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Take1【作戦会議】
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初夏が迫る中、めぐりは仙台市の商店街にあるセリ鍋屋で熱々の料理を突っついてた。そんな中、まこは椅子でくつろぎずんだシェイクを飲んでいる。
禁句の後で何があったのか、カメラ担当の青年がまこの肩を揉んでいたりする。物理的、また精神的な温度差に、仙台市立高等学校映画研究部の面々は呆れていた。
「あ~、そこそこ。もっと気合い入れて揉みなさい」
「は、はいッ」
ずんだシェイクを買いに行かされたりと、こき使われているカメラ担当こと鈴木 みずやのことはさておき、撮影を続けた。
みずやが動けないため、研究部の部長で映画監督の洗馬 むつみがカメラを担当する。
「よーし、良い絵が取れてるぞ」
「ふー、ふー、はふはふっ」
セリ鍋を頬張るめぐり、それをねっとりと撮影するむつみ、と異様な光景があった。お店の人は、学生達への協力ならびに仙台市の宣伝ということで気にもしていない。ニコニコとした笑顔がどこかわざとらしく不気味だった。
さて、このような状態になった事情を補足しなければならない。平たい話、仙台市で行われる高校生・大学生の映画グランプリに参加した。そこでむつみ達の選んだテーマが、仙台市の宣伝に趣味嗜好を詰め込んだものだったのである。
――。
――――。
話が持ち上がった一週間ほど前。場所は、彼らの通う学校にある映画研究部の部室である。
「『青春』というテーマだし、もっとノスタルジックなものじゃなくて良いのか?」
との、副部長にして音声担当である園 もりやからの異論もあった。
むつみは反論する。
「俺達学生が、何かをなそうとすれば既に青春ではないかな?」
「はぁ?」
「ん~?」
まずは前提として青春とはなんぞや、という疑問を投げかけた。その場にいるもりやとみずやは、顔を見合わせて思案した。
「変にそれっぽく作るより、目標を定めて行動する姿を写す方が良いんじゃないだろうか。青春も過剰になれば青臭いというもの」
先んじて、むつみは七三分けの髪をかきあげて言ってみせた。妙に格好をつけているあたり、どことなく意識しているのではないかという疑惑があった。
指摘が出る前にむつみは続ける。
「それにだ。某パヤオ監督然り、某深海監督然り、必要なのはフェティシズムではないか?」
何を言い出すのかと思えば、なにやらとんでもないことを口にし始めた。有名な(アニメ)青春系の映画監督まで持ち出して、自らを肯定しつつ説明していく。
要するところ、青春と言いつつ学生らしさを追求しすぎないことが重要だと言いたいらしい。後は、何か突き詰める個性があるべきだという主張である。
「フェチと言いますと?」
みずやが聞いた。
「うむ。別に足や鎖骨に情念を感じろというものではないんだが、やはり何か心を突き動かせるものは欲しい」
「難しいことを言いうなぁ」
むつみの答えに、もりやが腕を組み背もたれに体を投げ出して言う。感動させるためのテーマとしての『青春』だというのに、それを前に押し出さず映画を作ろうというのだ。
当然、簡単ではないと判断されるだろう。
ましてや何を突き詰めるというのだろうか。
「俺に良い考えがある!」
むつみが、失敗しそうなフラグを打ち立てつつ宣言した。
そしてむつみが提唱した案こそが、現在に至る仙台市の宣伝とまこ&めぐりのガール・ミーツ・ガールに決まったわけである。
禁句の後で何があったのか、カメラ担当の青年がまこの肩を揉んでいたりする。物理的、また精神的な温度差に、仙台市立高等学校映画研究部の面々は呆れていた。
「あ~、そこそこ。もっと気合い入れて揉みなさい」
「は、はいッ」
ずんだシェイクを買いに行かされたりと、こき使われているカメラ担当こと鈴木 みずやのことはさておき、撮影を続けた。
みずやが動けないため、研究部の部長で映画監督の洗馬 むつみがカメラを担当する。
「よーし、良い絵が取れてるぞ」
「ふー、ふー、はふはふっ」
セリ鍋を頬張るめぐり、それをねっとりと撮影するむつみ、と異様な光景があった。お店の人は、学生達への協力ならびに仙台市の宣伝ということで気にもしていない。ニコニコとした笑顔がどこかわざとらしく不気味だった。
さて、このような状態になった事情を補足しなければならない。平たい話、仙台市で行われる高校生・大学生の映画グランプリに参加した。そこでむつみ達の選んだテーマが、仙台市の宣伝に趣味嗜好を詰め込んだものだったのである。
――。
――――。
話が持ち上がった一週間ほど前。場所は、彼らの通う学校にある映画研究部の部室である。
「『青春』というテーマだし、もっとノスタルジックなものじゃなくて良いのか?」
との、副部長にして音声担当である園 もりやからの異論もあった。
むつみは反論する。
「俺達学生が、何かをなそうとすれば既に青春ではないかな?」
「はぁ?」
「ん~?」
まずは前提として青春とはなんぞや、という疑問を投げかけた。その場にいるもりやとみずやは、顔を見合わせて思案した。
「変にそれっぽく作るより、目標を定めて行動する姿を写す方が良いんじゃないだろうか。青春も過剰になれば青臭いというもの」
先んじて、むつみは七三分けの髪をかきあげて言ってみせた。妙に格好をつけているあたり、どことなく意識しているのではないかという疑惑があった。
指摘が出る前にむつみは続ける。
「それにだ。某パヤオ監督然り、某深海監督然り、必要なのはフェティシズムではないか?」
何を言い出すのかと思えば、なにやらとんでもないことを口にし始めた。有名な(アニメ)青春系の映画監督まで持ち出して、自らを肯定しつつ説明していく。
要するところ、青春と言いつつ学生らしさを追求しすぎないことが重要だと言いたいらしい。後は、何か突き詰める個性があるべきだという主張である。
「フェチと言いますと?」
みずやが聞いた。
「うむ。別に足や鎖骨に情念を感じろというものではないんだが、やはり何か心を突き動かせるものは欲しい」
「難しいことを言いうなぁ」
むつみの答えに、もりやが腕を組み背もたれに体を投げ出して言う。感動させるためのテーマとしての『青春』だというのに、それを前に押し出さず映画を作ろうというのだ。
当然、簡単ではないと判断されるだろう。
ましてや何を突き詰めるというのだろうか。
「俺に良い考えがある!」
むつみが、失敗しそうなフラグを打ち立てつつ宣言した。
そしてむつみが提唱した案こそが、現在に至る仙台市の宣伝とまこ&めぐりのガール・ミーツ・ガールに決まったわけである。
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