絶滅危惧種の子なら隣で寝てるけど? ~異世界で保護飼育は難しい~

AAKI

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9睡目・ビター・ゴングとシュガーストップ

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「どう思う?」

「どうと ジィケーテレワビー」

 俺はラフに訊くものの、まぁそういう反応になるわな。

 山を上って行くのはラフの足を借りれば難しくないが、自然災害が原因の異常でないのは確かだ。もしそうなら、村の人らが気づかないはずがないからな。

 そうなると、人為的な何かが働いているってことになる。自然現象なら度合いによっては是正できたかもしれないが、誰かが引き起こしている事件とか怖いんですよ。

「山に カビーアイナ いるわ」

「やっぱりバトル展開? これが俺の正義だー、みたいな主人公はできないからなぁ」

「そう ダァビー ビーダエヌジィケー?」

 そういう問題なんです。ラフの冷たい視線を受けつつ、俺はどうしたものかと考える。

 エアールが襲いかかってくる可能性がある中、2人で乗り込んでいって何者かの陰謀を挫くとか無理だわ。皆を待つのが良さそうだな。

「宿を探そう。十人以上を泊めてくれる場所なんてあるかわからないけどな」

 諦めて数日の宿泊場所を探し始めた。街道沿いの宿場町でもないため、エルフ達を含めて20人超を収容できる部屋など望めないだろう。お金もないし。

 二人部屋をいくつか借りて、タコ部屋にするしかなさそうだ。

 どうでも良い余談だが、部屋を3つ借りることができて男5人とバロメッツとアルラウネ。そして二部屋目にサムベアさんとファリッバとエルフ首長、そして他のエルフ数名だ。残る数名を3つ目の部屋に。

 二部屋は結構見た目に幸せな感じになったけど、男部屋なんて酷いもんさ。カホーが他の部屋に行くのを止めるのに、危うく宿を破壊しかけたのは今では笑い話さ……ハハハ。

 さておき、時間は村到着から1日と半日が経過し、着々と全員が揃い始める頃。俺はラフとともに山の山頂へと来ていた。

「おー、絶景かな」

 もちろん、ちゃんと景色を見てますよ?

 そして、山の異常の原因と思しきものもそこから見えていた。

 2つの山岳が交わる地点に、渓谷の流れをせき止めるため作られた門型の木造建築がある。さらにそれを囲むように作られた壁を見れば、何を目的としているのかわかるだろう。

『水場の確保と砦ねぇ。国は関与してないよね。これ』

『環境をここまで変えて、さらに陣を敷く理由がありませんからね』

『ということは、完全に侵略行為に足を突っ込んでるじゃないか』

 俺の連絡を、そしてサムベアさん達の言動をエルフが伝えてくれた。

 シービンの言う通り、聖法国がわざわざ山中に砦を築くだけの理由がない。全方位を天然の要害に守られたこの国は、空でも飛ばない限りは多人数での進攻はできないからだ。

 まぁ、だからLHC実験なんてものを考えた奴らがいたんだけどな。

『オブジェダからの侵略か?』

『ハッ、なら遠慮なくぶっ飛ばせば良いじゃん』

『待つのじゃ。あちらもディヴメア信仰を掲げておるし、過去の大戦でも中立だったはずなのじゃ』

 ケェヌはまだ抑制が利きそうだが、放っておくとカホーが特大の魔法をぶちこみかねない。

 当然、ファリッバのようにお隣さんを擁護する者もいるわけだ。確認も取らずに軍事拠点をぶち壊そうものなら、今度こそお叱り程度では済まなくなる。

 とは言え、今から国に話を訊いてからでは後手後手すぎる。今更中立の立場を捨てて攻めてくる理由もないからなぁ。アビーチとの協定が目障りになったか?

「近づいて偵察だけしておこう。首長、数名を立てて先行させてくれ」

 結論のでないことをグダグダと話していても仕方ないので、エルフ達に偵察をさせておいて俺とラフもその後を追った。

 他の皆も渓谷に向かってもらって、いざという時のために万全を期す。

「皆を呼び寄せたとは言え、気をつけて。虫人種やレプティリアン種の多いお隣だから、森での戦いは上手だ」

 俺はエルフ達にそう念押しした。うなずいて、地面に消えた後を追う。

 障害物をもろともしない偵察に追従するのに、やはり岩肌を駆け抜けられるラフの変身は役立つ。ジェットコースターより楽しいから、後で皆にも体験してもらおう……。

「……うぇぇ」

「ぜーじゃく」

「貴女のせいです……」

「せーじゃく」

 人を気遣わずに崖を逆落としするのは止めて。わかってて追い打ちを掛けるあたり、失言聖女のお姉さんより質が悪い。

 フと思うことがある。フェイに拾われた過程とか、“聖櫃”の件があるにせよ仲間の元に戻らなかったのは……口の悪さ故か。

「もう少し優しく」「ビィダーエッチ たわ」

 直接指摘すると傷つけるので、遠回しに善性へ訴えかけようとしたが途中で遮られた。

 木造砦を見下ろせる位置までやってきたが、煙突のような建造物が目立つ。中まではわからないから戦力とかも判別不可。時間的にも夕方だから、これ以上の接近は諦めてエルフ達の偵察を待つか。

 俺達がやれるのは、何者かが出てきたときにエルフ達の逃走を援護するぐらいか。

「何か見えるか? あっ、おい」

「……」

 訪ねようとすると崖の方へと飛び出して、ぶら下がるようにして砦内部を見下ろした。

 危ないしバレそうだし、止めるべきなんだろうけど怖い。落ちても大丈夫ってぐらいのこのクソ度胸は見習わないとな。

 そしてラフが言うには、ここからでは屋内を覗くのは難しいとのこと。細かくはエルフを待つことになるが、別のことに気づいたらしい。
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