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奥さまはモンバス姉さん編

49 地底からの挑戦 その2

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 「あのう、私たち三人ともパイロット資格は持っていないと思いますが、大丈夫なんでしょうか?」
 「安心したまえ!ゲームセンターの戦闘機を操縦する感覚でやれるから大丈夫だ。
 それから、合体後は前回同様、瀬利亜ちゃんが動く通りにロボットも動いてくれるから全然問題はない!」
 私の疑問にマグナ博士が自信満々に断言する。

 「いえ、くどいようですがそれならどうして『三人が乗る』必要があるのでしょうか?」
 「うむ、ロボットは思考コントローラー機能で動くのだが、その際に人間の『想いの力』をエネルギーに変えることができるのだ。
 だから、『熱い友情』のある者同士が乗りこめば、『三つの心が一つになれば♪一つの正義は百万パワー』になるわけさ♪」
 ええと…どうして私たちが熱い友情で結ばれていることにしたいのですね…。

 「だから、楓と一緒では…痛い!やめてくれ!!」
 「きーー!!昔から聡はいつもいつも!!」
 「あの、お二人とも、『痴話げんか』をしている場合では…。」

 「「誰が痴話げんかなんか!!!」」
 「……いえ、いいです。」
 橋本君が『痴話げんか』に巻き込まれて、げんなりしています。

 「……あのう、もしかして…ロボットに一緒に乗ることで、二人の仲を深めたいという裏の意図がおありなのですか?」
 私がこっそりマグナ博士に耳打ちする。

 「なるほど…。瀬利亜ちゃんは洞察力も素晴らしいのだね。
 だが、残念ながら違うのだよ。私はそんな『純粋でない動機』でロボットを製作したりはしないさ。純粋に『私の趣味』だよ♪」
 いやいや、それもっとダメだよね??!!

 「ちょっと待っていただけまへんか?
 メインパイロットとの『友情』もとい、『愛情』ならわてが絶対的に自信があるで!!」
 …ええと、今度は光ちゃんまで現れました。
 他の件に関してはほぼ『120%信頼できる』光ちゃんですが、私が搭乗するロボットに関してはマグナ博士以上に趣味に突っ走る気が…。

 光ちゃんの登場にマグナ博士、伊集院くん、楓さん、橋本君は確かにその通り…みたいな顔をしています。
 光ちゃんの私への『溺愛ぶり』は少しでも油断すると人前でも全開になるので…。

 「なんなら、ロボットも合体し、内部でも『人間が合体』して、熱い愛情パワーを発揮するという手もありそうや♪」
 「あるわけないでしょ!!!下ネタは禁止です!!」

 「なに、カップル同士だと確かに『合体』することで愛情の増加を見込めるかもしれん!!よし、次は二人乗りカップル用ロボットを作成し、『内部合体機能』を作るのもありだな!!
 錦織君、『協力』をお願いできるか?!」
 「ばっちりや!!なんならカップルとしての搭乗もOKや♪」
 「二人とも何言ってんですか!!拒否します!!!断固拒否します!!!!」
 マグナ博士と光ちゃんが非常に残念そうな顔をしています。
 光ちゃん!わざわざロボット内部で合体しなくても、毎日………いえ、何でもありません。

 「ところで、瀬利亜はんとわてが乗るのは確定で、三人目はどないしまひょか?」
 「うーむ、こうなると三人とも五〇歩百歩だな…。せっかく『にぎやかし』で来てもらったことだし、橋本君にでも乗ってもらうのも…。」
 「…俺は『にぎやかし』で、しかも『橋本君でも』扱いなんですか…。」
 うん、マグナ博士、その扱いは橋本君がかわいそうだと思います。


 「あらあ、じゃあ私が乗っても大丈夫そうね♪」
 は?!!今度はアルさんまで現れたのですが…。
 ……よく考えたら光ちゃんが一人で地底科学研究所へ移動できないから、アルさんがいても当たり前ではありますが…。

 「ほほお。アルテア先生、あなたが適任者だという証拠はありますか?」
 マグナ博士がなぜか真面目くさった表情になる。
 …ええと、今までものすごく適当に決めてましたよね?!

 「それなら、瀬利亜はんが『鑑定能力で測定』できるはずや♪
 なんやったら他の人の『好意や愛情』を測定してからの方がわかりやすい思うんや。」
 「なに?瀬利亜ちゃん、早速やってみてくれたまえ。」
 光ちゃんの話を聞いて、マグナ博士が興味深そうに言う。

 「ためしに橋本君を鑑定してみました。
 現在『恋愛中』で『対象に対する愛情』はレベル七です。
 なお、レベル五が普通の夫婦間の愛情なので、かなりべたぼれです。
 ちなみに対象は……。」
 「石川!!!やめてくれ!!それ以降はプライバシーに!!」
 「……というわけで、残念ながら『対象は秘密』ですが、このようにかなり正確に鑑定できることがお分かり頂けたと思います。」
 橋本君には悪いが、ちょっと例題にさせてもらいました。
 しかし、橋本君がまさか◎◎さんを懸想しているとは…こっそり応援するのも面白そうです。

 「よし、今度は聡君と楓だな♪」
 「「やめてください!!!!」」
 マグナ博士の発言に慌てた伊集院君と楓さんが私のところに泣き付いてくる。
 なので、公表しないことにします。
 なお、楓さん⇒伊集院君 が愛情LV一〇で、伊集院君⇒楓さん が愛情LV七なので、二人とも素直になったらすごくうまくいくのではないかと思うのですが…。

 「よし、それでは、今度はメインカップル同士を提示してくれたまえ。」
 えええ??!!見せなきゃダメでしょうか?

 「ふ、任せてもらいまひょうか!」
 光ちゃんは自信満々です。新婚旅行の時はスゴイ数字が出ましたから…。

 光ちゃん⇒私 が愛情LV六六で、私⇒光ちゃん が愛情LV七〇
 ……うん、新婚旅行の時よりさらに増えているよね…。
 ああ!!マグナ博士とクラスメートの三人の私たちを見る目がものすごく生暖かくなってます!! こんな数値が広まったら、『究極のバカップル扱い』されるのは目に見えてます!!
 く、口止めはできないのか??!!

 「じゃあ、最後は私だね♪」
 アルさんは私たちをすごく信頼してくれているし、私たちもアルさんをものすごく信頼してくれているよね。どんな感じになるのでしょうか?

光ちゃん⇒アルさん 友情LV三〇 アルさん⇒光ちゃん 友情LV四〇

おお!!ものすごく厚い信頼関係なんだね!!確かにこれはスゴイです。

私⇒アルさん 友情&愛情LV六〇 アルさん⇒私 愛情一二〇

 「ほら♪友情&愛情パワーはバッチリだよね♪♪」
 ………ええと……鑑定能力にバグがあるわけではないのですよね…。 
 アルさん以外はみんな完全に固まってしまってます。

 「く!まだまだわての愛情が足らへんいうことやな!!せやけど、負けへんで!!かならず、『毎日のコミュニケーション』で、もっと愛情を増加されるんや!!」
 「さすが、光一君♪頑張ろうね♪」
 ええと……二人とも何を頑張るおつもりなのでしょうか…突っ込む気力すら起きません…というか、『コミュニケーション(物理)』は頑張るものではないような気がします。


 そして、実戦訓練に入ったのですが、友情&愛情パワーのおかげで、シードラゴンロボは想定以上の戦闘能力を発揮してくれています。
 私がグレートシードラゴンに乗っていた場合の二倍くらいの戦闘力を発揮しているようです。

 実際にはこれにアルさんが様々な魔法のサポートを入れてくれることを踏まえると、さらに強力になることが予想されます。
 おお!!これならどんな怪獣や巨大ロボットの侵略があってもシードラゴンロボで撃退できそうです。


 「さあ、まもなく本家・地底帝国の地底巨人たちが日本の上空に差し掛かってくるぞ!
 シードラゴンロボ発進準備を!」
 「「「了解(や)!!」」」

 こうして、私たちが発進すると同時に地底巨人たちに銀色の巨大な飛行物体が近寄っていくのが見えた。

 「あれ?あれは美夜さんの式神じゃないかしら?」
 水晶球でアルさんが探知魔法を使った結果を伝えてくる。

 地球防衛軍副隊長・土御門美夜さんの巨大怪鳥型式神が高速で地底巨人に近づくと、その一体をそのまま大きな口を開けて飲み込んでしまった。
 続いて、巨大な尻尾を伸ばすともう一体もぐるぐる巻きにしてしまう。
 怪鳥は一体をそのままバリバリと音を立てて(推定)咀嚼を始め、もう一体を怪力でぎゅうぎゅう締め付けると、バラバラにしてしまった。

 「あらあ、地底巨人に人が乗っていないと判定して、そのまま撃破しちゃったのね。」
 「しかし、美夜はんの式神はあいかわらず規格外やね♪」
 「ええと…二人ともこの事態は想定していたようだけど、帰えろっか。」
 私たちは怪鳥が飛び去っていくのを遠隔映像で見ながら気の抜けた会話をした。


 「これは一体どういうことだ???!」
 私たちが戻ると、マグナ博士が泣きそうな顔をしている。せっかくロボットが大活躍するはずが、地球防衛軍に簡単に敵が粉砕されてしまったのだ。

 「そらあ、日本の領空に勝手に『敵対勢力』が侵入して、警告に従わな『自衛隊や地球防衛軍』に撃墜されても文句は言えへん…いうことですね。」
 光ちゃんが淡々と語り、マグナ博士はがっくりと肩を落とした。


 後日、今回の件で怒り狂ったマグナ博士の『自立型ロボット』が『本家・地底帝国』に突撃し、帝国を滅ぼしてしまったそうだ。
 なお、その事態を私たちはすぐに気づいて、住民だけは何とか逃がすことに成功しました。…マグナ博士、これじゃあどちらが侵略者かわかったものではないですが…。

 ちなみにシードラゴンロボの研究自体は、マグナ博士とドクターフランケン、光ちゃんまで加わってさらに『順調に』進んでいるらしいです

 「いつまた、第二、第三のシードラゴンロボが来るかわからへんのや♪」
 光ちゃん、それは『開発者』のセリフじゃないからね?!
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