様に女子高生だとわかった。
前傾姿勢になって走る姿はどこか様になっていた。
問題としては、数秒としないうちに両者の正面衝突が避けられないということ。
「!」「!」
当然、どちらも接近に気づいて避けようと舵取りをする。しかし、まるで示し合わせたかのように互いに同じ方向へと動いてしまった。
見事に衝突。
「キャッ!」「ギャッ!」
ロングヘアーの娘とセミロングの娘で、悲鳴がいささか差があった気もしなくはない。結果としては二人して後方へと転がることとなった。
大きな怪我はなさそうである。
「かぁっと!」
そこで、住宅の塀の影から学ラン姿の男が現れた声を発した。手にはメガホンのように丸めた紙の束。
まるで、映画監督か何かのような振る舞いである。
「オッケー。次のシーンいこう」
本当に映画監督のようで、ぶつかる役とスタッフ達にそう指示を出した。
まこと、もう1人の女優である汐都 めぐりを助け起こしたりなどする。
「えーと、めぐりちゃんがセリ鍋を食べるシーンでしたっけ?」
「そうそう、もう商店街の方でも準備できてるから急がないとね」
継いで現れたマイクを抱えた青年と、まこが話し合いながら住宅街を撤収していく。なかなかにハードなスケジュールなのは、監督の采配が悪いからだ。
まこも含めて皆が素人の映画研究部なのだから仕方がない。
そんな急ぎの中、どうも動きが鈍いことにまこが気づく。
「皆、どうかした? 急がないと」
重要なことなので2度も伝えつつ、振り向いた。そして、何かあったのかうずくまるめぐりに視線が釘付けになった。
「めぐッ? どうしたの?」
まこは何事かと、めぐりへと近づいて状況を確認する。顔を抑えているせいかめぐりは直ぐに答えられなかった。
代わりに、寄り添っていたカメラ担当の青年がメガネを正して言う。
「顔をぶつけたようです」
「!?」
その言葉に、まこは顔を青くして固まった。
メガネのカメラ担当は、まことめぐりのとある一点を交互に見つめた後にセリフを追加する。
「多分、胸骨に」
「あ?」
その瞬間、まこの中で何かが切れる音がした。
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